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  ミズ・アメリカーナ:運命の逆転                             いぬかみ訳

第三章 囮作戦



 ブレンダは赤いフェラーリをウェイド大邸宅の地下深くに造られた秘密のガレージに止めた。
午後から夕刻にかけて、その晩リディアが任務を果たすナイトクラブが立ち並ぶ地域の下調べをして来たのだ。
何時から何時までどのクラブを見張るかというスケジュールは既に出来ていた。白人奴隷商人と関わった経験のあるリディアなら彼らを発見出来るだろう。
勿論一味のメンバーは、二人が戦った以外にもいるかも知れない。リディアは常に五感を研ぎ澄ませて警戒しなければ成らない。

 二人はエレベータに乗り、寝室の背後に有る秘密の部屋に向かった。秘密の部屋はスーパー・ヒロインの衣装に着替える為の部屋で、二人が夫々専用に使っている衣服部屋(クローゼット)にある秘密のドアから出入りする様に成っていた。
 秘密の部屋には、市販されている最高級の犯罪解析ソフトが搭載された最新型のコンピュータも設置され電話回線に繋げられていた。更にMs.アメリカーナが何年もかけて市全体に、特に赤線地域や犯罪多発地域に設置した沢山の小型カメラからの映像も見る事が出来た。こうしてブレンダは毎日の活動を記録し、犯罪者達と戦う戦略を練る事が出来るのだ。

 二人に早速準備に取りかかった。
 ブレンダはTシャツを脱ぎ、レースの付いた赤いブラを露にした。次に靴を蹴飛ばす様にして脱ぎ、ジーンズのジッパーを下ろした。少しきつめのジーンズは脱ぐのが容易でなかったが何とか脱ぐ事が出来た。リディアにホックを外してもらってブラを取ると、巨大な乳房が上下に波打つ様に揺れた。天井の換気口から晒された胸へ優しく吹き付ける冷気が心地よかった。

「有り難う。向こうを向いて」
 黒いソング・パンティだけの姿に成ったブレンダはリディアのブラのホックを外してやり、その赤いブラをリディアが化粧台の上に置くのを眺めていた。
 リディアの19歳の肉体はきりっと引き締まり、絹の様に滑らかな肌をした90Dsが誇らしげに突き出し、先端のピンク色の乳首が冷気に晒されしこっていた。

「今晩何を着て行くか決めたの?」ブレンダが尋ねた。
「冗談言わないで、もう何時間も前から考えてあるわよ」リディアはクスクス笑いながら言った。
「秘密の任務を帯びて行動するのって凄く興奮するわ。こんな事させてもらった事なんかないもん」
 ブレンダはリディアの腕を取って向きを変え顔と顔を向き合わさせた。ブレンダを見詰めるリディアの青い眼に信頼の色が窺えた。
「これは遊びじゃないのよ、リディア。非常に危険な任務なのよ」ブレンダが言った。
「ヒラリーを思い出して。もし失敗すれば貴方もヒラリーと同じ運命をたどる事に成るのよ」
 リディアの眼が少し大きく成った。そして大きく深呼吸した後、微かに笑みを浮かべて頷いた。
「心配ないって、Ms.アメリカーナ」リディアは言うとウィンクをした。
「私、トレーニングを欠かさないから最高のコンディションよ」
 ブレンダはリディアを抱き締め心からの愛を示した。二人は互いに力一杯抱き締め、互いに愛情を感じ合うと感情が高ぶって行った。豊満な胸と胸が押し合う快感には意識は向かなかった。

「今晩は特に注意してね」
お互い手を繋ぎながらブレンダが言った。
「解った。気を付けるわ」 リディアは声を上げて笑った。
 そして二人は二手に別れた。

 ブレンダは着替えに行った。
 現在、衣装は二十種類程に成っていた。長年の間に時代は変わり彼女の好みも変わった。それに連れてビキニのデザインを変えて来た。時代が進むに連れビキニは次第に過激度を増した。男の眼を惹き付けるのには次第に露出度を高めて行く必要が有ったからである。
 それらの衣装を着けた彼女の写真が額に入れて壁に飾ってあった。表彰を受けている写真、有名人や有力政治家と一緒の写真そして少数だが幸運なニュース写真家が取った犯罪者を捕まえる決定的瞬間の写真等である。ブレンダはその決定的瞬間の写真が最も気に入っていた。
 ブレンダは、座が赤い絹貼りの椅子に座りブーツを手に取った。高さ10センチ以上の細いヒール、横に金色の星が描かれ上部が白く縁取りされた赤いブーツは高価なジミーチュウ・ブーツだった。
 ブーツを履き終えると立ち上がり、赤、白そして青のビキニ・ボトムを掴んだ。それに脚を通し所定の位置に手繰り上げた。等身大の鏡に映る姿を見ながら隠すべき所が覆われる様に調整した。そのビキニ・ボトムは極めて露出度が高く、一寸でもずれると大事な所が露に成ってしまう程だった。衣装からヘアや秘所が覗いている写真は好き者達の収集対象にも成っていた。
 続いてビキニトップを取り上げ胸に当てた。ホックを留め、胸を揺らしたり押したり引いたりして見栄えが最高に成る様に調節した。
 今の衣装は大切な所こそ全て隠されているが、妄想をかき立てる様な所は何も残されていなかった。結局の所、彼女は世界中の女性が憧れる肉体を持っているのだ。
 次に、ブレンダは長い上品な首に、喉の所に金色の星が飾られた青いチョーカーを着けた。そして金色のティアラを頭に載せ注意深くその位置を決めた。次は赤い星が吊り下がったイヤリングの番だ。
 出来映えを確かめるため、スーパー・ヒロインはしばし鏡に見入った。

 その間リディアは赤いソング・パンティを着け、レースの付いた黒いガーターベルトを着けた。リディアは座が青い絹貼りの椅子に座り、黒い絹のストッキングを穿きガーターに繋ぎ止めた。
 次にジミーチュウ・カーフブーツを履いた。高いヒールと銀色のバックルが付いた黒光りするブーツだった。
 そして黒革のミニショーツを着けた。その丈は非常に短く、座るとストッキングの上端が露に成る程だった。
 その後、体にピッタリした赤いバスティエを着た。近くから見ると乳首がほんのりと透けて見えた。そのバスティエは背中にある小さなホックで留める様に成っていた。

「Ms.アメリカーナ、手伝ってもらえる?」 リディアが甘える様に尋ねた。
「良いわよ」 ブレンダは言うと歩み寄り、
「息を吸って」
 リディアが言われた通りにすると、ブレンダは素早く手慣れた手付きでホックをとめた。
 リディアが息を吐き出し上体を落ち着かせたが、それは元通りではなかった。ピッタリしたバスティエは彼女の肉体を心地よくリシェイプしウェストはより細く成った。
「うわー」リディアは、等身大の鏡を見ながら言った。
「とても似合ってるわ」
 ブレンダは、手でリディアの身体をそっとなぞりながら言った。
 そしてブレンダは、非常に高価な肩迄届きそうなキラキラ輝くダイヤのイヤリングを取り上げリディアの耳に着けた。
「もの凄く魅力的よ。これなら奴隷商人達は若い男の群集をかき分けてでも貴方を捕まえ様とするでしょうね」
 イヤリングを着け終わると。ブレンダは眼の球が飛び出す程高価なダイヤとサファイアのネックレスをリディアの首にかけた。そして、手首にダイヤが散りばめられた幅広のブレスレットを着けた。これなら疑いなしに彼女は大金持ちに見える。
「この格好で奴隷商人の眼を惹き付けられないんなら、もうどうしようも無いわ」ブレンダが言った。
「とても素敵」
 リディアは、ダイヤの煌めきを堪能しながら言った。
「こんなダイヤを毎日着けられたら良いのに」
「きっと出来るわよ」ブレンダは笑いながらリディアのお尻を軽く叩いて行った。
「さあ、私の着付けも終らせなきゃ。その後でもう一度計画を再確認しておきましょう」

 ブレンダは着替え場に戻り金色のパワー・ベルトを手に取った。パワー・ベルトの正面には、ティアラの正面と同じ様に、Ms.アメリカーナのイニシャルである大きな“A”の字が二つの青い星印の間に描かれている。パワー・ベルトは彼女のスーパー・パワーの源泉だった。
 パワー・ベルトをウェストに着けたブレンダは、熱い力が全身に漲って行くのを感じた。それは非常に心地よく、気力が湧いて来る感覚だった。
「私は正義の女王」ブレンダが言った。
「私はMs.アメリカーナ」
 パワー・ベルトは彼女の心をMs.アメリカーナのものにしていた。ベルトを着けた瞬間、彼女はブレンダ・ウェイドである事を止め伝説的スーパー・ヒロインMs.アメリカーナに成るのだ。

 ブレンダがベルトを着けている間にリディアは、Ms.アメリカーナの星が散りばめられた模様の青いマスクに両面粘着テープを貼付けていた。Ms.アメリカーナはそれを受け取り、顔の定位置に押しつけ美しい顔の上半分を隠した。
 そして最後の一品である赤いグラブを取り、リディアに嵌めてもらった。
「完成」リディアは聖なるものでも見る様に眼を輝かせて言った。
「偉大な存在に見えるわ」
「有り難う。貴方も震い付きたく成る程素敵よ」 Ms.アメリカーナがニッコリして言った。



 リディアは混雑した薄暗いクラブの中を見回しながら唇を官能的に舐めた。
 十代か二十代の前半であろうか、若い男女が陶酔感のある音楽に合わせて身を捩り、くねらせていた。リディアもその激しいビートに反応して身体を動かしていた。

「一寸くらいなら踊る時間もあるわね」
 リディアは呟くと人を掻き分けクラブの奥の方へ入って行った。
 リディアはクラブで遊ぶ事、特に踊る事が好きだった。クラブの熱気は癖になりそうだった。その熱気を取り込みながら全ての男の顔を見て、奴隷商人の片割れかどうかを確かめながらクラブの中を移動して行った。

 夜は次第に更け零時近付くと、リディアはクラブを出る準備を始めた。クラブの閉店時間は午前二時と市の条例で決められているのだ。それまでに奴隷商人を発見出来なければ、その夜は無駄足と成り再度出直さなければ成らない。
 中にはもっと遅くまで営業している違法なクラブもあったが、そう言うクラブで行方不明になった女性はいなかった。

「あっ」
 リディアは突然立ち止まった。群衆の隙間を通して、奴隷商人の一人と思しき男の姿がチラッと見えた。
「確かめなくちゃ」

 リディアは踊りながら、若者の熱気でごった返す群衆の間をゆっくりと進んで行った。イライラする程長い時間が掛かったが、遂に見かけた男の近くに辿り着いた。
 男の年齢は30から35?6と言ったところで、こげ茶色の髪と眼をしていた。上背は平均的だったが筋骨は隆々としている。
 リディアは、その男がトッドと呼ばるバンを運転していた男である事を思い出した。

 トッドは、リディアより一つ年下で大学一年生のエリカ・レンジャースと話していた。
 エリカは、誰からも美人とは言われなかったが、背が高く愛くるしい顔をしていた。彼女の茶色い髪は強い巻き毛で身体は棒の様に細かった。豊胸処置をしていなかったら胸は真っ平らだっただろう。
 エリカの父親は自動車販売会社を所有し家庭は裕福だったが、彼女は社交界の花形には慣れそうもなかった。もし奴隷商人が真剣に彼女の誘拐を企んでいるなら、彼らの“一日一お嬢様”という実績を維持するのに必死に成っていると言う事だ。
 それでリディアは二人にゆっくりと近付いて行った。

「ハーイ、エリカ」
 リディアは二人の注意を引き付ける様に言った。エリカはホッとした様に見えた。
 エリカは、富と特権そして上を目指して社会の階段を登って行く事が全てだった。エリカにとって社交界は玉の輿に乗るべき相手を捜す所でしかなかった。
 トッドは身だしなみに気を使っている様にも裕福にも見えなかった。

「久しぶりね」
「リディアじゃない!」
 エリカは大声を上げた。二人が抱き合うと、エリカがそっと耳打ちした。
「貴方のおかげで助かったわ。この変な男、私に付きまとって離れないのよ」
「私に任せて」リディアは笑みを浮かべて言った。
 二人は友人とは言えなかった。しかし敵同士でもなかった。リディアはエリカよりも‘高い’上流社会に属しているのだ。

「二人で何やってんだ?」
 男が二人を引き離すと、リディアはエリカとトッドの間に割って入り手を差し出した。
「ハーイ!私リディア・ウィルスよ」出来るだけ愛嬌タップリに言った。
「貴方の名前何て言うの?」
「トッドだ」男が言った。
「トッド・シモンズ。あー、彼女何処へ行くんだ?」
 リディアは肩越しに振り返り、そして声を上げて笑った。
「エリカの事?誰にも解らないわ。彼女ものすごーく移り気なんだから」
 リディアが言った。そして興味深そうにトッドを見詰め、
「それじゃ、貴方のお話ししてくれない、お兄さん?」
「俺はプロデューサーだ」トッドはニンマリして言った。
「映画を製作しているんだ」
「本当?」リディアは体をトッドに寄せながら言った。
「大きい映画?それで有名な俳優さんとお仕事したことあるの?」
「ああ、あるとも。金をかけた映画を何本もな」
 トッドはそう言うとエリカが居なく成った方を恨めしげに眺め、そして可愛い若い娘の方に向き直し体を寄せた。
「俺は沢山の大スターと仕事して来たんだ」
「うわー、すごーい。私、映画に出たいんだけど駄目なの。ブレンダが許してくれないわ」
 リディアはトッドの気を引く様に言った。
「私、いずれはブレンダの会社を継がなきゃ成らないから。巨大企業連合の跡取りって言うのもうんざりするわ。自分が本当にしたい事が出来ないんですもの」
「本当かい?」急にリディアに興味を持ったトッドが言った。
「それ何て言う巨大企業連合なんだい」
「ウェイド・エンタープライズよ」
 それを聞いたトッドの顔に一瞬浮かんだ貪欲そうな笑みをリディアは見逃さなかった。
 リディアは自分の感情が顔の表情に現れない様懸命に抑えた。そのためリディアは間を取り、絹の様な金髪の乱れを直した。

 トッドは暫くの間あんぐりと口を開けていた。
 それを見てリディアは微笑んだ。ブレンダは、自分より金髪の可愛い子ちゃんの方が良い、なんて言う男はいないといつも言っているからだ。
「それじゃ貴方もお金持ちに違いないわね」リディアが言った。
「そうだ」
 リディアの胸の谷間に気を取られていたトッドは、ハッと我に帰った様に言った。
「ああ、音がうるさくって良く聞こえないわ」リディアはイラついている様に言った。
「何処か場所を変えて映画製作について話しましょうよ?」

 もしこの男との間に緊急事態が発生すれ様な事があれば、間髪を置かずMs.アメリカーナがこの男に飛び掛かるだろう。
 高速のカーチェイスには全く不安は無い。うまく行けばこの男に白人奴隷商人達の隠れ家へ案内させ、そこで全員を捕まえる事が出来る。リディアは乗り物の中に放置される事態を避けるだけで良かった。

「そうした方が良い。だが俺の友達とも相談させてくれ」
 トッドはそう言うとリディアの手を取り、ふと彼女の手首に輝くダイヤのブレスレットを貪欲な目つきで見た。
「向こうの方の席にいるんだ。彼らも映画のプロデューサーさ」
「えーっ、私、ワクワクするわ」
 リディアは、自分が感じている通りに言った。

 <ここで全員を見つけられるのかしら? Ms.アメリカーナに凄く褒められるわ>

「連れて行って」

 トッドはリディアをダンスフロアから遠く離れた薄暗い一角へ連れて行った。
 そこも音は依然やかましかったがプライバシーは保たれていた。
 お互いの話しは良く聞こえなかったが、他の者に話しを聞かれる心配もなかった。
 奴隷商人は全員そこに揃っていた。リーダーのジャック、手下の首なしマイクそして長身のランディの三人である。

「やあみんな、こちらはリディア・ウィルスだ」トッドが言った。
「彼女はウェイド財閥の跡取りなんだ」
「ブレンダ・ウェイドのか?」ジャックが言った。
「他に誰がいるの?」リディアは微笑みながら言った。
「ブレンダを知ってるの?」
「知ってるさ」
 ジャックは笑みを浮かべて言うと、立ち上がり紳士の様な態度でリディアに椅子を勧めた。
 リディアは一瞬躊躇ったが、愛くるしい身のこなしで椅子に座った。彼らの関心を高めなければ成らない。
「昔、大学で一緒だったんだ。だけど彼女にはずっと会っていないな」

<嘘ばっかり>
 リディアは心の中でしかめっ面をした。しかし顔には明るい笑顔を絶やさなかった。
 彼の年齢は40の中頃から50にかけてだと容易に分かる。それに対しブレンダは未だ31なのだ。大体、彼らはこのクラブで遊ぶにしては年を取り過ぎている。首なしマイクは40歳位だし、トッドとランディは20代後半から30歳くらいなのだ。

<うぬぼれるんじゃないわよ、この悪党ども>

「マイク、この若いお嬢さんに何か飲み物を持って来てくれ」ジャックが言った。
「どんな‘毒水’がお好みかい、可愛い子ちゃん?」

 リディアは、正にこの男達と一緒によろよろと通りを横切るヒラリーの姿が心に浮かんだ。決してこの姿を彼女の記憶からぬぐい去る事は出来なかった。幼なじみの最後の姿の一つなのだから。
 リディアは酒を飲んで彼らのペースに嵌るのを避けたかった。自分が主導権を握って彼らを出し抜き、そして捕まえる必要が有るのだ。

「ダイエット・コークにして」リディアが言った。
「まだ19だから未だお酒は飲めないの」
「構わないだろう、俺がおごってやるよ」 マイクはリディアの全身を見回しながら言った。
「飲んだって誰にも解りゃしないさ」
「申し出には感謝するけど、私飲めないの」リディアは、出来る限り明るく笑って言った。
「ダイエット・コークだけをお願いするわ」

 奴隷商人達に少し戸惑いの色が現れたが直に立て直した。
 トッドはリディアの隣に座ると身を寄せて来た。ジャックも近付いた。
 二人は両側から手をリディアの腿に置いた。リディアは一瞬慌てたが、無邪気な少女の様にクスクス笑いながらその手を押しのけた。
「ハリウッドのプロデューサーって手が速いのね」リディアは、持ち上げられて喜んでいる風を装って言った。
「だけど私をもっと年上だと思ってるんじゃないかしら?私未だ初心な大学生よ」
「でも映画スターには成れるさ」 トッドが言った。
「パリ マリオットよりもっと大きくさ」 ジャックが言った。
「もっと大きくですって?」
「そうもっと大きくそしてもっと有名に」ジャックはリディアの反応に気を良くして言った。
「君はAクラスに成れる美しさと体型、それに人を魅了する何かを持ってるよ」
「私が? Aクラス?」

 マイクが良く冷えたグラスをリディアの前に置いた。グラスの中には沢山の氷とストローが入っていた。
 興奮気味のリディアは口の中が少し乾いていた。それで身を乗り出しストローを取ると、官能的な仕草で唇の間に挟み、湿ったピンク色の舌で少し口の奥へ運んだ。
 リディアが長く細いストローを口に入れ、それを唇で挟み込みゆっくりと良く冷えたコーラをすすり始めるた。
 奴隷商人達は身じろぎもせず、その様子を食い入る様に見詰めている。
 リディアはコーラを半分程飲んだ。それは何時間も踊り続け、白人奴隷証人達を捜し続けて酷く喉が渇いていたからであり、又考える時間を稼ぐ為でもあった。

<どうやってヒラリーを罠に誘い出したか解ったわ> リディアは考えた。
<ヒラリーは凄くスターに成りたがっていた。それが災いしたのね、可哀想に>

 ジャックは黒いストッキングを穿いたリディアの腿を指でそっと撫でた。その指はストッキングを上の方へ滑り上端を外れて生肌に触れた。それは一瞬の出来事で止める暇もなかった。ジャックのした事にリディアが気付いた時には既に彼の手は離れていた。

 突然、リディアは顔が熱く成るのを感じた。その愛撫の気持よさは驚くほどだった。喉が詰まり息をするのが少し困難に成った。
 リディアは、彼の愛撫によって情欲に火が付けられた事を悟った。Ms.アメリカーナと一緒に、この正に同じ男達に遭遇して以来、心の奥底に隠していた肉体的・精神的欲望は水面近くまで浮上して来ていたのだ。
 リディアは心を強く保つべく下腹に力を入れた。
 ふと見上げると、小さな丸いテーブルを挟んで座っているマイクの眼に釘付けに成った。
 肺の中の空気が全て吸い出された様な気がした。
 彼女を捕まえたのはマイクだった。跪かされたのはマイクだった。疼く秘所に太い肉棒を突っ込み彼女を歓喜と屈辱に狂わしくしたのがこの逞しいマイクだった。この男に土俵際まで追い詰められたのだ。あと10秒か20秒で絶頂させられる所だった。マイクこそ彼女の体内に眠る野獣を目覚めさせ育てた張本人なのだ。

 記憶が甦るとリディアは股間が疼き始めた。それは欲情し濡れ始めた事を物語っていた。やがて乳首も刺激に敏感に成って来た。身に着けているバスティエの布地にさえ刺激される程だった。それは心地良いものだった。そして息苦しく成って行く。口の中も乾き、リディアは残りのダイエット・コークを飲み干した。
 奴隷商人達は互いに顔を見合ってニヤリと笑みを交わした。

 うまく事が運んでいない。間もなく奴等はリディアと関わっているとまずいと知って彼女を放り出して逃げるだろう。そして悪人を再度取り逃がしたMs.アメリカーナはガッカリするだろう。
 リディアは腿に爪を立て、その痛みで気を立て直そうとした。
 もし彼らが作戦に気付いたら全ては失われてしまう。リディアは、沢山の友人達を情け容赦なく連れ去り、売春を強要するこの人でなしどもが正義の手から逃れる事など許せなかった。

「そ、それでおじさん達、どんな映画を製作してるの?」リディアが言った。
「アクション・スリラーさ」ジャックは身を乗り出して行った。
 リディアは、顔にかかるジャックの吐く息が感じられた。ウォッカと煙草の匂いがした。
「君はその主役にピッタリだよ」
 リディアは微笑んだ。そう、ヒラリーはこの鉤針に付けられた餌、釣り糸それに重りでやられたんだ。
 トッドは手を伸ばし、リディアの長い金髪の中に手を入れると櫛の様に鋤いた。心地良かった。
「ムフーーーン」リディアはしばし眼を閉じ低い声で呻いた。
「気に入ったかい?」 トッドが尋ねた。
「ンーン、良いわ」
 リディアは言うと、トッドを流し目で見た。そしてジャックに再度腿を撫でられたのを感じた。しかし今回はストッキングの上端で留ったままに成っていた。
「ああ、何を・?」
 リディアはジャックの方に振り返り手を退ける様に言おうとした時、トッドが再度髪をくしけずった。とても気持よかった。
 リディアは眼を閉じそのまま感触を楽しんだ。うっとりする様な感覚が全身に広がって来た。
 するとトッドは両手でリディアの頬を挟み込み顔を彼の方に向けた。
「フムムム・・・」
 まともに考える事が困難に成って来た。ジャックの手がゆっくりとスカートの中に忍び込んで来た。それにリディアが反応しようとする矢先きトッドが顔を近付けて来た。

<キスしようとしている!>

 心臓の鼓動が激しく成る。股間が疼き湿りそして熱く成って行く。リディアは舌を出しゆっくりと上唇を湿らせた。
「ムンンンン・・・」
 唇が触れ合うとリディアは呻いた。突然二人は貪る様に激しいキスを始めた。
 リディアにはこんなキスの経験はなかった。全身の隅々までを燃え上がらせた。こんな気持は始めてだったそして何時迄も続いていて欲しいと思った。
 その時、ジャックの指が、既に濡れているソングの布地の上から超敏感な股間の唇を撫でた。
「フフフムムムムンンンン・・・」
 リディアがハッとして唇を僅かに開いた瞬間、トッドの舌が押し込まれて来た。リディアの意識は口に集中した。
 重なり合った唇を撫で合い擦り合わせながら、リディアは呻き声を上げトッドの方へにじり寄った。リディアがトッドの膝の上に移動するとジャックの手は離れて行った。
 リディアは股間の膨らみを感じつつトッドの腿に跨がった。

「いつも通り良く効くな」マイクが囁いた。
「シーーー」ジャックが制した。

 リディアは、トッドのズボンの膨らみに自分の股間を擦り付けた。トッドが呻き声を上げるとリディアは微笑んだ。
 長い間のキスで息苦しくなったリディアは、顔を離し辺りを見回した。
 興味深げに彼女を見ている者、不快感嫌悪感を抱いて見ている者が眼に入った。しかし、リディアと眼が合うと皆その場を去って行った。

 トッドはリディアのスカートを捲り上げ、再び彼女の関心を引き戻した。
「駄目よ、出来な・・・ムムムムム」
 リディアは拒否しようとしたがトッドのディープキスで口を封じられた。その間トッドの手は上に移動し90Dsを暫くの間弄び、バスティエの上から強く絞り上げた。
「ああああ。止めて、そんな事しちゃだめよ」
 それに答える様にトッドは長い金髪を掴み頭を後ろへ強く引っ張った。そしてむしゃぶる様に首にキスをした。
「ムムムム・・・・」
 トッドはキスの場所を胸の方へ下げて行った。
 そして胸のカップをひっくり返すとリディアの胸が飛び出した。拒否する間もなくピンクの乳首は彼の熱い口の中へ吸い込まれたいた。
 リディアは呻き声を上げ、トッドの頭を両手で抱えて頭を仰け反らせた。
 リディアがトッドの頭を抱え胸を押し付けると、トッドの両手は自由に成った。そしてトッドがソング・パンティの横側を引き千切り、引き下ろしたのにも気付かなかった。

「君はこの世で最も美しく最高に魅力的だよ」トッドが囁いた。
 この言葉はリディアの情欲に油を注いだ。凄く幸せな気がした。完璧だった。凄く気持よい。ただただ素晴らしい。
 リディアはトッドがジッパーを下ろしたのに気付いた。リディアが下を向くと弩長したトッドの肉棒が飛び出した所だった。
「ああ素敵」
 リディアは物欲しそうな眼で見ながら上唇を舐め回した。
 トッドはリディアの尻を持ち上げ自分の腿の位置に持って来ると、既に露に成っているリディアの秘所を肉棒の上に導いた。
 リディアはソング・パンティがどう成ったのか不思議に思った。ソング・パンティを着けた時のぼんやりした記憶が甦った。それも次の瞬間、ソングも何もかも心から消え去った。トッドがリディアを離しリディアが自重で、いきり立つ肉棒の上に身体を沈めたからだった。
「イエエオオウウ・・・」
 リディアは、トッドの太い肉棒に秘所を掻き分けられ、深く、そしてより深く侵入して来る感覚に大声を上げた。
 リディアは肩越しに他の奴隷商人達を眺めた。全員の眼に好色の色が浮かんでいた。それを隠そうとする者は一人もいなかった。
 リディアは全員が彼女を犯そうとしている事を悟った。

<一体どうしたのかしら?>
 不審に思ったリディアが首を傾げると彼女が飲んだコーラのグラスが眼に入った。空のグラスには溶けた氷の水が入っていた。
<大変、何か薬を飲まされた!>

「さあリディア、弾む様に上下に動いて」トッドが催促する様に言った。
 リディアは大きく息を呑み、両手をトッドの肩に当てた。
 トッドに従う他は無いとリディアは思った。更に、やがては薬によって精神を完全に支配され、ただ犯されるだけの玩具にされてしまうと思った。既に彼らと戦うどころか話をする気概さえ失われていた。彼女に出来る事は彼らに服従する事、そしてMs.アメリカーナが奴隷商人達を急襲しようと待ち構えている事を覚えておく事だけだった。

 両脚で身体を押し上げると、トッドの肉棒が秘所から滑り出て行った。名状し難い素晴らしい快感だった。リディアの身体が完全に肉棒から外れてしまう前にトッドは彼女の動きを制し、そして引き戻した。

 二人はそのようにして数分過ごし、リディアが動きのリズムと動きの範囲を理解するとトッドは彼女に任せた。
 圧倒する様な熱気に、肉体が変化して行く様な気がし出すまで長くはかからなかった。
「ああああ」リディアは喘いだ。
「ああああわわわ・た・・し・・・」リディアは身体の奥で絶頂が噴出し始めると深く息を吸い込んだ。
「アアアアアアアアアアイイイイイエエエエウウウウウウウウ!」
「えい糞、すげえ声を出しやがって」ジャックが言った。

「おい!そこで何やってるんだ」クラブの用心棒の一人が呼びかけた。
 リディアはうっとりした眼で見上げ笑みを浮かべた。その時、体内深くでトッドが精を放ったのを感じ取った。
「ああ、いい・・・」リディアが言った。
「それ私に頂戴」
「おい、お前達ここから立ち去れ。ここは淫らな事をする所じゃない」
 大柄な用心棒が言った。他の用心棒達も駆けつけて来た。



 Ms.アメリカーナは脇目も振らず監視していた。
 クラブには若い男や女が出たり入ったりしているがリディアは中に留まっている。実際他のクラブの場合より長く留まっていた。
 リディアは白人奴隷証人達を発見し、通りへ誘き出そうとしているのかもしれない。そう考えると動悸が激しく成る。
 一人であれ数人であれリディアが男と一緒に出てくれば、それがMs.アメリカーナへ行動開始の合図だった。
 もし一人なら、彼らの隠れ家まで後をつける。もし奴隷業者全員なら、Ms.アメリカーナは直ちに攻撃し撃滅する。
 前回遭遇した時彼らが使っていたバンは見当たらなかった。
 しかし彼らが同じ車を使うとも思えなかった。恐らく数台の盗難車ぐらいは持っているだろう。

「あっ、リディアだわ」
 Ms.アメリカーナは強力な暗視双眼鏡を覗きながら言った。
 リディアは用心棒に連れ添われて正面の扉から出て来た。
 用心棒は巨体の黒人で、服は全身黒ずくめだった。それがそのクラブの用心棒の制服だった。
 用心棒はリディアを半ば引き摺る様に連れ出し、歩道の縁石に向けて放り出した。
 Ms.アメリカーナは血が頭に上った。リディアがそんな風に扱われるのは見るに忍びなかったからである。
 その直ぐ後四人の男が用心棒に取り囲まれる様にして出て来た。

「ジャックだ!」Ms.アメリカーナが叫んだ。
「やった。リディアは遂に見つけたんだわ」

 Ms.アメリカーナが見守る中、ジャックはリディアの右腕を取り、左手を掴んでいるのはマイクと呼ばれたがっしりした短躯の男だった。
 白人奴隷商人はリディアを連れて、いそいそと駐車施設に向かって歩いて行った。その駐車施設の上にMs.アメリカーナが待ち構えているのだ。
「さあさあ坊や達こっちへいらっしゃい」 Ms.アメリカーナが言った。

 リディアを連れた奴隷商人達は、駐車施設へ向かう中程に止めてある青い乗用車の前で立ち止まった。
 リディアは後ろの座席へ押し込まれ、両側にマイクとランディが座った。
 ジャックは運転席に座り、トッドは散弾銃を取り出した。

 Ms.アメリカーナは直ちに行動を開始した。
 高価な双眼鏡をケースにしまいトランクに放り込むと運転席に飛び込んだ。
 エンジンが唸りを上げるとMs.アメリカーナは追跡を開始した。
 リディアを見失う心配はない。リディアの右ブーツの中にホーミング・デバイスが忍ばせてあるのだ。前回の追跡時のような失敗はしないで済むだろう。
「今度こそ捕まえてやるわ。吃驚する様な方法でね」
 Ms.アメリカーナはリディアからの信号を追尾しながら言った。




「ああああーーーー」リディアが呻いた。
「ああ、もうイキそう」
 車の中で奴隷商人達はリディアのトップを再度引き下ろした。既にスカートは引き裂かれ走行中の窓から外に放り捨てられていた。
 ランディはリディアを後ろ向きにして膝に乗せた。そしてリディアを前のめりにさせると、指でアヌスを揉みほぐし始めた。
 アヌスがほぐれると直ちに容赦なく激しく犯し始めた。

 リディアはその感覚が信じられなかった。苦痛と快感が入り交じった不思議な感覚だった。
 五分程すると、リディアは堪え難く成っていた。そして必死に堪えていた絶頂が爆発した。
「イイイアアアアアアアウウウウウウウウウ!」リディアが叫び声を上げた。
「アアアアアアアアイイイイイイイイイイイイウウ!」
 白人奴隷商人達が声を上げて笑った。
「おい、この淫乱女はそれが好きらしいぜ」 マイクが物欲しそうな眼で見ながら言った。
「解ってるよ」トッドが言った。さっき絶頂した後、要求されもしないのに身体を激しく上下に動かせ続けたのだ。
「こんなに反応の良い女は見た事がねえ。俺たちに出会う前はよっぽど我慢してたんだろうな」
 奴隷商人達は又も笑い転げた。
 リディアにも笑い声が聞こえた。笑い声に心がズキッとする。しかしどうにも成らなかった。気持よかった。しかし未だ充分ではなかった。リディアは自分から肉棒に跨がり、男をイカすべく激しく動いた。男の精が欲しかった。
 そしてその望みが叶った時、全身を快感が駆け巡った。
「アアアアアオオオオオイイイイイイウウウウウウ!アアアアー!」リディアは叫び声を上げ再度のオーガスムを満喫した。
「ああ、たまらないわ!」

 リディアはランディの肉棒から引き離された。ランディはリディアの向きを変え、彼女の顔を股間に押し付けた。
 「今度は口を使ってもらおう。さあこれをきれいに舐め取ってくれ、金持ち娼婦」ランディが怒った様に要求した。
 リディアは男の肉棒を手で取り唇に近付けた。
 ランディの性器の回りは、こぼれた小便と今の性行為の不快な臭いがしていた。その臭いにリディアは吐き気がしたが、何とかネバネバした液で覆われた肉棒を口に含んだ。
 二人の性液が混じったその味は素晴らしいものに感じられた。リディアは熱心に舐め取り始めた。
 ランディはリディアの奉仕が終るまで大声を上げ通しだった。そして再度リディアの口中へ精を放った。

 次はマイクがリディアに肉棒を吸う様強要した。
 リディアは最早抵抗の素振りも見せず、肉棒を口に含んだ。リディアが肉棒をスッポリと口に含むと、マイクは呻き声を上げて頭を仰け反った。マイクはリディアの髪の毛を掴み、肉棒に剃って動く彼女の頭の動きを楽しんだ。その間中リディアは彼の玉袋を撫でていた。

「俺達が使っている新しい媚薬の威力はすげえな」トッドが言った。
「全くその通りだぜ」マイクが太い声で言った。
「この金持ち娼婦のフェラは強烈だぜ!」
「それもそうだが」ジャックはやや不満そうに言った。
「俺は女が大人しいか熱心かは問題じゃねえんだ。俺は屈服させるのが好きなんだ」
「ジャックはどんな女にも満足しない」 ランディが笑った。
「兄貴よ!そんな事言わねえで、只座ってこの女の口を楽しみゃ良いんだ」 マイクが言った。今や喋るのも困難に成っていた。

 やがて一行は目的地に着いた。マイクが丁度精を放った所だった。
 リディアは必死にそれを呑込み、車が停止するまでにマイクの肉棒をきれいに舐め取った。

 座り直したリディアが辺りを見回した。そこは建物の中だった。暗かった。照明は高い所に二つ三っつあるだけだった。
 リディアにも漸くそこが倉庫の中である事が解った。

「ここは何処なの?」リディアが尋ねた。
「お前の知った事か、slut」
 マイクが言った。そして扉を開けリディアの首筋を掴んだ。
「さあ、入れ」

 リディアは髪を掴まれて車から引き出された。
 待っていたジャックがリディアの片方の上腕を掴んだ。もう一方はマイクが掴んだ。
 そして半分引き摺る様にして、リディアを奇妙な形の枠の所に連れて行った。先ず大きく広げたリディアの両足を下側のバーに縛り付けた。そして腿の上辺りの高さの中段のバーの処で前屈みにされた。最後に、両手を大きく広げ上段のバーに縛り付けられた。
 前屈みに成った体勢で奇妙な枠に拘束されたリディアは、秘所やアヌスの背後からの陵辱に最適の姿だった。

 朦朧とした金髪美女は拘束を外そうと力無く足掻いた。
「こんな事をして只じゃ済まないわよ」リディアが言った。
「ミズ・ア・・・私には沢山友達がいるんだから。私は重要人物なのよ」
「そう、その通りさ。それは前にも聞いたさ」ランディは笑うのを堪えて言った。
「そう言う事。俺達はその台詞を殆ど毎日聞いてるんだ」マイクが言った。
「それでも俺達は依然として金持ち女を誘拐して白人奴隷マーケットで売りさばいてるんだ」

「お喋りは充分だ」ジャックが言った。
「俺の番だったな、金持ちさんよ」
 リディアは、ジャックが近くのテーブルに向かって行くのを見た。血が凍り付く様な気がした。
 他の連中は、単純に犯すかフェラをさせた。だがリーダーは何か道具を使いたいらしい。彼女の知る限りそれは、もっと陰湿な事を望んでいる事に成る。

 ジャックはカヌーやカヤックで使う様な長い木製のパドルを手に取った。
「えーっ」リディアが言った。
「私を痛いめに合わせるつもり?でも何故?」
「それはお前がお高く止まった金持ちだからだ、bitch whore」
ジャックが唸る様に言うとリディアのブーツを指さした。
「これいくらするんだ?」
「貴方には関係ないわ」リディアが言った。
 ジャックは残忍な笑みを浮かべパドルを手にリディアに近付いた。リディアは拘束を外そうともがいた。
 ジャックはリディアの斜め後ろに立った。そしてふくよかな白いお尻を撫で始め絹の様に滑らかな肌の感触を楽しんだ。
 その指が秘所やアヌスに触れるとリディアは悲鳴をあげ枠に拘束された身体を仰け反らした。
「考え直したか?」ジャックが言った。
「言うんだ、そのブーツはいくらした」
「いやよ」リディアは毅然として言った。
パシーッ!
「いいいいたーーーーー!」
パシーッ!
「ああ!あああいいいいいいい!」リディアは悲鳴をあげ、喘ぐ様に大きく息を吸い込み、
「千二百ドルよ!千二百ドルそれに税金! 間違いないわ」
「けっ」ジャックは怒りを露にして言った。
「思ってたより高いじゃねえか」
「これジミーチュウ・ブーツだもの」リディアが言った。
「弁解無用だ」ジャックは言った。
パシーッ!
「俺が白人奴隷商人に成る前、俺の稼ぎは月にたったの千五百ドルだったんだぞ。それで家賃、車の支払、食費その他全てをそのはした金で賄ってたんだ。なのにお前はその忌々しいブーツにそんな大金を眉一つ動かさず支払ったのか」
パシーッ! パシーッ! パシーッ!
「ご免なさい!」リディアが叫んだ。「私、貴方には何もしてないわ!」
「弁解無用って言っただろう!」
パシーッ!

 ジャックは一叩きするとジャックは遠ざかりパドルをテーブルの上に放り投げた。そして後ろを振り向かずドアの向こうに姿を消した。リディアはジャックが出て来るまで気が気でなかった。
 しかしその間にも他の男達が行動を起こした。リディアは彼らが輪姦するつもりだと思った。しかしそうではないと知ると少しガッカリする気もした。

 男達は奇妙な形の機械を転がして来て彼女の後ろ側へ据え付けた。
「何をする気なの?」リディアは肩越しに振り返って見ながら言った。
「特別なものじゃないさ」トッドが素っ気なく言った。
「そう、‘メス犬調教機’をセットしてるだけさ」ランディが言った。
「‘メス犬調教機’ですって。何するものなの?」リディアが尋ねた。だが答えを聞くのが怖かった。
「お前を犯すのさ、完璧にいかれるまでな」
マイクがニヤリとして言った。そして、大きく開いたリディアの両脚の間に機械を置くと車止をしてそこに固定させた。
「これでお前を犯し続けられる」
「一晩中な」ランディが言った。
「そう一晩だ」トッドが頷きながら言った。
「それで朝までにはお前さんの頭は完全にぶっ壊れてるって寸法だ。そう成りゃもう薬を使う必要も無く成るさ」

「クッ、クソッ」
機械が唸りを上げ作動し始めるとリディアは歯噛みした。
直ぐ機械は低い一定のリズムの音を立て始めた。
 数秒もしない内にリディアは、巨大なディルドのヌルヌルした先端が股間に触れるのを感じた。充分に潤滑されたディルドは彼女の下の唇を掻き広げ、ゆっくりと、しかし確実に侵入して行った。
 リディアは唸り声を上げ腰を捩って侵入を阻止しようとしたが、彼女の身体はその場所にしっかりと固定されていた。
 そしてディルドが完全に挿入されるとトッドはスイッチを入れ、ディルドをゆっくりと後退させた。そしてディルドの先端が彼女の体内に数センチ入っている所で別のスイッチを入れた。
 ディルドは暫くの間侵入と後退を繰り返した。
 その間白人奴隷商人達は、リディアが身体を身悶えさせ喘ぎそして呻く様子を見て楽しんだ。
「パラメータのセットは良好だ」トッドが言った。そしてリディアのお尻を軽く叩いた。
「身体を楽にして楽しみゃいいのさ」

 リディアは歯を食いしばり唸り声を上げるばかりだった。リディアは既に気が変に成りそうだった。

<何故抽送をこんなにゆっくりにセットしたのかしら?これじゃ拷問と同じよ>

 奴隷商人達は逐次部屋を後にし始めた。トッドだけが残った。トッドはリディアにニヤッとした笑みを見せ、もう一つのスイッチを入れた。
「イイエエエエオオオオ」リディアは吃驚して大声を上げた。
 青い眼を大きく見開いたリディアは、瞬く内に嘗て無い程の絶頂に持ち上げられつつあった。
「あ、あ、だ、ダメーーー・・・・・アアアアアアアアーーーーーーー!」
「そうだろうとも。お前ら金持ち淫乱はみんなバイブレーションが大好きだもんな」
 トッドは声を上げて笑うと部屋の照明を落し去って行った。


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