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 崩れ堕ちる高級妻    第2話

崩れ堕ちる高級妻(2)


キッチンのテーブルに腰を下ろし、リビングの夫婦の様子をチラチラと覗いながら、卑猥な笑みを浮かべる二人の男…

 どのようにして女を責め嬲ろうかと、策略めいた会話をボソボソと交わしていたが、会話が一段落付いたところで、大男はキッチンの壁に掛かる時計へとチラリと視線を移し。

「さて、そろそろ時間ですぜ…おっぱじめましょうか…」

「…そうだな…そろそろ始めるとするか…クククククッ」

 顔を見合わせ同時に立ち上がると、揃ってリビングへと向かう。

「よう、お二人さん…もう時間だぜ…」

 大男がソファーに近づきながら声を掛けると、ハッとしたように男と女は顔を上げ、そしてもう一度見つめ合う。

「…す、すまない…麻美…お、俺に甲斐性がないばっかりに…すまないッ…本当に…」

 涙を流しながら妻の両手を握り締め、己の不甲斐なさを嘆く優男。女もその両手をギュッと握り返し。

「いいえ貴方…私のことだったら…だ、大丈夫です…どんな酷い事をされても、きっと耐え抜いてみせますから…だから…だから、これが終わってしまえば…もう一度…もう一度二人で、一からやり直しましょう…ね?貴方ッ…」

 お互いの身体を寄せ合うようにして絆を確かめ合う二人に大男はズカズカと歩み寄り、まずはテーブルの上のコーヒーカップに目をやる。二つのカップが空になっていることを確認すると、兄貴格の男へと視線を移しニヤリとほくそ笑む。そして再び夫婦へと視線を戻し。

「おらッ…もう時間だって言ってるだろうが…」

 ドスの効いた声で言うと、優男の腕をグイッと掴み上げ…

「おらッ…てめえはこっちだ…」

優男を軽々と持ち上げるように抱え、向かいのソファーへと投げつける。優男はぐううっ…と声をあげ喉を詰まらせる。

 大男は詰まる息に悶絶する優男へと近づくと、ソファーの脇に置いてあった黒いバッグを弄り、中から束ねたロープを取り出す。

「てめえにゃ、しばらくじっとしていてもらうぜ…」

 無表情に言いながら優男の身体にロープを巻き付け、身動きが出来ないように縛り上げる。

「で…最後にこれだ…」

 もう一度バックを弄り中から猿轡を取り出すと、優男の口に押し込め後頭部できつく結ぶ。

 ウグウッ…グウウウッ…と抵抗を試みる優男だが、雁字搦めに縛り上げられた身体はピクリとも動かず、猿轡を噛ませられた口からは苦しそうな息が漏れるだけだ。

「アアアッ…貴方ッ…」縛り上げられた夫を気遣うように声を掛ける女に、ニヤリとした笑みを浮かべにじり寄る大男。

「それじゃあ…次は奥さんの番だぜ…」

 脅える女の腕を掴み強引に立ち上がらせ、引きずるようにして兄貴格の男の前へと連れて行く。

「さて、奥さん…覚悟はできたかい?……今日一日、タップリと楽しませて貰うからな…」

 兄貴格は言いながら女の姿を眺め回す。

「それにしても…このままの恰好じゃ、ちょいと色気が足りねえな…」

 ニヤリと女の表情を伺い、次いで大男へと視線を促し…

「折角だ…奥さんにはドレスアップしてもらうとするか…」

 そう言うと「こっちへ来な…」とばかりに女を見遣り、大男へも視線で促す。

 兄貴格の男はまるで我が家のようにスタスタと歩を進め、それに従うように女を押しやり後に続く大男。
 
 三人は二階への階段を登り、一つの扉の前に辿り着く。

「クククッ、ここが寝室だったよな…じゃあ、ちょっと中に入って貰おうか…」

 兄貴格が言いながら扉を開け、大男が女を押し込む。二人の男はお互いの表情を見合わせ、ニンマリとほくそ笑む。

 

 三人が寝室へ入り20分ほど過ぎた頃だろうか…再び寝室のドアが開き、まず大男が姿を現す。そしてその後ろから、兄貴格の男が腕と腕を絡めるように組ませ、女を引きずり出す。

「アアッ!…た、田所さん…お、お願いッ!…お願いですッ!…主人の前では勘弁してくださいッ!…」

 麻美は哀願するように叫びながらドアの縁に指先を掛け、出室を拒む。それでも兄貴格の男――田所は、女の腕を強引に引き、拒む指先を引き離してしまう。

「ククッ、奥さん…旦那の前じゃやらねえなんて約束は、した覚えはねえぜ…」

 そう言うと再び女をリビングへと引き立て、拘束された旦那の横たわるソファーの
前に立たせる。
  
 目の前に引き立てられる妻――それをみた夫の眼がハッとしたように見開かれる。

 それもそのはずである、麻美は先程までの清楚な装いとは打って変わり、まるでカクテルパーティーにでも出かけるような、ゴールドのラメが散りばめられたゴージャスなロングドレスを身にまとわされているのだ。

 そのドレスはピッタリと身体にフィットし、完璧なまでのボディーラインを余すところ無く浮き上がらせている。

 胸元のVゾーンは深く切れ込み、豊満なバストの膨らみを半分ほども覗かせている。細いストラップは左右の胸元から首の後ろへと一つにまとめられ、その下の背中は大きく肌蹴られている。

 その有様からは、ブラジャーを外されているのは明白で、胸元に目を凝らせば薄っすらと乳頭の膨らみが浮き出ているのに気付くはずだ。

 張り付くようなドレスは、キュッと括れたウエストの細さを充分にアピールし、芸術的なまでの曲線美で成熟したヒップから腰元へと流線型を描いている。

 足首ほどまであるロングドレスではあるが、両端には腰骨に届くぐらいのスリットが深く切れ上がり、稀に見るほどの美脚を大胆なまでに露出している。

 その美脚は、真っ白い肌が透けるほどの薄い黒色のストッキングで包まれ、スリットにより露出された太ももの辺りはレースの刺繍で彩られている。そしてその上には驚くほどの白さの柔肌が覗くことから、ガーターストッキングを履かされていることは如実に想像できた。

 薄いストッキングときめ細かな刺繍、その上に覗く真っ白な柔肌。それらが絶妙のスパイスとなって極上の美脚を彩り、形容しがたいまでの色気と崇高さを同居させているのだ。

「どうだい、三島さん……あんたの奥さん…こうやって見ると、どっかの女優さんみてえだろ?」

 拘束されたままの夫と麻美を交互に見ながら、田所が更に言葉を続ける。

「いや…女優って言うより…外国のスーパーモデルって言った方がピッタリかもな?…なあ、三島さんよぉ…」

 言いながら麻美の頭部へと腕を伸ばし、僅かにウェーブのかかったサラサラの黒髪を撫で上げる。

「…イッ、嫌ッ!…触らないでッ!」

 ヤクザ者に髪を撫でられる厳悪感に、麻美は咄嗟に身をよじり腕を振り払おうとする。

「…しゅ、主人の前ではやめて下さいッ!…お、お願いですッ…あなた方の言うとおりにしますからッ…ど、どこか他の場所でッ…」

 いくら身をよじろうとも麻美の腕に絡む男の腕は離れる事は無く…それどころか、二人の後ろで薄ら笑いを浮かべていた大男までもが、麻美の脇へと近づき空いた方の腕へ豪腕を絡ませてくる。

「アアアッ…は、離してッ!…こ、ここでは嫌ッ!…しゅ、主人の前だけではッ…お願いッ!…ど、どこか別の場所でッ…アアアッ…」

 泣き崩れるように俯き首を打ち振るわせる女を傍目に、二人の男はニヤリと顔を見合わせる。

 「クククッ…奥さん、どうして旦那の前じゃ嫌なんだ?……まさかあんたみたいな清楚でおしとやかな女が…旦那以外の男に弄ばれて、感じてしまう何て事はねえだろ?」

 田所が俯く女の表情を覗き込むように訊ね、更に言葉を続ける。

「だったらいいじゃねえか?…あんたも旦那も、お互いの愛情の深さを改めて確認できるってもんだ…」

「なあ、恭二?」と大男へ視線を移し声を掛ける。

「クククッ、兄貴の言うとおりだぜ奥さん…あんたの身体が、旦那以外の男じゃ感じねえって証明できる絶好のチャンスじゃねえか?…そうすりゃ二人の愛情も、益々深まるってもんだ…」

 大男が田所の言葉に相槌を打つように続け、二人して笑い声を上げる。そして、女の表情を覗き込んでいた田所が更に言葉を続ける。

「それとも何か?…旦那以外の男に弄ばれて、我を忘れるくらいに感じてしまいそうな自分が怖いってのか?…自分から腰を振ってヨガリ狂っちまうほど感じてしまう姿を…旦那に見られるのが嫌だってのか?」

 プライドを刺激するような男の言葉に、麻美は俯いていた顔を上げ睨み付けるような視線を返す。

「…なッ!…ば、馬鹿なことは言わないでッ!…だ、誰が貴方達みたいな…げ、下衆な男にッ…か、感じたりするもんですかッ!…自惚れないで頂戴ッ!」

 麻美は考え得るだけの皮肉を込め、声も高々に言い放つ。その瞳には怒りの色が如実に見て取れ、女の決意の固さを物語っているようだった。

 向かいのソファーではこの家の主である筈の三島が、拘束された身体をよじるように動かし、猿轡のおくで「グウウッ…」とくぐもった喘ぎを洩らす。

 此方も、視線からは先ほどまでの脅えきった様子は消え、代わりに何かを決心したかのような強い意志が覗える。そして、どちらからとも無く視線を合わせ、見詰め合う妻と夫。

(貴方ッ…私は、どんなに酷い事をされようとも…こんな男達には絶対に屈しませんッ…だから…だから、どうか…しっかりと私を見守っていてッ…)

(麻美ッ…今日ここでお前が何をされようと…そいつらには、俺達の心までは奪う事は出来ないんだッ…耐えよう…今日一日、二人で力を合わせて…耐え抜こうッ…)

 強い絆で結ばれているかのような二人の視線。言葉にせずともお互いの気持ちを伝え合うと力強く頷き、決意の固さを確かめ合う。

 束の間の静寂――しかしその静けさを破ったのは田所の拍手の音だった。

 ――パチ!パチ!パチ!パチ!パチ!・・・・・・

「いや〜、お二人さん…見せ付けてくれるじゃねえか…まるで映画のワンシーンでも見てるようだったぜ…さすがは相思相愛、美男美女のご夫婦だ…決意のほども半端じゃねえみたいだな?」

 ニヤケルように言いながら、二人の表情を覗う。

「その心意気に免じて…本番だけは勘弁してやるとするか…なあ恭二…」

 と大男へと視線を向ける。すると大男も不気味に笑みを浮かべ。

「そうですね兄貴…俺達も鬼じゃねえんだから、これほどの固い絆を見せ付けられちゃ…本番は勘弁してやるしかねえってもんです…」

 さすがは兄貴とばかりに頷きながら、大男が相槌を返す。

 二人の言葉に、一瞬呆気に取られたような表情を見せる男と女。しかし次の瞬間にはホッとしたような表情に代わり。

「…ほ、本番って…あ、あの…貞操は守ってくれるって、ことでしょうか?」

 麻美が半信半疑の表情で田所に訊ねる。

「ああ、セックスはしねえってことだ…」

 と返事を返すも、依然表情はニヤケタままで。

「…まあ、奥さんの方から…どうしてもしてくれって泣いて頼まれでもしようもんな
ら…話は別だけどな…」

 田所の言葉に麻美は再びキッと眉を顰め、睨みつける。

「そ、そんなことッ!…ぜ、絶対に有り得ないことですッ!……それよりも、約束は守って下さるんでしょうねッ?…ぜ、絶対に…貞操は守って下さるんですねッ?!」

 女の気丈な言葉に、田所はわざと驚いたような素振りを見せ。

「ああ…俺達も男だ、男の言葉に二言はねえよ…あんたとの本番はなしだ…なあ恭二…お前もそれでいいだろ?」

 言いながらほころんだ表情を大男へと向け。互いにニヤリとほくそ笑み合う。

 その意味ありげな笑みに、麻美は何やらゾクゾクとした不安を覚えるも、取り敢えずは貞操は守ってくれるとの言葉を信用するしかなく、再び夫へと視線を向け耐え抜いてみせるとの決意を新たにするのだった…


(つづく)


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