ミズ・アメリカーナ:運命の逆転 いぬかみ訳
第十章 生(性)への葛藤 1 ブレンダは泣きたかった。小さな赤ん坊の様に丸く成っていたかった。しかし、リディアの為にも強くあらねば成らない。 全身精液だらけの哀れなリディアは傍らでシクシク泣いている。アシュリーと大親父は、車で二人をシュガータウンに連れて行き、ダニー・リッター・レジデンシャル・ホテルの前で首輪を着けたまま裸で二人を降ろしたのだ。 二人には、そのいかがわしいホテルに駆け込み、真直ぐダニーの所に向かう他は無かった。 「何から何迄、何て屈辱的なの!」 「他に方法はないわ。ダニーが家に入れてくれなかったら、私達夜が明けない内に売春の世界に引きずり込まれるわ」 ブレンダは嗄れた声で言った。ダニーに繰り返し犯される方が未だ少しは増しだった。少なくとも薄紙一枚で覆う様にだが、何とか自尊心を保つ事が出来る。 ブレンダはドアをノックし息を止めて待った。嫌悪感を感じるダニーだったが、彼が二人の運命を決める立場にあった。こんな事に成るとは思わなかった。 一分もしない内に勢い良くドアが開き、不機嫌そうなダニーの顔が二人を出迎えた。驚きの表情が浮かべたダニーは、メチャクチャに陵辱された二人の全身を見回してニヤリと笑った。 「ははあ、又もや権力者の失墜ってわけか!」ダニーは嬉しそうに言った。 「それで俺の所にのこのこ戻って来たらしいな。それが解ってりゃなあ」 「ダニーお願いよ、私達どこにも行く所がないの」そう言ったブレンダは、羞恥心と屈辱感で顔から火が出る様だった。そしてこの瞬間、自分が落ちぶれた事を心の底から自覚した。 「又、貴女と御一緒出来るかしら?」 「私達、良い娘でいるわ」リディアが小声で言った。 ダニーは暫く二人の様子を眺めていた。ブレンダは不安に駆られ始めた。ダニーが断るかも知れないと思った。 シュガー・タウンの街中に裸でいるのは売春婦への片道切符だった。どの売春業者も二人を手に入れ様と手ぐすね引いて待ち構えている。二人はシュガー・タウンの売春業者達を全員知っており、少なくとも二回は刑務所に送った事が有るのだ。こんな淫らなウジ虫どもの所有物に成るのはこの上ない恥辱と名声の失墜であり、自尊心が根底から崩れてしまう。 ブレンダは、恐ろしさに身体がガタガタ震え出した。自分に出来る事は何も無いのだ。 <ダニーに放り出され、売春業者の手で売春婦にされてしまうのだろうか> ブレンダの全身はガタガタと激しく振るえ、揺れ動く97Gsがダニーの眼を引いた。 「お前達が脅えるのは当然さ」ダニーは明らかに怒っている様だった。 「さっき、お前達が俺を見捨て、俺を馬鹿にして出て行った時の事は覚えてるぜ」 「私達、間違ってたわ、ダニー」 「身に滲みた様だな」ダニーが言った。そして二人をしばし見詰めた後、ニッコリし、 「良し、ここに戻る事を認めてやろう。だが、性的奉仕は当然として他に家賃を払ってもらう」 「家賃ですって?」ブレンダは唖然とした。 「だけど、私達お金持ってないのよ」 「仕事も」リディアが言った。 「それなら俺が仕事を世話してやる」ダニーが言った。 ダニーは部屋の中に戻り、二人に部屋に入る様手招きした。 「シャワーを浴びて、準備してくれ。早速今晩から通りの向こう側の店で働いてもらおう」 「仕事ってストリッパーのこと?」ブレンダは怖気だって言った。 「娼婦の方が良いのかい?」 「それは嫌よ」 「それじゃ、直ぐそのナニを洗い流すんだ」ダニーが言った。 二人はダニーの前を通り、渋々シャワー・ルームへ向かった。 「さっさと歩け、時は金なりだぞ」 ダニーは、二人にシャワーの浴び方をあれこれ指図して、身体に付着した精液を完全に洗い流させた。二人は、錠前を外す鍵が無かったので首輪を着けたままシャワーを浴びたが、ダニーは首輪姿が気に入った様だった。 二人が身体を洗い終わると、ダニーは二人を通りの向かい側に連れて行った。首輪とスティレットの靴だけしか身につけず、髪から水を滴らせている二人は衆目の関心を浴びた。 そこは“クレージー・セクシー”と言う名のストリップ・バーだった。小規模だったがどう見てもいかがわしい店だった。 ブレンダが入って行った時、店には12人のストリッパーと、薄暗い隅の方で客の腿の上に乗り身体を上下に揺すってる女が一人居た。 舞台で踊っているストリッパーは一人だけで、バーの所に四人、あとの女は男といちゃついていた。女達が実演しているラップ・ダンス(訳注:客の間近か、客の膝、腿の上に乗って演じるストリップ・ティーズ)の官能的な仕草に、ブレンダは身体が熱く、疼き始めていた。 <肉棒挿入の無いセックスじゃない!> ブレンダは唖然として思った。 「ダニーじゃないか!景気はどうだい?」バーテンが呼びかけた。そして後に続いているブレンダとリディアに眼を向けた。 「うわーっ!お前が言ってたお高く止まった金持ちの尻軽女ってこいつらの事かい? ブレンダ・ウェイドとリディア・ウィルスかい?」 バーテンが、良く知れ渡った二人の名前を口にすると、ストリップ関係者が動きを止めた。やかましいドンドン・ガンガンする音楽は続いていたが、ダンサーは踊りを止め、客は有名女性の転落した成れの果ての姿を呆然と見詰めた。 身を守る術も無い二人の美女は、そこに居るみすぼらしい身なりの男や女の全ての眼が自分達に向けられているのに唖然とした。 「そう、その例の二人さ、オーウェン。生のブレンダ・ウェイドだ」ダニーは言うと、後ろへ手を遣りブレンダの剥き出しの胸に手を当てた。そして胸を握り締めたり、弄ぶ様に上下に揺すって見せ観衆の眼を魅了した。 「さて一つ聞きたいんだが、この女を踊り子か何かに使ってもらえるかね?」 「バカ言うなよ、彼女のおっぱいは踊り子四人分はあるじゃないか」オーウェンは物欲しそうにブレンダの97Gsを見詰めながら言った。オーウェンが舌舐めずりすると、ブレンダは嫌悪感から腹部を捩った。 オーウェン・クリーバーは、塩の部分の方が多いもじゃもじゃのごま塩頭と無精髭を生やした好色爺だった。オーウェンの腹は大きく膨らみ、汚らしい格好でバー・カウンターの後ろにいた。ブレンダを眺め回す顔には数本の歯が欠けていた。そして、ブレンダの眼には、今夜セックスを強要される事に疑う余地がない様に思われた。 「彼女達、踊る事は出来るのか?」 「勿論、準備OKさ。客を喜ばせる事なら何でも喜んでするさ」ダニーが言うと、ブレンダとリディアに衝撃が走った。 その様子を見ていた男や女の間から大きな歓声が湧き上がった。 「その証拠が見たいのか?」 「そうだ」オーウェンは言うとバー・カウンターを叩いた。 「ここに上がってくれ、姉さん方、そして腕前を見せてくれ」 「ブレンダ」リディアが慌てた様に囁いた。 「私、出来ないわ」 「しなきゃ成らないのよ」ブレンダが言った。 「もし、しなかったら、一時間もしない内に売春業者に売られて娼婦にされちゃうわ」 そう言うと、ブレンダはバー・カウンターの上に上がり、皆の注目と喝采を浴びながらすっくと立った。 観衆の様子にブレンダは、その日のペントハウス・アパートで起こった事を思い出した。あの金持ちの悪党どもは、彼女が犯されている様子をここの観衆と同じ様に嫌らしい眼で眺めていた。 ブレンダの肉体は、来るべきセックスに備える様に反応し始めていた。股間が濡れて来るのが感じられ、下腹部の奥で何者かが蠢き始めると、秘所から官能的な熱が全身に広がり始めた。忽ち乳首が誇らしげに屹立した。 頭を朦朧とさせる様なドンドンと言うロック音楽が鳴り始めた。ストリッパーが淫らに踊るのにピッタリの音楽だった。 音楽が良く聞こえない程胸の鼓動が高まり始めた。ブレンダは、観衆を見ないで済む様眼を閉じ、両手を頭の上に上げた。そして顔を横に向けると、豊満な腰を廻す様に動かし始めた。 <自分は、未だ転落の度合いを選べるのよ> ブレンダは自分にそう言い聞かせた。 ブレンダは、観衆に向けて97Gsを揺さぶってみせ、息を呑む観衆に引き攣った様に微笑んだ。 <私、堕落の度合いを選べるのよ。私は依然として優越女性よ、そして自分の運命に関与出来るわ> ブレンダは高校、大学時代を回想した。その当時、週に二、三度そして週末はパーティに参加していた。そして男達を魅了し、勃起させようと踊りをしたものだった。自分のした事を思い出しながらブレンダは笑みを浮かべた。 「うわー!彼女の踊りを見ろよ!」オーウェンは、驚嘆した様に言った。 ごま塩頭の年取った客の一人が立ち上がるとブレンダに歩み寄った。そして1ドル札を縦に折りブレンダに差し出した。 ブレンダはそのチップを受け取り、暫くの間しげしげと見詰めた。それは性産業で稼いだ正に最初の1ドルだった。 「有り難う」ブレンダは力無く囁くと、新しい人生で体験した多くを忘れる為に踊りを再開した。 「君の番だ、金髪姉さん」オーウェンが言った。 「踊るか、さもなきゃ出てってもらおう」 ブレンダが踊るの恍惚として見ていたリディアは、ふと我に帰った。そして唾を飲み込むと、オーウェンに助けられてバー・カウンターの上に上がった。リディアは、オーウェンに胸やお尻を触られても無言だった。 前に踊ったブレンダの様にリディアも眼を閉じ、音楽に没頭する様に務めた。リディアは、大勢の男や女が見守る中で裸で踊る事に居たたまれなかった。 十代の若者として、リディアは素早く音楽に没頭した。間もなくリディアは、ブレンダがした様に観衆を喜ばせる為に官能的に踊り続けていた。 2 「自分が偉いと思ってやがるブレンダ・ウェイド、俺にラップ・ダンスをしてくれ!」舞台の下から汚れた身なりの男が嘲る様に言った。 ブレンダは、実際にその何処の馬の骨とも解らない男にラップ・ダンスをしてやった。 ブレンダが腰をくねらせ男の膨らんだ股間に秘所を擦り付けている間、男はタコが出来た手でブレンダの細いウェストをしっかり持っていた。男の顔の直ぐ近くにある97Gsが、頻繁に男の醜い顔を擦った。男は舌を出してブレンダの乳首を舐め回す。ブレンダは、黒髪の中に手を入れて首を仰け反らした。 嘗ては億万長者だった見事な肉体が情欲に燃え上がっていた。 ブレンダは、5時間に亘って休み無く客にラップ・ダンスのサービスをし続けていた。疲れ果て欲情していた。考えるのも嫌だったが、今夜ダニーと何度もセックスしなければ成らない事は解っていた。ダニーは今迄で最高の喜び体験するだろう、そしてブレンダは、最高のサービスをするのだ、ただ高まった性的緊張を解消する為に。 <性的緊張も性的欲求不満も、パワー・ベルトの威力を高めるのに使えるんだけど・・・>ブレンダは悔しかった。<それなのに自分は今、衣装やパワー・ベルトから遠く離れて、こんな下品で好色男達の前に無力で居る> 「ウウウウウムム」ブレンダは、客に乳首を吸われて呻き声を上げた。 デルタ・シティの規則によれば、客は踊り子の身体に触る事は許されていない。それで、ブレンダと客は規則を破っている事に成る。しかし、一時間程男達と格闘した後では、ブレンダもリディアも戦う意欲も失せ、今では身体に触れられるのを防ごうともしなかった。 右を見ると、もう一人のみすぼらしい身なりの男にリディアがラップ・ダンスをしているのが眼に入った。男は図々しくリディアの胸を手や舌そして口で手荒く弄んでいた。 リディアは両手で男を抱き、夢中に成って剥き出しの股間をズボンの膨らみに擦り付けていた。悪い事に、その間中ニッキと言う名の赤毛のストリッパーが情熱的な口付けをしていた。 突然リディアは、眼を見開き青い眼を吊り上げると、ストリッパーに口を抑えられながら悲鳴をあげた。 「ウウウウウウウウムムムムムググググググーーーーー!」 「あっ、まずい!」衝撃を受けたブレンダが大声を上げた。 二人してとうとうリディアの限界を超えさせたのだ。それは強烈な絶頂の様だった。今のリディアが、男にこんな風に扱われるのに耐え得る状態じゃない事はブレンダには解っていた。それで絶頂を強いられたのだ。リディアが完全に堕されるのに長くはかからないだろう。 ブレンダも全身がゾクゾクと疼き、絶頂を求めて燃え上がっていた。自分自身が完全に堕される迄、何れ程耐えられるのか不安だった。 <嗚呼自由の女神よ、私達、どう成ってしまったのでしょうか?> そのストリップコーナに居たいかがわしい男や女達はリディアの絶頂に大喜びだった。その当事者の男は、皆から背中や肩を叩かれ大いに祝福を受けていた。 ブレンダは、その男をが得意満面に彼女に眼を向けた時、キッっと睨み返した。 その時、ブレンダは乳首を抓られる痛みを感じた。 「イタッ!」ブレンダは大声を上げ、ふと、我に帰った。 「何すんのよ、このdickwad!」 (訳者弁解:“嫌悪すべき男”を意味しますが、訳者には適当な日本語が解りません。因みにdickは男性器の俗語、wadは詰め物に使う様な柔らかい塊又は紙の束や札束の意、隠語で精液の意味もあるらしい ) その言葉を口にしたブレンダは反省した。言葉も彼らのレベルに落ちている。五時間前なら“dickwad”の様な下品な言葉を使う事等、夢にも思わなかっただろう。それが今、そう言った下品な言葉を躊躇いも無く使う様に成っていた。 「皆さんそろそろ閉店時間です」オーウェンが呼びかけた。 ブレンダはホッと溜め息をついた。二人は、夜を通してストリッパーとしての初仕事を為し終えた。だが実際は、ストリップ・ダンスなど殆どせず、ラップ・ダンスの連続だった。もし選べるのなら、ブレンダは舞台でのストリップ・ダンスを選ぶだろう。シュガー・タウンでのラップ・ダンスは、嫌悪感を覚える様な男や女達から揉まれたり、撫でられたり、あるいは“偶然に”触られたりするのだ。 ブレンダとリディアは素早く遠くの隅へ移り、警戒しながら客達が帰って行くのを見ていた。 踊り子達は稼いだ金を全部集めて、テーブルに座っているオーウェンの元に集まった。驚いた事に、踊り子達は先ず“料金”として200ドルをオーウェンに支払い、更に残った金の半分をクラブの他の従業員の為に差し出さねば成らなかった。そのお金は一旦一纏めにし、クラブの所有者、バーテン、用心棒、呼び込み達の間で分配するのだ。クラブには従業員よりも多くのストリッパーがおり、それは従業員の方がストリッパーよりも多くの身入りがある事を意味していた。 「いくら稼いだ?」オーウェンがブレンダとリディアに聞いた。 「千二百ドルよ」ブレンダは現金を隠す術も無く正直に答えた。 「私は千ドル」リディアは、胸で分厚い札束を抑えながら言った。 「先ず二百ドルずつ払ってくれ」オーウェンが言った。 「このやり方公平じゃないわ」二百ドルを手渡しながらブレンダが言った。 「私もそう思うわ」リディアが言った。 「貴女達男はずるいわよ。私達は一生懸命働いたのよ。これじゃ泥棒と同じじゃない」 「それじゃ何か、お前さん達お二人さんが安全に踊って沢山金を稼いでいる間、俺達は働いてないって言うのかい?」 オーウェンが少しイラついた様に言った。 「お前さん達は、今晩、虐待され男に弄ばれたと思ってるかもしれねえが、もし用心棒達がお前さん達を守ってなかったらどう成っていたか想像してみてくれ」 「あんた方は輪姦され売春業者に売られてただろうよ」ダニーが口を挟んだ。 「全くその通りさ」オーウェンが言った。 「それじゃブレンダ、もう五百ドル出してもらおうか、それからリディア、君は四百ドルだ」 二人の手元には合わせて九百ドルが残った。 「それから、勿論、家賃の事があるぜ」ダニーが言った。 ダニーは残金の半分を取り上げ、最後に二人に残ったのは四百五十ドルだけだった。 二人のガッカリした様な様子を見て、他のストリッパー、用心棒その他の従業員が声を上げて笑い、そして去って行った。 「それだけありゃあ、お前さん達が明日の仕事の前に適当なストリップの衣装を揃えておくのに充分だろう」 ブレンダはハッとした。彼の言う通りだ。明日一番に服を買わねば成らないだろう。わずかな稼ぎの大半を使う事に成ろう。借金を返すのはしんどく成りそうだ。しかし、ダニーに稼ぎの半分を取られる事は避けられるだろう。今晩はダニーに取られたが、自分達の居所が見つかればダニーの分は切り捨てられる。 ダニーは立ち上がり伸びをするとオーウェンに向かってニヤッと笑いかけた。 「お前どっちが良いんだ?まあ、聞くまでもないかも知らんが」 「へー、面白い事聞くな。でもお前さんの言う通りさ、俺はうぬぼれやのブレンダにする」オーウェンが言った。 「それじゃ俺はリディアとだ」ダニーが言った。 その会話の意味を二人が解しかねている内に、ダニーはリディアの手を取っ手出口へ向かった。ブレンダは呆然とその様子を見詰めていた。二人を止めたかったが、そうしたら何処へ行けば良いのだろうか?二人は裸なのだ。行く所が無いのだ。 “守ってくれる”男無しでは、最初に出くわした売春業者に働かさせられるだろう。 リディアは大人しくダニーに付いて行った。残った二百ドルを握り締め、ブレンダの方に振り返りながら出口の向こうに姿を消した。 <ダニーはリディアを毎日違った方法で犯すんでしょうね> ブレンダは憂鬱な思いだった。 <一晩中ラップ・ダンスをした後では、リディアは凄く欲情しているから彼への奉仕も二倍に成るでしょうね。悲惨だわ> 「俺達だけに成った様だな」ブレンダの97Gsを見ながらオーウェンが言った。 「はい、店長」ブレンダはオーウェンのズボンの膨らみを見ながら言った。 オーウェンは椅子を廻し、膝の上を叩いた。 「ラップ・ダンスをしてくれ」オーウェンが言った。 「ダンスをしながら俺の服をゆっくり脱がしてくれ。そして気を入れてやってくれ」 オーウェンはリモコン装置を取り、テンポの遅い音楽をかけた。ブレンダはこわばった笑みを浮かべた。ブレンダにはこの行き着く先は解っていた。オーウェンに犯されるという。 ブレンダは両手を頭の上に上げると豊満な腰を揺らし始め、ゆっくりとオーウェンに近寄って行った。 オーウェンは、眼の前でゆらゆらと揺れ蠢く97Gsから眼を逸らそうとはしなかった。 「お前のおっぱい最高だぜ」 「それはどうも」 ブレンダはクラブオーナーに跨がり官能的に踊った。胸でオーウェンの顔を擦り、剥き出しの濡れた秘所で膨らんだ股間を擦り上げた。数分の後には、その晩の他の客と同様、彼のズボンに濡れた染みが出来た。 その股間での奉仕はブレンダにとって耐えられる限界に近かった。 「ああ、私、我慢出来ない」ブレンダは呟くと、大きな白い胸をオーウェンの醜い顔に押し付けた。 「誰かに、私の体内で燃え上がる炎を消してもらいたい・・・」 「その為のホースはここに有るぜ」オーウェンは、膨らみをブレンダの秘所に突き刺しながら言った。 「解ってる」ブレンダはオーウェンのシャツを引き裂いた。 ブレンダは、それが避けられないのなら出来るだけ速くそれを済ませたかった。それを済ませれば、彼は直に寝てしまうだろう。 「それを私にさせ様というのね。でもそれは違うわ」 ブレンダは上体を屈め、オーウェンの唇を彼女の赤い唇で優しく撫で回した。 「女はして欲しいの、解るでしょう。メチャクチャにして欲しいのよ」 オーウェンは興奮して震え始めた。ブレンダは、巨乳でオーウェンの顔中を擦り回しながらもじゃもじゃ頭を指で櫛の様にすいた。 オーウェンは、貪る様にブレンダの見事な胸を掴み、揉みしだき撫で回し、鼻と口を擦り付け、吸い上げた。 「ウウウウムムムム」ブレンダは呻いた。 「さあ、やって。私は貴方のものよ」 「畜生、もう我慢出来ねえ」オーウェンは叫ぶとズボンのジッパーを下ろした。異常な程太い20センチ程も有る肉棒が飛び出した。 「この上に乗るんだ!」 「はい!」ブレンダは大声で答えると、オーウェンのいきり立った肉棒を秘所の中に導き、その上に身体を沈めた。数秒もしない内にブレンダはボスの肉棒を体内に納めていた。 「ああああ、ウ、ウウム、女神様」 「おお、いいぞ、凄く具合がいい、それに締め付けて来る」オーウェンが唸った。 体内で快感が炸裂した。一日中大勢に廻され輪姦され、更に何時間もストリップを強いられた後では、さしものデルタ・シティの貞操を守る大黒柱だった彼女も呻き、唸り声を上げながら不道徳な商売を営む男の太い肉棒の上で上下に身を揺すって楽しんでいた。 「イェアアアアアアアアアアウウウウウウウウウ!」 ブレンダは絶頂寸前で叫び声を上げた。 「最高なのは誰だ?」オーウェンが大声で言った。 「貴方が一番よ!」 「もう一回言え」 「貴方が一番!」 そう言った時、ブレンダの肉体は後戻り出来ない一線を越えた。 山から転げ落ちて来た様な強烈なオーガズムが直撃した。 「アアアアアアアアグググーーーーー!おお、イイイイイイイイウウウウウウウウウ!アアアアアアアアアアアアア!」 「お前さんは全くもってA級の淫乱女なんだな」オーウェンは声を上げて笑った。 ブレンダは完全に当惑してオーウェンを見た。兎に角、最も強烈な絶頂だった。 「もう一回」ブレンダが囁いた。 「お願いだから」 「ああ、良いともさ」オーウェンが言った。 「それじゃ始めてくれ。最高の男が言う迄止めるんじゃないぞ」 「ああ、解りました。貴方は最高の男よ」ブレンダは唸る様に言うと、上体を上下に揺すり始めた。 3 「ああしまった」“クレージー・セクシー”の裏口からヨロヨロと出て来たブレンダが唸る様に言った。 「何時に仕事に戻れば良いのか聞いとくべきだったわ。昨晩は一睡もしてないし」 今は朝の九時半だった。 ブレンダはニンマリした。ストリップ・バーの所有者は御満悦だった。ブレンダの性の奉仕を気に入った様だ。それで明るい赤色のスパンデックス製ミニドレスを一着貰う事が出来た。それは股間をやっと隠す程の丈しか無く、締め付ける程キツく身体に密着して97Gsを高く誇らしげに持ち上げていた。ともあれ再び服を着れる気分は格別だった。 ブレンダは、オーラルセックスのし過ぎで赤く腫れ上がった唇を舐めた。お尻の穴も同じ様に成っていたが、秘所はそれ程でもなかった。正確に言えば、疼いてはいたのだがそれは官能的にという意味だった。 「私、満足する事が出来なく成りつつあるわ」ブレンダは眉をしかめて言った。 ブレンダは、ヴィーナス遺伝子の負の側面の事を思い出した。ブレンダもリディアもその遺伝子を持っている。マスクと衣装を着けたスーパー・ヒロインの多くはその遺伝子を持っている。その遺伝子を持つ者は、素晴らしく大きな胸を持ち、彫像の様な肉体を持っている。男達が憧れるその肉体は、信じ難い程の耐久力と回復力を持っており、スーパー・パワーを使う事を可能にしているのだ。 普通の女の肉体はスーパー・パワーを扱える程強靭ではないのである。 しかし負の側面もあり、ヴィーナス遺伝子は、性的刺激や“性的開発”に極めて感受性が高いのだ。 「嗚呼、私、随分開発されちゃったわ」ブレンダはそう言うと溜め息をついた。 小路に出たブレンダは左右を見た。大通りに出るにはどちらに行った方が近いのか思い出せなかった。だが、クレージー・セクシーはその区画の略中央に在り、どちらに行っても大差は無さそうだった。それでブレンダは右を選び小路を歩き始めた。 辺りは静まり返っていた。シュガー・タウンは夜の街だ。日中、特に早朝は活動が途絶える時間帯だった。ただ午前中には麻薬を買う金を稼ごうと徘徊する最低級の安娼婦の姿も見られた。 「この小路には見覚えがあるわ」ブレンダは眼を輝かせ笑みを浮かべた。 「三週間前、フラッグ・ガールと私はグリーン・スペクター、スペクター・ガールと一緒にこの小路で麻薬密売人のジェリー・ホッフェンドルフを捕まえたんだったわ。徹底的にやっつけてやった。その翌日には彼、よその街へ逃げて行ったんだっけ」 <あの頃は良かった。フェリシティに酷い目に遭わされる前は> 「以前私は名の有る存在だったのね」ブレンダは力無く言った。 「私には力があり、自分の運命に関与出来たし、世界を変える事も出来たんだわ」 「助けてー!」 女の声だった。恐怖に脅えた女の声だった。 ブレンダはハッとし、動悸が激しく成った。 「お願い、誰か助けてー!」 前の方から聞こえて来た。 ブレンダは何も考えず走り始めた。危険が待ち構えているかも知れない所に向かってまっしぐらに。最早スーパー・ヒロインではなくただのストリッパーである事を完全に忘れ、何かに突き動かされる様に。 前方から物音が聞こえて来た。直にそれが女の泣き声、続いて数人の男達の怒声である事が解った。 ブレンダが小路の角を曲がると、若い女が四人の男に取り囲まれているのが眼に入った。女は既に半分裸にされていた。その女が纏っている、中間管理職が着る様な灰色のウールのスーツから、彼女がシュガー・タウンの住人ではない事が知れた。 「止めなさい、悪党ども!」ブレンダはMs.アメリカーナの声を使って叫んだ。 男達は唖然としてブレンダを見詰め、そして笑い転げた。 「こっちへ来いよ、姉ちゃん」背の高いヒスパニック系の男が手招きをしながら呼びかけた。 黄土色の髪をした男は、暴れる黒髪の女を押さえ付けながらニンマリとした。他の三人が互いに少し距離を取ってブレンダに近付いて来た。 ブレンダは状況の変化に気付いて立ち止まった。 <嗚呼、まずい事をしたかも> ブレンダは、昨夜やっとの思いで稼いだお金の事を思い出した。 パワー・ベルト無しで、しかもこんな高いヒールの靴を履いていは、この男達から逃げる事は出来ないだろう。 <だけど戦って負かす事は出来ないのかしら?グリーン・スペクターやスーパークター・ガール、それにレディ・ミッドナイトとアズアー・エンジェルだってスーパー・パワーを持ってないのに上手くやってるんだから> そう考えたブレンダは戦う構えを見せた。 「おお、見てみなよ。彼女、カンフーの使い手と見えるぜ」ヒスパニック系の男がおちょくる様に言った。 「どんなスタイルのカンフーだい、ジェイミー? ‘ブルブルスリー・ショーフー’じゃねえのかい?」 「面白しれえ事言うぜ。だが俺にはむしろ、おっぱいの使い手に見えるがな」ジェイミーが言った。 「あの地球儀みたいにでっかいおっぱいを見てみろよ!」 「間違いなくおっぱいの化け物だ」普通の背丈のやせたアジア人の男が言った。 「良識市民のカンフーを試してみたら、dickwads」ブレンダが言った。 男達の顔から笑みが消え真剣な顔つきに成った。 「俺とレジーそれからワンが礼儀を教えてやるぜ、淫売」ジェイミーが言った。 「やっちまえ」 「礼儀を学ぶのはあんたよ!」ブレンダは叫ぶと、前に出てジェイミーの顎を蹴り上げた。 若い街のチンピラは飛び上がり、ブレンダの足元に激しく倒れた。他の二人が倒れた仲間を呆然と眺めている間に、ブレンダは気を緩めず左に転換し、ワンの腹に蹴りを見まい続いて喉に手刀を打ち込んだ。倒れ込んだワンが喉を抑えて呻いていると、もう一人のチンピラは向きを変えて逃げ出した。 「男らしく戻って来て戦ったらどうなの、チンピラ野郎!」 男達は尻尾を巻いて逃げて行った。女を捕まえていた男も、ブレンダに倒された二人の後を追って逃げ去った。 ブレンダはチンピラ達を無視して、泣いている哀れな女の元に駆け付けた。 「衣服を整えて」ブレンダは、注意深く辺りを見回しながら唸る様に言った。 ブレンダは、スーパー・パワーを持たないスーパー・ヒロイン達は、敵をやっつけるのに適切な道具や武器の類いを使っている事を今に成って思い出した。今ブレンダが持っているのは、ストリッパー用の靴、首輪それに窮屈なドレスだけだったのだ。 「貴方、何故こんな場所に来たの?麻薬のため?」 他の理由は考えられなかった。麻薬は週七日、一日24時間、いつでも買う事が出来る。この黒髪の女性は、ここでデートの相手を見つけ様とするには綺麗過ぎる。 「車がパンクしちゃって」 「ケータイは持って無いの?」 「ケータイは嫌いなの」 「一つは持つべきね」ブレンダは、急いでこの小路から出て行きながら言った。 「緊急時のために」 ブレンダは女を通りへ連れて行き、タクシーを見つけると運転手に20ドル札を手渡した。 「彼女をシュガー・タウンの外へ連れてって」 「何で娼婦が私を助けてくれるの?」黒髪の女が尋ねた。 ブレンダは顔をこわばらせた。 「私はストリッパーよ」ブレンダはキッパリと言った。 「娼婦じゃないわ」 「ご免なさい!」女がそう言い残すとタクシーは走り去って行った。 ブレンダは、走り去るタクシーに向かって鼻に皺を寄せて見せ、肩をすくめた。 ブレンダの美しい顔に満面の笑みが浮かんだ。 <リディアにこの事を言ってあげなきゃ!> 通の向こう側に、娼婦やストリッパー用の衣装を専門に売っている店が開いているのに気付き、ブレンダは胸の谷間の奥にしまい込んでいた札束に手を伸ばした。 諦める様に一つ溜め息をつくと、ブレンダはストリッパー用の服を買う為に通りを横切った。 |
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