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  ミズ・アメリカーナ:運命の逆転                             いぬかみ訳

第九章 光明の果て


 ブレンダは恥ずかしさに顔が紅潮した。ダニーはドアを開けたままにしてベッドの端に座りブレンダの横顔を見ていた。大きく拡げたダニーの脚の間に跪いたリディアは、絹の様な金髪と90Dsを揺らしながら首を上下に動かしていた。
< 電話を掛けるためにリディアにあんな事をさせて、私、まるで売春業者みたい> ブレンダは思った。
 恥ずかしい事だったが、リディアのダニーへの奉仕は必要だった。ダニーの小銭に頼るうんざりする生活から逃れる為には、ダニーに気付かれない様に電話を掛ける必要があったのだ。
 ダニーと生活を始めて九日が経っていた。二人がセックスの求めに応じる限りダニーは食と住まいを提供した。だが電話をかけるのは禁じられていた。それに衣服も買ってもらえなかった。
 二人はダニーのアパートで囚人同様の生活を送って行った。
 勿論、一か八かダニーのアパートを出てシュガー・タウンの真中の通りに(裸で)出て行く事は出来る。
<しかしそれは売春婦への片道切符に成る> とブレンダは考えていた。
<もし直接売春業者に捕まらなくても、二人を忌々しく思っているシュガー・タウンの誰かに捕まれば、間違いなく手近な売春業者に売られるだろう。嗚呼、男達はみんな、何れ程私達を犯しそして金儲の為に娼婦として働かせたいと願っている事か。シュガータウンの荒んだ住民達は、私達が転落し落ちぶれれば何週間も祝うだろう。シュガータウン全体が落ちぶれた二人を見て喜び嘲笑うだろう。そして噂は野火の様に市全域に広がり、ブレンダの敵だった者は彼女と一時を過ごす為に長い列を作るだろう>
 そう考えるとブレンダは気分が悪く成った。
「こんな事には耐えられない」ブレンダは受話器をそっと取り上げながら呟いた。
 九日の間にこの様な機会は無かった。ダニーは、何処へ行く時も、例え風呂へ入る時も買い物へ行く時でさえも、ブレンダに電話を使わせない様電話器を持って出かけるのだ。市内通話も許されなかった。ダニーは出来るだけ長く二人を性の慰みものとして置いておきたいのだろう。

 ブレンダは記憶している数少ない番号の一つに電話した。ミズ・アメリカーナが地方検事室の助けを必要とする時使う番号だった。
「アンジェラ・グリーアに繋いで頂けますか」ブレンダは応対に出た受付に言った。
「はい、アンジェラです」 
 少し経って地方検事補が電話に出た。
「アンジェラ、ブレンダ・ウェイドよ。今話せる?」
「まあ、ブレンダなの。貴方大丈夫?どうしてるの?」
 ブレンダの顔に笑みが浮かんだ。自分の事を本当に心配している人の声を聞いたのは久しぶりだった。
「本当は大丈夫じゃないのよ。フェリシティ・ドレークスに会社を盗まれたの」ブレンダが言った。
「彼女に何もかも全部取られたのよ」
「それは聞き捨て成らないわね」アンジェラが言った。
「だけど・・・全く不備は無い様ね。フェリシティの提出書類は、何の問題も不審な点も無く公認されてるわ」
 ブレンダに戦慄が走った。

<誰も気付かないの? 世界中の人は、百年に一度の酷い不正行為に眼を瞑るつもり?どうしたら皆に解ってもらえるのだろう?>

「アンジェラ、貴方なら理解出来るわよね、何十億ドルもの財産をあんな風に喜んで譲り渡す正気の人なんかいないって事が」
 ブレンダは、出来るだけ合理的かつ理性的に言う事にした。この機会の逃せば、何週間も誰かに電話をかける機会は訪れないかも知れなかったからだ。
「誓って本当の事を言うから良く聞いて。私、フェリシティを私の個人的アシスタントとして雇ったの。実際、彼女は本名じゃない別の名、フェリシティ・スィートウォータという名前で採用されたのよ。彼女、ビジネスウーマンとして素晴らしい手腕を発揮したわ。それで私は彼女により責任のある仕事を与えて来たの」
 ブレンダは話しを中断し、リディアが奉仕している口が立てる音、ダニーが漏らす快感の呻き声に耳を立てた。
「私、やらなきゃ成らない個人的な問題が幾つか有ったから、私の権限の多くを彼女に委譲しちゃったの。私、彼女を深く信頼してたのよ。それ迄の所彼女を信頼しない理由なんて無かったから」
 ブレンダは少し間を置き、意を決して言った。
「彼女私を裏切ったのよ、考えられる限り最悪のやり方で。酷いものよ、文字通り衣服を剥ぎ取り、私とリディアは売春業者やポルノグラファーヤパパラッチの群れの中に放り込まれたのよ。ウェイド邸の門の前で起こった惨状の映像は貴方も見たでしょう」
「何か予期しない盗難にあった事に、私は同意するわ。でも地方検事は同意しないのよ」アンジェラは申し訳無さそうに言った。
「彼、我々は忙しいんだ。億万長者の馬鹿女がしでかした事に構っている暇は無い、ってハッキリと言ったわ。尚悪い事に、金や力の有る貴方の友人達、賛同者それに仕事仲間達は誰も貴方が転落した事を気にも留めてないみたいなの。上流階級やビジネスの世界に身を置く者は、皆自分の欲望の事しか考えてないというのが真実ね。十年以上も貴方が管理・監督して来た所も、我々が思ってた程皆は喜んではいなかったって事が明らかに成ったわ」

 ブレンダは落胆した。もしアンジェラが正しいなら友人からの支援も得られそうもない。ブレンダは、地方検事が法の番人である事を期待していた。しかし初めから思っていた通り、彼は冷血で意地悪な悪党である事が明らかに成った。地方検事は、来るべき次の選挙において、ブレンダが対立候補を支援すると表明しを事を未だ根に持っているのだ。

「地方検事は既にフェリシティに会ってるの?」
 その事に思い至ったブレンダはゾッとして顔を歪めた。この二人が手を組めば、ブレンダに勝つ見込みは殆どなく成ってしまう。地方検事に対する印象はどうあれ、彼が優れた法律家であり他の誰よりも商法に精通している事は解っている。何しろ彼が法学校を卒業して最初に職を得たのがウェイド・エンタープライズなのだ。

「貴方達が家を追い出された翌日に会ってるわ。その後は毎日の様に会ってる」アンジェラが言った。
 ブレンダは背筋が寒く成った。
「フェリシティは次の選挙で彼を支持するらしいわね。多額の寄付をし、彼を支持するPAC(政治活動委員会)を発足させたわ」
「何て女なの」ブレンダは強い怒りが込み上げて来た。
「フェリシティは何時も一歩先を行ってるわ。勿論、今の私より資源が豊富だから仕方ないけど」

 長い沈黙が続いた。ブレンダは、前途が黒一色で塗りつぶされて行く様な気がした。フェリシティは余りにも巧妙だ。でも何処かにミスがある筈だ。完璧な人間等いないのだから。

「ブレンダ、私、正直に言うけど」 アンジェラが言った。
 ブレンダは肩を引き締め腹を据えた。アンジェラの声が語っている。彼女に都合の良いものでは無さそうだった。
「そう言う言い方はしないでくれる」
「良い話しじゃないかも知れないけど」
 アンジェラが言った。そして大きく息を吸ってから続けた。
「フェリシティは自分の立場を固めるため動き回ってるみたい。新しく得た財産を守るため最も優秀な弁護士を雇ったみたいよ。フェリシティが貴方を騙しと証言する証人でも見つけない限り、何も取り戻せそうも無いわ」
「一人いるわ」ブレンダが突然興奮した様に言った。
「リディアよ。リディア・ウィルス」
「貴方の被後見人の?」
「そう、彼女全てを見ているわ」
「フーム、そうは思えないけど」
「彼女、本当に全部見ていたのよ」ブレンダは言い張った。
「裁判で宣誓しても良いわ」
「そう言う問題じゃないのよ。リディアはこの件に近過ぎるのよ。貴方を支持すれば彼女には莫大な得があるから不適なのよ」アンジェラが言った。
「どんな陪審員も判事も彼女を信じるとは思えないわ。必要なのは貴方が会社を取り戻しても得の無い様な証人、あるいは何かフェリシティの落ち度を目撃した証人なのよ。フェリシティを企業横領罪で起訴するには、第三者の目撃証人が必要なのよ。それなら裁判に持ち込めるわ」
「そんな人に心当たりはないわ」ブレンダが言った。
「私が知る限り彼女は一人で仕事をしていたわ。リディア以外にサインする所を目撃した者はいないわ。私に代わって証言してくれる人はいそうもないわ」
「それじゃこの件は取り上げられないわね。そして貴方は全てを失った事に成るわ。正直に言って、もしフェリシティが金銭資産を残していたのなら、未だ全てを取り戻すチャンスは有るわ。最も凄腕の弁護士を雇えるから。でも最高の弁護士は全て既にフェリシティが雇ってるわ」アンジェラが言った。
「私、本当に本当に済まないと思ってるのよ、ブレンダ。でも私に出来る事は何もないのよ。私も地方検事に縛られてるのよ。貴方自身で頑張るしかないわ。私、貴方にとってもの凄く不愉快な世界に成るのを恐れてるの」

 突然、ダニーの大きな唸り声が聞こえた。それは彼がイキそうな事を意味していた。ダニーは悲惨な負け犬だった。ダニーは性行為の後、アパートの中をうろつく事くらいしかする事がない。もう直ぐここにやって来る。

「もう行かなきゃ」ブレンダは急いで言った。
「お願いだから、私を見捨てないって約束して」
 アンジェラは直には答えなかった。それだけの事でもブレンダにパニックに陥れる理由に成った。
<最も親しい友人さえも自分を見捨てるのだろうか?>
「私に出来る事が有るか考えるわ、ブレンダ。それ以上は約束出来ないけど。私、今の仕事を失う訳にはいかないのよ。貴方を支持するの今は人気がないの。だけど私、貴方を助ける機会を見つける様眼を光らせとく」
「有り難う」ブレンダは、ほんの少しの希望に感謝して言った。
「それじゃまたね」



 アンジェラ・グリーアは電話を置いて顔をしかめた。美しいアフリカ系アメリカ人の地方検事補は、抽き出しに入っている写真を全部広げて見た。三分の一は様々なスーパー・ヒロインと一緒に撮った写真だった。真実、全てのスーパー・ヒロインと彼女が一緒に写っている写真を持っていた、レディ・ミッドナイトと一緒の写真を除いてだが。それは有り得ない写真だった。彼女自身が秘密裏に赤紫色の衣装とマスクを付けたスーパー・ヒロインだったからだ。
 その他にもブレンダ・ウェイドや他のデルタ・シティを代表する人物と一緒の写真もあった。少なくとも市と市民の福祉に十分な関心を持つ人達だった。
 アンジェラは特別大事にしている写真の一枚を手に取った。それはブレンダ・ウェイドがレディ・ミッドナイトに、ほんの少しの人しか受賞した事がない特別賞を授与している写真だった。アンジェラはその写真を見て、ブレンダが市の為、犯罪との戦いの為、そして特にスーパー・ヒロインに対する貢献を思い出した。彼女はスーパー・ヒロイン達のナンバーワンサポーターだった。彼女は、レディ・ミッドナイト、Ms.アメリカーナあるいはグリーン・スペクターが独自に活動出来る様金銭的に支援して来た。
「私に出来る事はやるつもりよ」アンジェラは辞職を覚悟して溜め息をつき、そして言った。
「私に出来る事はやるわ」



 ダニーが近付いて来る足音を聞きつけたブレンダは受話器を置きテレビの音量を上げた。ダニーは無精髭を生やした不細工な顔に満足した様な笑みを浮かべていた。ダニーは金をケチるため週に一度しか髭を剃らないのだ。風呂も週に二度程しか入らない。
 ダニーは汚れた猿股パンツだけしか身に付けていなかった。突き出した毛むくじゃらの腹と細い両脚はみっともなくも丸出しだった。その全身毛むくじゃらの身体に呆れたのは一度や二度ではなかった。肉棒にすら陰毛がつながって毛が生えていた。
「全くいい思いをしたぜ」そう言ったダニーの身体は未だ赤みが差していた。
「リディアに肉棒を絞め殺されそうだったぜ」
 ブレンダは作り笑いをした。本当は、男の体臭や不潔な肉棒や球袋で息が詰まりそうだったのはリディアの方だっただろう。
 ダニーはブレンダを探る様に見た。一瞬、作り笑いを指摘するのかと思った。ダニーは、ブレンダが内心彼に嫌悪感を抱いてる事に気付いているのだろうか? それは両方正しかった。ブレンダは、ダニーが二人を犯すして喜ぶ背後には、二人が彼には過ぎた存在であり又彼を嫌悪していると彼が認識していると確信していた。ダニーはそんな二人を強制的に自分と変態的なセックスをさせる事を楽しんでいたのだ。
 二人がここに来て以来、彼らが試さなかった性技や体位は一つもなかった。この変態男はカーマ・スートラの本さえ買って来て参考にしたのだ。そして、バイアグラを処方してもらい八日間毎日射精し続けて来たのだ。ブレンダは、この陰険で不快な好色男との連日連夜に及ぶ性交渉を、何れ程我慢して来たか考える気も起こらなかった。

「お前達はずっとここに居られる訳じゃないって事は解ってるな」ダニーが言った。
「何ですって?」
 ブレンダが言った。不安感が高まって行く。彼は二人を追い出そうとしているか?
「私達を追い出す何て酷いじゃない。言われた事は何でもしたしずっと貴方に尽くして来たわ」
「いやそこだよ、ブレンダ」ダニーはクスクス笑いながら言った。
「俺はお前達をおっ放り出そうってんじゃないんだ。まだお前達二人との熱い生活を楽しんでるんだ」
 ダニーは間を置きブレンダの剥き出しの胸を眺め回した。
「そうじゃないんだ、だが、ダチ公の一人が困ってるんだ。奴は通りの向こう側でストリップクラブを経営してるんだが、良い踊り子が見つからねえんだ。実はな、今いる踊り子はババアか、いけ好かないか、ブスばかりだ」
「私達にストリッパーに成れって言うの?」
 ブレンダは信じられなというふうに言った。
「そうだ」 ダニーはニヤニヤしながら言った。
「良い稼ぎに成るぜ。それにお前達には借金が沢山あるしな」

 ブレンダは顔が熱く成った。今迄ずっと嫌悪し潰そうとしていた性商売の為に恥も外聞もなく公衆の面前に自分の肉体を曝して自己を貶める事など、考えるだけでも虫酸が走った。
 ダニーは、シュガータウンや他の赤線地域を一掃しようと彼女がどれほど熱心に働いて来たかを知っていた。彼は知らなかったが、ミズ・アメリカーナとしてもデルタ・シティを清浄化しようと大きな努力注いで来たのである。ブレンダ・ウェイドは公的な援助や金銭的援助をして来たのに対し、ミズ・アメリカーナは目的を達成させるのに必要な力を提供して来たのだ。その任務は果てしなく続き、不可能な事の様にも思われた。しかし、ブレンダ・ウェイドもミズ・アメリカーナも諦めてはいなかった。

「貴方、私が誰だか知ってるんでしょう」
 ブレンダは慎重に言った。心臓の鼓動は激しく喉も詰まった。
「ストリッパーなんてとんでもない。そんな事をよりによって私に薦める何て信じられないわ。私がストリッパーや娼婦の類いをどう見ているか誰でも知ってる事よ」
 ダニーは肩をすくめた。
「知ってるさ。だがお前さんはストリッパーの身体をしてる。それからは逃れらねえよ」 ダニーはウィンクをして言った。
「あのイカす小娘のリディアもな。それに、男を引っ掛けるかポルノに出るか以外に収入の当てがねえだろう」
 ダニーの眼が輝いた。
「そうだ、もしお前がポルノ制作に興味があるんなら紹介するぜ。奴さんお前を主役にして映画が撮れるんなら出演料は弾んでくれるぜ。それにお前やリディアのヌード写真を撮りたいっていうカメラマンも知ってる。俺の言う事の意味は解るよな」

「放っといて頂戴」ブレンダは毅然として言った。
 お金。ダニーはお金の話しをしている。それは、二人に働かせようとするのは、彼の“友人”が決して少なくない金額の見返りを支払うからだろう。ダニーに取ってセックスよりも好きなのが金だった。
「私は、私自身を貶めたりはしないわ・・・完全には」
「どうであれ」ダニーは眼をギョロリとさせて言った。
「さっき言った様に、お前さん達をずっと置いとく事は出来ねえ。セックスも良いが、一人暮らしも恋しく成って来たんだ。俺は女と生活した事がねえ、増してや二人とはな。お前ら二人と居るとストレスが溜まるんだ」
「ストレスが溜まるですって?」居間にいる二人に加わりながらリディアが言った。
「貴女、私達が居るとストレスが溜まるって言うの。私達を手足の様に使い、毎日、一日24時間ハイヒールだけで走り回らせ、 毎日何回もありとあらゆる病的で変態的なセックスをやらせて・・・」リディアが憤慨している事が顔の表情から明らかに見て取れた。
「それでいて、私達が居るとストレスが溜まるなんて良く言えるわね」

 ダニーはドアの所に歩いて行ってドアを開けた。二人は恐怖の表情を浮かべて身体をこわばらせた。
「このドアから出て行け」ダニーが言った。
「出て行け、じゃなかったら黙ってろ。俺は生きて行く為に働き、お前達にも必要な物は与えて来た。お前達は部屋代を払ってるんだ。それが高過ぎるってんなら、ドアが何処にあるか知ってるだろう」
 リディアは眼を伏せ、そして頷いた。
「そうだろうと思ったぜ」ダニーはドアを閉めようとした。

「誰か居ますか?」聞き覚えの有る男の声が聞こえた。
「ブレンダ、ここに居るのかい?」
「ティモシーだわ!」
 ブレンダは大声を上げて、飛び上がる様に立ち上がった。そして急いでドアに駆け寄った。巨大な胸が上下左右に揺れ動いた。
 ティモシーは呆れた様に口を開けてブレンダが走り寄って来るのを見詰めた。
「来てくれたのね!」
「フェリシティが盗まなかったブレンダのお金を見つけてくれたの?」リディアが期待を込めて言った。
「あー、そうじゃないんだ。しかし、君に会いたがっている古い友人を何人か見つけたんだ。多分君を助けてくれると思うよ」ティモシーが言った。
 ティモシーは上背があり黒髪で、顔立ちは並で頭は禿げ上がり濃い口ひげを生やしていた。眼は茶色で、良い生活からか腹が出始めていた。しかしスーツはあつらえたもので身体にぴったりと合い、金回りの良いビジネスマンといった風貌だった。

「もし興味が有るんなら、僕が彼らの所に連れて行って会わせてあげるよ。約束は出来ないけど」
 そしてティモシーは二人に箱を渡した。箱の中には服が入っていた。高価な物ではなかったが、デザイナーのラベルが付いた絹のドレスで、二人の体型を魅力的に見せる仕立てだった。他には何も無かった。ドレスの下に着る為の下着類も無かった。それで二人はブラもパンティも無しで出かけなければ成らない。
「私、ドレスだけでも行きたい」受け取ったピンクと赤のドレスを堪能しながらリディアが言った。
 ブレンダのドレスは黒いスカートとブラウスだった。
「着て見たら」

「おい、何があったんだ?」突然心配に成ったダニーが言った。
「おめえは一体誰なんだ?」
「彼は私の白馬に乗った騎士よ」ブレンダはニッコリして言った。
 ブレンダも、リディアの様にドレスを着始めた。
「ティモシー、こちらダニー・リッター。このホテルのマネージャーよ。ダニー、この方はティモシー・ウェインスコット。私の個人的ビジネス・マネージャー。子供の頃からの私の友人よ」
「小学校の五年生の時から一緒に学校に通っていました。それから大学も一緒でした」
 ティモシーはダニーと握手をしながら言った。

 ブレンダは、ドレスを何とか着れたのでホッとした。特に豊満な腰回りが少しきつめだったが不平を言うほどではない。

「いつお会い出来るの?」ブレンダが尋ねた。
「それから何処で? それからどんな人達なの?」
「あはっ、単刀直入な聞き方だね」ティモシーがニヤッと笑いながら言った。
「嘗てのブレンダが戻った。そうだな、今日の午後。そうすれば君は美容院に行って身だしなみを整える時間が有るだろう」
「美容院ですって?」ブレンダとリディアが声を合わせて言った。
「顔のメイクもやってもらえるの?」リディアが尋ねた。
「それからマニキュアやペディキュアは?」ブレンダが尋ねた。
「それにマッサージ、整髪それら全部さ」ティモシーが言った。

 ブレンダは蹴飛ばす様にして靴を脱ぐと、黒いストッキングとガーターベルトを取り、素早く身に着け靴を履いた。
 ブレンダは再び人間に戻った様な気がした。勿論、化粧は何もしていなかった。ダニーは、そんなものは必要ないと思っており、お金を出そうとしなかったからだ。しかし、美容院では化粧をしてくれるものと確信していた。
 美容師達が、ブレンダとリディアの容姿を高めてくれるだろう。

「準備出来たわ」ドレスを着終わるとブレンダが言った。
 ダニーは二人が出て行くのをただ口を開けて見ていた。
 ブレンダは、出がけにダニーに向かってウィンクをした。二人をストリップ・クラブに売ろうというダニーの計画がポシャった事を喜びながら。
「お幸せにね、ダニーちゃん」リディアが出がけに言った。
「バイバイ、ドスケベおじさん」



 大きな黒いリムジンに乗るのは良い気分だった。美容院はもっと心地よかった。以前だったらこんな満ち足りた気分に成る事が信じられなかっただろう。人間のに戻った様な気がした。勿論、きつ過ぎるドレスを除いての事だが。
 リディアのドレスも数サイズ小さく、胸を中に納めるのに苦労した程だった。スターに成りたいと必死の女優か女優志望の沢山の若い女の格好の様だった。

 二人を乗せたリムジンは、デルタ・シティの限られた人しか入居出来ないペントハウス・アパートの前で停車した。
「この人達は誰なの?」リディアが尋ねた。
 ブレンダはパパラッチかと思ったが、皆普通のスーツ姿でカメラも見当たらなかった。ティモシーは慌てた風も無く彼らを見ていた。
「ああ、気にする事は無いよ」ティモシーが言った。
「ポップ・シンガーか誰かがここの一つを購入したって聞いたけど」

 到着したリムジンの中に乗っている者を一目見ようと群がる群衆を門番が押し退けた。リムジンの窓は、外から中に居る者が見えない様に色が付いていてる。
 リムジンのドアが開き、ブレンダが、続いてリディアが降り立った。その後ろにティモシーが降り立った。

「ブレンダだ!ブレンダ・ウェイドだ!」一人の男が怒った様な声を上げブレンダの腕を掴んだ。
「いつに成ったら残金を払ってくれるんだ?」
「えーっ?」ブレンダは訳が解らなかった。
「二人を放っといてくれ!」ティモシーが叫んだ。
「どうか、道を開けて下さい」
「ウェイドさん、貴女のファースト・デルタ・シティ・ナショナル銀行の当座預金は、巨額の過剰引き落としに成っています」
 ブリーフケースを持った別の男が叫んだ。その男は、他の者より激しく怒っている様だった。
「もし今直ぐ金を用意出来ないなら、刑事訴訟を起こすぞ」
「刑事訴訟ですって? 盗まれたのは私の方よ」ブレンダが言った。
「その事は御存知でしょう?私は今それを正そうとしている最中よ」
「皆さん、ウェイドさんは、期限迄に全額支払いますよ」ティモシーが言った。
「ウェイドさんは、今困難な状態にあるだけです。逃げ隠れはしたしません。ご心配には及びません」
「刑務所に送ってやるぞ、ウェイド!」男は怒りに燃えた眼をして叫んだ。
「お前に留置権を設定して、お前とあの金髪娘を刑務所に送ってやる。絶対そうしてやるから覚えてろよ、ウェイド」

 ブレンダとリディアは、憎悪に満ちた毒の有る非難の声に愕然とした。言葉も無かった。
 ブレンダは、特に金銭に関する事で脅かされた事なぞ無かった。そこへ待ち伏せしていた血も涙も無い三人の銀行家が急襲したのだった。クレジットカード会社や、集まっている他の債権者も同様に脅威の対象だった。

「こんな事に成って申し訳ない」ティモシーは押し寄せる債権者を押しのけ、道を造りながら言った。
「どうやって彼らがここを嗅ぎ付けたか皆目見当が付かないよ」
「彼ら、飢えた野獣みたい」リディアが言った。
「狂ってるみたいだったわ」
「野獣より下劣よ」ブレンダはリディアを抱き締めて行った。

「さあて、君の友人達が上で待っているぞ」ティモシーが言った。明らかに浮かれていた。
 ティモシーの嬉しそうにはしゃぐ様子を見ると、心配して落ち込んではいられない。
「そこへ行ってパーティを始めようじゃないか」ティモシーは、眼をキラキラさせて両手を擦り合わせた。
「皆に合えば良いことが起きる。保証するよ」
「解ったわ。さあ、驚きそして感激しに行きましょう」ブレンダはリディアを暖かく抱き締めながら言った。
「私達が事情を良く説明したら、皆、フェリシティの頭をお盆に乗せてやろうと飛び出して行くでしょうね」

 十二階でエレベータを降りた時、二人は元気一杯だった。
 二人はドアの前で立ち止まり群衆によって乱された服装を正した。そして二人が頷くと、ティモシーはドア・ベルを鳴らした。

 ドアが開くと、社交界で見慣れた、しかし予想外の顔が有った。
「二人が到着したわ!」シャーリー・リンカーンがペントハウスの中の方向って呼びかけた。そして嬉しそうに緑の眼をキラキラ輝かせてブレンダとリディアをしげしげと見回した。
「そんな処に居いないで、どうぞお入んなさいな」

 ブレンダは躊躇った。シャーリーはどんな意味でも友人とは言えなかった。というより子供の頃からのライバルと言うべき存在だった。そして多くのライバルと同様、時には非常に厳しく争う事もあった。最近はシャーリーもブレンダに対し普通に接する様に成ったが、何故ブレンダを助けようとするのか、ブレンダにはその理由も意味も皆目検討がつかなかった。
 その時、トレバー・サンダースの姿を見留めた。彼とは数年来何度もビジネスを共にし、数百万ドル以上の利益を上げて来たビジネス仲間だった。彼がいるならと、ブレンダはリディアの手を取ってペントハウス・アパートに入って行った。

 その居間には約20人程の男と女がいた。その何人かにブレンダは愕然とした。例えば、アモンとアシュレー・ヴァンダーホルム夫妻だ。アモン・ヴァンダーホルムは、俗に“大親父”と呼ばれる州きっての大金持ちで、州の政治、とりわけデルタ・シティの政治に強い影響力を持っていた。
 選挙の際には“大親父”とアシュレーが、常にブレンダが支持する候補の対立候補を支持して来た。しかもアシュレーとブレンダは互いに強いライバル意識を抱いており、二人の間柄は文字通り犬猿の仲だった。
 そこに“大親父”とアシュレーがいる事は、面倒な事が起こる事を意味していた。ブレンダがここで助けを得る機会を見つければ、二人はそれを潰そうとする、と思われるからである。

 その部屋に居る者は全員カクテル・パーティに出席する様な華やかな装いをしていた。女性達は有名デザイナーによるドレスや靴を身に纏い、ダイヤ、ルビー、エメラルドその他貴重な宝石類で飾り立てていた。

「あ?ら、ブレンダ、お元気でいらっしゃる?」アシュレーは片方の眉を上げ馬鹿にした様に猫なで声で言った。
「ええ、おかげ様で」ブレンダはぶっきらぼうに言った。
「あら変わった服をお召しに成ってるのね」アシュレーはブレンダを近くで見ながら言った。
「スーパーでお買いに成ったの?」

 ブレンダは恥ずかしさで顔が真っ赤に成った。殴りつけたく成った。しかし、それでは皆の共感が得られなく成る。共感が得られなければ助けは得られない。ブレンダは歯を噛み締め屈辱に耐える他は無かった。

「知らないわ」ブレンダは、歯噛みしながら言った。
「ティモシーに聞いて」
「えーっ? それじゃ貴女、もう金持ちの男に服を買わせてるってわけ?」アシュレーが言った。
「何て滑稽なんでしょう」
 そう言うとアシュレーはブレンダに背を向け、醜く肥満した老齢の夫、“大親父”の方へ歩いて行った。
 ブレンダは部屋の中央に一人残された。その様子を暫くの間 “大親父”は豚の様な小さな眼で物欲しそうに見詰めていたが、やがて腰を上げヨタヨタと立ち去って行った。
 ブレンダは“大親父”が何処へ行ったか気にしなかった。 フランク・ゴールドスタインがやって来て、背後からブレンダのウェストを親しげに抱き締めたからだった。
「やあ、どうしてる、愛しの人?」フランクは、ブレンダの顔を見上げながら深みの有る声で尋ねた。
 フランクはブレンダよりも背が低く、160センチ程だった。頭も禿げ、ブレンダからはテカる頭が良く見えた。
「酷い扱いは受けていないんだろう?」
「“酷い扱い”」ブレンダは衝撃を受けて言葉を繰り返した。
<フェリシティがブレンダの財産を略奪した事をどう思っているのだろう? 一日中スパにいたとでも思ってるのかしら?>
「私・・・つまり、ここでお目にかかれて光栄よ、フランク。貴女いつも私の友人だったわね」
「勿論、そうだったさ」フランクはそう言うと、促す様にブレンダのお尻を叩いた。そしてお尻をギュッと握り締めた。
「それに今、困難な状況にいる君を助けたいと思ってるよ」

 ブレンダはそのまま身動きしなかった。本当はこの恩着せがましい豚野郎を引っ叩いてやりたかったが、それでは彼に背を向けさせてしまう。更に全員に背を向けさせる事に成るかも知れなかった。ブレンダは、自分に向けられた病的な気持を袖にする余裕は無かった。彼らは、デルタ・シティで彼女を助ける財力を持っているし、彼女の言う事に耳を傾けてくれるのは彼らだけなのだ。
 ブレンダは、この建物の入り口に群がっていた、怒り狂って叫ぶ債権者や銀行家の事を思い出すと心臓の鼓動が激しく成った。今日ここで、少なくとも一人は助力者を見つけなければ成らなかった。少なくとも銀行家達を満足させなければ成らない。それには借金を全額返済する必要が有った。
 ブレンダは思った。
<今は低級の弁護士を一人雇う余裕すら無い。裁判で争えば自分に勝ち目は無く刑務所に送られる事に成るだろう。リディアもだ。リディアを今夜間違った生活に戻すわけにはいかない>

 無理に笑みを浮かべたブレンダは、フランクの無礼な手を掴んだ。

 その間、シャーリーはリディアに近付いた。
「ハーイ」シャーリーが呼びかけた。シャーリーはリディアの肩の回りに腕を乗せ、左手の廊下の方を向かせた。
「ブレンダには皆さんとの大切なお仕事の話しがある様ね」
リディアが肩越しに振り返り探る様に見渡すと、ゴールドスタイン氏と低い声で話し始めているブレンダが眼に入った。
 リディアは顔をしかめた。自分が邪魔者だと言う事は解っていた。フランク・ゴールドスタインの様に、その部屋にいる人達の大部分は、若いリディアの眼から見れば年寄りだった。
 シャーリーの言う通り、ここは身を引くのが最善だった。それで、リディアはシャーリーに連れられて居間を離れ、寝室に向かって廊下を歩いて行った。

「ヴァンダーホルムさん!」リディアは驚いた。
 ベッドの縁に座ったヴァンダーホルムはパンツを穿いていなかった。リディアは眼を背けた。
「な、何を考えてるんです」
「貴女、ブレンダを助けたくないの?」シャーリーが尋ねた。
「も、勿論です。でも・・・」リディアは、二人の年上の大人を交互に見ながら言った。
「でも、何?」シャーリーが言った。
「ヴァンダーホルムさんは、助けるおつもりなのよ。適当な誘因が与えられればね」

「その誘因が無ければ、儂は助けるのを邪魔する方向に動くつもりじゃよ」“大親父”は、安物の小さ過ぎるドレスを着た若い肉体を眺め回しながら言った。そして自分が座っているベッドの横を叩いた。
「ここへ来るが良い、小娘。ここで儂と良いことをしようではないか」

 リディアは、予想だにしなかった展開に唖然とした。
 今年60歳を迎える“大親父”は太った身体に汗をかいていた。そしてリディアと良からぬ事をしようとしていた。一方、ブレンダも彼の援助が必要だった。
 もしリディアが“大親父”を満足させられなければ、二人は見捨てられブレンダもリディアも刑務所行きに成るだろう。
 リディアは赤い唇を舐め回しゆっくりと、政治、ビジネスにおけるブレンダの最も手強いライバルである “大親父”の方へ歩み寄り、隣へ座った。
 “大親父”はリディアを近くへ引き寄せると、手をリディアの胸に当てた。
 するとシャーリーは素早く服を脱ぎ捨て、ガーター・ベルト、ストッキングそれにハイヒールだけの姿でベッドに上がり、背後から二人に這い寄った。
 “大親父”とシャーリーは一緒に成って、ゆっくりと19歳の金髪美女の衣服を脱がせた。リディアは為されるがままだった。

 リディアは、ティモシーに嵌められた事に気付いた。二人の“古い友人達”は、落ちぶれた二人を犯そうと待ち構えていたのだ。しかしリディアは、その事に気付きながらも命令に従わねば成らなかった。彼らが二人を弄んだ後、本当に援助の手を差し伸べてくれる事を期待したからだった。

 リディアが赤いハイヒールだけの姿に成ると、シャーリーは黒革の犬首輪を取り出し、リディアの首に取り付けた。そして最後に“大親父”が仰向けに成ると、シャーリーはリディアをその肉棒の上に乗る様に導いた。

「アアアーーーー」
 “大親父”の肉棒の上に身を沈め、秘所が掻き広げられるのを感じたリディアが呻き声を上げた。
 シャーリーは、“大親父”の顔の上にリディアと向かい合う様に跨がり、“大親父”に秘所を舐めさせる体勢を取った。
 “大親父”が黒髪の美女の秘所に開始すると、シャーリーは前屈みにリディアに抱きつき、リディアの胸に自分の胸を押し付けた。そして、長い爪でリディアの滑らかな背中を撫でながらネットリとキスをした。
「ムムムムムム」
 リディアは呻き声を上げ、シャーリーとキスをしながら、身体と同じ様に肥満した “大親父” 肉棒の上でゆっくりと身体を上下させた。



 ブレンダは、リディアが困難な状況に陥った事に気付かなかった。彼女自身も困難な状況に直面していたのだ。

「おお!フランク、手が早いのね」ブレンダは年上の億万長者を叱った。
 フランクは宝石店チェーンを経営し、54歳で引退していた。
「少しの間で良いから仕事の話しが出来ないかしら?」

「何ですって?」戻って来ていたアシュレーが言った。
「ブレンダってつまらない人間ね。仕事の事ばっかしで楽しむ事を知らないんだから」
「そう言う点は改めなきゃいけないな」フランクが言った。
 フランクはブレンダの背中に手を当て、バーの方へ移動する様促した。バーへ向かいながらブレンダは薄青の眼を見開いた。
<フランクは何を考えているのだろう?>
 ブレンダは息苦しさを感じた。下腹部に何かが蠢く様な感覚が湧き上がり股間が疼き始めた。
 アシュレーが二人の背後にピッタリと付いて来ていた。彼女の怪しい存在が、藁をも掴みたい思いのブレンダに暗い影を投げかけている。
 ブレンダは今置かれている困難さを充分以上理解していた。
 ダニーとの九日間の性体験、朝だけでも三回交わるという体験でブレンダの性的リビドーはすっかり狂わされていた。
 ブレンダの豊満な肉体は、性行為の可能性を想像するだけで反応していた。尚悪い事に、ダニーに会った二日後にはそれを制御出来なく成っていた。
 バーの背後ではティモシーが飲み物の準備をしていた。
「何が飲みたい?」
 ブレンダはティモシーを見た。ティモシーは物欲しそうな眼でブレンダの身体を見回していた。
 部屋を見回すと、皆、獲物に襲いかかろうとする肉食獣の様な眼でブレンダを見ている。ブレンダは激しい目眩に襲われ身体が崩れ落ちそうに成った。しかし何とか踏み止まり、彼女をスーパー・ヒロインたらしめている精神基盤を取り戻した。屈しようとする肉体に対抗するため、溜まりに溜まった欲求不満と怒りの気持を呼び覚ましてティモシーを睨み付けた。
「あんたが仕組んだのね」ブレンダが言った。
 ブレンダは事前にもっと良く確かめるべきだった。もしブレンダにもう少し心の余裕があれば、誰が、何の為に、というより詳細な情報を求めただろう。ティモシーが裏切った事を知るのと同様に、自分自身の落ち度を認める事は苦い薬を飲む様なものだった。
「情けない悪党野郎ね」

「シュガー・タウンの淫らで小汚い不心得者に嬲られる位なら、私達に嬲られる方が益しってもんじゃない?」
 背後から耳元に語りかけるアシュレーの声がした。
 背中にアシュレーの大きな張りの有る胸を押し付けられたブレンダは、ハッと息を呑んだ。憎むべきライバルが付けている香水の香りが鼻をついた。
「私、あんたを引っぱり込んだ低俗男ダニーの写真を見たわ。嗚呼、あんないけ好かないチビ男と寝る位なら、私死んだ方が増だわ。だけどあんたは上手くやってるみたいね」
 アシュレーは、ブレンダの体側に沿って指を上下させ、そして巨大な乳房に手を廻すと強く握り込んだ。
「女は、その女に相応しい事をしなきゃ成らない。そうだったわね、Miss 超フェミニスト?」
 アシュレーの無礼な手を払い除けたブレンダは顔面が紅潮するのを感じた。
 アシュレーがしている事に気付いた者がいるのだろうか? より正確に言えば、誰に対してアシュレーが無礼な事をしているのかを?
 そして、アシュレーの話しに出た写真とはどんなものなのか?ブレンダも一緒に写っているのだろうか?その写真の中では、どんな恥辱的な体勢なのだろうか?
 ブレンダは両手をバー・カウンターに乗せ、数回深呼吸をした。しかし激しい心臓の鼓動は治まらなかった。全身から汗が噴き出し、下腹部の蠢きは激しさを増し、疼く秘所が熱く熱を帯びて来た。

「紳士の皆さん聞いて下さい。私は偽ってここに連れて来られたんです」ブレンダは歯を喰いしばって言った。
 ここにいる変態者達の嬲りものに等成りたくなかった。ブレンダは依然として誇りを維持していた。彼女の輝かしい経歴は、今のところ一寸曇っているが近いうちに再び輝かせるつもりだ。
「私はご招待をこれ以上は少しも評価出来ません。私は、貴女方の病的な幻想に付き合う事を拒否します」
「あんたの拒否を私達は拒否するわ」アシュレーがブレンダの耳元で言った。

 気付いた時にはティモシーに両手首を掴まれていた。ブレンダは強く引っ張ったが、ティモシーの力は強かった。
 ブレンダはティモシーの力の強さと断固たる態度に驚いた。常ずねティモシーは男としては弱く実行力に欠けていると思っていたからだった。

「放して・・よ・・」もがきながらブレンダが言った。
 アシュレーがブレンダの右胸に手を当て、フランクの冷たい手が左腿を滑り上がってスカートの中へ入って行った。
「何するの、私は嫌(no)と言った筈よ!」
「あんたはho(俗語で淫売の意)と言ったんじゃないの?」アシュレーが言うと全員が声を上げて笑った。

 ブレンダの背後に男達が集まって来た。男達の探る様な手がアシュレーとフランクの手に加わった。誰かの手がブレンダの秘唇を弄り始めると、恥ずかしくも快感の波がブレンダの全身に伝わり、動物の唸り声の様な喘ぎがブレンダの赤い口から漏れ始めた。
 瞬く間にジッパーが下ろされスカートが引き落とされると、その下に何も着けていない事を曝した。続いてブラウスが引き剥がされ、再び、ガーター・ベルトとストッキングそしてハイヒールだけの姿にさせられた。

「嗚呼女神よ、これはあんまりです」ブレンダは唸る様に言った。
 そして頭をを仰け反らせて赤い唇を少し開き激しく喘ぎ始めた。何か・・・何かの力を呼び覚まそうと眼を閉じた。何でも良かった。道徳心、自尊心あるいはずっと保って来た強さの欠片でも良かった。
 しかし自分自身に対する思いが、フェリシティにそしてダニーによって完膚なきまでに散々踏みにじられて以来、ブレンダの精神は自分に対し自信が持てなく成っていた。こんな事は且つて無かった事だった。
 快楽を求める身体の自然な要求に、揺らいだ精神作用が加わり、ブレンダの肉体は瞬く内に思いに反して反応する様に成っていた。
 快楽こそ彼女の忌避するものだった。そして急所とも言える弱点だった。
 忽ちブレンダは喘ぎ、呻き、唸り声を上げ始めた。彼女を取り囲む欲情した様な顔つきの者達を見ると、長時間に亘り、この者達に次々と廻される事に成る事が想像出来た。そして彼女の肉体はそれを求めていた。
 ボロボロに成った誇りは、それでも奥底から怒りの叫びを上げていたが、どうにも成らなかった。

 建物の前に居たあの恐ろしい銀行家や債権者達の記憶が甦って来た。今ここから出て行けば、彼らに捕まりそのまま警察へ引き渡され、手ぐすね引いて待っている地方検事に起訴されるだろう。
 ブレンダは、この部屋に居る者達からの金銭的支援無しに、怒り狂った銀行家達のいる建物の外へは出て行けないのだ。そしてここに居る者達は、見返り無しに支援する事等有り得ないのだ。彼らに肉体を捧げても支援が得られる保証はない。しかしそのチャンスに掛ける他は無かった。

「一度に全員は無理よ」ブレンダが諦めた様に言った。
 アシュレーが勝ち誇った様に声を上げて笑うと、屈辱に顔が火照った。
「どうか、順番に面倒を見て上げるから。でも私、貴女達から受ける援助の保証が欲しいの」
「あんたが我々の面倒を見てくれれば我々もあんたの面倒を見るよ」フランクが言った。
 ブレンダは黙って頷いた。息が詰まって上手く声が出なかった。
 アシュレーが曵き綱が付いた首輪を持って近付いて来た。部屋に居る者全員は後に下がってアシュレーに道を譲ると、面白い見せ物を見る様に眺めていた。
 ブレンダはお腹の中心に何か蠢くものが涌き、それが熱に変わると膝から力が抜けた。
 皆が期待しているのは、ブレンダが最大の敵の軍門に下り、考え得る最も屈辱的な仕打ちを受ける場面だった。
「お・お願いだから・・・止めさせて」ブレンダは、周囲の者の救援と温情を求めて哀願した。
 アシュレーに求めるよりは益しだと解っていたからだった。だが、嘗ての友人や協力者の中にその様な者は居なかった。
「こんなの嫌よ」
「Kneel(跪け)そして降伏するのよ、ブレンダ」アシュレーが命令した。
「Kneel and submit to Ashley(跪いてアシュレーに降伏しろ)」ティモシーがピシッと言った。
「さもないと、裸で外に放り出すぞ。そう成ると、まず間違いなく猥褻物陳列罪で逮捕されるな」
「あんた達、みんなけだものよ」
 ブレンダは、薄青の眼を光らせ悲鳴の様な声で言うと、アシュレー・ヴァンダーホルムの前にゆっくりと跪いた。
 心臓の鼓動は激しく成り、顔は恥辱で真っ赤に成った。そして唇を一舐めしてアシュレーを見上げた。
「私、こ・こう・・・私、貴女に降伏します」
「良し。良く言ったわ、ブレンダ」アシュレーは得意げに言うと、ブレンダの顎の先端を手で軽く叩き、
「顎を上げなさい、slut」
 ブレンダは高く顎を上げ、上品な長い首を晒した。
 ティモシーが加わり、首の様子が皆から良く見える様に、ブレンダの絹の様な長い黒髪を持ち上げた。
 アシュレーは、銀のスタッドの付いた黒革の奴隷用首輪をブレンダの首に巻き付け留め金を掛けた。そして留め金に小さな銀色の錠前を取り付け、首輪を取り外せない様にした。

「私の靴にキスをしなさい」アシュレーが命じた。
 ブレンダはその命令を予期していかの様に床に手をつき四つん這いに成った。首輪から上方に伸びる黒い革製の曵き綱の端を、アシュレーのマニキュアの施してある手がしっかりと握っていた。
 ブレンダは赤い唇を、有名デザイナーの手による赤い革製の靴に押し付けた。暫くキスを続けた後身体を起こし、次の屈辱的な命令を待った。
「おや、おや、あのダニー・リッターとか言う小汚いブタ男によって、ブレンダは自尊心をすっかり壊されちゃったらしいわねえ」アシュレーは、声を上げて笑いながら言った。
「ご覧に成ったでしょう、こんなに大人しく命令に従う彼女を」
「何れ程大人しく犯されるのか確かめ様じゃないか」フランクが言った。
「ブレンダ、私達と乱れ狂い、びしょ濡れに成る覚悟はいいわね」アシュレーが言った。
「は、はい」
「はい、それから何?」
「はい・・・女御主人様」
「返事の仕方も良く成ったわね」アシュレーが言った。

 アシュレーは曵き綱を引っ張りブレンダを立たせた。そしてブレンダの97Gを手で包む様に持ち、暖かく滑らかな肌を楽しみながら愛撫し始めた。
「確かに息を呑む程綺麗だわ、ブレンダ。あんたもの凄く美しいわ、そしてその美しさがあんたを完全に悪徳の世界に堕すの。それが私達にとってはもの凄く楽しい訳だけど」

 ブレンダは、部屋の反対側に置いてある肘掛けの無い椅子の所に連れて行かれた。
 フランクはシャツを脱ぎそしてズボンを脱いで椅子に座った。
 ブレンダは、アシュレーの指示でフランクの両脚の間に跪き、半立ちの肉棒を扱き始めた。数秒もしない内に、肉棒はいきり立った。
「フランク、貴女が私にこんな事をさせる何て信じられないわ」 ブレンダが嗄れた声で言った。
 ブレンダはフランクの肉棒を扱きながら両脚の間の奥へと移動して行った。そして濡れたピンク色の舌で唇を舐め、ブレンダはフランクを見詰めた。フランクが、何らかの罪の意識を感じてこれを中止し、罪を軽減するため彼女を援助する事を期待していた。
 しかしそうは成らなかった。フランクはブレンダの顔が肉棒に近付き、開いた唇が肉棒に押し当てられて行くのを嫌らしい眼で見詰めていた。

「あーあー、セクシーなこと」アシュレーが満足げに言った。そしてブレンダの後頭部をそっと押した。フランクの肉棒がブレンダの唇に侵入して行く。カリのある頭が口中へ消えると、アシュレーは満面に笑みを湛え、太い肉棒が憎むべき敵の口の中へ滑り込んで行く様を見詰めていた。
「さあ、ブレンダ、それを吸い上げるのよ。それが大好きだという風に、情熱的且つ美しくね」
「ムムムムムム」ブレンダは、口一杯に含んだフランクの肉棒を味わいながら眼を閉じ呻き声を上げた。
 オーラル・セックスをしていると、ブレンダ自身の奥深くに有る何かが呼び覚まされて来た。最も求めているものであり且つ抑圧する必要が有るもの、彼女をスーパー・ヒロインたらしめるヴィーナス遺伝子が持つ“生殖と豊穣”の側面だった。
「ムムムムムム」
ズズズルーッ、グチュ、グチュッ、ズズズズーーーールッ
「フムムムムム」

 ブレンダは、暫くの間頭を小刻みに前後に動かした後、肉棒の側面を舐め上げ、反対側を舐め下げた。そして繊細な指で睾丸を撫で、毛深い袋を赤い爪でそっと掻いた。
 フランクは、ブレンダの黒髪の中に手を入れて身悶えた。
 気持よかった。とても気持いい。味、匂い・・・全てがブレンダを絶頂へと高めて行く。ブレンダはそれに抵抗しなかった。そして肉体が求めるままにしていた。

「彼女ってこんな女だったんだ!」ティモシーが言った。
「彼女、世間には、無理して性には関心が無いっていう顔をしてるけど、本当は淫乱なんだって私がいつも言ってるでしょう」アシュレーが言った。
「ムムムム」ブレンダが言える事は呻く事だけだった。
 ブレンダは、皆が性的に満足した後、約束通り彼女に金銭的な援助を申し出る最も可能性の高いのはフランクだと信じていた。それでブレンダは、この中年の億万長者のビジネスマンを喜ばせようと懸命に励んだ。
 ブレンダは、ダニー・リッターと過ごした九日間の経験を生かし、真剣にフランクの肉棒と玉を舐め上げ吸い上げた。
 忽ちフランクは身悶え、飛び跳ね、喘ぎ始めた。
「ムムム」
 フランクの肉棒を舐め上げ吸い上げているうちに、ブレンダの肉体も意に反して反応し始めていた。秘所は嘗て無い程熱く疼いていた。官能の熱が全身をとろかし、息をするのも困難に成っていた。
 その変化に最初に気付いたのはアシュレーだった。そして熱心に奉仕するブレンダの乳首が固く屹立しているとちゃかすのだった。

「私の上に乗ってくれないか」フランクが嗄れた声で言った。
「あんたの秘所を犯したいんでな。ブレンダ、あんたを一目見て以来、ずっとあんたを犯したいと思ってたんだ」
「貴女の為なら何でもするわ、フランク」ブレンダは、フランクの肉棒の先端に優しくキスをし、フランクを見上げて言った。
 それを聞いたフランクの顔が喜びに輝いた。
「貴女が後で私を大事に扱ってくれるのと同じ位私も貴女を大事に扱うつもりよ」
 ブレンダは、97Gsでフランクの顔を擦り上げながら優雅な動きで立ち上がった。ブレンダはフランクの膝に跨がり、肉棒を掴むと直接秘所の中に導いた。そして肉棒が埋め込まれると、体重をかけ根本迄滑り込ませた。
「アアア・・・アアアーーー」肉棒を滑り込ませながらブレンダは呻き声を上げた。
 フランクの肉棒が埋め込まれるや否や、過去九日間の内に身に滲み込んだ恍惚とする様な官能の熱が全身に迸り、ブレンダを絶頂間近に迄押し上げた。
「ああ、とてもいい気持」
 左横にティモシーが歩み寄りズボンを下ろした。肉棒がブレンダ目掛けて跳ね上がった。ブレンダの喉がキュンと引き締まった。ブレンダはその肉棒を口に、そして秘所にも含みたかった。
 何も考えず、ブレンダはその方へ身体を向け、手を伸ばして肉棒を掴むと、真直ぐに口の中へ導いた。
「おお、やった!」ティモシーが大声を上げた。
「この日を夢見て来たんだ!」
 ブレンダは、フランクの肉棒の上で身体を上下に揺すりながら、熱心にティモシーの肉棒を啜った。肉棒の上に乗られているフランクは、ブレンダの巨乳を楽しんでいた。舌で舐め、キスし乳首に吸い付きそして巨大な乳房を揉みほぐした。
 間もなくブレンダは瀬戸際に追い詰められたが、それに抗すれば抗する程絶頂も大きく成る事を知っていた。
「これは・・・さ・・・最高だ」フランクが喘ぎながら言った。
 ブレンダは、フランクも自分と同じ様な状況にある事を察した。彼の絶頂への抵抗を早く終らせようと、フランクの顔を巨乳の間に引き込み、両側から胸を押し付けた。
「アアア!」フランクは大声を上げ、嘗てのビジネス・パートナーの体内に精を放った。
 フランクの絶頂に刺激され、ティモシーも、ブレンダの舌に精を放った。頬を膨らませたブレンダはティモシーが放った精の量が多いのに驚いた。既にダニーによって訓練されていたブレンダは、何とかティモシーの精液を呑込んだが、それが彼女自身の性に対する欲動の制御を失わさせた。 抑制を失ったブレンダは、忽ち一線を越え、止めどの無い絶頂に次ぐ絶頂へ突入した。
「嗚呼!・・・・アアアアーーー!」未だティモシーの肉棒を口に含みながらブレンダは叫び声を上げた。
「アアアアアアアアアウウウウウウウウウーーーーー!」

「今の様子見た?」アシュレーが言った。
「何て浅ましいんでしょう!全く見境の無い淫売なんだから」見ていたもの全員が声を上げて笑った。
「彼女、文字通りフランクに売春行為をしたのよ。だって彼のお金が欲しいからセックスして上げるって言ったんですからね」
 ブレンダはアシュレーを無視し、ティモシーの肉棒を舐め上げ、吸い上げそれからフランクの肉棒を綺麗に舐め取るのに忙しかった。

「次の方」アシュレーが言った。
 ブレンダは、アーネスト・サマーセットとジェイソン・エドワーズに向かって微笑みかけた。
 アーネストは、ウェイド・インダストリーズの前の副社長で、一年前ブレンダが退職させた者だった。そしてジェイソンはパーティで知り合った億万長者の証券取り引き業者だった。 ジェイソンは47歳くらいで、アーネストは実際は62歳だが、退職を強いられて老け込み今は75歳くらいに見えた。
「二人が俎板に上がったみたいね」アシュレーが言った。
「しゃがみなさい、ブレンダ」
 ブレンダは二人の男の間にしゃがみ込んだ。二人からはブレンダの胸の谷間が丸見えに成った。二人の男の眼にはただ情欲に燃え、ブレンダの胸しか興味ない様だった。
「二人を同時にもてなすのよ」アシュレーが言った。
「解りました、女御主人アシュレー様」
 ブレンダは、先ずジェイソンの次にアーネストのズボンのジッパーを下ろし、二人の肉棒を引き出した。そしてジェイソンの肉棒を手で扱きながらアーネストの肉棒を啜り始めた。
 数分後に交代し、ブレンダはアーネストの肉棒を扱きながらジェイソンの肉棒を啜った。
 ブレンダは、二人を吸い上げ、扱いて果てさせると辺りを見回した。長い一日、恐らく夜に成りそうな事を悟らざるを得なかった。



 リディアは、ベッドで年寄りの男を喜ばせるのは簡単だと思った。それが正しいかを確かめ様とする程熱心ではなかった。“大親父”をイカせるのには、あらゆる手を使って45分程掛かった。それに引き換え、シャーリーを性的満足させるのは比較的簡単だった。

 “大親父”の為に、リディアがシャーリーとレズビアン・セックスショーをしていると、男達が次々とリディアを“訪問”する為に戻って来た。フランク・ゴールドスタイン、裏切り者のティモシーそして陰湿なアーネスト・サマーセットは、過去8時間にリディアを犯した男の単なる一部でしかなかった。全員がブレンダとの不道徳的な逢瀬を終えたばかりだった。
 そして夜に成り、全ての男と女がリディアを犯し終えると、リディアは寝室から居間に連れ戻された。

 居間に戻ったリディアが眼にしたのは、両脚を大きく開き立ちはだかるアシュレーの脚元に、奴隷首輪を着けられたブレンダ跪いている姿だった。
 ブレンダは、アシュレーに曵き綱を握られて金色の股間に顔を埋め、大きな啜る音を立てて最も憎むべきライバルに奉仕していた。
 やがてアシュレーが反対側に向きを変えると、リディアは信じ難い光景を眼にして愕然とした。
 リディアが尊敬し目標として来たヒロインが、アシュレーのスティレット・ヒールからお尻にかけて露に成っている肌を、隅から隅迄丁寧に舐め上げて行ったのだ。そして、
「フレンチ・キス」アシュレーが命令を発すると、
 ブレンダは、豊満なお尻の肉を掻き拡げてその間に顔を埋め、アシュレーの肛門にキスをした。
 やがて事態は更に悪く成った。
「ブレンダ、今のキス良かったわよ」アシュレーが言った。
「それじゃ、舌で私のお尻の穴に奉仕して頂戴。穴の中に刺し込んで欲しいわね」
「解りました、女御主人様」ブレンダは気落ちした声で言った。
 ブレンダは、再びアシュレーのすべすべのお尻の肉を掻き拡げ、熱く濡れた舌をきつく締まった穴に押し付けた。アシュレーが締まりを緩めた所を見計らって更に強く押し付けた。
 ブレンダの舌が肛門の中に侵入すると、アシュレーが呻き声を上げた。その瞬間、周囲の男と女達が一斉に吹き出す様に笑った。
 恥辱に顔が火照てりながら、ブレンダは疲れてこれ以上続けられなく成る迄アシュレーのお尻に奉仕し続けた。

 ブレンダとリディアは、背中に回した両手を手錠で拘束され、居間の真中に隣同士に跪かされた。次に何をされるかの恐怖に、二人の鼓動は激しさを増した。
 しかし、男も女も服を着始めた。そして数分もしない内に立ち去る者も出て来た。
「待って下さい!」ブレンダが大声で言った。
「お金の事はどう成ってるの? 資金援助はどう成ってるの?」
「それはしない事に決めたわ」アシュレーが言った。
「あんた達は安物の娼婦よ、何の価値もないわ」
「だってそれは、貴女達がそうする様強制したんじゃない!」ブレンダが叫んだ。
「貴女が娼婦の様に振舞う事を強制したからよ。私達は私達の役割はやったわ、その見返りに貴女達は私達を助けるべきよ」
「そう約束したわ」リディアが言った。
「いいえ、約束なんかしてないわ」アシュレーが言った。
「単にそれを臭わせただけよ。あんた達の臭いケツを売春や淫乱の世界から救出しようなんて考えた事は一度もないわ。私達は皆、ブレンダ・ウェイドが、次から次へとシュガー・タウンのクズどもに春を売り歩く様に成って欲しいと願ってるのよ」
「その通りさ」“大親父”が二人を眺めながら言った。
「儂達は、お前達がその色に染まり過ぎる前に犯したかっただけさ」
「解ったでしょう」アシュレーは見下す様に笑いながら言った。
「私達は、あんた達を売春婦に貶める最後の一押しをしたかったのよ。それは大成功に終ったわ」
「この汚い悪党達め!この仕返しはきっとしてやるわ!」ブレンダは涙がにじむ眼で叫んだ。
「You will all pay.(訳注:“この償いはさせてやる”の意だが、直接的には“お前はお金を支払うだろう”の意)
「多分、次の機会にはそうするよ」フランクが言った。
「そうとも、次に会う時は前払いをしなきゃならないんだろうさ」
 残りの男と女達はこの冗談に笑い転げた。ブレンダとリディアには跪いて歯軋りするしか出来なかった。手錠で拘束され、裸で首輪を着けられ曵き綱迄掴まれていては、陵辱者に対して戦う事はおろかまともに議論する余地もなかった。

 ブレンダとリディアは、陵辱者達が帰って行くのを眺めていた。そして最後に“大親父”とアシュレー・ヴァンダーホルムと伴に残った。
 億万長者の夫婦は会心の笑みを浮かべて意気消沈した失った二人を見ていた。
「さあ、あんた達を元のドブに戻して上げるわ」アシュレーが言った。
 そして二本の曵き綱を取って引っ張った。
 美麗な金髪と黒髪の女は艶かしい動作で立ち上がった。
「Heel(訳注:踵の意だが、犬に対して、直ぐ後に付いて来いと命令する言葉)」アシュレーがピシャリと言うとドアに向かって歩を進めた。
 ブレンダとリディアは従った。他にどうしようも無かった。


* * * * * * * * *

訳者雑感
 話しも中程に成ったので、中休みを兼ね少し訳者としての雑感を述べさせて頂きます。
 Heel(ヒール)やKneel(ニール)等を日本語に訳さず原語で表記するという翻訳としては反則気味な事をしたのは、訳注で述べた事の他に次の理由によるものです。
 英語だと命令を一音で言う事が出来ます。日本語でヒールやニールは二音か三音に成ってしまいますが英語では一音です。
 奴隷等にピシッと命令する場合、その冷酷さ、命令された方の屈辱感など、一音の方が“しっくりくる”という感じがするからで、その雰囲気を表現したかったからです。
 日本語だとこうした一音の命令語な無く、「付いてこい!」なら5音、女性語で「付いて来なさい!」なら7音と長くなり、又、丁寧な言い方に成ってピシッとした冷酷な感じが薄れてしまう様な気がします。
 短い日本語の命令語の例として、「お茶!」「風呂!」「寝る!」でも2音。今の例の「お茶」の場合でも、犬に命令する場合の「お手!」など「茶」「手」で良い筈なのにわざわざ丁寧に“お”を付けて2音にする等、一音の命令は日本語にはしっくり来ないのでしょうか。
 英語だと他にもHalt(ホールト:止まれ!又は動くな!の意)等があり、このピシッとした雰囲気を出す為に、これからも命令は原語で表記する事にします。

 話しは変わりますが、日本語は英語に比べて音の数(音節の数)が多い訳ですが、これは歌を歌う場合それだけ多くの音程を使える事を意味します。つまり言葉の一音(一音節)は一音程に対応する訳で、一音(一音節)を二音程以上で歌う事は出来ません。従って日本語は英語より多くの音程を使ったメロディーに対応出来ます。アニメ「千と千尋の神隠し」のエンディングテーマが良い例で、一音ずつ急速に音程が変化するメロディーは英語で歌うのは難しいと思います。
 イタリア語は英語やドイツ語に比べて音の数が多いので、イタリア民謡やイタリア・オペラのアリアの様に急速に音程が変化する美しいメロディーが可能に成るのだと思います。youtubeでパバロッティ(最高のテノールの一人)又はアンナ・ネトレプコ(美声と美貌のソプラノ歌手)で検索すれば聞く事が出来ます。ドイツ語の場合、急速に変化するメロディーは、ラララやアアアという言葉ではない音で歌わざるを得なく成ります。例えばモーツアルトの歌劇、『魔笛』夜の女王のアリア。(この曲、モーツアルトがソプラノ歌手をおちょくる為に作曲したんじゃないかと思える様な曲ですが、有名な曲なのでyoutubeで聞く事が出来ます。堪能するならルチア・ポップ、ニコ動画付きは笑いながら楽しめます。もっと笑いたい人にはフローレンス・ジェンキンスもあります)










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