バットガールとワンダーウーマン(テイク2) 第一章
その日、バーバラ・ゴードンは自室でエアロビクスに励んでいたが、やがてハードな
ダンスに疲れ切り、汗もそのままにソファに倒れ込んだ。ホロビデオでは、まだインストラクターの少女が踊り続けている。 「……デニース・オースティンのくそったれ。何て体力してんのよ……」 魅力的な少女が部屋の中を跳ねまわるのを見ながら彼女は呟いた。 「こんな体力バカはロープでぐるぐる巻きにして動けなくしてやるべきよね」 デニースも全身に汗をびっしょりとかいていたが、彼女は元気に飛び跳ねながら、カメラの向こう側にいる生徒達に「あなたならできるわ!」と言葉巧みに励ましている。 「ハイ、左! ハイ、右! そう! 上手いわ!」 安っぽい笑顔と軽薄な声を振りまきながら、デニースは何度も何度もこんな調子を繰り返す。だがそれはバーバラにとってみれば「あんたはデブの負け犬よ……あたしの方があんたより若いの……あたしこそ女神にふさわしいわ!」と言われているも同然だった。 「まるで大きなバービー人形じゃないの。バイブが一本あれば、あんな小娘やっつけてやるのに……」 そう言いながらバーバラは、デニースの堅くしまったヒップや弾む胸に目をやった。 次第にバブズの目がトロンとし始める。そして自分でも気づかないうちに、股間を指慰め始める。快感が彼女を淫らに変えつつあった。 「……ああもう! セレナとのことを思い出しちゃったわ!」 彼女はソファに横たわったまま呟いて、しばらく股間をさすり続けた。だがやがて、目に怪しい光を宿らせながら立ち上がると秘密の隠し戸棚に向かった。ここには、彼女が犯罪者と闘うときに着用するコスチュームや武器などが隠されているのだが、バブズはそんなものには目もくれず、奥の箱から一本のビデオを取り出した。そして彼女はレオタードを脱いで全裸になると、再びソファに腰掛けてビデオをスタートさせた。 テープはいきなり、バーバラとセレナが全身を縛られてギャグをかまされている映像から始まっていた。かつて彼女達を弄んだジョーカー、リドラー、ペンギンという3人の犯罪者たち。彼らはおそらく自分たちの歪んだ楽しみのためだけに、バットガールとキャットウーマンの最期をビデオに残しておこうと考えたのだろう。その内容が明らかにされる寸前に、このビデオテープを市警証拠品保管室から奪い取ることができたのは、バーバラにとって幸運だった。 「こんなの見たら、パパの気が狂ってしまうわ。パパは私のこと、未だに小さな女の子としてしか見ていないんだから」 こうした物思いにふけりながら、バブズはゆっくりと愛撫を続けた。モニタの中でバーバラは、ジョーカーのアンドロイド達に無理矢理レイプされ服従の言葉を強要されていた。やがて画面が切り替わると、緊縛され抵抗もできないままのキャットウーマンが、見るも忌まわしい植物によって穴という穴を犯されている姿が映し出された。彼女とセレナがあげる絶望に満ちた叫び声やうめき声は、バブズの欲情と興奮を強く煽り、股間を熱く潤ませた。敗北の瀬戸際にあったことや、服従の快楽に溺れそになっていたことを思いおこし、全身がカッと熱くなる。 バブズは立ち上がってビデオを止めると、イジェクトしたテープを荒々しくひっつかんでベッドルームへ急いだ。そしてベッドルームのビデオデッキにテープを押し込むなり、彼女はドレッサーを開き、一連の特殊なアイテム――手枷や足枷、布製のギャグ、大きな黒いディルドー、シルクの黒いビキニ、などなど――を取り出した。 まず最初に彼女は、黒いビキニブラを身につけた。さらにビキニパンツに足を通すと、これを太股のあたりまで引き上げる。 こういったセクシーな衣装を身につけるといつだって、たとえそれがビキニのように露出度の高いものであっても、彼女は淫らな気分になってしまう。全裸はむしろ退屈でしかない。限りなく裸に近いという状況が彼女にとっては大切だった。さらにバブズは黒光りしたハイヒールを履くと、鏡の前に立った。筋肉の発達した曲線美を誇る肉体。彼女は鏡に映った自らの身体をじっと見つめながら、胸やヒップの上でゆっくりと両手をすべらせた。 「凄い……なんてイヤらしい身体なの……」 そう言うと、尻肉を一発パシッと叩く。その口調はまるで、彼女が別人になってしまったような、誰かに操られているような、そんな感じに聞こえた。 「あんたには一発、凄いファックが必要だわ……」 胸を揉みながら彼女は呟く。 バーバラはベッドに上がると、短い鎖でつながった足枷で自分の足首を縛り付けた。そして、苦しみながらもゆっくりと、巨大なバイブレーターを自らの秘裂に深く押し込み、これが抜け落ちないようにビキニパンツをしっかりと引き上げる。次に彼女は2つの特殊な枷を手にすると、両膝の上部にそれぞれ枷を巻き付けて固定し、さらに枷同士を互いにしっかりとつなぐ。こうして彼女は、その美しい脚をぴったりと閉じ合わせたまま、身動きできない状態へと自らを縛り付けたのであった。 次にバブズは、大きな革製のボンデージソックを手に取った。寝袋に入る要領で足先を袋の中に入れ、ゆっくりと上に引き上げる。膝裏のジッパーを締めれば、もはや彼女の両脚は一本の肉塊になったも同然であった。このボンデージソックの上端とビキニパンツの隙間からのぞいている、張りつめた白い豊満な太股と尻肉が彼女の興奮をさらに高める。 ずらりと金属リングを取り付けた革のベルトでウエストを締め付けた後で、次にバブズはギャグを手に取った。柔らかな布製パッドを革にぬいつけた特製のものである。彼女はその布パッドを口にあてると、ストラップを後頭部に回してしっかりと固定した。パッドは彼女の口を完全に覆い隠しており、絶叫すらもくぐもったものにしてしまう。バーバラはボールギャグよりもこの手のギャグの方が好きだった。ボールギャグはどうしても涎がたれてしまうし、顎が疲れてしまう。さらに言えば、布製ギャグの方がよりセクシーで魅力的に見えるように感じられるのだ。 最後に彼女は手枷を取ると、背後で両手首に固定し、さらに手枷をつなぐ鎖をウエストに巻いた革ベルトのリングにつないだ。いまや彼女は完全に拘束されていた。なんて素晴らしい緊縛感! 彼女はベッドに横になると、器用にリモコンを操作して、ビデオとバイブレーターのスイッチをオンにした。 凌辱の経験はまだ記憶に新しく、このためビデオのイメージは彼女をしっかりととらえて放さない。バットガールやキャットウーマンが立てる物音、漏れ出る叫び声、これら全てが彼女を淫らに高ぶらせる。これに伴い、緊縛された裸の肉体はうねうねと波打ち、ゆっくりと左右に転がる。バイブレーターがまた効果的だった。まさしくこの目的のために設計されたバイブレーターは、その振動によって彼女の身体をゆっくりと高みに誘っていった。ビデオに映し出される衝撃的な映像の全てが、ますます彼女を興奮させた。うめくセレナ、叫ぶバーバラ、悪人達にいたぶられる二人の美女。助けも無いままに心の奥底まで屈服させられ、堕とされた女達。バーバラを襲う快感の波はいよいよ彼女を支配し始め、為す術もなくベッドの上でうごめく。そして絶頂の光が次第に近づき、もう少しで、もう少し…… バタン! 「バーバラ? ハニー? パパだよ?」 なんとコミッショナー・ゴードンだった。まるで小さな女の子に呼びかけているような調子で彼女を探しながら、隣のリビングルームに入ってきたのだ。バーバラは驚きのあまり凍り付いた。それはもうバイブレーターを押しつぶさんばかりである。 「大変!」 彼女はギャグの下で叫ぶと、自由を取り戻すべくベッドの上で悪戦苦闘し始めた。死にもの狂いの努力でなんとかビデオのリモコンをつかんだものの、慌てていて停止ボタンがよくわからない。早送りや巻き戻しを何度も繰り返した末に、どうにかテープを止めて、TVの電源を落とすことに成功した。 「バーバラ、私の可愛いリトルガール、一緒にディナーに行かないかい?」 彼の声は次第にベッドルームに近づいてくる。やがて足音までもが聞き取れるようになり、バーバラはベッドの上に座り込んで心から恐怖に震えていた。 (パパのリトルガールがこんな格好してるなんて知られたら!) 彼女は必死になって逃げ道を探す。だがドアがゆっくりと開き始め、 「バーバラ、ここかい……?」 その瞬間だった。 ジリリリリリン! (電話だわ! ああ神様、感謝します!) 彼女の父がリビングに戻っていくのを聞きながら、バブズは息を潜めて行動を開始した。会話の声が聞こえてくるころには、拘束された両脚を床に下ろし、ドレッサーに向かってピョンピョン跳びはねて移動していた。そこに手枷や足枷の鍵を置いてあるのだ。しかし慌てていたのが災いしたのだろうか、上下に大きくはずむ胸に気を取られてバランスを崩し、キャビネットに身体を強くぶつけてしまった。そしてそのはずみで、心から必要としていた鍵が、ドレッサーの後ろに落ちてしまったのだ。 「ンムムムムムムムム!」 あまりのことに叫び声を上げつつも、他の脱出方法を求めてバブズは身をよじらせた。 (隠し戸棚のユーティリティベルトにはバットガールの開錠キットがあるけど……) 彼女は部屋を横切ってクロゼットに向かい、その奥に隠されたドアを後ろ手に開けようと試みた。しかし山のようなコートハンガーと服が邪魔になって、どうしてもドアノブをつかむことができない。 そのとき彼女の目が恐怖に見開かれた。受話器が置かれる音が聞こえたのだ! 彼女には絶望的な最後の手段しか残っていなかった。床に寝転がると、緊縛された身体をベッドの下に滑り込ませたのだ。ドアが開いてコミッショナー・ゴードンが部屋に入ってきたのは、彼女の足先がベッドの下に隠れた直後のことであった。 「バーバラ、いるかい?」 彼は、半裸の娘に出くわすことなど全く想像すらしていない様子だった。実際、彼はとても慎み深い人物で、ちょっとしたグラビア写真にすらあわてふためくような人物だった。 (あっ、いけない!) バーバラは思わずあえいだ。脚の間から伸びるバイブレーターのコードが床を横切ってベッドサイドに置かれたコントローラーにつながっていることに、今気づいたのだ。必死になって背後で手探りし、床のコードをなんとかつかむ。そして彼女は慎重にコントローラーを手繰り始めた。 「スイッチを……切らないと……」 股間から伝わる低い振動に身体が熱く反応してしまうことも、彼女の苦悩の一つだったのだ。 カタン! バブズは再び凍り付いた。コントローラーのプラスチックケースがベッド横のドレッサーに当たりながら床に落ちたのだ。幸い、コミッショナー・ゴードンはちょうどそのとき椅子を動かしていた。どうやらその小さな音には気づかなかったらしい。バーバラは安堵のため息をつくと、再びゆっくりとコードを引き寄せ始めた。だが運の悪いことに、コントローラーがドレッサーの脚とベッドの脚の小さな隙間に引っかかって止まってしまったのだ。 (そんな!) 彼女は何度も何度も強くコードを引いたが、コントローラーは引っかかったまま動かない。そこで思い切り、身体全体をひねりながら渾身の力でたぐり寄せた。その瞬間だった。突如股間を強い振動が襲い、かつて感じたことの無い快感が彼女の腰を打ち抜いたのだ。バーバラはパニックに陥りながら身悶えした。見れば、コントローラーのダイヤルが10の目盛を超えているではないか! 通常は4の目盛で十分だというのに! 最悪にも、今の衝撃でコントローラーは壊れてしまっており、ダイヤルは動かなくなっていた。股間のバイブレーターは最強モードで激しくブブブブと唸り続ける。 バーバラの腰がゆっくりと淫らにうごめく。彼女の成熟した肉体は、抑えきれない強いられた絶頂に向かって刻一刻と駆り立てられていた。 「出て…いってよ……パ、パパァ……」 彼女はとにかく溢れ出しそうになる喘ぎ声を抑え込もうと懸命に努力していた。 「フム。図書館に行ったのかな? 勉強熱心に過ぎるようだが……でもこんなふしだらな女性にはなって欲しくはないしなぁ」 そう言いながら、コミッショナー・ゴードンは床に落ちていたフリルつきの黒いパンティをベッドの上に拾い上げる。 「しかたない、メモを残しておこう」 そう呟いて、彼はドレッサーの椅子に腰掛けた。几帳面な人物像そのままに、細心の注意を払ってゆっくりとペンを動かす。そして彼がペンを置いたちょうどそのときだった。 ガチャッ。 突如ビデオデッキから大きな音が響いた。 真相は簡単である。バーバラはリモコンを操作して再生を止めたつもりでいたのだが、実はボタンを押し間違えて、一時停止のボタンを押していたのである。TVも消えていたので気づかなかったが、ビデオデッキはこれまでずっと一時停止状態で待機していたのだ。そして所定の時間を過ぎて自動的に停止状態に移行したのである。だがそんな事情をコミッショナーが知るはずもない。 「何だろう?」 彼はリモコンを手に取ると、まずTVのスイッチを点けた。一方でベッドの下ではバーバラが、いまや死にもの狂いで身をよじらせていた。縛られたままバイブレーターに激しく責められる快感に、今にも理性を押し流されそうな彼女だったが、それでも懸命に音を立てないまま悶え続けていたのだ。そしてコミッショナー・ゴードンがビデオを再生しようとしたまさにその瞬間、彼の懐からピーッ、ピーッ、という甲高い電子音が鳴り響いた。 「くそ、一体何事だ!」 ゴードンは罵りながら立ち上がると、ポケベルを引っぱり出してアラームを止める。そのままディスプレイに目を通した彼は、一目散に部屋から出ていった。 「また事件だ! 全く、娘と食事もできないなんて!」 彼は忌々しげに唸ると、大きな音をたててドアを閉めてアパートを出ていった。そして次の瞬間バブズは、身も心もバラバラになるような激しい絶頂に達して獣のような叫び声をあげた。 腰が激しくベッドを突き上げ、スプリングを跳ね上げる。はずみでキングサイズのベッドが崩れ落ちる。マット、毛布、枕、箱にぎっしりつまったおもちゃのコレクション。これら全てが身動きできないヒロインの上になだれ落ちる。しかしそんなことに気を払う余裕もなく、バブズは一心に腰を振り続けていた。オーガズムの波が何度も何度も彼女を打ちのめしていた。そしてわずかに残った理性は、自分がこの無限に続く激しいオーガズムの虜になるであろうことを理解していた。バーバラの心に絶望的な恐怖が満ちていく。 * * * 2時間後、フラフラとベッドルームからよろめき出るヒロインの姿があった。片手を腰、もう片手を頭にあてて力無く歩く。父が去ってからというものバーバラは、崩れ落ちたベッドの下で身動きもできず助けも得られず、バイブレーターの苛烈な責めに苛まれ続けていたのだ。バーバラを救ったのはひとえに、このおもちゃがそれほど頑丈でなかったという事実によるものだった。バイブレーターはこのような高電圧で長時間作動するようには設計されていなかったのだ。貧弱な内部の機械が酷使に堪えきれず、とうとう動かなくなってしまったのである。 だがバーバラもまたこの経験にダメージを受けていた。緊縛された状態でのバイブ責めは、正直彼女の限界を超えていた。いつまでも続く絶頂の繰り返しには、何らかの対処をしたり抵抗したりする余裕すら無い。彼女は精神的にも肉体的にも打ち負かされ、虚ろに目と口を開いたままで部屋をふらふらと移動した。そしてリビングルームに足を入れたところで、とうとう腰が砕けるように床に崩れ落ちた。この瞬間のバーバラは、まさしく心を持たない人形も同然であった。誰にでも口答えせずに従い、どんなことでも言われるままにやり、何をされても抵抗しなかっただろう。やがて彼女は、まるで気絶するように床に倒れ込むと深い眠りについた。 1時間後に目を覚ましたバーバラの気分はずっと良くなっていた。ゆっくり立ち上がると、頭を振りながらベッドルームに戻り、ストンと椅子に腰を下ろす。 「こんなこと二度とやりたくないわ」 彼女は頭に手をやって、力無く呟いた。 「バイブなんかに狂わされちゃうなんて……」 バブズは溶けたプラスチックのバイブをおずおずと拾ってテーブルの上に置き、その拍子に父の残したメモに気がついた。 バーバラへ 立ち寄ってみたけれど留守だったのでメモを残します。 フレデリックス社から、君の特注品の納品が もう一週間遅れるという伝言を頼まれました。 これだけで意味がわかるといいのだけど。 私にはわかりませんでした。 それではオフィスに戻ります。 愛とキスを パパより 「いったいいつになったら新しいコスチュームが届くのよ?!」 バーバラは憤然と立ち上がると、クマのぬいぐるみを部屋の壁に投げつけた。だが、ぬいぐるみは跳ね返って鳥かごに当たり、インコを大いに驚かせる。 「ああ、ごめんなさい」 バブズは愛情をこめて、チーチーバタバタ暴れ回る鳥をなだめた。 「チチチチ、おもちゃが手に入らないときのママのこと、あなたはよく知っているわよね?」 さらにバーバラは考え込むような調子で話し続ける。 「そう言えばパパは、夜のこの時間に呼び出されたのね。大きな事件があったのかしら」 彼女は手をあごに当て、瞳には強い意志を示す光が輝き始めた。 「バットガールの出番だと思わない?」 バブズは鳥にそう話しかけて下品な投げキスを送ると、何もない壁に歩み寄って隠されたボタンを押した。そして秘密の扉の中に姿を消したしばらく後、バットガールサイクルの音が、バーバラ・ゴードン宅の裏路地に響き渡ったのである。 * * * 「バットガール! 天の助けだ! きみに会うことができて本当に嬉しいよ」 顔に絶望的な表情を浮かべたオハラ主任が、若きヒロインに歩み寄った。コミッショナー・ゴードンの方は憂鬱な表情を満面の笑みに変えていたが、彼も席を立ってバットガールを部屋に招き入れた。 「オハラ主任のいう通りだよ。皆があなたに会えて喜んでいる」とコミッショナー・ゴードン。 「それで一体、何が起こったの? バットマンとロビンの姿が見えないようだけど?」 バットガールは、コミッショナー・ゴードンのデスクに腰を下ろして足を組む。今日の彼女は2ピースでデザインされたコスチュームを身につけていた。 ボトムは例によって紫色のスパンデックス製スパッツであった。へそのすぐ下から脚の付け根まで、均整のとれた美しいヒップを包んでいる。肌にぴったりと密着しており、身動きするたびに微妙なカーブを描き出す様子は、スパッツというよりむしろ水着と呼んだ方が良いかもしれない。実際、きわめて薄い生地でできているために、彼女が脚を組み換えるときには、秘唇の形がしばしば浮かび上がるほどであった。さらにまた、様々な機能を秘めたユーティリティベルトが腰の上に位置取り、アクセントを加えていた。 一方トップはと見れば、これもまた極薄スパンデックスをぴったりと密着させたホールターであった。大きな胸を押し込めた布が上方に細く伸び、タートルネック状の首部につながっていた。下方は乳首のすぐ下までしか生地は届いておらず、横に伸びた布が肋骨をくるむような形で身体をまわって背中のジッパーで止められていた。彼女の美しい素肌を腕、肩、背中と惜しげもなく露出させる大胆なコスチュームである。 手足も同様に素肌をさらしていた。これを隠すのは、磨かれた革製のロングブーツと、肘までをカバーするサテンの手袋だけである。 そして彼女は、赤毛のかつらの上からいつもの紫のマスクをかぶり、紫と黄色のバットガールケープを纏っていた。 バットガールの質問には、オハラ主任が答えた。 「それが困ったことに、我々にもわからんのだ」 彼は狂ったように腕を振り、言葉もどもり気味であった。 「まるで地面に呑みこまれたように行方が知れんのだよ」 コミッショナー・ゴードンも不安げな声でつけ加え、彼ら2人は恐怖に満ちた視線を、今は沈黙しているバットフォンに向けた。 「我々はどうやっても、彼らに連絡を取ることができなかった」 (兄さん達ったら、まったく子供みたいなんだから……) バーバラはうんざりして目をくるりと回した。 (ここはひとつ、女性が素晴らしい手際を見せてあげなくてはね) 彼女はポンと机から下りると、威張った様子で部屋の真ん中へと歩き、 「ところであなた方は、彼らに何を頼むつもりだったの?」 と、いつも通りの厳しい調子で質問をした。 「ロード・イージーストリートだよ。彼は次回のワイルド・パーティーで、我々の生活をぶちこわしにするような、何か悪事をたくらんでいるようなんだ」 コミッショナー・ゴードンが手を所在無さげに振りつつ言った。 「それってつまり、あの億万長者が『また』ワイルド・パーティを開催するということ?」 「悲しいかな、その通りだよ、バットガール。昨年は道路という道路で象が暴れ回る大惨事になったというのに、それでも彼は毎年ワイルド・パーティーを催すと言ってきかないんだ」とゴードンが言った。 「バットガール、乱痴気騒ぎの後始末をあなたにお願いするというのも、決して楽な仕事じゃないんですよ」と主任。 「それで今年のテーマは何なのかしら?」 「ダイヤモンド・ハントだとさ。地獄中の亡者が集まってくるだろうよ」 とオハラ主任が答えた。ゴードンも続ける。 「そうなんだ、バットガール。この宝探しゲームは、まるで蜜に群がるハエのように、あらゆる犯罪者どもをゴッサムシティに引き寄せているんだ。ことにそのダイヤモンドに200万ドルの価値があることが知らされてからはね」 「200万ですって! ホープダイヤだってそこまではしないわ!」 バットガールは驚きに声をあげる。 「その通り。だが、このダイヤモンドは特別だ。おそらく化学合成で作り上げた、99.9%純粋な結晶なんだろう。軍や医学の分野にレーザー技術を応用するつもりなら、このダイヤモンドが無限の力を発揮するはずだ」 とゴードンが説明を加えた。オハラ主任もこれに重ねて、 「そしてバットガール、あのクレイジーな奴がこの1年の間、抽選の結果と称して多くの当選者の名前を発表しているという事実もあってね。奴の所有する島に呼んでゲームに参加してもらおうということらしいが……ただ妙なことに、ここで招待されているのが全て美しい女性ばかりなんだ」 「なるほどね」 あごを撫でながらバットガールが言った。 「ところでコミッショナー、このパーティーのチケット、1枚手に入れられないかしら?」 「あ…ああ、2枚入手していたうちの1枚がまだ手元に残っているが……どうしてそんなことを聞くんだね?」 ゴードンが尋ね返す。 「バーバラさんにパーティに行くよう頼めないか考えていたの。そうすれば問題のパーティで何が起きているか、客の安全に問題は無いか、目を光らせてもらえるでしょ。もしも何かまずいことになったときにも、この特殊携帯無線ですぐに私を呼ぶ事ができるわ」 彼女は小さな機械をユーティリティベルトから取り出し、コミッショナー・ゴードンに手渡した。 「なぜバーバラを……我々の女性潜入捜査官を使うわけにはいかないのかね?」 コミッショナー・ゴードンが躊躇いながらそう言った。 「これは推測にすぎないけれど、ゴッサムシティにいる主要な犯罪者は全て、あなた方の潜入捜査官の情報を掴んでいると思うわ。心配しないで、これは安全な任務よ。何十人という客もいるし、多分何も起こらないでしょう」 とバットガールが言った。 「そうだな、バットガール」とゴードン。「娘もきみと一緒ならば安心だ」 「決まったわね。それじゃ今夜彼女と連絡を取ってみるわ。段取りは全部まかせてちょうだい。それからコミッショナー、あなたへは定期的に連絡を取るように言っておくわね」 バットガールは携帯無線機を再び手に取ると、足早に部屋から出ていこうとした。だがドアを開けたところで彼女は振り向いて尋ねた。 「ところで、もう1枚のチケットはどうなったの?」 「いい質問だ」 ゴードンは答えると、机に戻って一つのフォルダをみつめた。 「明らかにIADCも、このダイヤモンドが名だたる独裁者の手に落ちないように監視しておきたいと考えたらしい。彼らが派遣するエージェントは、間違いなくミス・プリンスだろうな」 「なるほど。彼女のことも私が監視……ええとつまり、バーバラさんに気を付けてもらうよう伝えておくわ」 そう言い残してバットガールは去っていった。 「なんにしても、娘があのような力強い人に守られているというのは本当に嬉しいものだ」 コミッショナー・ゴードンが言う。 「そうだな。だがあんな格好では彼女、風邪をひいてしまうんじゃないか?」 オハラ主任が答えたが、コミッショナー・ゴードンは眉を上げただけであった。 |