目録へ  悶絶投稿へ戻る  作品の感想はこちらへ!


   第3章

翌日の放課後、島津美雪は金蛇教の教団本部の入り口に立っていた。学校で、クラスメートの洋子に金蛇教のことを聞くと、洋子もリアルイメージトレーニングを頻繁にやっているという。それを行うと試験の時に勉強していないような事まで頭に浮かんできて、問題が解けてしまうのだそうだ。しかし逆に、ある時間帯の記憶がすっぽり無くなってしまうこともあるようだった。体験入門という制度があるから、今日の放課後来てみたら?と誘われて、美雪はここで洋子と待ち合わせしているところだった。

こんなに急いでこの教団に来る必要はなかったのだが、明日で一学期が終了してしまうと、なかなか洋子に会えなくなるかもしれないし、ちょっと気になる話も洋子から聞いたのだ。
「あのね、これは秘密なんだけど、教団に通っている女の子に変なことがあったのよ。トレーニングを終わって、家に帰る途中でね・・・気がつくと、自分のパンツが濡れてたんですって。慌てて公衆トイレに駆け込んで脱いでみたら、アソコから白くてどろっとしたものが出てきて・・・なんだか、男の人の精液?じゃないかって。すっごいショック受けててさぁ。」
「えーっ!精液?」
「しーっ!よく分からないんだけど、じゃないかって話。でもその子、その日どんなトレーニングをしたのか全く覚えてないのよ。」
「洋子は大丈夫なの?」
「うん、私はね・・・でも確かに時々、気がつくと下着を変に着てたり、みたいなこともあるかなぁ。でも、今更やめられないよぉ。ホントに点数よくなるんだよ!」

美雪は美樹に相談しようと思ったのだが、あいにく美樹はずっと期末面談で缶詰になっていて連絡がとれなかった。しょうがなく美樹の携帯にメールだけ入れて、とりあえずちょっと見学してみようとここまで来てしまった。
「美雪!」
「あっ、洋子!」
洋子が教団の建物から走り出てきた。
「ごめんね。ちょっと礼拝が長くなっちゃって・・・。この人が金蛇教の北山さん、新人の指導係よ。」洋子の後ろに坊主頭の青年が立っていた。詰襟の白い上着とズボンを着ていて、細面で顔まで色白だ。無表情に美雪をちらっと見やった目からは何の感情も読み取れなかった。
「北山といいます。体験入門の方ですね。どうぞこちらへ。洋子さんは礼拝を続けてください。」それだけ言うと、すたすたと建物に入っていく。美雪は洋子に手を振って、慌てて北山のあとを追った。

受付で簡単な仮申込書を書いたあと、小部屋に通されて北山から教団の概要について説明を受けた。要するに、金蛇という神様がおり、その生まれ変わりといわれている金蛇様という教祖から教えを受ける宗教のようだ。これだけならよくある話だが、イメージマシンという機械を使って、視聴覚的な集中レクチャーによって教義を理解したり、勉強にも活かせるところが学生の信者に好評だという。
「やってみればすぐわかるよ。頭がからっぽになってどんどん勉強が頭に入るんだ。」北山は淡々と話し続けた。まるで台本を読んでいるような無機質な口調が、妙な違和感を感じさせる。

「次は体を清めたあと、修行服に着替えて、リアルイメージトレーニングを体験してもらいます。どうぞこちらへ。」美雪は再び北山に連れられて、教団本部内を案内されて歩いていく。途中、いくつかの修行部屋があり、みな白い浴衣のようなものを着て、ヘッドホンをつけてじっと目を閉じていたり、中には目を見開いたまま、じっと身動きもせず座っているものもいて、建物中を妙な雰囲気が支配している。
そうだ、北山をはじめこれだけの人がいるのに、建物の中にまるで生気がないのだ。まるで人形の集まり・・・美雪はふと違和感の原因に思い当たった。

「ではここでシャワーを浴びて、この修行服に着替えて下さい。修行服以外は何も身につけないで下さい。」それだけ言うと、北山はさっさと出ていく。美樹はデバートの試着室のような狭いシャワールームの前にひとり取り残された。入り口以外は内側はすべて鏡になっているという変わったつくりだ。修行服は、ごく薄手の白い生地で浴衣のように帯で着るようだが、本当に裸の上にこれを着るのだろうか。美雪は少しためらったが、中に入ってライトをつけた。やけにまぶしい光の中で、美雪は意を決したように服を脱ぎ始めた。

シャワールームの鏡はマジックミラーとなっていて、薄暗くなっているその裏側に中年の男が数名すわり、ミラーの向こう側をにやにやと眺めていた。美雪の美しい裸体からシャワーの水がすべるように水玉となって流れ落ちている。スポンジにボディソープをつけて、美雪が丹念に体を洗っていく。均整のとれた若い肢体がライトの下に映し出されている。もう少し乳房や尻が発達すれば、その整った顔立ちといい、十分グラビアアイドルもつとまりそうだった。
「ふ〜ん、けっこういい体してるじゃねぇか。」
「ばかだな。しょせんはガキの体だぜ。」
「でもオッパイのかっこはいい。もう2年もすれば・・・うっしっしっ、だな。」
「おっ!ちゃんとワレメを広げて中を洗ってるじゃねぇか。さすが優等生ちゃんは違うね。」
「へっ、へっ、へっ、おい、そろそろマシンの準備をしようぜ。」
数人の男たちの低い笑い声が闇の中に響いた。


美樹が美雪のメールに気がついたのは、夜遅く自宅に帰ってからだった。一日中、学生や親との面談をやって、疲れ果てて携帯電話を確認する気にもならなかったのだ。
「美雪!無茶だよ・・・。得体のしれない場所にひとりで行くなんて。」美樹は思わず唇を噛んだ。嫌な予感がした。美雪の行動は無謀だとは思ったが、美樹にも経験があった。少し武道を覚えた頃が一番無茶をする。実際、美樹も不良学生を相手にして危ない目にあったこともあった。美雪の携帯を呼んだが出ない。
「美雪・・・。無理しちゃだめだよ・・・。」美樹は窓際に立って、じっと夜の街をみつめ続けた。


 悶絶投稿へ戻る      戻る    進む