著作権に関する国際条約で主なものは、ベルヌ条約と万国著作権条約です。
日本は両方に加盟しているので、ベルヌ条約を基本にした著作権法となります。(日本のベルヌ条約加入は1899年です)
アメリカは平成元年(1989年)3月1日にベルヌ条約にに加入したばかりの国です。それ以前は万国著作権法条約のみに加盟していました。朝鮮民主主義人民共和国はさらに遅く、1996年にベルヌ条約に加入しました。
台湾は現在もどっちにも加盟してませんが、WTO設立協定受諾国地域となりました。これが、台湾の守るべき条約です。世界貿易機関を設立するマラケシュ協定、附属書一C 知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(抄)
これによって台湾国民にも日本人の著作権を守る義務が生じました。
では、ベルヌ条約(正式名称は、「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」)と万国著作権条約の違いを書きましょうか。
万国著作権条約だけに加盟しており、かつ、方式主義を採っている国においては、その国の著作権登録、または(c)マークの表示をしていなければ、無断で複製、頒布されても侵害行為に対する賠償請求等は出来ません。(c)
とはCopyrightの頭文字です。
ベルヌ条約は、著作権の獲得に登録や表示の手続きを必要としない方式(無方式主義)を採用し、万国著作権条約は手続きを必要とする方式(方式主義)を採用しています。
また、(c)マークの正しい表記法とは、
「(c)マーク」、「著作権者名」、「最初の発行年度」(修正すれば後に「修正年度」)の3要件を記します。
例 Copyright (c) 2002 Yahoo! Inc. All rights reserved. (c)マークはソースに©と半角で書くことで表示できます。
映画や原作のあるまんが等の二次著作物や派生的著作物、また著作権管理者が他にもいる場合はこう書きます。
Copyright(c) 1985 水木杏子・いがらしゆみこ・テレビ朝日・東映動画
原著作者と二次著作者では原著作者の方が先に来ます。
なお、日本では著作権表記をしなくても、ベルヌ条約に守られます。ですから、「ベルヌ条約に加盟していない国の人間による無断転載」の可能性を考えない限り、表記しなくてよいはずです。日本の多くの出版物等に著作権表記が施されているのは、近年までベルヌ条約を批准していない外国での無断複製を警戒して表示していたものが慣習的に続いているものと思われます。またアメリカでは現在も著作権表記があった方が民事裁判の際に有利になりますので、アメリカで無断利用される可能性のある著作物には、表記されることも多いです。
ちなみに日本のゲーム会社を十数社ほどまわった所、大半の会社がトップに(c) 2003 Nintendoと表記していましたが、(c)SEGA
CORPORATION 等と年号なしで表記している会社もいくつかありました。そこでそのうちの一社にそれは正規の表現ではないのではありませんかとメールした所、「現在世界の国のほとんどは無方式主義であり、著作権表記は慣行として使っている。だから著作権者だけを明示した方が簡単でよいという考えである」という意味の返事がきました(わざわざありがとうございます)。つまり誰の著作物かわかりやすく主張するために使っているだけということです。私は年号も表記されていた方が見る者の参考になりますし、企業としては年号も入れた方が著作権に関して本気である姿勢を示せるのではないかと思いますが。著作権表記に関してより詳しくは著作権と「マルC」をお読み下さい。
日本ではオリジナルイラストが描かれた瞬間から、著作者は著作権者なの
ですが、万国著作権条約にのみ加盟の国では「このイラストの著作権者は私だ」と主張しない人間のイラストは著作権フリーの画像です。
ええ、使い放題ですよ。私のだ、といわなければみんなのモノです。
こういう点がアメリカの「物言わぬ人間のイラストは使用自由」という感覚の背景にはあるでしょう。(10数年前まで方式主義だったのですから)
条約加盟に伴い著作権法の基本的な所は改正されたはずですが、細かいところでは日本の法律とは違う規定も多いでしょう。
国際的な場では主張しない人間の権利は認められない……ですから私は画像の無断転載に関して、いきなり罵倒しまくりの抗議文を送るのは、相手の国の事情を考えていませんのでおすすめできませんが、黙っていても自分が著作権者だ、というのはベルヌ条約加盟国だけの話なので、きちんと「私のです」といった方がいいとは思います。黙っている人間はフリー素材提供者です。
実際ある日本人が日本のイラストを無断転載した英語圏の人に「無断転載なんかしていいの?」と聞いた日本人にその人はこう答えたそうです。「抗議が来たことはないからいいんだ」と……。
もしあなたのイラストがオリジナルのイラスト、写真、ウェブ素材なら、
Copyright(c)2000-2001 Sega, Inc. All rights reserved.
等とサイトに明記しましょう。
画像のあったのが日本のサーバで無断複製した人が万国著作権条約のみ加盟の国の人の場合で、複製されたのが、
「(c)マーク(著作権表記)のあるオリジナルイラスト」あるいは、
「文化庁に登録されたオリジナルイラスト」
の場合は日本人が損害賠償を請求できます。
表記しなかったら? コピられて当然です。
表記しないってことは、著作権を主張する意志がないんですよ(笑)
ちなみに、2003年現在北米諸国と西欧諸国はほぼ全てベルヌ条約に加盟しています。現在(2003年)万国著作権条約にのみ加盟している国は、4カ国ほどです。そういう国にもインターネットはあったりしますので、(ついでに日本のアニメが放映されていたりもしますので)、世界中で日本の著作物が日本国内並に保護されているわけではない、ということは覚えておいた方がよろしいでしょう。
というか、ベルヌ条約に加盟して100年の日本は「著作権を手厚く保護してきた歴史の長い国」なのです。なので、日本国民の著作権に対する意識が高いのは、むしろ当然といえるでしょう。ですから、ベルヌ条約に加盟して日が浅い国の国民が日本国民並でないのは、彼らが「悪人」だとか「愚か」だという問題ではありません。我々とは法が違ったのです。
またオリジナルイラストではなく、ファンアートの場合は保護の対象とする国が、減ります。違法な(原著作者の許諾を得ない)二次著作物を保護するかどうかについては、ベルヌ条約加盟国の中でも、見解がわかれています。
日本は原著作者の許諾の有無に関わらず、二次著作物として保護の対象になります。ですが、そうではない国もあるのです。
日本(原著作者の許諾の有無を問わない)
第二章 著作者の権利
第一節 著作物
第十一条 二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
アメリカ(違法な二次著作物は保護しない)
第103条 著作権の対象:編集著作物および二次的著作物
(a) 第102条に列挙する著作権の対象は、編集著作物および二次的著作物を含むが、著作権が及ぶ既存の素材を使用した著作物に対する保護は、かかる素材が当該著作物に不法に使用されている場合には、当該著作物のその部分には及ばない。
フランス(おそらく日本と同じと思われる)
第112の3条 精神の著作物の翻訳、 翻案、 変形又は編曲の著作者は、 原著作物の著作者の権利を害することなく、
この法典に定める保護を享有する。 素材の選択又は配列によって知的創作物を構成する詩文集又はデータベースのような各種の著作物若しくはデータの編集物の著作者についても、
同様とする。
参考サイト 社団法人 著作権情報センター
これはどういうことかといいますと、「アメリカの人間が日本のファンアートを無断転載した場合、メーカーのみが原著作者としてその使用に文句を言える。ファンアートの作者はアメリカの法で保護を受ける立場にない」ということです。実際英語で書かれたファンアートサイトの中には、「オリジナルイラストは無断転載禁止。ファンアートは転載自由」と明言しているサイトもありました。
逆に日本人がアメリカのファンアートを無断転載した場合、それは相手に対する権利侵害です。日本の法は違法な二次著作物でも保護されるべきであると定めていますから。
ベルヌ条約の基本は「内国民待遇」で、締結国は他の条約締結国の著作物を自国の著作物と同様に保護すべしと定めています。なので違法な二次著作物が他国で保護されるかは、その国の著作権法を読まないとわかりません。
(参考資料とした「全訂・著作権法」-学陽書房-は1978年4月15日に初版が発行され、1998年9月25日の改訂を最後にしています)
2000年の全世界のソフトウェアの違法コピー率は37%被害総額は118億米ドル
アジア各国の著作権意識を測る、ひとつの資料です。これによると、日本を含め、アジアでは違法コピーが全体的に増えています。日本は37%、中国は94%、韓国は56%、台湾は53%となっています。ちなみにアジア太平洋地域ではニュージーランドの28%が最低です。彼らを尊敬しましょう。なお、アメリカは違法コピー率は24%でさすが先進国ですが、損害額は世界一位です。
あと、注意して欲しいことは、これは違法コピーソフトの数字だということです。画像の無断転載はたいてい個人の他の個人や企業に対する犯罪ですが、違法コピーソフトは企業内の犯罪であることも多いということです。
アメリカでは金銭的な事に関しては、企業がしっかりしているのでしょう。(もっとも、この資料に関しては違法コピーの割合をどうやって調べたのか? という疑問もあがっています。)
社団法人著作権情報センター
日本の著作権法について詳しく知りたい方はこちらへ。著作権条約や批准国の情報が有ります。また無料で著作権に関する質問も受け付けています。
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