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 第三話:レクリエーション

 紀代香が所属する部署では、一人だけを残して全員外へ出かけていた。
留守番役は、40代半ばぐらいで腹の出た中年男である。
その男は、しきりにハンカチで顔の汗を拭きながらスポーツ新聞を読んでいた。
そう、紀代香の部下の松井である。

 松井は、暇な電話番をしている間に、スポーツ新聞を読むのが好きであった。
特に、ポルノ記事が彼のお好みである。
紙面の隅々まで目を通しながら、自分の頭の中で上司である紀代香に対して淫らな事を繰り広げていく。

 『ああ見えてもベッドの上では、ヒイヒイ言ってるに決まっているぜ・・・』

 松井は、理想化した自分の姿で紀代香を責め立てた。
肉付きのいい彼女のヒップを両手で押さえながら、己の肉棒を容赦なくで突き立てる。
すると髪を振り乱して喘ぐ紀代香の姿が、脳裏に浮かぶ。

 『それか、逆に男をヒイヒイ言わせてるかも・・・』

 彼女が自分の股間の上に跨り、激しく腰を揺さぶる姿も捨て難い。
彼のその淫らな妄想が、股間のモノまでふくらませていた。

 「松井!!」
 いるはずのない紀代香の怒声が、彼の背後から叩き付けられた。
松井は、椅子から滑り落ちそうになりながら振り返った。

 「か、神村警視!?」

 自分の上司である紀代香が、凄まじい形相で向かってくる。
彼女は、怒っていた。
二日も続けて自分の仕事を邪魔されたからだ。
しかも紀代香にとって、一番楽しい情報収集の真っ最中にである。

 その紀代香の楽しい情報収集とは、風俗店が立ち並ぶ場所を一人で散策するのである。
色と欲が待ち構えているその場所では、当然のように彼女に声をかけてくる男が現われる。
声がかからない場合は、彼女の直感で怪しそうな男を選び、こちらから声をかける。

 エモノがかかると紀代香は、まず始めに人目に付かない路地裏へと誘い込む。
次に、自分の弾力のある胸を男の腕に押し当て、ムッチリとした白い内腿をスカートの裾から少し覗かせる。
そして「お金に困っている」「もっとお金を稼ぎたい」「白い薬がほしい」を男の雰囲気によってを使い分け、悩ましい美貌で迫るのだ。

 この手で落ちない男は、今まで一人もいなかった。
必ずと言っていいほど、彼女の仕掛けた巧みなワナにかかってしまうのだ。
そうなれば、後は彼女のモノである。
些細なきっかけから、売春、人身売買もしくは麻薬取り引きの情報を、上手く聞き出してしまうのだ。

 股間をギンギンに張り詰めている男は、紀代香を我がモノにするため簡単に口を開く。
ただ、中には途中でワナであることに気が付く賢い男もいる。
その場合は、力によって締め上げれば簡単に落とせるのだ。

 もし運良く、最後まで気が付かないとしても、彼女の鉄拳が急所に撃ち込まれ、その場に崩れ落ちてしまう。

 結局、この場合賢い男ほど損をして、鈍い男ほど紀代香の肉感を十分に楽しめるのだ。
しかし最近では、紀代香の顔も知れ渡りなかなかいいエモノがかかりにくくなっている。
そのような中で、ようやく苦労して見つけたエモノに迫ったときである。
胸ポケットに入れておいた携帯電話が、振るえ出した。
男は、その奇妙な振動で自分に迫る美人の正体に気が付き、自分の腕に絡み付いている彼女を振りほどくとその場から慌てて逃げ去ってしまった。

 予め電源をOFFにしておかなかった自分も悪いのだが、紀代香にとっては電話をかけてきた方を憎んでしまう。
彼女は、逃げ去る男を追いかけるのをやめ、「はい」と愛想の悪い声で電話に答えた。

 紀代香は、松井の横に立つと彼の机の上を大きな音を立てて殴りつけた。

 「いったい何よ! 署長から電話があったけど、いきなり「すぐ戻れ」って、何よ?」
 「はぁ・・・すいません」

 松井は、読んでいたスポーツ新聞で自分の股間の変化をさりげなく隠した。
仮に股間の変化を見つかったとしても恥ずかしくは無い。
それよりその事で女から軽蔑の目で見られるのが、男として許せないのだ。

 「すいませんじゃないわよ! それで、私を呼び戻した理由はいったい何よ?」
 「それが、少年課からなんですが、取り調べを手伝ってほしいと・・・」
 松井は、オドオドとした目で紀代香を見上げた。

紀代香は、無理矢理戻らされた理由を聞くと怒りを通り越して呆れ返ってしまった。

 「そ、それだけ? たったそれだけの理由で私を呼び戻したの?」
 「はぁ・・・」

 松井は、目の前に突き出ている紀代香の豊満なバストを凝視していた。
彼女の揺れ動く胸を、これほど近くで拝む事はそうざらにはない。
彼は、一度でいいからこのはちきれそうな紀代香の胸を、思う存分に揉みしだいてみたかった。

 「そんなことぐらい、他の連中にさせればいいじゃないの!」
 「いえ・・・それが、無理だったんです」
 「無理!? 大の大人が、ガキ一人を白状させられないの・・・情けない男ばっかり」

 紀代香は、連中の情けなさに尽く呆れ返った。
ヤクザまがいの男達でも、た易く捩じ上げてしまう彼女にとっては、信じられない話しである。
たかが20未満の少年一人に対して、親ほどの年の離れた大人が何も出来ないからだ。
彼女自身が警察に勤めるようになってこのような事は、初めてである。

 「それぐらい、そのガキの親でも呼べば済むでしょう!」
 「はぁ・・・それが、そいつから親の名前を聞いたとたんに・・・」

 今度は、彼女の平らな下腹部を見ていた。
男と違い盛り上がりのない、ツルリとした女の下腹部を。
松井は、スカート越しに彼女の下着を想像する。

 片手でスカートの裾をめくり上げ、パンストと下着を一気に引き下げる。
そして、黒い繁みを目で楽しみながら、紀代香の股の間に指を突っ込む。
彼の妄想は、果てしなく広がり始めた。

 「で、誰なの、その親の名前は?」
 「さぁ〜・・・私にも分かりません」

 松井は、ようやく自分の顔を上司の紀代香に向けた。
彼女の声から、多少怒りが引いている事を感じ取ったからだ。

 いつもの様に頼りない松井の返事を聞いた紀代香だが、今日は違った。
何か楽しい事が起こりそうな予感がする。
彼女の楽しい事とは、屈強な男達を己の力で締め上げていくことである。

 「分かったわ・・・じゃ、少年課にちょっと行ってくる」
 「はい、ありがとうございます!」

 急に機嫌が良くなり出した紀代香を見て、松井は立ち上がり頭を深々と下げた。

 紀代香には、粗方の予想がついていた。
少年課の連中は、その問題児の親の名前を耳にしたために何もできなくなったと。
とすると、その親はかなりの大物クラスである。
そう思うと彼女は、嬉しくなってきた。
久しぶりに一暴れできるチャンスが、巡ってきたのである。

 彼女は、用のなくなった松井に背を向け歩き始めた。

一刻も早く、その問題児に会ってみたい。
そして、親の名前を聞き出して...。

 紀代香は、自分の部署のフロアの出口で松井に指示を出す。

 「松井、留守番よろしく!」
 「いってらっしゃいませ!」

 松井は、明るく声をかけながらも、しっかりと紀代香の後ろ姿を目で追っていた。
キュッと引き締まっている、くびれたウエスト。
左右に揺れ動く丸く大きなヒップ。
スカートの裾から伸びる細く白い脚。
彼は、嘗めるような視線で見つめ続けていた。

 紀代香は、そんなさえない中年男の部下のいやらしい視線を全く相手にせず、これから始まる楽しい事に胸を躍らせていた。


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