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 バットガールとワンダーウーマン(テイク2)    第二章

太陽がさんさんと輝く青空の下、一機の水上飛行機が湖に着水し、ゆっくりとドックへ向かっていた。ここはゴッサムシティハーバーの南方に数マイルほど飛んだ地点、ロード・イージーストリートの所有する島である。もっとも厳密には島とは言えないだろう。泥地と沼地が連なって、本土とゆるやかにつながっているからだ。ゴッサムシティから、船で4時間、小型飛行機で1時間半かかるこの島は、結果として世間から隔絶された強固な要塞島となっているのが現状だった。

この島にはかつて、小さな村が存在していた。今ではすっかり見られなくなった光景ではあるが、島の半分を製材工場が仕切っていた時代には、島中が活気に満ちていたものだった。本土とつながる道路を維持していたのもこの工場であったが、やがてこの工場が倒産してしまうと村はゴーストタウンに変わり、道路もあちこちで不通となっていった。後年、島を買い取ったロード・イージーストリートであったが、彼は道路が寸断された状態のまま放っておくことに決めた。その結果、この島へは海路と空路でしかアクセスできないようになっている。もっとも、島は険しい崖と危険な暗礁に囲まれているために、海路も決して安全とは言えない。安全に島を訪れたい者は、飛行機を島の中央にある湖に下ろすほかなかった。

この湖は、製材工場が丸太の運搬に使っていた大きな人造の淡水湖である。湖から流れ出た水はグロウスターの滝へ流れ込んでいた。これは唯一とも言える島の見所で、ロード・イージーストリートが島を購入するまではかなりポピュラーな観光地でもあった。この滝は海に面した崖に位置しており、約100フィートの高さを勢いよく下った水は、海に口を開いた岩屋へとなだれ落ちるのだ。そう、実は滝も岩屋も製材工場が建設したものである。湖に集めた丸太を滝から落として海岸に運び、岩屋に横付けした船に積み込んで輸送していたのだ。だが現在残っているものといえば、うち捨てられたビル、錆びついた老朽船、そして湖の水位を調節するために作られた導水管くらいであった。製材工場は、水の流れを制御するために導水管をつねに開けたり閉めたりしていたためか、これだけは非常に良好な整備状態で残されていた。

ドックに係留された飛行機から降り立ったのはバーバラ・ゴードンであった。出迎えにきていたハンサムな執事はそつなく彼女のスーツケースやカバンを手にすると、すぐそばに止めたジープまで先導して歩いた。

「お客様は大勢いらっしゃっているのかしら?」

バーバラは彼に笑いかけた。

「それほど多くはありません、マダム。おそらく6、7人ではないでしょうか」

と執事は答えたが、若い少女を振り返ることも笑顔を見せることも無かった。

その日は燃えるように暑い、典型的な夏の日だった。華やかなサマードレスに身を包んだバーバラは、汗を浮かべた田舎の学生のように見えることだろう。ここ、ロードの領地で出会う人に対しては、全てこの態度――おずおずとした純真な少女というイメージで通すことに彼女は決めていた。

(私のことを無害な小娘と思ってくれた方が、仕事がやりやすいものね)

こうしてバーバラをのせたジープは一路、ロード・イージーストリートの邸宅へと向かった。

* * *

その建物の第一印象、それは「場違い」というものであった。まるで巨大な神の手が空から下りてきて、つまんでいた古いビクトリア朝風大邸宅を、島のこの狭い一画にポトリと落してしまったかのようだ。小高い丘の上に立つその邸宅からは、延々と連なる緑の草丘、牧草地そして点在する家畜小屋が見渡せる。実際のところこの家屋は、一連の大きな建物をつないだものといえた。最も大きく古めかしい母屋は5階建てであった。ビクトリア朝風の窓、バルコニー、螺旋に巻上がる小塔などがずらりと並んでいるのが見えた。ダンスホール、書斎、庭といった広大な区画の他にも、少なくとも40以上の部屋があるようだ。

他の2つの建物は、母屋に比べればずっと小さいが、より現代風の作りをしていた。外観に気を遣って適切な補修をしているのであろう、『現代建築の良い部分を取り入れた昔風の家』という印象であった。建物の一方はレクリエーション用の施設で、競技用プール・乗馬用の様々な施設・いろいろな器具が揃ったジムなど、多くのインドアスポーツ、アウトドアスポーツに対応できる設備が整っていた。

もう1つの建物は母屋を小振りにしたような居住用らしき建物であった。そしてどうやらジープは、この建物に向かっているようだった。巨大な母屋の正面を通り過ぎ、小さな屋敷の前にジープが止められたとき、そこには2人の女性がバーバラを出迎えるために待っていた。白いビジネススーツ姿のブロンド美女と、メイド姿が逆にエロチックな印象を与えている、色気たっぷりのアジア人である。

「はじめまして、ミズ・ゴードン。テラ・ロジャーズと申します。ロード・イージーストリート氏の下で弁護士をしておりますが、今回のパーティの幹事も務めています。どうぞよろしくお願いいたします」

ブロンドの女性はこう言うと、バーバラと柔らかく握手をした。

「こちらこそよろしくお願いします。ミズ・ロジャーズ。ここはとても面白そうなところですね。それにとても広いですし。お屋敷を見学したいのですが、案内をお願いできますかしら?」

バーバラは尋ねたが、これはもちろん偵察任務の一助となればという考えの下の発言である。

「ご要望に沿うことはできると思います。ですが今はまだ疲れていらっしゃるでしょうし、少し涼みたいことでしょう。使用人にお部屋まで案内させます」

テラは微笑んで、後ろの建物を示した。

「あら、あちらの大きなお屋敷に泊まれたらと思っていましたのに」

バーバラは気を引くようなウィンクをしながら無邪気な様子で言った。

「いけませんわ。メインハウスはロード・イージーストリート氏の私邸となっております。誰であろうと、どのような状況下であろうと、中に入ることは許されておりません。宝探しの範囲にはあの屋敷は含まれませんし、パーティ期間の内外を問わず、常に立入禁止となっています。実のところ、この件を含めて幾つかのお約束に関する誓約書にサインして頂くことになりますわ。もちろんこれはあくまでも形式的なものだということは、貴女にもご理解頂けると信じております。ちょっと散歩したせいで、ご老体のロードを訴訟に引っぱり出すなんてことは私も貴女も望んでおりませんものね?」

テラはこう話しながら屋敷の玄関へと入り、大きなオーク製のデスクに向かった。

(ああ、彼女はまさしく弁護士だわ)

バットガールはそう考えながら、誓約書を手にとって記載されている条項を読み始めた。
だが突然バーバラは、2人の女性が彼女をじっと見つめていることに気がついた。自分が見かけよりもずっと聡明であることを彼女達に悟られるわけにはいかなかった。バーバラは素早く書式を一瞥すると、頭を左右に振って楽しげに署名して、

「えーと、とにかく魂とか何かを譲るようなことにはサインしていないと思いますわ」

と、まるでカリフォルニアの海岸にたむろしている尻軽女みたいな声で言った。

「あら、いけません。気を付けないと、あなたの血をインクにすることになりますよ」

弁護士は恥ずかしげに言うと、一番下から控えを切り取ってバーバラに手渡した。彼女は幸福な女性でじゃないのかしら――バーバラは漠然と考えた。

「お部屋を整えるのにもう少々時間がかかります。どうぞダンスホールでおくつろぎ下さい。また、貴女が建物の中を見学できるようになりしだい、正確な立入禁止箇所の場所とあわせて、あらためてご連絡いたします」

とテラは言い、両開きのドアから広く細長い部屋へとバーバラを案内した。

部屋はエリザベス朝風に装飾されていた。壁や柱の上からは巨大なタペストリが下がり、窓や部屋の隅にはクラシック音楽の作曲家たちの胸像が一列に並んでいた。おしろい付きのかつらをかぶった王家の方々が踊りながら登場するのではないかと、彼女は半ば期待してしまったほどである。その代わりに彼女が見つけたのは、小部屋の中で互いを無視しながら座っている10数名の美女たちであった。彼女達は皆、高価な衣装で自らを飾っており、彼女のかわいいサマードレスは明らかに場違いであった。実際、ラテックス地のぴったりとしたドレスを着た2人の女性は、バーバラが通り過ぎた後ろで軽蔑するかように鼻を鳴らしていた。だがちょうどそのとき、彼女の肩が軽く叩かれ、背後から話しかけられた。

「ごめんなさい。もしかしたらあなた、ミズ・ゴードンではありませんか?」

バーバラは振り返ったが、声の主を見るためにはもう少し視線を上げなければいけなかった。そう、その女性はとても背が高く大柄だった。筋肉のつき方を見るとウェイトリフティング選手ではなさそうだったが、それでも彼女の体つき大層力強く、そして何より極めて魅力的だった。美しい黒髪はアナ・ニコル・スミスのような髪型にまとめられており、バーバラの頭には思わず『アマゾネス』という言葉が浮かび上がった。ただ奇妙なことに、立派な女性の象徴とも思えるこの女性の格好は実にみすぼらしかった。野暮ったいスカートとシャツ、ヒールのほとんどないパンプス、髪の毛はまとめて堅く編まれ、これまで見たことも無いような丸い大きなレンズの眼鏡をかけていた。

(なんてこと、まるで司書の格好をしたラクウェル・ウェルチみたいだわ)

そんなことを考えながらバブズは、握手を返し、

「ええ、そうです」

と甘い声で答えた。するとその女性はバーバラの手をとって部屋の隅、巨大な北極熊の剥製の陰につれていき、小さな声で囁いた。

「ああ良かった。私はダイアナ・プリンスです。IADCで特殊任務に就いているところです」

そう言いながらも彼女の視線は、全てが疑わしいといいたげに周囲を注意深く観察していた。

「私もあなたに会いたかったわ。私の父が、警察で手に入れた2枚のチケットのうちの一つをあなたに渡したと言っていたのよ。それで、何か変わったことはあった?」

バーバラが尋ねる。

「本当に厳しい監視体制が敷かれていることと、パーティに参加する人たちの顔ぶれがかなり奇妙なことくらいね」

とダイアナは答えた。

「ちょっとあたりを見回してみて。何か妙なことに気が付かない?」

バーバラは慎重に部屋を見渡して何か奇妙なことを見つけようとしたが、目に入るのは明らかに美しい客の姿ばかりであった。

「わからないわ、何が妙なの?」

「女性ばかりなのよ。苦労して招待客のリストを見ることができたけど、全部女性、それも美人ばかりだったわ。ほとんどが女優、資産家、そして社長といったところね」

とダイアナは答えた。

「なるほど、美しく野心的ということね。欲しいものを手に入れるためなら文字通り何でもするというタイプだわ」

とバーバラが言った。

「ええ、もし私の予想に間違いが無ければ、パーティはもの凄いことになるはずよ。ロード・イージーストリートが誰なのかは知らないけれど、女性のエゴの衝突に直面することはまずまちがいないわ」

ダイアナは眼鏡の位置をなおしながら言った。そして周囲の警戒を続けながら付け加えた。

「私の掴んだ情報ではどうやら、ルームメイトと2人組にさせる予定みたいなの。私達、同じ部屋に泊まったらどうかしら」

「それはいい考えね。一緒に任務を遂行できるなら、私達きっと……」

だがバーバラが最後まで言い終える前に、部屋の片隅にあるバーの奥で、60インチの大きなTVモニタのスイッチが入り、一人の老人の姿が映し出された。部屋の女性は皆、TVの前に集まり始めた。

「淑女のみなさん、私はロード・イージーストリートです。このようなつまらない島へおいで頂いたこと、大変嬉しく思います。私はこの一年というもの、このパーティをずっと楽しみにしてきました。このパーティが成功に終わることを私は確信しています。そう、本当に『だ・い・せ・い・こ・う』に終わるでしょう!」

彼はそう言うと咳をまじらせながら大笑いした。部屋にはいつの間にか先ほどのアジア人のメイドが現れており、手にしたバスケットから何かを取り出して、女性一人一人に手渡し始めていた。

「さて、私の使用人が配っているカードが1つ目のヒントになります。カードには、地図の断片的なデータが記入されておりまして、そこに示された地点に、ダイヤモンドに至る次のヒントが隠されているという趣向になります。同じヒントにつながるカードもありますが、道のりは別々になるはずです。賢く利口な女性だけが最後のヒントに辿り着き、賞品を手に入れるのです」

彼は再び、咳まじりに笑い出した。まるで痙攣しているかのように見えた。

「ルールは簡単なものですが、厳しく適用していきます。まずダイヤモンドですが、これを手に入れるには二通りの方法があります。ダイヤモンドを直接見つけるか……あるいはパーティから脱落せずに最後の一人になることです」

バーバラとダイアナはショックに凍りつき、顔を見合わせた。

「脱落?」

バブズがささやいた。

このときモニターが急に切り替わり、どこか研究所を思わせる一室の映像が映し出された。カメラがゆっくりと動くと、壁にそってズラリと並べられている大きなガラス製の円筒が画面に入ってきた。このガラスチューブどれも中は空っぽだったが、どれにも多くのゴム管や電気装置らしきものが取り付けられていた。カメラはこのチューブの列に沿って水平に動いていた。

「敷地内には数多くの仕掛けを準備しておきました。若い女性を捕らえ、動けなくするような罠です。パーティの期間中は我々のパトロールが敷地を巡回していますが、どのような事情であれ仕掛けに引っかかっている方々を見つけましたら、その方を待機部屋にお連れして、ご覧のガラスチューブへ入って頂くよう指示しております」

この途端、カメラはガラスチューブの根元を大きく映し出し、ネームプレートに女性の名前が入っているのがわかるようになった。カメラの移動に伴い、この地に集まっている全ての女性の名前が映し出されていく。バブズは自分の名前とダイアナ・プリンスという名前を見つけ、小さく息を飲んだ。他の女性達も、納得がいかないといった様子で頭を振ったり不満を言ったりし始めた。

「皆様、ご安心下さい。全く怖れる必要はありません。ただのハリボテですよ。待機部屋に捕らえられた方々は、ご希望の空港へ向かう飛行機の準備ができるまでお待ちいただくだけのことです。重要なのはゲームを真剣に遊ぶというその精神なのです。ゲームをより面白く遊ぶためには、ちょっとした脅迫のポーズも必要なのですよ。あるいは罠のことをご心配される方もおられるかと思いますが、これも危険なものは何一つありません。自動的に外から鍵がかかる部屋とか、警備員を呼び出すアラームとか、そういった単純なもので、単なる足止め程度のものばかりになっています」

再び映像が老人に戻った。

「さて、皆さんに与えられた時間は2日間です。ゲーム終了時に一人以上の方が残っていた場合には、ゲームは無効になるものとします。それから敗者の皆さんにも参加賞が贈られます。この家庭用ダイヤモンド・ハント・ゲームです」

彼はカメラの前に、このボードゲームの紙箱を掲げて見せた。安っぽく飾り立てられていたが、それは明らかに、意地の悪いユーモアを含んでいた。すなわち彼はこう言いたいのだ。敗者に得るもの無し、と。

「なるほど。今こそ巣立ちの時ってわけね」

とダイアナは言って、膨らむ心配に立ちすくんでいる女性達をじっと見つめた。

「2匹の野良猫を一つの箱に押し込むみたいにタチの悪いことだわ。みんな互いに相手をつぶしにかかるわよ」

とバーバラは低く囁いた。

「……残りのルールにつきましては、皆様に署名して頂いた契約書の控えに全て記載されています。これらのルールに違反された方は、直ちにゲームへの参加資格を失い、待機部屋のガラスチューブの中に一直線に向かうことになります。それから特に、これだけは守って頂きたい。メインハウスには決して立ち入らないで下さい! ダイヤモンドがそこには無いことを皆様方全てに保証いたします。どうか一老人のプライバシーにご配慮願います」

と彼は話を続けた。とそのとき、

「ちょっと! こんなことこれ以上我慢できないわ!」

部屋の向こう側から声があがった。

「こんなの非常識よ!」

それはティナ・フェラーリだった。ゴッサムシティで今一番売れているモデルの一人である。

「あんたの馬鹿げたダイヤの後を追っかけて、頭を切り落とされたニワトリみたいにふらふら走り回るつもりは一切無いわよ! それを見てあんたが喜んでるなんて考えただけで腹立たしいわ、この変態!」

彼女は不機嫌も露わに茶色の長い髪を振り乱して叫んだ。

「あなたがそのように感じてしまったことについては、大変申し訳なく思います」

と老人は言った。「もちろんここを去るのもあなたのご自由です」

「そりゃ良かったわ!」

彼女は怒鳴ると、受け取ったばかりのカードを投げ捨てた。そして自分のバッグを手に取って使用人の控えている扉に足音も高く向かっていった。彼女が退出し、ドアが閉じられた後も、遠ざかっていく彼女の足音は部屋の中の誰もが聞くことができた。

一方、彼女が投げ捨てたカードは即座に一人の女性によって拾い上げられた。だがそれも、また別の人物によってつかみ取られてしまうまでのこと。さらに二人の女性が加わってカードの争奪戦が始まった。ところがこの4人がもみ合っている中に、突然2人のたくましい女達が分け入って、揉み合いに参加している人物を無理矢理引き離すとカードを奪い取ってしまった。そして2人は、そばに立っている背の高いスリムな白髪の女性の元に戻っていくと、彼女にカードを手渡して、無言のままその女性の両側の立った。たくましい腕を組んで立つその姿は、まるで忠実な番犬のように見えた。

「ビクトリア・マディソンとファックする奴は誰もいねぇ。他の嬢ちゃんたちもとっとと帰った方が身のためだぜ。あたしが勝つに決まってるんだからな」

その白髪の女性が奪ったカードを手に掲げて高らかに宣言した。

「素晴らしい!」

ロード・イージーストリートは小学生のように喜んで拍手した。

「今のところはそういう方法もありますね。ですが、宝探しの開始は今夜の午後8時ちょうどになります。抜け駆けは無しにして下さいよ。それまでの時間、おしゃべりをするなり、休憩するなりしておくつろぎ下さい」

彼が指を鳴らすと、モニタの電源がオフになった。女性達は、再び小さなグループに別れていった。

「さて、これでロード・イージーストリートが熱中しているお遊びの内容がわかったわけだけど――」

ダイアナと連れだってホールを出ていきながら、バーバラが言った。そして彼女達が部屋を出ていく様子を、ビクトリアと二人の取り巻きが気づかれないように目で追っていた。

「まず手始めにあいつらをやっちまおう。やつらのカードをもらうんだ」

ビクトリアが囁いた。

「あいつらまるで弱虫じゃねぇか」

* * *

夕食と部屋割りを終えた後、バーバラとダイアナはベッドルームに戻り、それぞれベッドの上にどさりと腰を下ろした。

「ああもう、悪夢だわ」

そう言うとバーバラはバッグを開き、ドレッサーの上にそれを置いた。

「まさしくその通りね。ダイヤモンドを探しながら、客の安全に気を配るなんて本当に悪夢になりかねないわ」

と答えながらダイアナはバスルームに入って設備や小物をチェックし始めた。

「私、ちょっと偵察してこようと思うんだけど」

バーバラはダイアナがこちらを見ていないことを確認しながら、スーツケースから小さなバッグを引き抜いた。

「良い考えね。でも私はまずシャワーを浴びるつもり。7:30までに戻らなかったら、探しに出るわ」

そう言うとダイアナは服を脱ぎ始めた。

バーバラは、腕の下にバットガールのコスチュームを隠し持ってドアに向かった。だが部屋を出るときに振り返ってバスルームを見た途端、思わず立ち止まってしまった。鏡に映ったミズ・プリンスがブラとパンティだけの姿になっていたのだが――神々しさを感じるほどの眺めだった。このIADCエージェントがブラをはずして床に落とすのを見たときには、バーバラは同性相手に強く欲情してしまうのを感じていた。

「信じられない」

バーバラは囁いた。

「彼女、キャットウーマンより胸があるわ。なんて大きいの!」

バーバラが畏敬の念をもって巨大な揺れる胸を見つめる中、ダイアナはパンティも脱ぎ去ってシャワーを浴び始めた。

「結局、このパーティも結構楽しいものになるかもね」

バーバラは興奮した学生のように、はずむような足取りで部屋を出ると、メインのダンスホールに向かって歩いていった。その後ろ姿を、廊下の端から見つめる3つの人影があった。

「ひっ捕まえようか?」

筋骨逞しい一人が尋ねた。

「やめときな、ニック。あの嬢ちゃん、カードを持っているようには見えないぜ。多分プールに行くんだろう。それならカードは部屋の中だ」

ビクトリアは可愛い愛奴隷達を軽く叩きながら答えた。

「あたしたちはあいつらの部屋に忍び込んで、まずはあの娘のお友達を袋につめちまう。それから2枚のカードを手に入れればいいさ」

* * *

ダイアナが暖かい湯の中に頭を沈めると、彼女の美しい肢体の山と谷の上を、水が滝のように流れていった。しかし、タイルの模様の中に隠されたカメラが彼女の動作を細大漏らさず覗いていることを、ダイアナは気づいていなかった。モニタ、計器、スイッチ、ダイヤルがずらり並んだコントロールルームの椅子の中で、ロード・イージーストリートは豊満な肉体を持つ刺客の裸身を鑑賞していた。だがこれは一体どうしたことだろう、彼は実は少年なのか? そう、この若き億万長者は、最新のコンピュータ技術を用いて、自分の姿を老人に見せかけていたのだ。実は14歳のロード・イージーストリートは椅子に座り、シャワーを浴びるダイアナ・プリンスの完璧な身体を、よだれを垂らんばかりに見つめていたのだった。

「オォーーーー! 凄ぇ! そこそこ、拭いて拭いて。 うわ、あんた凄ぇよ、姉ちゃん」

彼はモニタに唾を飛ばしながら、ベニー・ヒルのような汚い声をあげた。一方ダイアナは石鹸を取って泡立てていた。そして、ゆっくりとした慎重な動作で、胸を洗い始めた。見る見るうちに形の良い乳房は泡に覆われていき、濡れて光りだした。

「ワァーオ、姉ちゃん。そんなんじゃ、おっぱい隠すにゃ全然足らねぇんじゃねーの? そうそう、おっぱい汚れてるんだぜ。もっと泡つけろよ……もっと……」

口の中は涎でいっぱいだった。ダイアナが胸を洗っている数分の間ずっと、彼はただその様子を食い入るように見つめていた。彼女が乳房をつかみ、こすり、泡をつける様子はまるで、輝きに満ちあふれる悦びの双丘をこね上げているように見えた。やがて彼はジョイスティックを操作して、カメラを下の方へ向け始めた。次第に身体の下の方に視点が動き始め、よくしまった腹部を映しだした後で、やがて大きく色っぽいヒップと美しい曲線を描く太股がよく見えるようになったところで移動をストップさせる。膝を合わせてしゃがみこんでいる姿は実に素晴らしかった。彼は畏れにも似た思いで、丁寧に刈り込まれた恥毛を、淫らに光る秘唇を、そして上半身を洗う動きに合わせてゆっくりと左右に振れる尻を、ただ一心に見つめていた。

やがて、泡でいっぱいの手が下に下りてきて、脚の間にゆっくりと滑り込んでいった。指が、秘唇の間をゆっくりと滑って膣口に泡を塗りつけている。外へ…中へ…外へ…。まるで愛撫をしているように見えた。そのうちに彼は、彼女が手を止めようとしないのに気づいた。

「これって……あんた一体何を……」

彼はつぶやくと、彼女の顔を見ようとカメラを上の方に向けた。するとどうだろう、ダイアナは頭を後ろに力無く倒し、その両目は閉ざされ、口を虚ろに開けているではないか。喉の奥から低い声を漏らし、空いた手は緩やかに乳房を揉みほぐしている。呼吸もゆっくりとした、だが激しいものに変わっていた。

「おやおや、ドスケベなお嬢ちゃん。賭けてもいいけどあんた、一度イカなきゃおさまらないだろ」

彼はエージェント・プリンスが自慰に耽るのを見ながら、からかうように言った。

だがその瞬間、別人の手が画面に飛び込んでくるなり、夢見るようなエージェントの口を塞ぎ、そのまま彼女の頭を強く締め付けた! ダイアナの目が飛び出さんばかりに見開かれ、くぐもった叫び声が浴室に響く。同時に画面が激しく揺れだした。

「ち、ちくしょう、何だってんだ!」

どもるように少年は呟くと、ジョイスティックを操作してカメラをズームアウトさせた。両脚、髪の毛、乳房が画面狭しと映し出される。その途端、彼女達の姿がカメラから消えた。慌てて少年はパネルを操作して、ベッドルームの映像を呼び出す。

バスルームから三人の女性が、びしょ濡れのまま暴れているダイアナ・プリンスを抱えだし、ベッドの上に彼女を押さえつけるのが見えた。一人がダイアナの口をしっかりと押さえている間に、残りの二人は適当な長さに切ったダクトテープでどんどん彼女を拘束していく。テープを引き出すときの『ビッ』という聞き慣れた音が響く中、エージェント・プリンスは拘束されてゆく。ひときわ長いテープが口を塞ぎ、別のテープは背中に回した両手をきつく縛めていた。また彼女の長い脚も足首と膝のところでテープをぐるぐる巻きにされて、一本の棒のようにまとめられていた。



「ナック、あたしたちは部屋を探すから、その間このビッチを押さえつけておきな」

ビクトリアはそう言うと、もう一人のたくましい女性と一緒に、バーバラとダイアナの荷物を慌ただしく探り始めた。ダイアナはベッドに横たわったまま、なんとか縛めから逃れようと身体をひねったりねじったりしていたが、ナックが彼女の横に控えており、しっかりダイアナを押さえつけていた。

「なんてでっかいオッパイをしてるんだい、お嬢ちゃん」

ナックはそう言って身体を寄せると、ダイアナの右の乳房を乱暴に掴み、乳首を弄り始めた。ダイアナはテープの下で叫び、身体を揺する。それに構わずナックは、乳房を下方から包み込むように柔らかく握り、乳首を人差し指で押しつぶす。やがてダイアナの乳首がすっかり大きくなると、それを口に含み、吸ったり噛んだりと愛撫を楽しんだ。

「あったよ!」

ニックが2枚のカードを掲げて見せ、ビクトリアと共にダイアナのベッドに戻った。二人はしばらくの間、ナックがダイアナの乳首を吸い続けているのを眺めていた。


「こいつ、どうしようか?」

ニックは下卑た笑みを浮かべながら、舌で唇をなめた。「ちょっとばかり素敵なパーティはどうだい?」

「だめだ、時間が無いよ」

ビクトリアは答えながらベッドに腰を下ろし、ダイアナの豊満でなめらかな太股に両手を滑らせた。

「そうだね、まずはこいつをぐるぐる巻きに縛り付けたまま、一旦部屋を出よう。8時になったら戻ってきて、このままメインホールに連れてって転がしておく。ルールじゃあ、身動きできない奴はみんなサヨナラすることになってるんだ。やつらはこいつをとっとと島から放り出すだろうさ。あのティナ・フェラーリのビッチみたいにね」

ビクトリアはそう言うとダイアナの目を覗き込んだ。

「だけど、ここにただ寝てるだけじゃ退屈しちまうよなぁ。おい、こいつをそこの絨毯の上に寝かせな」

彼女はニヤニヤ笑いながら命じた。ニックとナックは暴れるヒロインを抱え上げると、部屋の端に連れていってカーペットの端に彼女を横たえた。そして、ニックが微笑みながら自分のバッグから大きな黒いバイブを取り出して、ビクトリアに手渡した。受け取った彼女はダイアナに笑いかけると、おもむろにバイブのスイッチを入れる。そのブンブンという静かな音が部屋に響くのを聞いて、次に起こることにダイアナは思い至り、背筋を冷たいものが走った。三人がかりでダイアナを押さえつけると、ビクトリアが暴れるヒロインの股間にバイブをゆっくりと差し込んでいった。ダイアナは狂ったように叫び抵抗したものの、バイブは彼女の蜜壺深くまでしっかりと押し込まれてしまった。その振動は彼女の快感を掘り起こし、快感は全身に伝わっていくのだった。

次に3人はカーペットの端をつかむと、身体をくねらせているダイアナを巻き込み始めた。そして文字通り簀巻きとなったダイアナをベッドの下に蹴り込み、しばらくの間、ダイアナのあえぎ声ともぞもぞ動く音を聞いていた。そしてニヤリと笑い合うと、カードをもって部屋から立ち去っていった。


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