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 第一部(10)<バイブ>

麗佳はわずかの間、純白の世界をさ迷っていた。
しかしほどなく、また意識が戻ってきた。
快感の波はまだ余韻を持ってよせてはいたが、いくらか落ち着いてきた。
すると麗佳は、自分がたった今、確かにいってしまったんだ、と思うと、猛烈な恥ずかしさが襲ってきた。
とても目を開けていられなかったので、目をつむり、顔を左に背けていた。
男達はすっかり欲情しきっていた。
卑猥な笑みをニヤニヤと浮かべ、ぐったりした麗佳を見下ろしていた。

「あらら、いっちゃったぜ!」
「なんだよ、こいつ、すぐにいっちゃったじゃねえか!」
「こいつ、ほんとは溜まってたんだぜ!」
「毎日毎日訓練じゃ、溜まりもするぜ、俺らと同じでよ!」
男達はワッと笑った。

「本当は相当な好きものだぜ、こいつ」

男達の勝手な言い分が、かすかに聞こえてはいたが、麗佳には、やり返す気力はなかった。
まだ快感の余韻が静かに残っていたので、麗佳は肩で息をするしかなかったのだ。
それでも、とにかく一段落した気持ちだった。
数人は台から離れて、部屋の隅の方に引き下がったので、これでもう開放してもらえるかもしれない、とかすかに思った。
しかしそれは甘い期待に終わった。
麗佳は顔を背けていたので気付かなかったが、その数人は隅に置いたバッグの中を漁るとバイブを取り出した。
ニヤついた男が握りを確かめつつ、そっと麗佳に近づいた。
いまはもう肉舌の奥に隠れてしまった花芯あたりに見当がつけられ、その人工的なフォルムを持った器具がそっと押し当てられた。
麗佳は未だ気がつかない。
ただ目を閉じて横を向き、ぐったりしているだけだ。
突然、何の前触れも無くスイッチが入れられた。
その刹那、麗佳は目をいっぱいに見開き、大声で悲鳴をもらした。

「んはあっ!」
「ああっん!!」

たちまち男達はざわめいた。

「ほーら、来たよ、姉さん」
「はーら、ほおーら」
「いくら突っ張っても、こいつにゃ勝てまいよ」

その無機質な器具は、ブーンという軽いうなり声をあげながら、麗佳の中心にあてがわれていた。
しかもそれはじっとしているわけではなく、僅かづつ首振りをしながら、流線形の頭を肉舌の下のぬかるみへ潜り込ませようとしていたのだ。
先端が少し隠れた。
肉舌の間を分け入ると、微妙だが激しく振動している丸い頭がぬかるみの中へと潜り込んだ。
その先には、あの数mmの突起があった。
振動する丸い先端が突起に触れた。
麗佳は一瞬の内に再び嵐の中へと連れ出された。
しかも今度は先ほどの比ではなかった。
その先端は無慈悲で冷たく、躊躇や手加減は一切なかった。
ただ与えられた仕事を淡々とするかのごとくに静かに突起に押し当てられるだけで、麗佳の脳髄に大嵐を呼び起こすのだった。

麗佳は、わめいた。
麗佳を押しとどめられるものは何もなかった。
身をよじり、のたうち、のけぞり、腰を振って悲鳴を出した。
はじめのころの一瞬だけ、かろうじて自分があった。
しかしすぐに全ては快感の大波に飲み込まれ、頭も身体も全てが快感を迎え入れた。
全ては開けひろげられ、麗佳は本能の欲求に従った歓喜の女声をあげた。
その人工物は麗佳の突起から決して離れようとせず、執拗に押し当てられたまま黙々と振動し続けた。
先ほど、一度絶頂を迎えやや安定したはずの麗佳のレベルメータは再び一気に振り切れた。
ほどなく麗佳は2回目の絶頂を迎えた。

ついでバイブはゆっくりと挿入された。
それは震えつつ、静かに麗佳と同化していった。

「うぐっ!」とうめき声が漏れ、やがてピストン運動するにつれ、喘ぎ声に変わった。
その喘ぎ声はどんどんエスカレートしてゆく。
バイブのピストンが一往復するたびに、残り少ない理性さへもが削られていく。
いつの頃からかはとうに忘れたが、今では心までもが、完全にこの嵐を受け入れていた。
麗佳の心はすっかり快感の虜になってしまっていた。
うっとりとそれを味わい浸りきっていた。
ここがどこで、自分がどんな状況に置かれているか、などということは、いつしか忘れ去られていた。
ただひたすら、この快感が心地よくて、それがいつまでも続いて欲しかった。
麗佳は完全な雌になっていたのだ。

「...ああ...いい...すごく...」
「...きもち...いい...」
「...こんなの...はじめて...」
「...ああ...なんて......なんて...いい...んだ...これ...」
「...ああ...この...まま...」

男は意地悪くバイブを抜き去ろうとした。
しかし麗佳の腰は無意識にバイブを追い、それが抜かれるのを拒否した。
次第にピストンの動きが早められていく。

「おい、どうだ? 感じるか?」

男が乱暴に尋ねる。
男は、麗佳が無言なので、もう一度乱暴に尋ねた。

「...いい...」

かすれるように麗佳の口から漏れてきた言葉は、はじめの頃の麗佳の態度からは想像もできない言葉だった。

「なに! 聞こえねえよ!」
「...いい...よ...」
麗佳は苦しそうに喘ぎつつ言う。
「もっと大声で言え! 大声で言わないと、やめるぞ! いいのか!」
「...」
「いいのかよ!!」
「...や...やだ...」
「なに?! 聞こえねえよ!」
「...やめ...ない...で...」
「感じるのかよ!この野郎!」
「...かん...じる...」
「なに?!大きい声で言え!」
「...いい......気持ち...いい...」
「どこが?!」
「...」
「聞こえねえよ!」
「...お...ま...」
「聞こえねえっていってんだろ!」
「...お...まん...こ......いい...」

残念ながら麗佳は、一切を放擲していた。
全存在をかけて、その快感を味わってしまっていた。
麗佳にとってはもはや、自己も尊厳も、自立した意識の自制も、何もなかった。
あるのはただ、快感の波間に戯れる時間だけであった。


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