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   第二章

どう見ても異様なかっこうの権田が、イスに座ってこちらを見ている。脂ぎった丸い顔はそのままだが、髪を長くのばし、首から下にはマントを巻き付けて腕を組んでいる姿は、何かサーカスの出し物のようでもあり滑稽だった。しかし、美樹の胸には、忘れていた嫌悪感がじわっと湧き上がる。
(この男に、私はいいように嬲り者にされたんだ・・・)
美樹はテレビの画面をにらみつけた。

「ふっ、ふっ、ふっ・・・まだ学園の教師をしておるそうじゃのう。相変わらず、大きなオッパイと長い脚をさらけ出して、男どもを誘惑しておるのか。」
画面を見つめる美樹のこぶしがぎゅっと握り締められた。
「ワシはあの時の君の仕打ちを、ひとときとして忘れたことはないぞ。これはワシからの挑戦状じゃ。今度は君の拳法とワシの肉体で正々堂々と勝負してくれるわ。ふっ、ふっ、ふっ・・・ワシはあの時のワシではない。君を打ち負かし、また裸に剥いて、思うままに犯してくれる。ワシのメス奴隷となってもらうぞ。」
(この男、とうとう気が狂ったらしいわね。あなたとなんか、二度と会いたくないわ。)
美樹はふんと鼻を鳴らした。

「このとおり、君のかわいい恋人も預かっておる。ふっ、ふっ、ふっ・・・」パッと画面が切り替わった。
「ああっ!・・・み、美雪!」
そこには、全裸の島津美雪が、産婦人科にあるようなイスに縛り付けられ、脚を大きく開脚させられて座っていた。口には猿轡をされ、大きく目を開いてもがいている。薄い陰毛とピンク色のワレメが痛々しかった。
「この娘は男を知らんようじゃな。だが、まだ犯してはおらん。しかし、これを見よ。」権田の声が言った。カメラがアップになり、美雪の脚の間にあるものを映し出した。そこには、円筒形の金属の棒が取り付けられた、何か機械のようなものが据えられていた。金属の棒は鈍い光を放ちながら、ゆっくりと回転している。棒の表面には細かいネジ山がきられていた。

「この金属の棒は、ゆっくりとこの娘の陰部に向かって進んでおる。6時間もすれば、この娘のワレメに入り込むじゃろう。機械に処女を捧げるわけじゃ、ひっ、ひっ、ひっ・・・。そして、さらに時間がたてば、この娘の体の中をどこまでも進んでいく。もっとも、その前によがり狂うかもしれんがのう・・・。」
画面の横から手がのびてきて、美雪の小振りな乳房をもみ始めると、美雪の体がびくんと反応し、その若い肢体が苦しげにのけぞった。
「あ、あのクスリをまた使ったのね!なんてひどいことを・・・」美樹が奥歯を噛み締めた。

「もちろん、警察などは無しだ。電話も含めて君は見張られておることを忘れんようにな。今すぐに、蛇が丘の淫獄楼に来い。そこに闘いの舞台が用意してある。ふっ、ふっ、ふっ・・・」再び、権田の顔が大写しになったかと思うと、映像はぶつっと途切れた。
美樹は何も映っていない画面を呆然と見ていた。
(なんていうことなの・・・。あの権田がこんなことをしてくるなんて・・・。警察に届けようか?しかし、万が一、あの男たちにわかったら美雪がどんな目に合わされるか・・・。)

みすみす敵の罠に飛び込むようなものだったが、ほかに選択肢はなさそうだった。美樹は、この1年必死に体を鍛え、拳法の技を磨いてきた。いかに卑怯なクスリを使われたとはいえ、闘って敗れた自分が許せなかったからだ。今では、師匠から師範代も近いとまで言われるような腕前になっていた。
しかし、敵はどんな手段を使ってくるかもしれず、また敵の手に落ちれば嬲り者にされる運命が待っている。
(でも、行くしかない!美雪を見殺しにはできないわ。美雪は今も私の助けを待っているのだから。)

美樹は手早く、白のブラウスと薄いピンク色の超ミニを身につけ、部屋の隅に立て掛けてあるバトンに目をやった。以前は武器として使っていたのだが、あの日、死ぬほど恥ずかしい目に合わされた記憶が蘇る。
(こんどは持っていくのはやめておこう・・・)
美樹はさっと赤いダッフルコートを着ると、タクシーを呼んだ。

ここA市の郊外に蛇が丘という、うっそうと薮の生い茂る小高い丘があり、淫獄楼はそこにあった。明治時代にはこのあたりでは名高い娼館だったということで、噂では囚人の女性を密かに送り込み、死ぬまで売春をさせたらしい。淫獄楼という通称はそこからついたようだ。当時では珍しい木造4層の建物の各層では、それぞれ趣向をこらして、訪れる男たちを楽しませた。

そろそろ陽も傾きはじめる中、美樹の乗ったタクシーは田舎道を飛ばしていく。一年前、旧校舎の中で罠にはまり、美樹は全裸で縛られ果てしなく犯された。愛液を滴らせ、よがり狂い、男たちのモノをしゃぶった。そしておぞましいことに、陵辱される自分に興奮する、もう一人の自分が確かに美樹の心の中にいたのだ。
(二度とあんなことはさせないわ。今度は負けない。待っていて、美雪!)美樹は固く心に誓った。


一方、ここは淫獄楼の最上階。
「権田さん、白鳥美樹が車でこっちに向かったようですぜ。」男が報告する。
「ふっ、ふっ、ふっ・・・相変わらずじゃのう。また、あの女を好きなだけ抱けるかと思うと、辛抱たまらんわい。ひーっ、ひっ、ひっ、ひ・・・」淫獄楼に、権田の狂ったような笑い声が響き渡った。


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