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 二日目 その2

 「えー、これが、昔から下痢止めとか胃の薬になると言われてきた、フウロソウ科の……」

 そう自分の手の中の植物を説明しながらも、中年の教育委員の視線は、目の前のはしたないまでに魅惑的な小学校教師の上を粘っこく泳ぐ。

 その視線を感じるのか、それともただ自らの体内から沸き上がる淫悦に身を焦がしているだけなのか、顕子は少し上気した頬を恥ずかしげに伏せたままにして子供達の前に立っていた。

 顕子の今の格好は、健康的なはち切れんばかりの肌の張りに彩られた生脚を剥き出しにした白のショートパンツに、同じく周りの深緑の自然に映える眩いばかりの白色のノースリーブのタンクトップであった。

 只でさえ雪をも欺くような肌の白さを誇る顕子だけに、白一色でまとめられたその姿には、まるで夏の昼下がりに、妖精などのこの世ならざる存在に遭遇してしまったような印象を周りの人間に与えるのだった。そして何より周りの目を引いたのは、白のタンクトップの下には、どういう訳か下着が着けられておらず、顕子の砲弾型の巨大な胸が透けて、乳首から乳房の肌の色に至るまで丸見えになっている様であった。そんな顕子に子供達は、まだ根が素直だけに、中年の教育委員以上に露骨な視線をそんな投げかけてくるのだった。

 「先生さっきからおっぱい透けてるよね?」
 「なんか、恥ずかしいよね」
 「先生どうして顔が赤いのかな?恥ずかしいならあんな格好よせばいいのに」

 ひそひそと自分の背後で子供達が話し合うのが聞こえる。顕子は、子供達が自分の格好に子供らしい素直さで驚き、動揺しているのを知って、身体の奧が焦げ付くような恥ずかしさを感じ、心をうち振るわせた。

 午前中の陶芸教室を終えて、午後からは施設の周りの自然公園に指定されている野山を、植物に詳しい教育委員の案内で野外散策するというのが、2日目の予定だった。

 その引率は、大石が早々と朝早くに、「眠いから」という理由で辞退したため、顕子一人で行わなくてはならなくなっていた。それでも、単なるいつも通りの引率だったら、顕子は苦もなく一人でやり遂げた筈だった。だが、今の顕子は、彼女を見詰め続ける八つの瞳に束縛され、また先程胸に吹きかけられたあのスプレーの効果によって、淫らな感覚にも束縛されようとしていた。

 ……ああ、胸が、胸が疼く……

 今朝、シャワールームで牧田と乳房で交わった時の充実感はすでにない。あるのは、自分が確実に汚れ、堕落していっているという諦めにも似た、どこか快感に通じた妖しい感覚だけである。

 ……見られている……あの子達に……それだけじゃない……他の真面目で無邪気な子達にも、それに、あの真面目そうな教育委員の方にまで……淫らな頭の軽い、胸の大きい馬鹿女だと思われているに違いない。世も末だと。こんな女が教師になるなんて、もうこの国は駄目だと……。子供達も家に帰ったら親御さん達に言うわ……。紺野先生は、わざと透ける様な服を着て、胸を見せていたと……

 けっして諦めているわけではなかった。今までの自分に対するプライドを捨てたわけでも無かった。だが、今も自分の後ろで視線を光らせているはずの、四人の子供達がそれらを超越したところで顕子をからめ取り、勝手気ままに弄ぶのである。彼らによって刻みつけられた凌辱の傷跡と、それに抗おうとするいつもの自分とが、心の中で激しく争う。だが、その内面の争いすらも、今の顕子にとっては性感を高める要素にしかなっていなかった。

 葛藤が焦りを産み、焦りがやがて言いようのない絶望に変わる。その瞬間に、顕子は性的な高ぶりに近いような興奮を感じてしまうのだ。自分が淫らな痴女の様に振る舞う様を昨晩彼らに見られた。あまつさえ、その延長で、一般の真面目な人間達にまで自分の淫らな様を見られている。白昼堂々、野外で、多くの教え子達に囲まれて、自分は下着を一切纏わず、肌の露出の多いどうしようもない格好で立っているのだ。

 そう思う度に、顕子の芯が濡れそぼり、顔が上気し、乳肉の谷間がじっとりと汗ばんできてしまう。

 「それでは、もう少し上の方へ登ってみましょう。この辺りとはまた違った植物が生えていますから」

 教育委員がそう言って、子供達を山の上の方へと先導する。顕子はその最後尾から、誰も列から遅れていないことを確認しつつ、ついていく。だがそこで子供達の列の一番後ろに、牧田達「紺野顕子を乳奴隷にする会」メンバーが顕子を待つかのようにしてゆっくりと歩いていることに気づいて、顕子は身構えてしまう。

 「先生、なかなかセクシーだよ」

 冗談っぽく北原が振り返って、片目をつぶる。元はと言えば、この子供達が無理矢理顕子にさせた格好なのだから、かなり馬鹿にした態度ではある。

 「ホント、みんなびっくりしてたよ。あの怖い紺野先生が、テレビのタレントみたいに、いやそれ以上に恥ずかしい格好で外に出てきたんだからね」

 寒河江の落ち着いた声が、顕子の自尊心をいたく傷つける。

 「まあ、そう言うなって。これも乳奴隷の務め。そうでしょう?先生」

 そう言って牧田は笑う。今朝の顕子との乳房性交がよっぽどよかったのか、牧田は午前中もずっとご機嫌だった。そのためか陶芸教室の間は、ちょっかいをかけてくることもなく、普通にグレーのポロシャツを纏わせてくれていたのだが、昼食を終えて野外散策が始まるという時に、おもむろに顕子に、今している破廉恥な格好を牧田は要求したのだ。

 顕子は勿論必死で抵抗したのだが、昨夜撮ったビデオの話を出されると、逆らうわけには行かなくなり、恥ずかしい格好に着替え、さらに胸には今朝同様にスプレーを吹き付けられた。

 真夏の直射日光が自分の肌を焼いていくじりじりとした感触すら、スプレーの効能は快楽に変えていく。さらに、野外散策だけに、歩くのは舗装などされていない山道だ。その危うい道を気を付けながら歩くことが、顕子の下着を纏っていない豊満な胸を、必要以上にぶるぶると揺らして衝撃を送る。そして周りのまとわりつくような視線による恥辱。それらがない交ぜになって、現在の顕子の官能はかなり高ぶっていた。

 ……きっとこうなるってわかっていて、したんだわ

 顕子は目の前をへらへら笑いながら歩く牧田の顔を、恨めしげに見遣った。

 「先生、今朝、牧田君にだけおっぱいでしてあげたって、ホント?」

 不意に、今までのどこか空々しい和気藹々とした雰囲気をがらりと変えてしまうような、暗い声が顕子の耳元に飛び込んでくる。

 「何だよ、高橋?信じてねえのかよ?先生は、俺にだけじっくりおっぱい奉仕してくれたんだよ。それもこれも早起きのおかげ。ねぼすけな自分が悪い。恨みっこ無しってあれだけいっただろう?」

 高橋清治の思い詰めたような顕子への質問を、脇から牧田が咎める。だがその口調は、まったく明るく朗らかで、明らかに抜け駆けしたことによる余裕に満ちあふれていた。

 「でも!あれだけ抵抗した先生が、自分から牧田君におっぱいでしてあげたなんて、信じられないよ!どうせ、またあのスプレーを使ったか、ビデオの話をしたんでしょ?そうなんでしょ、先生?」

 清治の表情は真剣だった。そして、その言葉には、牧田達との微妙なずれが存在していた。

 「高橋!お前、何が言いたいんだよ?先生は俺たちみんなの乳奴隷だろう?今朝は俺だけがしてもらったけど、今夜にはお前だってしてもらえばいいじゃないか。そのためにはスプレーをつかったって、ビデオの話を持ち出したって、何したっていいんだ。そうだろう?何一人で訳わかんねぇこと言って熱くなってるんだ?」

 明るかった牧田の表情が、険悪なものに変わる。それに対して清治は、頑ななままに顕子の顔をじっと見つめている。

 その視線をまともに見返しながら、顕子には清治と牧田達との違いが、何となくどこにあるのかわかっていた。

 ……高橋君は、私が好きなんだわ。それも、単なる肉体的な憧憬というのではなくて、恋なのではないかしら?だって、この視線、それに先程言っていたことだって、単に焼き餅じゃないのかしら?

 笑止千万な話だった。自分を散々凌辱した計画に荷担しておきながら、尚かつ自分に正常な恋心すらも寄せようと言うのか?そこまで自分はお人好しではないと顕子は思うし、たとえその気持ちを嬉しく思っても、顕子の心の中での「凌辱者」としての清治の認識は揺るぎようもないのだ。

 ……でも、使えるかもしれない。この高橋君の気持ちを利用して、ビデオを持ってこさせるとか……

 一瞬我ながら素晴らしい考えが浮かんだと、顕子は自画自賛した。しかし、その思いもすぐに激しい自己嫌悪へと変貌する。

 ……私は、教師でしょ?それなのに、教え子を騙すの?その気持ちを利用して、手駒みたいに扱うの?それでは大石と一緒じゃない!

 大石への憎しみと同時に、教師としての誇りが心の中で頭をもたげる。どれだけ責められ、プライドをずたずたにされても、顕子の中では教師としての自分という自己認識が無くなることはなかった。それは同時に、無くなった瞬間が、顕子にとって自我崩壊の危機に陥る瞬間であるということも示していた。

 我知らず顕子は自分の中の最大の強みである部分に、頼りっきりになってしまっていたのだ。勿論、それが同時に自分にとって最大の泣き所であるということには、顕子はまだ気づいていなかった。

 「僕は……僕は、先生が僕らみんなのものだってことはわかってるつもりだよ。でも、先生が僕の知らないところで誰か別の人に色々してあげてるって思うだけで、頭の中が真っ白になって、どうしようもなくなるんだ。だから……変なこと言っちゃって、ごめんよ、牧田君」

 流石にクラス内の実力者であり、「紺野顕子を乳奴隷にする会」のリーダー格である牧田の心証を悪くすることを恐れたのか、清治は素直に自分の感情を口にして、許しを乞うた。

 「お前、本当に先生が好きなんだな。でもお前のその気持ち、わかるな」

 牧田は清治が神妙な顔をして謝ったことで、すっかり先程までの妙に浮かれたテンションを取り戻した。清治の肩に右腕を回しながら、その顔に微笑みかける。

 「わかる?そうなの、牧田君?」

 清治が嬉しそうに問い直すと、牧田は深く頷き返した。

 「そりゃ、そうさ。何せ、言い出しっぺだよ、俺は。俺だって先生が好きで好きでたまんないさ。でもさ、哀しいかな、俺は子供だ。先生に一人前の立派な男として認めてもらえるわけがないと思いこんでいたんだ。だから、こんな風な形でしか先生をモノに出来なかったんだ。でも、俺はそれを後悔したり、嫉妬したりはしない。だって、お前たちなら、お前らと一緒なら、別に構やしない。そう思うんだ」

 歯の浮くような言葉を、面と向かって吐かれて、清治は思いきり顔を赤くして、照れた。

 そんな二人のやりとりを聞きながら、顕子は複雑な気持ちで居た。教え子達が深い信頼関係で結ばれることは、教師として嬉しい瞬間の筈である。だが、それは自分の肉体への慕情と凌辱いう点で結ばれたものなのだ。このまま顕子が彼らの間で、いいなりになっていれば彼らの信頼関係も崩れはしないだろうが、顕子がその中間点から消え失せた瞬間、彼らはどうなるのだろうか?もしくは、あり得ないことだが、顕子が誰か一人を選んでしまったらどうなるのだろうか?この奇妙な共同関係は、もろくも崩れ去ってしまうのだろうか?

 異常な集団である彼らに、そんな考え方をする自分自体がおかしいのかもしれないと顕子は思いつつも、まだこれから生きる時間の方が長いであろう彼らの未来へ大いなる不安を感じずにはいられないでいる。

 「あ、ほら、先生、遅れてるよ、急がなきゃ」

 不意に、背後から寒河江に肩を叩かれて、顕子は小さく声をあげてしまう。だが、確かに寒河江の言うように、顕子とそれを囲むようにして歩く四人と教育委員たちとの差はかなり開いてしまっていた。

 「ようし、ダッシュだ!負けたヤツは、腕立て伏せ五十回!」

 不意に牧田がそう宣言すると、周りの子供達ははしゃぐような声をあげて一斉に、いつの間にかかなり前の方を歩いているクラスメイトたち目指して走り始めた。

 「先生!先生も負けたら腕立て伏せなんだよ!」

 走りつつ牧田が振り返って顕子に声をかける。

 ……そんな!だって、私、ノーブラなのに?

 だが、牧田ならばやらせるだろうと思った。きっと教育委員や他の児童の目の前で腕立て伏せを強要されるに違いがない。ノーブラのタンクトップでする腕立て伏せは、さぞかし淫らで情けない印象を周りに与えるだろうと思うと、ぞっとする。

 「ま、待って!」

 顕子は意を決して、走り出した。その姿を、前を走っていた四人は、振り返って食い入るように見つめている。

 ……ああ、やっぱり見たかったのね?私のはしたないくらい大きい胸が……ノーブラの胸が激しく揺れる様を……

 顕子は走りながら、子供達の視線を感じて、心の中が泡立つような感覚を感じていた。だが、走り続けなければ腕立て伏せもさせられてしまう。今でもかなり恥ずかしく屈辱的なのだが、腕立て伏せは前の列に追いついてから成されるに違いない。そうなったら、恥ずかしいどころの騒ぎではなくなるだろうと、顕子は恐れた。

 「ククク、揺れてる、揺れてる」
 「ああやって見ると、本当バスケットボールを胸に入れて走ってるみたいだね」
 「うう、堪らなくなって来ちゃったよ、早くあのおっぱいで、いかしてもらいたいなぁ」

 牧田達は、涎も垂れんばかりの表情で、正面を向いて走ってくる顕子の姿を見ていた。
 子供達が評したように、ノーブラで走る顕子の上半身は、本当にバスケットボール大の球形の物体が二つ張り付いて身を蠢かせているかのように遠目からは見えた。タンクトップのざっくりと切れ込んだ胸元からは、左右から盛り上がった肉丘が激しく波打つのが見える。腕を大きくスライドさせる度、脚を思い切り踏み出す度に、その二つの肉丘は、ぶるん!という擬音がしそうな程の勢いでどちらか一方に同時に揺れるのだ。

 「おい!近くなってきたぞ!」
 「よし!また走るぞ!」

 顕子が近づいてきたと思うと、子供達はまた走り出した。彼らはそうやって、ある程度距離が離れれば振り返って顕子を視姦し、顕子が近づいてきたら負けないように走ることにしているようだった。

 やがて、彼らは前を歩いていたクラスメイト達の列に追いついてしまいそうになっていた。このままでは負けてしまうと顕子は猛ダッシュをかけた。だがそれも牧田達の狙い通りだったことは、次の瞬間イヤと言うほど顕子は思い知らされた。

 「みんな!凄いよ!」

 牧田は走りながら、すぐ前に迫ってきているクラスメイト達の背中に大声で呼びかけた。

 「紺野先生って脚が速いんだぜ!ハンデつけてもらって走ってんだけど、追い抜かれそうだ〜!」

 半ば楽しそうに、牧田は大声をあげるが、勿論ウソであった。
 牧田の馬鹿騒ぎで、子供達の殆どが後ろを振り返り、先頭を歩いていた教育委員も何事かと列の最後尾にやって来ていた。

 「わあ!格好いい!」

 無責任な女子が、懸命に走る顕子の姿を見て叫ぶ。確かに、薄くて露出の高い服で懸命に走る顕子の姿は、陸上競技の女性選手を思い起こさせた。只でさえすらりと伸びやかな四肢をもっているだけに、走る様もかなり美しく見える。

 「すっげえ!だって、牧田くんってウチのクラスで一番速いんだぜ」
 「そりゃそうさ、大人だよ、先生は」
 「大人だって遅い人はいっぱい居るよ!ウチのお母さんなんか、私より遅いよ!」
 「速い遅いじゃないよ、見ろよ、なんか凄くない?先生必死だよ」

 子供達が懸命に牧田達を捉えようと走る顕子を観ながら、好き勝手に言葉を交わす。男子生徒の中には、流石に顕子の胸元が気になるのか、顔を赤くして地面に視線を落としたりした者もいたが、大抵の児童は食い入るようにして顕子を見つめ続けた。

 無論、その中に中年の教育委員の血走った視線も入っていた。彼は、紺野顕子という若い教師に正直性的な魅力を感じ、さっきから股間の高ぶりをどう誤魔化そうか必死だったのだ。だが、いま目の前で走る顕子の姿は、危うく彼から、長年培ってきた教育者としての理性すらも奪いかねないほどセクシュアルなものであった。

 「よーし!オレ、一番!」

 駆け込んできたのは、牧田が最初だった。続いて寒河江が。そして、次は小さいがなかなか脚の速い北原が飛び込んでくる。

 残るは清治ただ一人になった。肥満気味の清治はそれほど脚が速くない。顕子もそれは知っていたから、俄然ピッチをあげて腕をスライドする。

 だが、不意に自分の方を見つめる子供達の顔が目に飛び込んできた。

 ……やだ!何で見られてるの?

 顕子は途端に自分の姿が子供達の目にどう映っているのか考えて、猛烈な恥ずかしさに襲われた。ノーブラで走ったりすれば、自分の胸が通常では考えられないほどの激しい動きを見せることは、知っていた。現に今も、まるで千切れ飛ぶのではないかと思われるほどの勢いで、乳肉は上下左右に揺れまくっているのだ。

 ……み、見ないで!私を見ないで!お願い!

 顕子は胸の中で叫びながら清治の背中を捉えようとする。泣きたいほど恥ずかしく、またノーブラの乳首が、走る度に激しくタンクトップの布地にこすれて、只でさえスプレーで高ぶっている官能がこぼれ落ちそうな気になってくる。だが、それでも顕子は走った。走らねば、腕立て伏せを全員の前でしなくてはならなくなる筈だからだ。

 そんな顕子の苦悶こそが牧田たちの思うつぼであった。牧田達はそういう歪んだ形で顕子をいたぶることを大石を通して、どうやら知ってしまったようであった。そうした小刻みな玩弄といたぶりは、される方にじわじわとした精神的なダメージを与えていくことになる。必殺技ではないが、まるでボディブローのように、対象のプライドや気力を削いでいってしまうのだ。

 「おお!がんばれ!先生!」
 「高橋ー、抜かれたら、お前二学期ずっと給食当番だー!」

 子供達が無責任に叫ぶ。子供達は子供達で、なんだか訳が分からないまま一種の興奮状態に陥っており、どうして顕子が牧田達と徒競走しているのかなどという根本的なことに思いを馳せることもなく、ただただ熱狂している。

 やがて顕子が清治の背中をとらえ、前に出ようとする。だがその時思わぬ行動を清治はとった。なんと、よりによって自分を抜き去ろうとした顕子の跳ね上がるようにして揺れる乳房を脇から掴んだのだ。

 「ひっ!」

 揺れ動いている乳房を、脇から圧倒的な力でがしっと掴まれた衝撃で、顕子は体勢をよろけさせた。そのまま清治の方へと倒れ込むと、二人はもつれるようにして野道の脇の雑木林に頭から突っ込んでいた。

 「これは、いかん!」

 流石に教育委員が二人の倒れ方に異常を感じて、子供達をかき分けて顕子達の方へと向かう。その後ろから、牧田達も慌てたようにしてついていく。

 「おお!先生、大丈夫ですか?」

 教育委員が、雑木林の熊笹の中に清治を抱くようにして倒れている顕子を見付けて側に駆け寄る。

 「ええ、私はともかく、この子を……」

 顕子は自分の身体の上でぐったりとしている清治を教育委員の方に押してやると、教育委員は清治に大声で呼びかけた。

 「君!しっかりしなさい!おい!」

 軽い脳震盪か何かだったのだろうか、清治はその呼びかけに応えるように、ぼんやりと瞼を開いた。

 「おお!高橋!無事だったか!」

 牧田がそう叫んで、清治の肩を抱く。だが、次の瞬間その表情は怪訝そうに顕子の方を見たまま固まってしまった。

 「先生?脚が痛むの?」

 牧田の言葉に、皆が顕子の方を見る。だが、当の顕子にはどこも痛いところはなかった、ただ転んだ際に肘の所に出来た擦り傷がじんじんと痛むだけだった。

 「……私、別に……」

 だが、その顕子の言葉は、あっという間に周りを牧田達に囲まれてしまったことで途中で止まってしまった。

 「すいません、紺野先生が、脚をどうやら怪我したみたいなんで、僕たち先生を施設の方に送ってきます」

 牧田が顕子の両の肩に手を置きながら、きっぱりとした口調で教育委員に向かってそう言うと、教育委員は困ったような顔をして見せた。

 「送っていくって、君たちだけじゃ無理だ。私がこれから施設に行って救援を呼ぶから、君たちはここに居なさい」
 「そんな!そんなことしたら、誰がこの野外散策を続けてくれるんです?大石先生は体調が優れないといって寝てるし、紺野先生は今怪我をしちゃったし……。もしこのまま野外散策が中止にでもなったら、僕ら、クラスの連中に一生恨まれちゃうよ……」

 教育委員の申し出に対して、牧田はそう言って、泣きそうな表情をして見せた。

 「あながち、無理でもないと思います。だって、僕らはそこの高橋君を含めて四人ですから。ここは、無理矢理先生と競争してしまった僕らが責任をとる形で施設に送りたいんです。お願いします」

 寒河江が、牧田の後を受けて言葉を続けた。牧田はその純粋さで、寒河江の方は落ち着いた感じと真摯さで、教育委員の心を動かしたようだった。

 「よし、わかった。四人と言っても、この高橋君はさっき少し気を失ったみたいだから、あまり無理はさせないように。そして先生と一緒に施設の職員に見てもらうこと。いいね?」
 「はい!わかりました!」

 牧田と寒河江が声を揃えて、はきはきとした口調で応えた。教育委員はそんな二人に対して何か言いたげな表情を見せたが、次の瞬間には、何事が起きたのか心配げに見守る子供達の群の中に戻っていった。

 「うふふふ、行っちゃったね、先生?」

 教育委員と子供達の姿が見えなくなった途端、顕子の胸がタンクトップ越しに後ろからぐりっと揉み込まれる。

 「ま、牧田くん!な、何を考えているの……?」

 先程からの恥辱感や、思い切り走ったために、胸にかけられたスプレーの効能は一層激しく顕子の体内を暴れ回っている。その胸を牧田に後ろから力一杯揉み込まれたことで、顕子の声は思わず上擦った物になっていた。

 「何?何って、決まってるでしょ?ここで、奉仕するんですよ、先生。乳奴隷として、僕らにたっぷり奉仕するんです」
 「そ、そんな……だって、こんな、明るいのに、外でなんて……あ、あぁッ!」

 ノーブラの乳首は、タンクトップ越しにでもその突起を十分に把握できた。牧田は背後から両手で顕子の乳房を鷲掴みにすることに加えて、人差し指と中指の間で乳首の突起を挟み込んで、くりくりと扱きだしていた。
 野外散策のために頭の後ろで一つにまとめて束ねられた顕子の黒髪の甘い匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、牧田は乳を弄ぶ動きを一層繊細なものにしていく。

 「あ……ま、牧田、クンっ!いや、せ、先生の話を……聞いてっ!ああっ!」

 顕子は懸命に、白昼野外で惨めな行為をすることを拒否しようと牧田に呼びかけるのだが、牧田はその顕子の言葉自体を封じようとするかのように、タンクトップ越しに、背後から両手を使って巧みな乳肉愛撫を繰り返す。左右のそれぞれの膨らみを中央に持ち上げ寄せて、その圧倒的な充実感と繊細な柔らかさを味わうかのように、ゆさゆさと強弱を付けて揉み込んでみる。さらに、急に左右から支えている掌を離したかと思うと、乳首を摘んで、人差し指で弾いてみたり、つまみ潰すようにして人差し指と親指で挟んでぎりっと力をこめてみたりする。

 「あぐっ、いやっ、こんな、こんなのは、いやぁっ!」

 このままでは野外でこの子供達に犯されてしまうと、顕子は焦る。だが、スプレーの威力と、昨夜からの徹底的な乳責めによって、明らかに淫らに変化した肉体が、顕子本人の意思を裏切って、一層の刺激を求めて、震え出す。

 「おおっ!」

 タンクトップがおもむろに牧田にまくり上げられ、乳肉全体が太陽光の下に無防備に晒される。蛍光灯の下で見る乳肉とそのもの自体に変化は無いはずなのに、野外で、快晴の太陽光の下で見る顕子の乳は、また違った感慨を子供達に与えた。皆一様に食い入るようにして、昨夜あれほど貪り尽くした、類い希なる巨大さと美しさを兼ね備えた乳を、太陽光を滑らかな肌の上に照り返して、まるでそのもの自体が光を放っているかのような最高の乳を、見つめ続けた。

 「い、いくぜっ!いいな、牧田?」

 寒河江が血走った目で、牧田に了解を求めると、牧田は顕子を背後から抱えるようにしながら、にやりと笑った。

 「ひぃーっ!」

 甲高い、それでいながら金属的ではなく、聞く牡全てを狂わせるような顕子の、艶っぽい悲鳴が、辺りの緑の木々の間を渡っていった。そして、じゅぼっ、ちゅぼっという、顕子の滑らかな肌に寒河江の口が吸い付く音が同じようにして辺りに鳴り響く。寒河江は、まるで赤ん坊が母親の乳首に吸い付くように口いっぱいに顕子の乳首とその周りの乳肉を頬張って、まるで咀嚼するかのように口を動かしていた。

 「お、オレもっ!」

 北原が寒河江の吸い付いている乳首とは別の乳首に吸い付く。途端に、顕子のあげる声はより一層甲高く、その艶っぽさを増していく。

 まるで、二匹の飢えた獣に食らいつかれている美しい草食性の動物であるかのような顕子の姿に、気づけばまたただ見るだけになってしまっている清治は、ただただ見惚れてしまっていた。すらりと長く、そして引き締まった美しい四肢は、どこか人間離れして見えたし、さらにそのバランスのいい体つきの中で唯一バランスを崩すかのようにして上半身で自己主張している二つの巨大な膨らみには、二人の子供がそれぞれ吸い付いている。それが真っ昼間の自然の真っ直中ということも相まって、どこかこの世ならざる、不可思議でいて極めて蠱惑的な状況の様に、清治の目には映った。

 牧田が背後から顕子の耳たぶを口に含み、さらにそのまま白い首筋を舌で滑り降りていく。牧田の唇や舌が顕子の肌を汚す度に、顕子は、切なげに瞳を閉じて、身体をぶるっと微かに震わせている。そればかりか、乳首に吸い付いた二人が歯を立てたりすると、より一層大きく体を震わせて、はっきりとした性的な意味合いをもつ声をあげるのだ。

 ……ああ、先生、なんて、綺麗でやらしくて……最高なんだっ!

 清治はもう我慢が出来なくなっていた。とにかくどこか、顕子の美しい肉体のどこかにむしゃぶりつきたくて仕方が無くなっていた。だが、一番の目当てである乳にはもう二人の先客がいる。頸から上は、牧田が弄んでいる。清治は少し悩んだ末に、顕子の剥き出しの太股に、しゃがみ込みながら舌を這わせていった。

 「いひぃっ!」

 新たなる刺激を受けて、顕子は思わず叫んでしまっていた。

 ……ま、また、私、この子たちの玩具にされてしまう……

 心の中で顕子は自分の情けなさ、子供達の邪悪さを呪った。だが、肉体の方は子供達の玩弄を拒むどころか、嬉々として受け入れてしまっている。昨夜の荒々しい、自分の肉体を単なる性欲を処理するためのモノとしてだけ見ていた、子供達の責め。そして、今朝の牧田への乳房奉仕。スプレーで狂わされたのか、元々自分の乳には大石の言うように、淫らな本性が潜んでいたのか。そうした想念が、自らの淫らさに禍々しく犯されていってしまっている脳の中を飛び交っていく。

 快楽を押しとどめる気のなくなってしまっている、淫らな乳の大きい破廉恥な小学校教師。そんな自分が、何故か今はとても愛おしい。教師であることが自分の支えであり、それはこんな風に教え子達に責められているときも変わらないのだが、同時にそんな淫らな教員であるということが、明らかに他の教師とは異なった子供達との関わり合い方を現出してくれたことで、顕子は他の無能な教師に対するおかしな優越感すら感じ始めてしまっていた。

 ……そう、私は、この子たちの先生だもの……だから、責任をもって、この子達を……射精へと導いてあげなくては……他の先生にできて?私にだけ……私という教師だけができるのだ……子供達を、この胸で射精させてあげるのは、私……だけ……

 「ひっ!いひっ!ひぃーっ!」

 顕子の想念は、そこで途絶えた。想念の歪みに導かれるかのように、七色の毒々しい光が視界を覆い、乳首から、首筋から、そして内腿から押し寄せてくる子供達の愛撫に、肉体の芯が焼かれ、爛れ、そして、顕子の精神は、飛んだ。

 「がっ!はっ!はひぃーっ!」

 途端に痙攣のような震えが顕子の全身を襲い、子供達は互いに顔を見合わせながら、顕子の肉体を離れた。どさりと、熊笹の生い茂った山道に、顕子は倒れ込む。あっけないほど簡単に訪れた顕子の絶頂の瞬間だった。

 「うーん、なんか、あのスプレー効きすぎてない?」

 北原がつまらなそうな表情で、倒れ込んでいる顕子を見遣りながら牧田に尋ねる。

 「そうだなぁ、もう少し堪えて欲しいよな」

 北原の言葉を首肯するように頷く牧田に対して、今度は寒河江が口を挟む。

 「いや、逆にいいと思う。いかせるだけいかせ続けて、俺たち無しじゃ生きられなくするんだ。それが乳奴隷の近道じゃないか?」

 寒河江の言葉に、皆、一様に頷いて見せた。今、この瞬間の楽しみも大切だが、それ以上に彼ら「紺野顕子を乳奴隷にする会」の目的は、顕子を乳奴隷とすることなのだ。目的を目の前の快楽に流されかかっていたことに気づいて、牧田は寒河江に素直に礼を言った。

 「寒河江、悪い。どうも、この先生を見てると、とにかく責めて責めまくりたくなってくるんだ。それも、こんな風に勝手にイキやがって中断なんてことの無いようにな」
 「それはオレだって同じだよ、牧田。でも、オレはどっちかっていうと、イってもらった方が、いい気分になれるんだ。屈伏させたっていうのかな?」
 「そうか、うん、じゃあ、これからはとにかくこいつをいかせるだけいかしてみるか!それでいいよな、お前らも」

 牧田が清治と北原に了解を取ると、二人とも黙って頷くことでその意見を首肯して見せた。

 「よーし、それじゃ、さっそくいかせるぞ!」

 牧田はまるで自分自身に言い聞かせるようにして、倒れ込んでいる顕子を抱き起こした。

 「先生、起きて下さい。先生!」

 牧田の呼びかけに、顕子は漸く瞼を開いた。

 「さあ、先生、次も先生をいかせてあげますよ!」

 牧田の馬鹿のように朗らかな口調に、まだ快感の余韻に浸っているのか、それともスプレーの効果が持続しているのか、顕子は上気した顔をこくりと頷いて見せた。

 だが牧田はそんな顕子の表情に、寒河江の意見を首肯したとは言え、内心物足りなさを感じずにはいられなかった。

 今朝も顕子は、結局従順な態度で自分の求めに応じた。そして、今もあっけないほど簡単にまるで牧田たちになぶられることを喜ぶかのようにして、昇り詰めてしまっている。

 ……畜生!なんなんだ?どうして、オレはもっと嬉しくないんだ?あんなに犯りたくてしょうがなかったこいつを散々犯ったってのに……

 心の中にもやもやとしたものを感じながら、牧田は顕子の艶っぽい美貌を見下ろすのだった。
                              
       


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