リレー小説
3-1 |
その女の上気した顔が街灯の下に露わになったのを俺は見逃さなかった。 いい女だった。どこか、影のある不幸を身に窶したような独特の眼をしていた。 俺は今や「おまえに関心ありあり」といった好奇心丸出しの視線で彼女を見つめた。 彼女も俺の存在に気付いた様子だった。そして、俺のほうに近づいてくる。 ”ラッキー” こんな美人とお近づきになれるなんて。棚ボタだ。日頃、女に縁のない俺はしかし内心の喜びとは裏腹にビクビクしていた。話し掛けられたらなんて答えればいいんだ? 「あっ、あのっ…、すいません」 息を切らせた女が俺に向かって話し掛けてきた。息を切らせてひっきりなしに荒い息をついている様子が色っぽくて俺は顔を緩めていた。 「は、はいっ」 そう言いながら俺の目は女の胸に嫌らしい視線を注いでいた。だが、彼女はよっぽど急いでいるのか私の無遠慮な眼差しにも気づいていない様子だった。 「後ろから付けてくる人がいるんです。ストーカーみたいなんです。助けてッ」 「ま、まかせなさい」 俺は彼女にいいところを見せようと思って派手に胸をたたいた。 「あなたは私の後ろに隠れていなさい。ガツン、と言ってやりますよ」 「すいません」 彼女は安堵した様子でハァハァ、息を吐いている。俺は彼女を背後に隠すと、彼女が走ってきた方向からやがて来るストーカー?を待ち構えた。だが、いつまでたってもソイツ?がやってくる気配はなかった。 「?あのォ…来ませんけど…」
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