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  『不可侵領域2 〜 大学院生 神崎 瞳〜』                           久遠真人 作         

【1】目覚め

女は肩に走る鈍い痛みと共に泥沼のような眠りからゆっくりと目を覚ました。
重たい瞼をゆっくりと開けると、その隙間から突き刺すような強い光が目を貫いた。

(ここはどこ?私は?・・・どうしたのかしら?なにどうなって?)

女は強い明かりに顔を背け、まだ覚醒しきってない頭で必死に記憶をまさぐりながら、体を動かそうとする。
気だるげな体を動かそうとしてピクリとも体が動かない事に気がついた。

(・・・あれ?)

強い光に少し慣れてきた目を細めながら自分の体を見下ろす。その時になって自分が両手を頭上に引き上げられて『人』型に吊られている事を思い出した。

「はがぁ、はぁぁぁ」

突然に秘肉に捻り込まれた淫具が激しく捏ね繰りまわされ、激しい快楽が背筋を貫いた。
だが、声を発そうにも口に噛まされた口枷により言葉にならなかった。

パニックに陥り必死に体を動かすも、釣り上げられた両手はガッチリと固定されてビクともせず、大きく左右に裂かれたスラリとした両脚は何本もの革のベルトによって厳重に固定され、自由に動かせるのは首から上のみであった。

「やっと起きたの?まだまだこれからだよ?」

スポットライトの中にみえる人影が女に楽しそうに囁きかける。
混濁した意識では、それが誰かも思い出すことが難しかった。
女は混乱する頭で必死に記憶を探った。



【2】接触

どんよりとした雲が空を覆い今にも雨が降り出しそうな土曜日の昼。生徒が下校を始めた高校の前に一台のバイクが停止し、真っ赤なライダースーツに身を包んだ女性が颯爽と降り立った。
ピッタリのしたライダースーツは、細身だが豊満な乳房や尻肉を浮き出させていた。
女性がヘルメットを脱ぐと、そこには猫科の動物を思わせる勝気な瞳、少しクセのある短い髪、健康そうな日焼けした褐色の肌をもった美貌が露になった。

「ここが結衣の赴任していた高校ね」


神崎 瞳(かんざき ひとみ)が、親友の草薙 結衣(くさなぎ ゆい)失踪を警察からの連絡で知ったのはGWから1週間ほど経過した金曜日の夜だった。
地元の高校に赴任した結衣が、大型連休を利用してこれから東京に戻ると連絡を受けたのは、GW前日の夜だった。
結衣とは子供の頃から空手の全国大会にでる度に顔を合わす腐れ縁で、結衣が東京に出てきたと知ってからは、暇さえさえあれば一緒に遊び歩く仲であった。
結局、GW中に結衣からの連絡はなく、瞳から何度か携帯に連絡したが繋がらなかった。
その後、尋ねてきた刑事の話では、GWがあけても結衣が出勤してこない事を不審に思った赴任先の高校から捜索依頼が出され、携帯の通話記録から最後に結衣と話をした瞳へ聞き込みに来たとの事であった。

「東京に帰ったら飲むわよ!瞳にはいっぱい愚痴に付き合ってもらうからね?!」

いつも通り元気だった親友の最後の声を思い出しだすと、瞳はいてもたってもいられなかった。
その夜、結衣の実家に連絡して母親が心労で入院して詳しい話を聞けぬとわかると、愛車のバイクに跨り結衣の赴任先である街まで深夜の高速を駆け抜けてきた。


「・・・どいつもこいつも、なんなのよ」

瞳が下校途中の生徒に話しかけると、その美貌と豊満なプロポーションを浮き彫りにしたライダースーツ姿に好色そうに生徒たちはすぐさま寄って来たが、話題が結衣の話になった途端、口を紡ぎ逃げるように去っていった。

「何かを知っている・・・・・・みたい・・・なんだけどね」

小一時間ほど何人かの生徒に声をかけるも、結局、何も収穫を得る事ができなかった。

「皆、怯えているんだよ」

仕方なく出直そうとバイクに跨った瞳、その背後から声をかけられたのはその時だった。
振り向くと年は40代だろうか、よれよれのスーツに身を包んだ冴えない雰囲気の背の低い男が立っていた。

「怯えている・・・何に?貴方は誰?」
「この街は、凶悪な力が支配している。無闇に首を突っ込むとどうなるか分からないぜ。俺としては、首を突っ込まず、このまま帰る事をおススメするけどなぁ?」

そう言うと、懐から名刺を取り出した。

「・・・フリーライター・・・黒崎 圭吾・・・」
「女性教師失踪を調べているのだが、皆、口が固くってなぁ。お前さんと違って、怪しい親父じゃぁ寄っても来てくれりゃしない」

そういうと黒崎と名乗る男は、頭をかきながら苦笑いした。
その姿に瞳もつられて、口元を綻ばせた。
黒崎は、周囲を警戒するように見渡すと、そっと瞳に囁いた。

「引く気がないのなら、よかったら情報交換しないか? 0時以降にはいつもそこにいるから、気が向いたら寄ってくれ」

通り過ぎ際に瞳の掌にカードを押し付けると、男はそそくさと去っていった。

「・・・BAR マルキド?」

お手渡された真っ黒いカードには、店名と裏に簡単な地図が書いてあった。



【3】境界線


「・・・ここね」

黒崎に教えられたバーは、繁華街の曲がりくねった路地裏抜けた先に佇む古いビルの2階にあった。
黒崎と別れた後、結衣に弟がいる事を思い出しマンションを尋ねたが、不在であった。新聞入れに溜まった新聞の量から、ここ数日は帰宅していないようであった。
結局、瞳はその後も収穫を得る事が出来ず、しょうがなく黒崎の誘いに乗ることにした。だが、お酒など飲む気はなく、情報を得次第ホテルへ帰るつもりなので、バイクを繁華街近くの駐車場に止めると、ライダースーツ姿でバーを訪れた。
古びたエレベータで3階に降りると、薄暗く狭い通路の奥に重い鉄製の扉の入り口があった。
瞳が入り口の前へ立つと扉が重々しく開き、中から出迎えた黒服が瞳を店内に招き入れた。
案内された店内は、2階と3階が吹き抜けになっており、2階に設置されたステージを見下ろすようにボックス席が配置されていた。照明が抑えられている為に店内は薄暗く、隣のボックス席の様子も良くわからない状態だが、興奮したようにざわめく人の気配で大勢の人が店内にいるのが伺える。

(高級そうなお店だけど・・・本当に、あんな親父がいるのかしら?)

瞳は、昼に会ったヨレヨレのスーツを着込んだ黒崎の容貌を思い浮かべて、そのミスマッチ差に違和感を感じた。
黒服によって案内されたのは、ステージ最前列中央のボックス席だった。そこには、昼間に会った時と同じ服装で黒崎が待っていた。既に何杯かお酒を飲んでいるのだろう、瞳を出迎えた時は少し赤ら顔であった。

「やっぱり来たな。俺は忠告したぜ?」
「・・・それでも、親友を見つけ出し、助けたいの」
「・・・・・・」
「だから・・・なにか知っている事があるのなら教えて!」

真っ直ぐ見つめ、真剣に訴える瞳に、黒崎はそれまでのニヤケ顔から一転して鋭い眼光で見つめ返す。

「知らない方が良い事も世の中にある。それに、死ぬより酷い目にあうかもしれないぜ?それでも頑張れる覚悟が、お前さんにあるのかい?」
「・・・・・・あるわ」

そう言い放った瞳を鋭い眼光で見上げながら片手を上げると、暗闇の中から黒服によってそっと真紅のカクテルがテーブルの上に置かれた。

「気付け薬だ。飲んどいた方が良いぜ」

瞳は、カクテルをジッと凝視すると、ソファに座り黙って一気に飲み干した。

「いい飲みっぷりだ。じゃぁ、約束通り俺の知っている事を見せてやろう」

それを合図だったのだろうか、薄暗かった店内の照明が完全に落ち、眩い閃光によってステージが照ら幕が引き上げられた。


突然、目の前が明るくなり、最初、それがなんであるか瞳にはわからなかった。
ゴロゴロと重たい滑車の音ともに、ステージ中央にそれが引きずれ出された。
それは、大小滑車や鎖の垂れ下がった真っ黒な大きな門のような拘束台であった。
そしてその拘束台から白いモノが吊るされて蠢いていた。
徐々に光に目が慣れてくると、瞳はそれが両手を高々と上げさせされて吊るされた全裸の女性である事に気がついた。両足は足首、太股に巻きつけられた幅広のベルトから伸びた鎖によって大きく左右に割られ、まるで『内』型のように貼り付けられていた。
股の間では、前後の穴に2本のドス黒い極太バイブレーターが捻じ込まれ、唸りを上げ愛液を周囲へ撒き散らしている。
巨大に肥大した乳首とクリトリスには、無残にもピアスが打ち込まれ、細いワイヤーによって頭上に吊るされ引っ張られていた。時折、女体が痙攣するたびにその振動が張り詰めたワイヤーに伝わり震える。
口には口枷を噛まされ、喘ぎとも悲鳴とつかないくごもった声が瞳の耳まで届いた。
既に何時間も責められ続けていたのだろう、刺青と鞭の赤い筋の刻まれた裸体は、汗と涙、涎によってグッショリを濡れ、痙攣するたびにスポットライトの光を反射してキラキラと光った。
その裸体が快楽に身をうねらせるたびに、体に絡みつくように彫られた大蛇の刺青が艶かしく蠢いている。
だが瞳を一番驚かせたのは、その快楽に痙攣する肉塊が知った人物であるからであった。

「あれがお前さんの探していた、親友の草薙 結衣だよ」

耳元で囁く黒崎の言葉は、瞳の耳には届いてなかった。



【4】変わり果てた親友

何も考えられなかった、気が付いた時には瞳は席を飛び出しステージに駆け寄っていた。
途中、立ち塞がった黒服を何人もなぎ倒した。
ステージの上によじ登ると、強力なスポットライトの光で目が眩みながらも、なんとか結衣の拘束を解いていく。

「結衣!結衣!!」

新手を警戒しつつ、ぐったりした結衣を揺り起こす。
拘束を解かれた結衣は、どこか焦点の合わない目を瞳に向けるとニッコリ微笑む。

「すぐに、こいつら全員しばき倒して、連れ帰ってあげるからね」

そういうとステージに上がってきた黒服たちを次から次へと悶絶させていく。
その光景を、まるでショーかのように観客は拍手し歓声をあげる。その店内の異様な空気に瞳は寒気を覚えた。

「狂ってるわ。ここにいるヤツら全員まともじゃない!」

ステージに上ってきた最後の黒服にまわし蹴りでステージ下に吹き飛ばすと、結衣の元へ駆け戻ろうとした。

「さーて、親友を無事に見つけることが出来たが・・・お前さん、この後はどうするつもりだ?」
「・・・もちろん、ここから助け出すわ!」

いつのまにか背後に回りこまれた事に内心焦りながら、ゆっくりと瞳が振り返るとステージ先に黒崎が立っていた。
瞳はゆっくりと立ち位置を変え、拘束台に寄りかかるように座り込んでいる結衣を背後に庇う様に立つ。

「彼女がそれを望まなかったら・・・どうするのかね?」
「何を馬鹿な事を!そんな訳ないでしょう!!」
「そうかな?」

瞳が飛びかかろうとした瞬間、黒崎の背後でいつのまにか光量を落とされていたスポットライトが強烈な光を放った。

「しまった!!」

瞳は強烈な閃光をまともに見てしまい、一時的に視力を失った。

「瞳・・・こっちよ」

突然、それまで大人しかった結衣が目が眩んだ瞳の両手を掴むと誘導するように引っ張った。

「結衣?!大丈夫なの?」
「いいからこっち来て!」

結衣は、先ほどまでグッタリしていたとは思えない力強さで瞳をグイグイと引っ張っていく。目の眩んでいる瞳には転ばずについて行くのがやっとである。


・・・ガチャリッ

「・・・え?」

いつまにか結衣の手は離され、代わりに手首にズッシリと重たい感触が巻きついてきた。
慌てて手を動かすと、両手首がガッチリと何かに固定され、ジャラリと鎖の擦れるような嫌な音が鳴り響いた。
徐々に回復しだした視力が捉えたのは、自分の両手に嵌められた金属製手枷であった。その手枷から伸びた鎖がジャラジャラと巻き上げられ両手が頭上へと引っ張られていく。慌てて拘束台の操作盤をみると、巻き取りスイッチを押している結衣の姿が目に入った。

「結衣?結衣?!・・・これはどういう事?ねぇ、早く外して!!」

瞳の必死の訴えに、優衣はニッコリと微笑み淡々と巻き上げ作業を行っている。
そうする内に、どんどんと巻き上げられ瞳が爪先立ちでやっと立てるぐらいの高さになるとやっと停止した。

「どうしちゃったの結衣?早く正気に戻って!!」

必死で訴える瞳を無視し、結衣は瞳の体に次々と幅広のベルトを巻きつけていく。そして全てベルトを巻きつけ終わると、今度は両足を左右に開くようにベルトから伸びた鎖を巻き取り始めた。

「ヒッ、いやっ!やめてっ結衣!!」

瞳は首を振り必死で抵抗するが機械の巻き取りには敵わず、無残にも大きく足を広げた『人』型へと拘束させてしまった。

「結衣、親友の瞳はお前をここから連れ出そうとしたんだぞ?」
「いくら親友の瞳でも、私からこの快楽を取り上げるなんて許せない!!」

黒崎の言葉に、結衣は鬼気迫る目で瞳を見上げる。

「でも・・・瞳もきっと味わえば分かってくれるよね」
「ヒッ?!」

結衣は一転して笑顔に戻ると、瞳のライダースーツへと手を伸ばし首元のファスナーをゆっくりと引き下ろし始めた。

「たっぷり、教えてあげるわね・・・瞳にも牝の喜びをね」

ファスナーを首元から腰の下まで下げられ左右に押し広げられると、窮屈に押し込められていた美乳が弾ける様に飛び出した。結衣はナイフ取り出すと瞳の露出した肌に刃を這わしていく。

「動くと・・・綺麗な肌が切れちゃうわよ」
「いやぁぁっ!結衣ぃ、やめてぇぇぇ!!」
「だーめー」

涙を流しながら訴える瞳の声をうっとり聞きながら、結衣は下着を次々と切り刻み剥ぎ取っていく。



助けようとした親友に裏切られ調教され泣き叫ぶ瞳の姿に、店内は異様な興奮に包まれていた。

「忠告しただろう?首を突っ込むな・・・とな」

そう呟くと黒崎は瞳の悲鳴と哀願が響くステージに背を向け、店を後にした。

   


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