二次著作物とは何か(国内編)

最終修正日 2001.12.12.

話を同人誌だのファンアート(このページにおいてファンアートとは、ファンがメーカーの許諾を得ずに作成し公表する、既成のキャラクターの姿態を表現したイラスト等のことを指す)だのに絞って語るなら、「著作権」の中で注目すべき権利は「複製権」と「翻案権」、ネット上では「公衆送信権・公衆送信可能化権」ですね。
そして「著作者人格権」の中で注目すべき権利は「 同一性保持権」でしょう。これは自分の著作物の内容、またはタイトルを自分の意に反して勝手に改変されない権利です。
複製権は印刷、複写、写真、録音、録画などの方法によって自作の複製物を作る権利です。「翻案権」とは著作物を翻訳、編曲、変形、翻案する権利(二次的著作物を創作することに及ぶ権利)です。
 個人的使用のための複製の範囲はどこまでかというと、「広くて家庭内と親しい友人数人のみ」です。好きなキャラクターの絵を自分で描くのは合法ですが、HPに載せるのは違法です。
HPに掲載する権利は「公衆送信権」と呼ばれます。
また、日本の法律ではまだ誰も見ていなくてもサーバーにアップした時点で送信可能化権の侵害ということになり、違法となります。

「藤崎詩織同人エロビデオ事件」での、コナミ側の主張はこのようなものでした。
「被告は、本件ゲームソフトの登場人物である藤崎詩織が清純派として人気を博したことに着目して、本件藤崎の図柄を無断で用いて本件ビデオを制作したものであり、本件藤崎の図柄に係る原告の複製権及び翻案権を侵害する。
 本件ビデオは、本件藤崎の図柄を用いて性行為の場面を描写した成人向けのアニメーションビデオであって、本件藤崎の図柄における清純なイメージを損なうものであり、本件ゲームソフトの改変をもたらすものであるから、同一性保持権を侵害する。」
 京都地裁の判決も「複製ないし翻案による著作権侵害」と「同一性保持権による著作者人格権の侵害」を認めたものでした。

 それで、藤崎詩織エロビデオ事件の際は「同一性保持権」でかなり高額の損害賠償が請求されています。コナミが要求した額は1000万。判決が指示したのは200万。これが「開発者の心を傷つけ、藤崎のイメージをダウンさせた」分の金額です。
 単に「複製権侵害」なら基本的にその海賊版商品の利益分を支払えばよいのですが(この場合は数十万)、
「同一性保持権」の方は内容と相手によるんで数百部の赤字同人誌でもすごーく高額な金額を請求される恐れがあります。ご用心を。

ときめきメモリアルビデオテープ事件判決文

担当弁護士柳原敏夫氏のサイト


「ポケモンやおい同人誌事件」は「著作権のうち複製権の侵害」の容疑で逮捕、略式起訴で有罪判決が下っています。私はこの事件が刑事事件として扱われた理由の一つは、被告が奥付に記した発行社名(サークル名)が「海山商事」だったからだと思います。これで何らかの営利団体による組織的犯行を疑われたのでしょう。公式画像をそのまま使用しているサイトに「このサイトは非営利目的の個人の趣味のサイトです。」とか書いても、違法性は変わりませんがいきなり告訴される危険性は減るかもしれません。

ポケモン同人誌事件のリンク

『ポケモン同人誌事件』を考える

ポケモン同人誌著作権問題関連

 「二次著作物」と認められる場合は「二次著作物の著作者としての全ての権利は私にあります」と主張できます。これには、原著作物の許諾の有無は関係ありません。日本国の法では現在は無許諾で作られたものでも第三者にたいして著作権を主張できます。
 では、ファンアート作者も著作権を主張できるのでしょうか?
 ひとつ大きな問題があります。
 「複製物」と判断される場合には、著作権はないのです。
 既存の著作物に新たな創作性を加えて作成されたものを二次著作物といいます。
 それで、この「新たな創作性の有無」というのは、個々の事例において裁判所が判断することです。
 同人の常識において「個性的」でも「保護するほどの創作性は認められない」という判決が下る可能性はあります。同人誌やファンアートが創作性の有無で最高裁まで争った判例はないんですよね。
「オフィシャルのモリガンより瞳も胸も大きいじゃありませんか」「ペンタッチが違います。私の線の方が細いのです」
 という程度の差異でも「新たな創作性」を認めてもらえるのかどうか・・・・。
それともただのパチモンと判断されるのか・・・。ポケモン事件の際、朝日新聞はその同人誌のピカチュウについて「オフィシャルよりすこししっぽが大きいだけ」と報道しました。「細かい・・・」とも思いますが「この同人誌のピカチュウはゲームのピカチュウの複製だ」と主張する際には、それが最重要ポイントです。
 ですから、同人誌ならともかく「一枚絵」で「二次著作物」の作者としての著作権を主張するのは、微妙なものがありますので、他人に無断転載をされた時だけ主張しましょう。
「私のファンアートは二次著作物だ。原作者の許可を撮らずに制作されたものでも、第三者に勝手に使われるいわれはない。さっさとその絵を外して下さい」と。
 海外のサイトの中には、「公式画像に雪が降るJAVAを追加した」とか「ゲームからの吸い出し画像で作ったGIFアニメ」とかいうような「作品」を展示して「著作物に関する全ての権利は私にあります。無断転載禁止」とか主張しているものもあります。
 日本人にとっては「え? その程度で主張するの?」というようなものですが、
この「二次著作物」の定義範囲を拡大すると「ほんのちょっとの加工でも権利を主張できる」ということになりますからね。
 それが「拡大解釈」かはその国の法と判例を知らぬ身にはなんとも言えませんね。

 話を戻しますが、ですから「多少アレンジしたんだから私のものだ」という主張は「原著作権者」に対しては通りません。はたからみて「モリガンだね」と見えたら「二次著作物」であり、原著作権者の著作権が及びます。ただし、日本の著作権法では「二次著作物の作者」は「第三者」に対しては「無断転載禁止」を主張出来ます。
 翻訳も同様です。

 

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