バットガールとキャットウーマン by Mr.X
(原題 Batgirl and Catwoman)
第四章
カタッカタッ! 皿が更に一センチ降下した。二人は疲労困憊だったが、又絶頂を求めて行動を開始した。
「私もう限界だわ!」
バットガールの下でキャットウーマンが絶望的に呟いた。
「もう失神しそう!」
「私も・・・」
バットガールも弱弱しく答えた。
「ここから逃げなきゃ、でもどうやって?」
下の方からブクブクという恐ろしい酸が沸き立つ音が聞こえて来た二人は、ぼうっとする頭で何とか脱出する方法を考えた。突然、キャットウーマンがバットガールをしっかりと締め付けそのまま動きを止めた。
「どうしたのキャットウーマン!気を失っては駄目!」
バットガールは、キャットウーマンが意識を失ったら蒙る事に成る“スキン・トリートメント”の恐ろしさに悲鳴を上げた。
「大丈夫。まだ負けてはいないわ」
セリーナが答えた、
「あそこ、部屋の向こう側・・・」
キャットウーマンが言った。二人が一緒に成って転がると、バットガールにも見える様になった。
窓の所に座って晩餐の魚を食べ終わり前足を舐めていたのは、茶色の猫だった。猫は、二匹の見たことも無い魚が乗っている魚を乗せる為の大きな皿を眺めていた。
「猫!」
バットガールは、驚いた拍子にキャットウーマンの潤滑液を吹き飛ばして大声を上げた。
「一体猫がどうしたって言うの!」
バットガールが叫んだ。
「只じっとしてて!」
キャットウーマンは、バットガールの背中の腰の上辺りを、殆ど身動き出来ない程しっかりと締め付け、自分だけは動ける様にした。セリーナはバーバラの背後にいる猫の眼を凝視し、暫く動かなかった。暫くの間、女と猫はじっと眼と眼を見詰め合っている。
今現在、皿は通常の速度で降下している。バーバラは、身を捩じらせ、ウィンチを止め様と無駄な試みを続けようとした。セリーナは、しっかりとバーバラを押さえ続け、ウィンチの動作を完全に無視していた。皿が容器に近付くに連れ、酸の音が次第に大きくなって行く。
バーバラは、皿の下側が沸き立つ酸に触れた時、戦慄が走り凍りついた。恐ろしい、苦痛に満ちた死迄数秒しか残されていなかった。
突然、例の猫が窓から飛び跳ねた。容器の所までの半分を一飛びした。そして、追われている野性の猫の様に、床を走りぬけ金属の階段に飛び上がるとウィンチのレバーの方へ向かった。少しの間そこに座わり、迷っている様に首を傾げ、興味深そうにレバーを見ていた。やがて猫は、両方の前足を伸ばし、ウィンチ・レバーに体重を掛けて完全に押し倒した。
機械が大きな音を立てると、皿が急激に停止した。そして、機械が大きなシューシュー音を立て、様々なピストンが動き出すと、皿が上昇し始め、容器の横の床の上に降りた。
二人は、素早く皿の上を転がり、冷たいコンクリートの床の上に降りた。バーバラは、近くにある小さな酸の溜りを見つけると、両手を伸ばし、拘束している縄をその酸の溜りに漬けた。少しすると、酸が縄を焼き切り、二人は自由を取り戻した。
「一体、貴方は何を・・・何が起こって・・・猫がどうやって・・・?」
バーバラは、脚と腰を縛っていた縄を取り除き終わり、完全に混乱状態で尋ねた。
セリーナは、バーバラの顎の先を持ち、眼を見据えて
「私がキャットウーマンと呼ばれてるのは伊達じゃないのよ」
キャットウーマンは、悪戯っぽい笑みを浮かべ、落ち着い深みのある悩ましい声で言った。
二人は、見詰めあいながらゆっくりと立ち上がった。セリーナの手がゆっくりとバーバラの顎から足の方へ移動して行った。二人は一緒に死の恐怖を味わった仲だった。二人は向かい合って佇んでいた。二人は震えていた。それは、冷たい石の床と、血管を流れる大量のアドレナリンのせいだった。二人とも裸だった。全身は汗にまみれ、濡れ光っていた。今までの出来事で完全に疲れ果てていた。
セリーナの、固く握り締めていた拳が緩み、ゆっくりとバーバラの少女の様に柔らかい頬を撫でた。セリーナは、バーバラの肌に触れるか触れないかの所で手を前後に動かし、優しくバーバラの頬を愛撫した。
バーバラは、セリーナを見詰め返しながら佇んでいた。彼女の下唇が興奮して少しわなないた。バーバラは手を挙げ、セリーナの左乳首を指でそっと撫でた。それはセリーナの乳首が漸く動く程度の微妙な強さだった。そしてバーバラは、指の腹で撫でながら、手をゆっくりとセリーナの巨大な胸の曲線に沿って下の方へ移動させて行った。優しく、セリーナの肌をゆっくりと官能的なタッチで撫でた。
セリーナは、暖かい波が背筋から方に向かって流れ出すと少しビクッとした。官能が徐々にセリーナをリラックスさせ落ち着いた幸福な気分にすると、セリーナの筋肉が張りを失って行った。セリーナの強張っていた顔が和らぎ、瞼を閉じ感覚に身を任せた。
セリーナは手を伸ばし、中指をゆっくりとバーバラの乳首に当てた。非常に注意深くそして微妙に、セリーナは指をバーバラの乳首の裏側の周囲に滑らせた。微妙に、半円を描く様に、軽く、くすぐる様に。
バーバラも快感にやや身を仰け反らせ、ゆっくりと眼を閉じた。太陽によって温められた海水の波が、浜辺を湿らせる様に、快感がバーバラの疲れ果てた裸の体を駆け巡ると、乳首がしこり、起立してゆく。バーバラは少し口を開き、頭を仰け反らせた。
セリーナは少し前へ進み、乳房の下側がバーバラの乳房の上側に軽く触れるほど近付いた。同時に、手をバーバラのウエストの周りを滑らせ、しっかりとそして優しくバーバラの背中の腰の辺りに手を置いた。
バーバラは、軽い衝撃に眼を開き、少しビクッとした。セリーナは頭を下げ、バーバラの明るい茶色の瞳を覗き込んだ。二人は長い間眼と眼を合わせ、心の中を見詰め合い、互いに抱きつつある性的な情動の波を感じ合った。それは、世界と切り離された魔法の球に包まれ、自分達だけの宇宙にいるような感覚だった。
注意深くそしてゆっくりと、セリーナは顔を下げ、そして首をかしげて唇をバーバラの唇へ近付けた。バーバラは眼を落し、無邪気にセリーナの口が次第に近付いて来るのを見ていた。バーバラは無意識に手を動かしセリーナを抱いた。バーバラの片手は、セリーナの腕の下に軽く触れ、そしてもう片方の手は肩の上に伸ばし、軽く黒髪に触れていた。
バーバラは、セリーナの唇が近づくと、暖かい息を唇で感じた。セリーナの唇が接触すると、重みのある、何とも言えない暖かさがバーバラの全身を巡った。セリーナはそっと、非常に微妙に頭を揺らし、自分の唇でバーバラの下唇を優しく撫でた。二人は、互いに相手の柔らかい唇に優しく触れあい焦らし合う様に、頭をゆっくりと小さな円を描くように動かした。そしてセリーナは、バーバラの下唇を自分の唇で軽く咥えて吸い込み、軽いキスをした。それは非常に繊細なもので、バーバラの口が殆ど動かないほどだった。無垢な少女は始めは反応を示さず、脱力したまま動かなかった。セリーナは、自分の口を、バーバラの両唇に重ね合わせ、辛うじて互いに触れ合う程度の軽いキスをした。それでもバーバラの反応は無かった。
セリーナは再度軽いキスをした。今回は、バーバラは唇を少し動かして反応を見せた。セリーナは、少し強く唇を押付けた。バーバラは反応を見せ、そっと首を前に傾げ唇をセリーナの唇に押付けた。二人はより接近し、ゆっくりと長い間、暖かくそして優しく唇を重ね合わせ続けた。
バーバラは、このような体験をした事は無かった。勿論、ここ数日は激しい性体験の連続だったが、この思いがけない、禁断の、とも言うべきの体験は異なっていた。セリーナは、繊細で官能的な動きでバーバラの眼を開かせ、バーバラ自身の中に隠されていた真に暖かく素晴らしい秘密に目覚めさせ、同時に彼女の性的嗜好を掘り起こしたのだった。バーバラは、他の女性と一緒にいて情熱を燃やせる事を知らなかった。
しかし今、紛れも無く非常に熱く昂ぶっているのだ。
二人はしっかりと抱き合い、互いに手で背中や肩を愛撫しながら濃厚なキスを交わした。やがてセリーナは頭を上げ、掌でバーバラの頬を覆い、もう一方の手で背中の腰の辺りを押し、先程セリーナが縛られていたベッドルームへと誘った。
バットガールは躊躇わず部屋へ歩み入ると、ゆっくりと大きなキングサイズのベッドに這い上がり、両脚を片側で折りたたんで座り、初心だが官能的な瞳でキャットウーマンに視線を送った。セリーナは素早くドアを閉め、バーバラとのアイコンタクトを維持したまま部屋を横切り、壁の前に置かれたテーブルの方へ歩いて行った。
テーブルの上には、先程セリーナを縛り、猿轡として使った何本かの黒い絹の細長い布が置いてあった。 その一本を取り上げ、布の両端を手に巻きつけ軽くピンと引っ張ったセリーナはバーバラに向かって歩いて行った。
バーバラは、肩を落としきつく眼を閉じて、従順な態度で身体を前へ傾けた。黒髪の女傑はバーバラの横に腰を下ろした。セリーナは、バーバラの腿を横切る様に布を置き、両手をバーバラの肩に伸ばした。そしてゆっくりとバーバラの両腕をゆっくりと優しく引きながら手首を交差させた。
性的期待感の波が全身を襲い、バーバラは胸が高鳴るのを感じた。現実に起こるとは思っても見なかった。セリーナは、どうバーバラに触ればいいか、どうしたら悦ぶか、その他バーバラの性的妄想の全てを知っていた。バーバラは開かれた本の様な存在だった。剥き出しのままを世界に曝け出していた。そして、この野性的でエロティックな女はその言葉の全てを読む事が出来た。
セリーナはバーバラの手を愉快そうに縛ったが、結び目はきついものではなかった。交差した手を掴み、もう一方の手で腕を掴んでバーバラの体勢を低くさせ、セリーナはバーバラを仰向けに寝かせた。そしてバーバラの腕を頭上に引き上げ、布の残りの部分を使ってベッドポストに結びつけた。
暫くすると、セリーナはもう一本布を取り上げ、ゆっくりとバーバラの顔へ近付けた。しっかりとバーバラの眼に押付け、それを頭に巻きつけ目隠しをした。
そしてセリーナはバーバラの上に身を乗り出し暫くの間、若い無垢で美しい顔の覗き込んでいた。セリーナは、ゆっくりとそして焦らす様に、バーバラの濡れた唇にキスをし始めた。二人は我を忘れて互いにキスに次ぐキスの交歓を繰り返した。
暫く情熱的な交歓を繰り返した後、セリーナは少し頭を擡げ、バーバラの胸を見下ろした。若い娘を見下ろしながら、セリーナは愉悦の笑みを浮かべ、手をバーバラの剥き出しの肩からゆっくりと優しく張りの有る熟した胸へ移動させて行った。
セリーナは、屹立している乳首の周りの敏感な肌を、踊る様な指使いでゆっくりと優しく円を描く様に撫でた。そして、中指の爪で、バーバラの膨らんだ乳首を軽く掻いた。バーバラは予期せぬ、しかし愉悦の感覚に呻き声を上げた。
セリーナは、三本の指を全て使って、バーバラの乳房の下側を優しくくすぐった。乳首を焦らし、イライラさせるかの様に、時折一寸引っ掻いたり、当ったりはしたが、乳房の形が変わったり動いたりする程の圧力は決して加えなかった。
胸がヒクつき始め、バーバラはソフトな軽い呻き声を立てながら胸をセリーナの手の方へ近付け様とした。
セリーナは素早く手を引き、バーバラを焦らし続けた。セリーナの指は、若いヒロインの張りの有る柔らかい肌の表面で蠢いていた。丁度、美味しいジューシーな肌の上にホバリングし、決して着陸しない蚊の様に。
官能と期待感が膨らむと、バットガールは胸は左右に揺らし、腿をゆっくりと擦り合わせた。
『セリーナ、何時触ってくれるの? 何時、胸を揉んでくれるの? お願い、今!今直ぐ!』
しかし、焦らしは続いた。休む事無く、無慈悲に、それを止めても高まった官能的興奮が萎える事無く維持されるのに充分な程長い間続いた。
夫々の乳房はがより柔らかくそして熟して行く。何時でも一気に爆発する準備は整った。
バーバラは、苦悶に身を捩り、それからの解放を求め荒い息をし始めた。バーバラの官能の悶えは、セリーナの暖かく柔らかな手がゆっくりと腹部を通って股間へ移動して行くと複雑なものと成った。
最初は何も感じなかった。胸への刺激を受けながらも身体は落ち着いてきた。
『彼女どうするつもり?』
バーバラは思った。
『何を・・・・』
しかし、セリーナの動きへの問いかけが終るや否や、バーバラは興奮して引き攣るように身を硬くした。セリーナがゆっくりと腿の内側に触れ、両脚の間の肌を優しくゆっくり指を滑らせて行くと、バーバラは小さな呻き声を上げた。
女傑の指を使った焦らしに、バーバラは腰を揺らし身を捩った。セリーナの指は、ゆっくりの秘所に近付いて行き、そして遠ざかった。セリーナは、この動作を続けながら、バーバラの胸部に身を乗り出し、再度柔らかく熟した乳首を弄んだ。セリーナは鼻で軽く愛撫した後、唇でゆっくりとそしてソフトに咥えた。それは、乳首が殆ど動かない程度、且つバーバラの緊張が続く程度の刺激を与え続ける程度だった。
バタン!
二人は恐怖に凍りついた。魚工場のドアが勢い良く開かれ、沢山の男達の音が工場内にこだました。
「畜生!」
自分で縄を解きベッドから飛び降りたバットガールが声を張り上げた。
「ここから直ぐ逃げなければ」
バットガールが起き上がるのを助けながらキャットウーマンが言った。
「私達が酸で溶かされてしまったと思ってくれれば良いんだけど」
二人は洋服ダンスから、彼女達の衣装を取り出し、寝室の横の大きな窓に向かった。衣装を身に付けながら苦労して窓をよじ登り、二人は裏通りへ、そして安全地帯へ飛び降りた。
キャットウーマンの隠れ家に戻ったヒロインは、座って、三人の悪党との遭遇について思案していた。
「ここに来るの、誰かに見られたと思う?」
バットガールが無邪気に尋ねた。
「全然、そんな事ないわよ」
キャットウーマンは皮肉るように首を振りながら答えた
「私達が乗ったタクシーの運ちゃんを始め、通りにいた人の中で、半分裸で過激な衣装を着て、しかもマスクまでしている女二人に気付く者なんかいる訳ないじゃない。」
「そうね、そうだと思うわ」
バットガールは、軽く頭を叩いて言った。
「日本人旅行者達が、何の写真を取っているのかなあ、と不思議に思ったから」
「それで、お父・・・あーつまり、ゴードン署長の事だけど」
バットガールが言った。
「彼が言うには、リドラーが、貴方が誘拐された博物館に“なぞなぞ(riddle)”を残して行ったそうよ」
「えー、それは大変」
キャットウーマンは、嫌悪感を持った眼を廻しながら答えた。
「またくだらないなぞなぞか。あいつはキチガイか何かよ。一体どんな馬鹿が衣装を着て、そんな愚かな事をしながら歩き回るっていうの?」
キャットウーマンは怒りを露にして言った。バーバラは、メモを脇において、白いビキニ衣装とマスクを着けて座っているキャットウーマンに眉を上げて視線を送った。キャットウーマンは自分の体に眼を落し、そしてムカついた様に頷いた。
「オーケー・・・分かったわ!その馬鹿馬鹿しいものを聞こうじゃないの」
「なぞなぞは二つの部分があるから良く聞いて」
バーバラが説明した。
「全ての物は私と同じくらい軽い、しかし、私は砲弾と同じくらい速く落ちる・・・さて、私は何でしょう?」
「フム・・・」
キャットウーマンは、なぞなぞの答えを見つけ様と頭脳を働かせたキャットウーマンは、昏睡状態に陥るのではないかと思われた。バーバラは、キャットウーマンの黒髪の上で小さな鳥達が円を描いて飛んでいるのが見える様に思えた。
「羽(feather)よ!」
バットガールは、キャットウーマンの腕を軽く叩きながら物知り顔で言った。
「こんな簡単なのも分からないの?」
「えーと、そうね・・・このなぞなぞは簡単すぎたわね。次のは何!」
キャットウーマンは、叫び声を上げ、不快そうな眼でバットガールを見た。
「オーケー」
バットガールは元気付けるように明るい声で言った。
「人は私を取り除きながら生きる、しかし終いには、結局、私に成る」
「ウシシシ・・簡単!」
キャットウーマンは、バットガールの手にあるメモを指差しながら言った、
「糞(shit)!」
「糞ですって?」
バットガールは驚いて尋ねた。
「そう、糞!人はいつも出すでしょう、だけど死んだら、“くそう(火葬:苦しいしゃれ:訳者)”(deep shit)でしょう」
肉感的な黒髪の女は、腕を組んで深く椅子に座り直し、誇らしげな笑みを浮かべて言った。
「リドラーの“なぞなぞ”も一緒にして」
バットガールが言った。
「羽(feather)・・・糞(shit)・・・羽糞(Fether Shit)・・・違うわね」
バットガールはイラついた様に言った。
「私、二番目のなぞなぞの答えは埃(dust)だと思うわ。私達何時も埃を払うでしょう、そして死んだら埃になっちゃう。そして、羽と一緒にして “feather duster(羽で出来たハタキ)”
「あっ、そうだ、“Smarty pants”(知ったかぶりをして人に文句ばかりつける人の意)さーん・・・あるいはショーツ・・・ソング・・・何でも良いわ・・・」
キャットウーマンは、慌てて机に駆け寄ると、電話帳を取り上げ、叩き付ける様に机に置いてページを捲り始めた。そして座り直し、満足したような笑みを浮かべた。
「ここを見て!」
キャットウーマンが電話帳を指差した。バットガールがその指の先を見ると、
“FeatherShitte 製作所(Manufacururing)”と書かれて有った。
「げっ!」
バットガールは、額に手を当て首を振りながら唸った。
「もっと早くに気付くべきだったわ」
バットガールが呟いた。二人は、屋根の上に立って、隣の大きな工場を見下ろしていた。
「廃棄された、FeatherShitte Feather Duster 工場 Falling Feather 通り」
「うわ、何と言う名前なの!」
キャットウーマンが言った。
「まるで誰かが、子供の為のショーか何かの為に考え出したような名前じゃない」
「もし、そうだとしたら」
バーバラが答えた、
「私達は、喰うに困って経歴を駄目にする様な仕事に出演する切羽詰った二人の女優って事に成るわね。つまり実際、どんな馬鹿女が活劇をやるのにこんな衣装を着るの」
二人は長い間互いに見合った。そして愚かな考えを止め様として首を振った。
「私はそうじゃないわ。私が最後にしたい事は、金に困り、太って仕事にあぶれた女優に成って、スタートレック・エピソードを終りにしちゃう事よ」
キャットウーマンが答えた。
「言ったわね!それじゃ二手に分かれましょう」
バットガールが言った。
「私はあのドアから侵入するから、貴方は後ろへ廻って入り口を探して下さる」
「私はそれで良いわ」
キャットウーマンは言うと、屋根から暗闇の中へ飛び降り、巨大な建物の反対側へ向かった。
バーバラが古い建物に侵入するのは困難ではなかった。その工場は古い型の鍵システムを使っていた。その為、パスキーを使って警察が容易に出入り出来る様に成っていた。勿論、署長の娘である事を利用して、この様な非常事態の為に彼の鍵を複製したのだった。
バットガールが侵入した場所は、薄い壁で仕切られたオフィスの迷路の様な所だった。青灰色の照明が並び、工場独特の窓からは、街路灯の鈍い光が差し込んでいた。
バットガールは、気味の悪い暗闇の中をゆっくりと歩いて行った。暫くして、バットガールは、工場に続いていると思われるホールに辿り着いた。
突然、バットガールの左右両側の開かれた二つのドアの影から、二体の黒い物体がバットガールの腿と脚の襲い掛かり、腕をバットガールの腿とふくらはぎに巻きついた。バットガールが身を捩じらせてもがいていると、三番目の物体が背後から近付き、片手でバットガールのウエストの周りに巻きついた。同時にもう一本の腕が小さな四角い布で彼女の鼻と口を塞いだ。麻酔剤の匂いが無防備な肺を犯すと、パニックに陥ったバーバラは眼を大きく見開いた。バットガールは悲鳴を上げたが、その声はクロロホルムを染み込ませた綿の束によって消された。三人の男は、もがくヒロインを床に引き倒して押さえつけた。暗闇が彼女を包み、バットガールの意識は薄れて行った。
つづく
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