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 第一部(5)<恥丘>

胸の愛撫に気を取られていた麗佳だったが、ふと気付くと、いつのまにか足元にいた二人組が麗佳の足首をなでていた。
左右の足先から足首までをさするようになでていた。
まるでマッサージでもするかの如くに4本の手のひらが、麗佳の太い筋肉質の両足をなで上げていく。
麗佳は初めは気にしなかった。
それより胸の愛撫を耐えることの方が重要だったからだ。
吐息を漏らすまい、声を出すまいと頑張っていたからだ。
黙々と撫で続けられる手は、足首からふくらはぎ、そして膝を過ぎてやがて太ももあたりに到達した。
引き下げられたズボンはだらしなく膝あたりに引っ掛かっていたが、男達の手はそれを飛び越えてやってきた。
この頃になると麗佳もさすがに両足に施されている摩擦をはっきり意識していた。
じわじわと這い登ってくる手が太ももを往復する。
それらはゆっくりと両足の付け根に向かって収束しようとしていた。
そして一方の男の手が太ももの内側深くまで進入してきた。

「?!」

麗佳は、はっと緊張した。
もう胸だけにかまっていられなくなり、仰向けに寝かされた台上で首を少し持ち上げ、太ももの方を見た。
両サイドの男の4本の手が、パステルブルーのショーツに今にも触れそうなくらい近くを這っている。
その手はまるでじらすかのように、腰骨あたりをさすったかと思うと突然、内ももあたりまで戻ったりしている。
麗佳は次第に己の下半身に意識を向けざるを得なくなってきた。
さっきから執拗に行ったり来たりしている両もものつけねあたりだ。
男の手は敏感な所のすれすれをわざと通り過ぎていく。
それがかえって意識をそちらに向けさせるのだ。
麗佳は両ももをきつく閉じて抵抗しようとした。
閉じた両足を右に左にとねじって、何とか男の手をかわそうとするのだが、両足を固定されているのでたいした効果は無かった。
だんだんと麗佳の意識は、下半身の方に振り向けられていく。
相変わらず胸の愛撫は続けられていたが、それに加えて、あの敏感な場所にいつ触れられるかと思うと、気が気ではなかった。
そしていっそうしっかりと唇を噛み締め、絶対に吐息を漏らすまいとした。

そのとき何かの拍子に、スリスリと太ももを撫ぜていた男の手の親指側がほんの少しだけ、ブルーのショーツのやわらかな先端部分をかすめた。

「!」

麗佳は思わず息を呑んだ。
しかしそれは何かの間違いであったかの如くに、また太ももに戻っていった。
男は気付かなかったのかも知れないが、麗佳にとっては重大事だった。
事実、麗佳はハラハラしていた。
だが男の手は、その核心の部分にはまるで関心が無いかのごとくに、また腰骨あたりを撫で回し始めた。
麗佳はとりあえずほっと一息ついた。
しかしそうは言っても、いまや男の手は麗佳の丸く豊かに発達したヒップをぴっちりと包んだパステルブルーのショーツあたりに集中していた。
一方の手が臍のあたりのラインから段々と足ぐりのラインをサワサワとなぞって行く。
もう一方の手は両脇にバンと張り出したお尻のサイドの肉を揉みほぐすように這い回っている。
麗佳はさかんに腰をよじって手を振り払おうとしているが、それはくすぐったさのせいばかりではなさそうだ。

ややあって、ショーツの足ぐりラインをなぞっていた手が、三角形の頂点という当然の帰結に導かれるように、すっと中心をかすった。
それはほんの一瞬だったが麗佳ははっとした。
そしてちらっとその男の方を見た。
しかし男は何事もなかったかのように、また臍あたりに手を戻した。
麗佳はさっきからの、このハラハラする気持ちや、手が中心に近づく度に感じる緊張を悟られたくなかった。
そして男が無表情なのと、その手が臍あたりや横尻あたりを中心に撫で回しているのでとりあえずは少し安心した。
まだ、このハラハラする感じなんかに気付かれてはいない、と。
しかし、それは甘いのだ。
男達はただ楽しんでいたのだ。せっかくのこの楽しみを、一気にとげてしまったら、もったいないではないか...。

そんなことを裏付けるように、あるいは、頃は良しと思ったか、ショーツの臍あたりにいた手が、突然、何の前触れも無く、すーっと一直線に谷を降りてきた。
臍からまっすぐに下ってきた手は、恥丘の膨らみを柔らかく乗り越えると、一気にショーツラインの収束する谷底へと降りてきた。

「?!」

わずかに油断していた麗佳はあっと思った。
男の指が、谷底をめがけて、断崖の垂直壁を伝った時、ぐっと息を止めた。
指はしかし、すぐにまた垂直壁をよじ登ると、恥丘あたりの平原に戻った。
麗佳はそこで息をつき、また呼吸することができた。
しかしそれからはもう、男の手はその恥丘あたりにとどまり続けた。
男は麗佳の恥丘の膨らみ加減を確かめるように、その丘の上で遊んだ。
男の指先には、ショーツの薄い布を通して、麗佳の恥毛のジョリジョリした感触が十分に伝わっていた。
麗佳がわずかに息をついたその直後に、男の指が再び、丘から続く断崖の垂直降下を行った。
恥丘の盛り上がりをのり超えると、ストンという感じで谷底まで降りて行く。
しかもその都度に、わざわざ垂直の壁を確認するようになぞっていくのだった。
おまけに今度は、登り返すときにも、その垂直の壁をはっきりと確かめるように登って行く。
その都度に麗佳は息を止め、身体をこわばらせて耐えねばならなかった。
麗佳の起伏に富んだフィールドでの、男の指のアスレチックは続いた。
平原から丘へ、そして谷へと指は楽しそうに駆け回った。
そのうちに段々と、やわらかい花園に指が触れる回数が多くなってきた。
しかも、いつのまにかもう一方の男の両手も加わって、4本の手指は左右から交互に近づいてきては、いちばん切なくなる垂直の壁に軽くタッチしていく。
軽くかすめていくだけなのだが、麗佳はそのたびに、はっとし、身体を固く緊張させるのだった。
そうこうするうち、なんだかそのタッチが、次第にはっきりとしたものになってくる気がした。
初めは、かする程度だったものが、やがてはっきりと圧迫しては、ふっと離れてゆくようになった。
麗佳はそのたびに息を止めざるをえず、上の方にズリあがって逃げようとしたが、台上に両手足を束縛されているから所詮無駄であった。
ただ襲ってくる手のリズムにあわせて息を止め、そのたびに漏れそうになる吐息をこらえるだけが精一杯であった。

そんなことがしばらく繰り返された後、とうとうその礼儀知らずの手は、やわらかな中心部を捉えたまま、居座ろうとした。
いままで手のリズムに合わせて、その手が離れる間に息をしていた麗佳だったが、その無礼な手がいつまでも離れようとしないので、仕方なくそのままで浅い息をついた。
そして思わず首をおこすと、自分の下腹部の方を見た。一方の男が手を返し、あからさまに指の腹をショーツの中心に押し当てている。そしてあつかましくも、そのまま静かにゆっくりと、円を描くように押し回し始めたのだ。
麗佳は精一杯腰をひねって、なんとかその傍若無人な指から逃れようとしたが、指は執拗に逃げる腰を追ってくるのだった。
そして思い上がったその指は、薄い布地に包まれた微妙なカーブに沿って、何度も何度も麗佳の垂直の壁を上下した。
そしてその薄い布地を通して、その下にある微妙な凹凸を探るかのようにうろつき回った。
麗佳はいつしか、その指の動きに集中して意識せざるを得なくなった。
特に下から上へとなで上げられたり、やや上方を細かく探られたりするときには、うっと息を止めざるをえなかった。
微妙な部分を避けようと、麗佳がどんな努力をしているかも知らずに、その憎らしい指は、とうとうある場所にぴったりと吸い付くように密着した。
まったく無駄な努力ではあったのだが、なんとかその場所を悟られたくなかった麗佳は腰をあれこれよじり、その場所だけは避けようとした。
しかし、指は強情にもその場所にこだわった。
そしてとうとうその場所で、ブルブルと心地よい振動をはじめたのだった。

その瞬間、麗佳は思わずのけぞった。
全身がきゅっと緊張し首が一気に後方に伸ばされた。
腹筋はせわしなく上下し、呼吸が次第に速くなった。
口は堅く閉じられているので、鼻だけで息をした。
その「ふっ...ふん...」という鼻息の音が、次第に強く聞こえ始めた。
口だけは堅く閉じていようとした麗佳だったが、すぐにその手の振動を制止させようとする
言葉を、発っせざるをえなくなった。

「やめろよ... さわるな...っは...」
「ふ...っふ... やめろよ...」

そのために口を開いたので、当然口からも息が漏れた。
一瞬まずいと思い、すぐに口を閉じた。
しかし男の指は次第に力を込めつつ麗佳の核心部分に次々と微妙な振動を送り込みはじめた。
押しつける、回す、下からくじる、上から削るように滑らせる、素早く震わせる、揺らす...。

「ああ...やめろ...やめろよ...」

麗佳はまたも制止の言葉を出さざるをえなかった。
そうでもしないと、じわじわと這い登ってくる快感に負けそうになるのだ。
麗佳は必死に自分に言い聞かせた。

「こいつら...あたしを...馬鹿にしやがって...くそ...」
「...う...」
「こんな奴等になめられてたまるかよ...ちきしょう...」
「...あ...」
「このあたしが...なんでこんな辱めを...受けなきゃいけないんだ...こんな下衆野郎に...」

恥ずかしさと同時に激しい怒りが湧いてくる。
麗佳の頭の中には怒りが渦を巻いた。
しかし同時に身体の奥の方からはジンジンと響くような波が、まるで誘うようにやってくる。
自分では気付いていなかったが、麗佳の表情は次第に緩んできていた。
はじめは目を尖らせ唇を歪めた、こわばった恐ろしげな表情だったものが、今ではだいぶ緩んできてしまっていた。
ほほのあたりはうっすらと赤味が射し、目元は心なしか潤んでいた。
キッと結んでいた口元は次第にだらしなく開くようになり、はっと気付いてから慌てて閉じるということを繰り返していたが、やがて段々と、だらしなく唇を開いたままでいることが多くなってきた。
視線にはもはや強い光はなくなり、しかもわずかの間だが、目を閉じたままでいるようになった。
はじめは鎌首をもたげるようにして男達を睨み付けていたが、今ではすっかり台上に首を伸ばしている。
時折、男の指がグイグイと押し付けられブルブルと振動するとき、麗佳の首は大きくのけぞり、アゴがきれいに天井を向いてしまうのであった。
眉間には困ったようなシワがより、口は大きく開かれるが、それでも麗佳は声を出すまいと耐えていた。
そんな、ひどく切ない表情をしながらも、麗佳は未だに自分を保っていた。

「こいつらはあたしを...慰みものにする気なんだ...」
「ああくそ...そんなこと...されてたまるかよ...」
「...!」
「こんなクソ野郎どもに...あたしの誇りを...踏みにじられて...たまるかよ...」
「...うわ...」
「こいつら...あたしを...感じさせて...それで...楽しんでやがるんだ..」
「...くっ...」
「こんな奴等に...感じさせられる...なんて...最低だよ...絶対許せない..許せるもんか...」
「...あん...」
「こんなアホどもに...されて...感じたりしたら...笑いもんだよ...」
「ああ...くそ...とにかく...声なんか...出すもんか...絶対...声なんか...」
「...ん...」
「氷になれば...いいんだよ...氷を...装うんだ...」
「...ああ...でも...」
「...あんっ...」
「...ああ...でも...ちきしょう...指が...当たる...当たるよ...」
「...っは...っあ...っああ...」
「ちきしょう...そこは...」
「う...ああ...また...」
「...ち...ちきしょう...ク...クリに...当てやがって...ああ...」
「...あっ...」
「...く...くそ...そ...そんなに...ゆらす...な...よ...」
「...ああっ...」
麗佳は必死になって声を抑えた。必死になって快感を振り払った。必死になって自分を
保とうとしていた。


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