既に口までもが水の中に沈むが、それでも水面の上昇はとまらない...
このままでは、息が...
何とか脱出しようとするが、相変わらず体の拘束具は解かれることはない。
1ミリ1ミリジリジリと上がってくる。
とにかく鼻だけでも上に押し上げようと、体中の筋肉を限界までつっぱらせる。
美しいとしかいいようのない脚部にも筋が浮き出るくらいに力がこめられている。
あらん限りの背筋の力をもって、上へ上へと伸び上がった。
喉元もぐっとそらせて、顎を上に突き出すような形をとる。
全身の筋肉を極限まで酷使する。
そうしてわずかに鼻から上だけを外気にさらすことができた。
鼻の穴が水に沈むかどうかという擦れ擦れのところで、枝織はバルブを閉じた。
もちろん水の量は減るわけでもない。
ちょっとでも力を抜けばたちまち水の中に沈みこみ、息ができなくなるのだ。
樹璃は無理な姿勢をとりつづけるしかなかった。
しかしいかに鍛え上げられた樹璃の肉体といえでも限度はある。
やがて筋肉はわななきはじめ、休息を熱望するようになる。
ガタガタ震えはじめる両足。
顎も次第に下がり始める。
するとたちまち鼻から大量の水が息を吸い込むのと同時に入りこみ、苦しさに咽ぶことになる。
枝織はそんな樹璃が愛しくてたまらなかった。
あの学園で輝く存在だった樹璃さんが、自分の排泄物にまみれながらわずかな空気を求めてもがき苦しんでいる。
本当に愉快な眺めだ。
たまらない愉悦。
愛着が出てくると共に、更に過酷な責めを与えたいとい悪魔的な願望もフツフツ沸きあがってくる。
あなたは私の奴隷。
いえ、人以下だわ。
愛玩動物
ペット
だから存分に責め嬲ってあげる。
枝織は満足げな笑みを浮かべる。
一方樹璃はといえば、その華麗な肉体は限度を超越していた。
めりめりと体中からきしむ音でも聞こえてきそうなくらいだ。
くっ...もう、ダメだ....
そのとき膝の力が一瞬抜けた。
とっぷりと頭の先まで水の中に沈みこむ。
く、苦しい...
もちろん息はできない。
自分が汚した水。
もちろん水中で匂いがわかるわけではないが、嫌悪感はある。
それと羞恥心。
排泄した瞬間にプライドが音を立てて崩れたのも事実だ。
しかしあの状況で、どうすればいいというのか....?
奴の望み通り枝織の前で....する....しかなかったではないか。
自分でも捨て鉢になっているのは分かっている。
それと同時に
受け入れている...
事実を...?
そんな馬鹿な...
既に何秒潜っているだろうか?
時間感覚は失われていた。
酸素を渇望し始める。
このままじっとしていては、溺れてしまう....
樹璃はあわてて浮き上がろうとする。
しかしわずか数十秒の休憩では、疲労は蓄積されたままで肉体は簡単に動きだそうとはしない。
そうしている間にも体から酸素はどんどん欠乏し、頭の中では警鐘がガンガン鳴り響きだして止まらない。
再び満身に力を込める。
ザバッ!
そうしてようやく空気を求めて水面に鼻を突き出すことが出来た。
荒荒しく音を立てて空気を吸い込む。
体中に再び酸素がめぐり始める。
しかし、それも長くはもたなかった。
疲労しきった体ではその体勢維持は困難であり、再度水の中に全身を沈みこまさねばならなかった。
うぐ....
中途半端な息継ぎでは、すぐに息があがってくる。
すぐさま水上に、と気ばかり焦る。
まともな休憩すら与えられていない筋肉はまるで動かない。
でも、でも....こんなところで...
渾身の力をこめる。
残されたわずかな力を駆使して水面に踊り出る。
数回繰り返して、浮き沈みの間隔は狭まる一方だ。
それを黙って楽しんでいた枝織はいいことを思いついた。
「樹璃さん、良く頑張ったわね。ご褒美にこれをあげるわ」
と非情にも樹璃の両肩に5キロずつの重りを取り付ける。
たちまちバランスを失い、水中に没する。
疲労がパンパンに蓄積された全身の筋肉には合計10キロもの重りはあまりにも過酷な試練といえる。
10秒、20秒...刻々と時間は過ぎる。
なんとかせねば...樹璃は再び浮かび上がろうと努力する。
体がわずかに上に向かった程度で、水面まではまだ差がある。
30秒...
まともに呼吸をしていないため、すぐに息が切れる。
40秒...
まずい、このままでは...
50秒...
く、苦しい、い、息が...
1分...
肺が空気を求めてはちきれそうだ。もう少し、もう少しで....
1分10秒...
水面まであとわずか...
すぐそこにあるのは分かるのだが、あまりにも遠くに感じる。
1分20秒...
もう、ダ...ダメ...
1分30秒...
必死になって突き出した鼻先に、ようやく空気があたるのを感じた。
ほっと一息するもつかのま、体は再びバランスを失い水中へ...
そ、そんな...まだ全然...い、息が...
そのとき樹璃の顔をつかんで、上に引きずりあげる者がいた。
枝織だ。
し、枝織...助けてくれたのか...?
「勘違いしないでね樹璃さん、あなたにはこんなところでリタイアしてほしくないだけよ。まだまだ至れり尽くせりのサービスが待っているんだから」
そう言うと鼻の先にフックをかけて、天井に紐でくくりつけた。
鼻は引っ張りあげられる力で変形し、原形を留めてはいない。
豚のように上向きの醜い姿をさらしている。
「あら、ずいぶん下品な顔になったわね。最も今のあなたにはお似合いだけどね。自分の糞尿にまみれているなんてブタ並ですもの」
自分がどんな顔になっているか想像するが、樹璃にはなすすべもない。
受け入れるしかないのだ。
されるがままに。
「フフフ次の責めまでちょっと一息いれさせてあでるわ。もちろん只休めるだけと考えたら大間違いだけど」
枝織はそばに置いてあった机の上からビーカーとスポイトを取り出した。
ビーカーにはなにかの溶液が入っている。
「これは、タマネギの絞り汁よ。これを上向きのあなたの鼻の穴に垂らすと...」
「ゴビャッ.ヒッ...」
その刺激に思わず水の中で悲鳴を上げずにはいられなかった。
不自由な全身をばたつかせて。
「アハハハ、苦しいでしょ。じゃあ避けてみたら?」
鼻をつるされ固定されている以上よけることは不可能だ。
しかも口から下は水中に没したままなので、鼻でしか呼吸は出来ない。
否応なくタマネギの汁を鼻の奥深くまで吸い込むことになる。
あまりの刺激に涙があふれ出る。
涙を流す自由すら私には残されてないのか?
枝織の...思うがまま...?
己の意思で行動するよりも、数々の責めに対して従順に反応するだけの自分。
果たしてそれでいいのだろうか?
しかし思考力までもぎ取られていく。
必要がないのに考えなくてもいいじゃないか。
そのほうが楽だよ。
樹璃は自嘲気味に笑う。
ひとしきり絞り汁を鼻の穴から飲まされた後、枝織は次の説明をする。
鼻フックはそのままになっている。
「さあリフレッシュしたところで、また遊んであげるわよ、樹璃さん。
ここにまた水を注いであげるわ。そうすれば鼻から上に水がいくので当然息ができなくなるわね。だから増えた分だけ、あなたが飲みこむのよ。いいでしょう、これ。自分の中からでたもので汚れた水を再び体の中に入れるのよ」
そんなことできるわけが....
考える間もなく再び水位が上がりはじめる。
わずかに突き出ていた鼻の穴にも水が入り始める。
「樹璃さん、早く飲まないと溺れちゃうわよー」
口を閉ざしてはいるが、このままでは枝織の言う通りだ。
だがここまでの屈辱を受けて、まだ生きる必要があるのだろうか...?
かろうじて残っている思考力を働かせてみる。
死んだほうがまし?
屈辱....?
ここまできていて何をいう、バカバカしい。
本当は違うんだろう?
自分に正直になれよ...
死ぬことならもっと前に出来ていたはずさ。
本当は...
ホントは...
好きだったんだろ....?
こうされるのが.....
樹璃は大きく口を開けて、水を飲みこんだ。
嫌悪感は既に麻痺している。
しかし、まずい...
胃の中に次々収めていく
吐き気は不思議と起こらない。
機械的に飲みこんでいくだけ。
枝織の望むままに。
「いいわよ、樹璃さん。その調子よ」
枝織は樹璃が呼吸が可能になるまで水を飲んだところで、測ったように水を追加する。
そのため樹璃は息をするためには、延々と水を飲みつづけられなければならなかった。
当然、体の内部の水の圧力は高まってくる。
先程の利尿剤の影響だろうか、猛烈に尿意が高まってくる。
さしたる我慢をすることもなく、放尿する。
それがこんなに気持のいいものだったなんて....
開放された心に樹璃はウットリと蕩かされていた。
頭上高くまで水が張られた水槽。
その中で静かに揺れる裸体が二つ。
樹璃と枝織だ。
樹璃はまだ拘束されたままだ。
枝織も衣服を脱ぎ捨て、樹璃によりそっている。
2人して見詰め合う。
そしてにっこり微笑む。
息苦しさを覚えた枝織は水面に浮上する。
そして大きく息を吸い込み、樹璃のもとに舞い戻る。
静かに唇を重ねあう。
自分の中に蓄えた空気を、愛しい樹璃に分け与えるために。
樹璃もむさぼるように、それを求めてくる。
自然、舌が絡みあい互いの唾液を交換する。
枝織の片方の手は樹璃の豊かな乳房にのび、もう一方は深い茂みに到達する。
もはや自分で呼吸をする自由もない樹璃。
それすら愛する枝織の手に委ねている。
しかし今の自分にはそれが快感であった。
枝織との無上の一体感。
これが私の望んだ世界...
例え残された時間が限られていようとも、この瞬間は貪欲に味わってやる。
それでいいじゃないか。
完
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