悪夢の遊戯(4)      私は殿下 作

悪夢の遊戯 (4)


「ひぃはぅ! ヒッヒッヒッ ふぅひぃほ! ほっ! ほおひへ! ほへはぃ!」
(ちがうぅ!)      (くるしいの!     解いてえ! お願い)

軟体曲芸のごとく常軌を逸した逆海老縛りの苦しさ。拷問縛りに身悶える汗みどろの肢体から血を吐く思いでしぼり出す哀願もギャグで消される。

とうに遊戯から逸脱し危機的状況に堕ちているのを知ってくれ、開放してくれともがくが、気ちがいじみた拘束が必死の訴えを遮る・・・。

もがくほどに縄が鳴き、後ろに揺れる度にくびれたウエストの下の骨が床に当ってゴリリと鳴り皮膚が赤くなる。
密度の濃い濡れた恥毛と陰部を露わにした八の字開きの股、そこから高々に反り上がったしなやかな美脚は小作りの膝頭が汗で光り、濡れた太ももを波打たせて、反り上がる双脚を強引にグイグイ交互に上下させる。そして声の聞こえた方向へ首を振りまわすのだ。

己が手で拭うこともできず噴き出るままに脂汗が首筋をつたい鎖骨や胸元を濡らし、尖った顎先と、焦ってしこり立った乳首が振動のたびに震えて汗を落とす。

「ふうは! ほおひへ! はふほおおひへ〜えっ!」
(雄太!  ほどいて! 早くほどいて〜〜えっ!)

麻里子は必死だった。もはや雄太しかこの汗みどろの阿鼻叫喚地獄から救い出してくれる者がいないのだ。あたかも小説の「くもの糸」の「糸」のようだが、残念ながら雄太はお釈迦様ではない。

「ほおひへえ〜〜〜〜!」

食い込む縄で皮膚が擦りむけ、擦る鎖骨も、乳房を挟む縄筋も擦りむけ痛々しく血がにじみつづけている。ジリジリ焼けつくような手首をさらに捻って逆海老緊縛から脱出しようとするが、擦りむけた皮膚に濡れて硬い縄がさらに食い込んでくる。
いかにもがこうとも、依然としてアクロバチックに反り上がった裸身は急角度に固められたままビクともせず、プロレス技の苦悶と血汗のにじむ焼けるような凄惨さを増し、阿鼻叫喚の地獄へと落ちていく。

手も足も血行不良で青く、その指も痺れのあまり寒さでかじかんだような緩慢な動きになり縄にさえ触れられない。

・・・早くこの逆海老固めから開放して!・・・緊縛地獄から助けだしてえ!・・・気が狂う!・・・お願い!・・・

血を吐く思いの麻里子。
項の毛髪が汗で首にはりつき、その首筋とこわばる背筋をのけぞらせ、尻肉をググッと硬くさせながら身体から吐き出すように助けを叫ぶのだ。

「ほへはひ! ヒッヒッ ふうひ〜〜! ほおひいへえ〜!」  
(お願いい!)    (苦しい〜〜! ほどいてえぇ〜!)



雄太はバスルームから水とガーゼ状タオルの入ったバケツと、片腕にバスタオルを引っ掛けて麻里子の元に戻ってきた。
もがきつづける麻里子の脇にバスタオルを放り投げると、そのタオルの上に、水とガーゼ状タオルの入ったバケツを置いた。

部屋の隅に落ちていた太幅の首輪バックルを掴むと、突然麻里子にまたがり、今している首輪を外して太幅首輪を巻く素早く絞る。

「 !! ン!・・・!!」
  
ベルトの淵に下顎が当たる。首の動きを殺した。
苦悶する汗みどろの裸身を眼下に、フックに再びハンカチを通すと、馬のくつわを絞るように足首の縄に縛った。

麻里子は微かに左右に震わせる以外顎をひくことすらできない。下手に顎を引けば首の前側が圧迫されてしまう。

「ヒィィィィ!・・・はひ・・ふう・・・ほぉ! ヒィィィィ!」 
         (なに・・する・・・のぉ)   

ここにいたって明らかに豹変した雄太の行為に、眼の見えぬ麻里子は新な不安に焦りはじめた。

・・・ひょっとして・・・まさか、そんな?!・・・

金が欲しいのはわかるが出したくない。でも、ひょっとしたら雄太は金の為の過激なサデスティク行為だけでなく自分の命まで・・・この命乞いすら許されない過激な拘束のまま殺される?!・・・もしそうだとすればこんな拘束状態でどんな苦しみに襲われるのか・・・。

不安と焦りが脳裏で増殖しながらも、雁字搦めに拘束した身では雄太の行為を制止することなど不可能、それどころか窒息の苦悶から逃れようとひたすら懸命にのけぞりを繰り返し、喉を鳴かせて息を吸い込むのが精一杯なのだ。重心が微妙にズレて身体が揺れる、揺れるたびに前首を圧迫されまた窒息、気道を開けようと再びのけぞり喉を鳴らす。

言いようの無い不安の感情で満たしてしまった麻里子は、空気を求め必死にのけぞる動作を繰り返しながら、不安から「新た」な恐怖に気づき戦慄が背筋を走る。
雄太から殺されるのではないかと恐怖に全身の筋肉をこわばらせたのだ。

「ヒギイイイイイ! ほへ あいぃ ヒイイイ! こ こほはあいへぇ」
         (お願い)        (殺さないで)

苦しく息を吸い込みながら、恐怖からついに 途切れ途切れの震える声で命乞いの言葉を漏らしはじめた。

しかし震える小声の為か雄太には聞き取れない。

「オラオラ もっと息吸いなよ クフフ 俺と寝たときよりもいい声出すじゃん! 自縛が嬉しくて乳首までしこり立たせてやんの なかなかいい感じ・・・さすが陸上やってただけあってバネのあるナイスバディ、スレンダー美と筋肉美の融合ってゆうやつ? スッポンポンでアクロバチックに緊縛してさあ、この首ベルト締めたら完璧じゃない!」

上から見下げる姿勢で、雄太は言葉を続ける。
  
「ビニール袋よりもっと刺激的な方法があるんだ、麻里子さあ 溺れたことある?・・・苦しかっただろっ!?・・・こうしてさあ、キツイ自縛プレイ楽しんでるだから・・・せっかくだからもっと楽しませてあげるよん・・・もう、死んじゃってもいいよね・・・。」
 
「フッ!! フオオオオオ!!」

雄太が言い終わらぬうちに麻里子は悲鳴をあげる。

「フオッ!!ホオオオ!! ンン!!」

首が絞まろうが息がつまろうが皮がすれて血が出ようが、己があぶり出した汗だまりの上で、緊縛から抜けださんとここをせんどに死に物狂いでもがき、捩り、暴れる。

雄太は、バケツから濡れたガーゼタオルを引き上げると、絞らず、ひとしきり水をしたたらせると拡げ、呻きながら首を震わせている麻里子の顔全体を覆うように、頭頂部から顎に濡れたガーゼタオルをピタリと被せ、振っても取れないよう後頭部で縛った。

「ヒアア!!・・・!!!・・・ ン ・・・ズズ・・・ン・・・・ン・・・・・・・ン・・・」

たちまちガーゼはビチッと顔肌にくっ付く。急に呻き声がくぐもる。ギャグと目隠しの形状がハッキリわかるほど密着している。
息を吸うとするとズズッと音がしてガーゼが鼻穴に入り込み呼吸が遮断した。

「ン!・・・・ンン・・・・ン・・・・・・・・・ン・・・・・」

雄太は麻里子から離れると冷たい目で苦悶の麻里子を見ていた。

「・・・・!!・・・・ズヒヒイイ!・・・・ズヒィィ!・・・・!・・・・・!!・・・」

縄目の痛みどころではない。全身をこわばらせてはよじり筋肉をひきつらせ、豚の悲鳴のような音で喉が鳴る。
ガーゼはデスマスクのように顔にはりつき、鼻の穴に入り込み吸気を遮断する。

1分ほど経過しただろうか 麻里子は陰部から失禁を流す。

「ホイホイ お漏らしすんじゃねえよ〜〜  ほ〜〜ら!」

雄太はガーゼを取った。

「ンン・・・ン ヒイイイイイイイイ、アアアアアア!!」

死の恐怖に顔色を変え、喉を鳴らせて思い切り息を吸い込むと、ギャグの下から続けざまに恐怖の泣き声をはりあげた。

「はい 今度は何分できるかな〜!?」

「ハガアアアア ァァァァ ズズズッ・・・・・!!・・・ンン・・・ ン」

悲鳴を張り上げながら指を突っ張らせ、激しく頭を震わせ抵抗する麻里子に、雄太はニヤつきながら髪を束ねて後ろに引き頭を押さえつけ濡らせたガーゼを巻く。

雄太は、全裸のアクロバチックに拘束した女体が、汗の輝きを増しながら死に物狂いにその身をよじる姿を見ていた。

どちらかと言えばアダルトビデオのボンデージシーンよりホラー映画の餌食になった女の断末魔シーンに近いのか、演技ではなく汗みどろの死に物狂いの人間の姿にジィっと見入っている。元陸上選手の美しい全裸の逆海老反りだけでもかなりフェティッシュなのだが、緊縛と窒息責めに、全身縄目から血を滲ませながら、濡れたガーゼを顔に巻いたことで表情が消え、異様な熱気を発散する動くオブジェのような奇妙で卑猥な躍動美を感じていた。

ホラー映画の餌食になるナイスバディの女性のように、麻里子も断末魔の苦しみに激しく頭を震わせ、紫色に変色した手を空気を掴むようにパッと拡げる。

「やっぱ ビデオの演技とは違うね 迫力あるよ 頑張って・・・」

・・・殺されるうぅ!!・・・息ができんんん!!・・・とってえええ!!!・・・

「ンンンン! ・・・・・・ンン!・・・・ンン!・・・・・・・」

ガーゼの下の唇を紫色に震えさせ、鼻水でガーゼを変色させ、自分の出した汗と血とションベンの上で狂乱のもがきを演じている。

今度は2分経過した。 雄太は麻里子のガーゼを剥ぐ。

「ヒギイィィィィィ! ハヘガアアアアアアア!!」

鼻穴の形がガーゼに残り、雄太は、ギャグの下から泣き声とも悲鳴ともつかぬ動物ようなの悲鳴をはりあげる麻里子を下に、そのガーゼの鼻跡を眺めた。

「もう一回いく? それとも 金くれる?」

雄太は濡らせたガーゼを麻里子の額にべチャっと当て、わななく肢体を見やった。

「ハアウウ! ハアウウ! ハアウウ!」

「その気になったな で? どこにあるんだ?」

「ヒイイイイイイ  アフへヒ  ハッフへヒハワ ヒイイイイ ハフヘヒ ヒハワ」

「そんなんじゃあ、わかんねえだろ! もう一回いくかあ!?。」

「ハガアアアアアアアア!! ア フ へヒ  ヒイイイイ! ハッフへヒハワ ・・・ヒハワ」

「そんな所に隠してたのかよ! もっと早く言えよ! 馬鹿が!」

「ヒイイイイ ほおひへえ ヒイイイイ」
      (解いてえ)


泣きむせる麻里子を後に、雄太は金のある場所へスタスタ歩いて行った。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 つづく 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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