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 第六話:恥辱の身仕舞い

 腹田の話に矛盾を感じた美佐代は、今までの気強さを取り戻した。
不敵な微笑みを浮かべて彼女は言葉を続ける。

 「おかしな話しですね・・・校長先生」
 「そうなんじゃよ、用事がある時だけいつも向こうから勝手にくるんじゃよ」

 腹田にとっては、別に矛盾する話ではなかった。
現に目の前にある日本茶を美味そうにゴクリと飲み干している。

 美佐代は、その様な彼の姿を見て、それは焦りを隠す演技だと感じてしまった。
ほんの一瞬見せた彼の返答の遅れが、追いつめられた彼女の冷静な判断を奪っているのだ。
こうなっては、徹底的に自分の感じた話の矛盾を追求していくしかなかった。

 「それでは、今回のお返事はどのようにしてなさるおつもりですか?」
 「郵送じゃよ、撮影が済んだら資料と一緒に全て送り返すのじゃよ」

 腹田は、何故、美佐代がこうも強気な態度を示しているのかが分からなかった。
現に彼の顔は、部下の陰山とともにキョトンとした表情をしている。

 若干の不安を抱きながらも美佐代は、強気の姿勢を崩さず話を進めた。
連絡も満足に取れない相手なのにいったいどこへ郵送するのかを問い詰めた。

 「宛先は?」
 「ここじゃよ!」

 腹田は、別段隠すような素振りも見せず彼女が手にしているファイルを指差した。
そのファイルの表紙には、美佐代の妹である美加が受験する高校の住所が印刷されている。

 「しかし、どうしても先生が嫌だと言うのならば・・・まあ、うちの学校としても助かるのじゃがのぉ〜」

 腹田は、内心焦っていた。
実際のところ美佐代の移籍の話がこじれても困るし、本当に移籍されても困ってしまう。
結局どうしようもない状況下では、目の前に座っている美しい美佐代を、自分の思うがままにするしかないのだ。
あらゆる意味を込めて...。

 ここにきてようやく美佐代は、自分が大きな勘違いをしていたことに気が付いた。
腹田が見せた一瞬の返答の遅れ...。
それは、彼がウソをついているのではないと言う事実に。

 「わ、分かりました・・・お引き受けいたします」

 美佐代は、一度は取り戻した自分のプライドを彼らに再び崩される前に頭を下げた。
ここで無駄な意地を張ってみせたところで、結局は追いつめられて悔しい思いをしてしまう。
そのような思いはもう味わいたくなかった。
それに、少しでも時間を稼げればきっといつかは...。

 腹田は、相変わらず淫猥な笑みを浮かべ続けていた。
無事に写真撮影が済めば、次の段階へと進む事ができる。
そうなれば...。

 「じゃあ、隣の部屋で着替えてくれるかのぉ〜・・・箱の中に入っていたメモに従って」

 腹田の指示に従い美佐代は、レオタードの入った小さな箱を手に立ち上がった。
そしてキリッとしたキツイまなざしで腹田の隣に座る陰山を睨み付ける。

 「大丈夫じゃよ、森川先生、覗きや隠しカメラなど一切心配しなくても」

 彼女の考えを全て読み取っているかのごとく腹田は言った。
それは、別に急いで彼女の裸を見なくてもよい、と言う余裕の現われでもある。

 美佐代は、最後まで本来の自分自身を貫き通した。
いつもと同じ凛とした表情で隣の部屋に通じる襖の前まで行くと、彼らに背を向けたまま一言だけ呟いた。

 「では、失礼します」

 シュッと軽い音を立て襖を開けると、彼女はそのまま奥へと進んだ。
そして後ろ手でトンと軽い音を残し、醜き上司との間に薄い襖で隔たりを作る。

 美佐代が入った部屋は、寝泊まりができるような感じの部屋であった。
広さは先ほどまで食事を取っていた部屋とさほど変わらない。
彼女は、部屋の奥まで進むと濃いベージュのスーツの上着を脱ぎ、用意してあるハンガーにかけた。
続いて白いブラウスのボタンを全て外すと、教頭の陰山から受け取ったレオタードが入っている小さな箱を開けた。

 『な、何・・・真っ白じゃない、このレオタードは・・・』

 彼女は、驚いた。
よりによって彼らが自分に着ろと命じたレオタードが、真っ白であったからである。
しかも下着を着けるなと言う指示まで出ている。
レオタードの様な薄い生地では、簡単に透けてしまい体のラインはクッキリと浮かび上がる。
彼らの言う通りにすれば、ほとんど裸同然の姿になってしまうのだ。

美佐代は、これならばいっそのこと裸の方がマシかも知れないと思った。
だが彼女は、これも妹の将来の為だと半ば諦め、スカートのホックを外しファスナーを降ろした。
締め付ける力を失ったスカートは、シュルルとスカートの裏地とパンストが擦れあう音を残してまっさらな畳の上へ落ちる。
前をはだけたブラウスとパンスト姿で彼女は、一歩前に進むと落ちているスカートを拾い上げた。
縦に二つ折りにたたむと上着のかかっているハンガーへと引っかける。

 続いて、パンストの腰の部分に両手を差し入れ静かに降ろしていく。
薄い半透明の生地の下からは、引き締まった肉付きのよい美脚が姿を現す。

 『はぁ・・・』

 美佐代は深い溜め息を付きながら、洒落たレースで飾られたシルクのパンティを躊躇せず一気に脱ぎ去った。
そしてそそくさと恥ずかしい内側の部分を隠すように丸めて、上着のポケットへとしまい込む。
その代わりに白いレオタードを手に取り、学生時代に新体操で鍛え上げられた美脚を通した。
キュッ、キュッ、キュッ、と見ているだけで生唾が込み上げてきそうな尻肉を左右に振りながら女の大事な部分を覆い隠す。
だが、それは少し小さ目のサイズなのか、大事な女の柔肉に少し食い込む感じがする。

 多少サイズの事を気にしながらもボタンを外したブラウスを脱ぎ去り、真っ白な肌を露わにした。

 両手を背中に回し、プツッとブラのホックを外す。
体に少々のブラの跡を残し、小振りではあるがプルンとした美乳が外気にさらされた。
二つの胸の中心はツンと上を向き、彼女の動きに合わせ上下左右に揺れ動いている。
美佐代は、腰の部分で絡まっているレオタードの肩紐を引き上げ、片方の乳房ずつその生地の中へと収め込み始めた。

 『やっぱり、小さい・・・』

 それは、彼女の胸が大きいからではない。
与えられたレオタードのサイズが、ワン・サイズほど小さいからである。

 今、美佐代が身に着けようとしているそのレオタードは、送り主である「鰐淵 玄馬」本人が選んだ品であった。
彼は、彼女が学生の頃に新体操で活躍をしていた時から目を付けていた。
まさに、「神の作った芸術品」と日々絶賛するほどのファンであったのだ。
そんな彼が、美佐代のサイズを間違うはずはない。
そう、あえてワン・サイス小さいレオタードを選んだのである。
しかも純白のレオタードである。
それは、これから行う「証拠写真」のためでもあった。

 美佐代は、自分では気がついていない美しき乳房をレオタードの生地の中へと静かに押し込んでいた。
ゆっくりと、そして静かに。
それは、二つの胸の先に存在するまだ男を知らない桜色の乳首を刺激しないためである。
もしもうかつに刺激を与えてしまっては、敏感なその部分はすぐに固くなり隆起してしまう。
そうなってしまっては、隣の部屋で待つ「脂肪のかたまり」と「生きた骸骨標本」を喜ばせてしまうだけである。

 彼女は、最後に両手で自分の胸のふくらみを押さえバランスよくその位置を調整した。

 『ハミ出さないかしら・・・』

 彼女は、女として最も恥ずかしい部分のムダ毛がこぼれ出ていないか自分の股間を覗き込んだ。
やはりワン・サイズ小さいレオタードだけあって、女の部部は普段よりプックリと盛り上がっているようである。
美佐代は、もう一度指先を股間とレオタードの生地の間に滑り込ませて股間に食い込む位置を整えた。
最後の仕上げは、程よいサイズのヒップを包み込む生地をなるべく広げるようにして下へと引っ張り降ろした。

 腹田と陰山は、隣の部屋で着替える美佐代の姿を想像しながらその時をただひたすら無言で待ち続けていた。
すでに二人とも股間を固くさせ、その先からは悪臭が漂ってきそうな透明の液体が染み出している。
隣の部屋から聞こえてくる僅かな着替えの音だけで、ここまで興奮しているのであった。

 その美佐代の着替えの音がなくなり、しばらく経ってから彼女の声が隣の部屋から聞こえてきた。

 「終わりました」

 二人は、お互いの醜い顔をに見つめ合い、今までにないほどニヤリと微笑んだ。


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