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   第6章

美樹は美雪とともに、トレーニングルームに連れ込まれ、リクライニングチェアーに横になるように命ぜられた。美雪は相変わらず自分の喉にカッターを突きつけていて、美樹がいくら話しかけても耳が聞こえないかのように反応しない。何か強力な催眠術にでもかけられているのだろうか?とにかく、今は男たちの言うなりになるしかなかった。

「さぁて、このトレーニングヘルメットをかぶってもらうが、暴れるんじゃないぜ。ちょっとでも動いたら、容赦無くこっちの娘に喉を突かせるぜ、ひっ、ひっ、ひっ・・・。それにしてもいい体じゃねぇか。」男が美樹の乳房をブラウスの上からゆっくりと揉む。もうひとりの男は、美樹の太ももの内側を撫でさすり、スカートの奥まで手をすべらせて、美樹の表情の変化を楽しんでいる。美樹は手をぎゅっと握り締め、体を固くして男たちの顔をにらみつけた。
「おおコワ。おい、早くかぶらせるんだ!」男たちは美樹の頭にヘルメットをかぶせ、バンドで固定していく。男がしつこく美樹の胸を揉みながら、にんまりと笑って言った。
「このままこの娘を人質に、お前を嬲りものにしてやってもいいんだが、それじゃあ面白くねぇ。お前を洗脳してから、いろんなことをやらせてやるぜ、とても正気じゃぁできないような恥ずかしいことをな。へっ、へっ・・・ぞくぞくするぜ。」

洗脳?この機械で生徒たちをロボットに変えていたのだろうか?しかし、このままでは私まで・・・。美樹の心は焦るが、美雪はまったく正気に戻る気配がない。
「よし。それでいいだろう。おい、スイッチを入れろ!」男の合図とともに、ヘルメットの内側で光と音の嵐が炸裂した。
「きゃああああっ!」美樹の口から悲鳴があがり、頭をかきむしるようにしながら、しばらく手足を震わせていたが、ふいに体が動かなくなり静かになった。
「ふっ、ふっ、ふっ・・・中国拳法の達人も意外に洗脳マシンには弱かったようだな。ようし、そっちの小娘には用はない。上の階の部屋に行くように言え。」美雪がおとなしく言われたとおり部屋から出て行く。
「それじゃあ白鳥先生にまずは、ストリップでもやってもらおうか。」男たちが舌なめずりしながら下品な笑い声をたてた。男がマイクを手にもち、
「白鳥美樹。オレの声が聞こえるな?聞こえたら返事をするんだ。」美樹は死んだように横たわっている。
「おい!どうした!返事をしろ!・・・うん?失神でもしたのか?」男たちがリクライニングチェアーのまわりに集まり、美樹の頬を軽く叩いた。

「はっ!」鋭い気合とともに、美樹の左手が動いて男の腕をつかみ、ぐいっと引き寄せる。倒れこんできた男のみぞおちに美樹の突きが突き刺さった。
「ぐぇっ!」男が白目を剥いて床に倒れた。美樹がゆっくりとイスから降りて、ヘルメットのバンドをはずしていく。
「そ、そんなバカな!・・・」残った二人の男が顔を見合わせた。ヘルメットをはずした美樹がすっと目を開いた。
「ふふっ、お生憎様。拳法の上級者は、精神を集中することで、視覚、聴覚を閉ざした無の境地に到達できるのよ。こんな機械で私を洗脳しようなど、10年早いわね。さぁ!いくわよ!」美樹が拳法の構えに入った。
「ひっ!に、逃げろ!」背を向けた男の襟首を美樹の手がつかみ、こちらを向いた男のこめかみを拳が強打する。立ちすくんでいた最後の男には、ねらいすました蹴りが金的に入り、あっという間に3人の男たちは口から泡を吹いて失神した。

「さぁ、早く美雪を助けなければ!」美樹は、再び廊下に出て、暗い階段をのぼっていった。こんな騒ぎが起きているのに、建物は異様な静けさに包まれている。美樹は足音をしのばせて2階にあがり、非常灯の明かりを頼りに廊下を進んで行く。
「せんせい・・・」つきあたりの部屋からかすかに美雪の声が聞こえた。
「美雪!」美樹は小さく叫ぶと、部屋のドアをあけた。真っ暗な部屋の中に踏み込んだとたん、がーん!と頭を強打されて、美樹は部屋の中央に吹っ飛び、くるくると2、3回体が回転して、床に仰向けに倒れてしまった。

「し、しまった・・・」必死に起き上がろうとしたとたん、部屋の明かりがついた。
「ああっ!あなたは・・・!」
「くっ、くっ、くっ・・・。よく来たな、白鳥君。」
ドアを背に、神父のような詰襟の黒い上下を来た園田教頭がにやにやと笑いながら立っていた。そしてその横には、プロレスラーのように筋肉の盛り上がった坊主頭の男が3人、美樹をじっと見つめている。レスラー用パンツ1つの男たちの手足の筋肉は、油でも塗っているのか、照明の下でぬらぬらと光を放っている。そして、男たちの首には鉛色のリングが取り付けられていた。
「園田教頭!あなたがなぜこのような所にいらっしゃるのですか?」
「くっ、くっ、・・・私は金蛇様のしもべよ。そして、この教団では教主と呼ばれておる。ついでに言えば、君が倒した権田は私のいとこだよ。それに君を私に紹介してくれたのもな。」

「な・・・なんですって!・・・」美樹は上体を起しかけた姿勢のまま絶句した。
「ここにおる3人は、我が教団の誇る戦闘僧たちだ。もともとはプロレスラー希望のものたちだが、君の中国拳法とやらが通じるかな?・・・くっ、くっ、くっ。通じない場合はどうなるかわかっていると思うが。」
美樹は体をふらつかせながら、ようやく立ちあがった。分厚い胸板、丸太のような手足の褐色の肌の男たちが、いつの間にか美樹を取り囲むように立っていた。その顔には何の表情も浮かんでいなかったが、目だけは異様に輝いていた。

美樹は圧倒的な質量の男たちを前にして、精神を集中させながら、静かに拳法の構えをとった。


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