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 第14章 アニー1

1.

霞との死闘が終わり、アニーは部屋を調べ始めた。
壁や床を丹念に調べたが、隠し扉などは見つからなかった。
部屋のかべはつるつるしており、また、部屋が円形なので壁を登ることは不可能だった。
部屋の中には家具一つ無く、壁に次のような張り紙があるだけだった。

お品書き  
時価
食事 時価
その他 時価
御用の際はお呼びください  



(なに、これ。馬鹿にしてるの?)
なぜ、こんな張り紙がある意味が、アニーにもあとあとわかった。


2.

半日以上が過ぎた。
アニーのいる部屋には何の変化も無い。
アニーはのどが渇いてきた。
もともと、忍び込む前には水分を控えるようにしていた上に、霞との死闘があったため、身体が水分を必要としているのだ。
(まさか殺す気は無いでしょうね。それならもう死んでいるはずだから)
そう考えて、ふと気がついたのが先ほどの張り紙だった。
(駄目でもともと。聞いてみようかしら)
「あ・・あの、どなたかいらっしゃいますか?)
がらんどうの部屋に声が響く。
すると
「いらっしゃいませ。何をご所望ですか?当店は完全前金制となっております」
と、まるで場違いに女性の明るい声が戻ってきた。
ちょっとアニーは拍子抜けした。
無視されるか、あるいは男性の不機嫌な声が帰ってくると思ったからだ。
「水はいくらですか?」
「水は15ギルマンです」
日本円にすると150円である。
意外に安い。
アニーは服のポケットを調べる。
しかし、財布も取られてしまっており、手元にはお金が無いことに気が付いた。
「・・・あの・・・お金が無いのですが」
「お客様。当店も商売ですのでお代をいただかないことには・・・」
「じゃあ、このブーツを買ってもらえます?」
あにーは今履いている白いブーツを売ろうと考えた。
皮製なので捨て値でも5,000円はするものだ。
「では、籠を下ろしますから、中に入れてください。鑑定します」
アニーは両足のブーツを脱ぎ、籠にいれた。
籠が引き上げられてしばらくして応答があった。
「そうですね・・・10ギルマン・・・というところですね」
「そ、そんな!500ギルマンはするはずよ!」
「それではお客様。他のお店に持ち込まれてはいかがでしょう?」
「他って?」
「市場にはたくさんのお店がありますから、そこで探せばもっと高価に買い取ってもらえる店があるかもしれません。しかし当店は10ギルマンでしか買い取りません」
アニーはどんなに言い合っても無駄なことに気が付いた。
ここは売り手と買い手が一人づつしかいない。
売り手のほうは買い手が買わなくても困らない。
そんな取引で書い手が勝てるわけが無い。
「じゃあ、せめて水と物々交換にならない?」
「水とですか・・・うーん、ちょっと足りませんね」
「じゃあ、ストッキングをつけていくら?」
「それならいいでしょう」
そういって、降りてきた籠の中を見ると、小さ目の紙コップに水が半分ほどしか入ってなかった。
(え?これっぽっちなの?)
そう思ったが、仕方が無い。
わずかばかりの水を一気に飲み干した。
アニーの身に付けている衣服はあと5枚であった。

To be continued


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