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  −西部の女保安官 マーサ・ドレイク−

        第1回 女保安官マーサ・ドレイク登場

1850年代後半のアメリカのメキシコ国境に近い町エル・パソ。
この町は1841年のメキシコ戦争でアメリカ領土に併合された広大な一帯の一部である。
1848年カリフォルニアに金鉱が発見され、西部へのゴールドラッシュが始まり、ピークのこのころは金鉱を見つけて一旗上げようと西海岸へ向かう男たちが集まる前線基地として、異様な活気に満ち溢れていた。
必然的に荒くれ男がたむろし、町は昼日中でも射合いが珍しくないほど物騒でもある。
またわすれてはならないのは、アメリカ史での大きな事件の一つ、1861年に勃発した南北戦争の前夜であることだ。
つまり奴隷制度の廃止等をめぐり、南北対立が激化しつつある、緊張した時期でもあったのだ。
あの有名な第16代リンカーン大統領は1860年に就任している。
(以上はちゃんと歴史の本で調べたんだぞ、すげえだろー!!だがこのことが後半物語にも関係してきますのでおぼえていてください。また日本は幕末の15代将軍家茂のころです。著者註)
こんな町の夏のある昼下がりの事、駅馬車から目の醒めるようなハッとするほどの美人が降り立った。
彼女の名はマーサ・ドレイク、年齢22歳。かなりの長身で髪はみごとなブロンドヘアーである。
彼女のルーツは北欧系の白人である。あるいはあの勇敢なヴァイキングの血も入っているのではないか。
手と脚はスラリと長く中背の男性よりは5、6センチは身長が高いようだ。
読者のために彼女に内緒でその魅力的なサイズを教えておこう。身長178cm、男の視線を釘付けにする円錐形のバストは92、ウエスト60、見るだけで妖しく男心を熱くするヒップは90という超グラマーなナイスバディーだ!
おまけにマーサの服装たるや、男どもの好奇な目を釘づけにするのに十分だった。
口やかましいオバサン連中は顔をそむけてひそひそと批評している。
彼女のいでたちははこうだ。
カウボーイ・ハットを被り、鹿皮の男モノのジャケットを着て、膝上30センチ以上の超ミニのブルージーンズパンツにインディアンブーツを履いている。
おまけに腰にはどう見てもレディーには不似合いな、ごついガンベルトまで吊られているのだ。
まるで荒くれのガンマンのようなコワモテの格好だが、ジーンズから続く、ややピンクがかった白いスラリとした美脚は男の目にまぶしくドキッとするほどセクシーなのだ。
男っぽい服装なのでかえってアンバランスな妖しい倒錯的な美しさがあるのだろう。
彼女こそ、この町の新任の女保安官マーサ・ドレイクなのだ。
駅馬車を降り立った彼女に町の人々が歓迎の挨拶をし空砲を打ち鳴らす。
5歳くらいのかわいい少女がマーサに駆け寄り、手にした花束を渡す。
マーサはニッコリと美しい笑みを浮かべて少女を抱き上げてキスをする。
町長が握手を求め、その胸にシェリフの印しである銀の星のバッジをつける。たちまちピーピーという口笛と盛大な拍手が起こる。
マーサは華やかで美しく、ふだんは淑やかなレディーだが、いったん悪党に立ち向かうときは目にもとまらぬガン捌きをするらしい。
彼女はすでにこの町のスーパースターだ!!
しかし、この様子をバーのカウンターごしに好色そうな目で眺めている三人の男たちがいた。
やつらは腹違いの兄弟で、ハクソー兄弟と町の人たちは呼んでいる。
しかしそのときかれらは、まるで毒蛇かサソリのことでもはなすように顔をしかめるのだった。ようするに町一番のキラワレモノの一家なのだ。
長男は極端な小男で目つきの鋭い陰険そうなやつだ。名前はビル・ハクソーといっ
て45歳。
次男は逆に灰色熊(グリズリー)のような大男のジョン、37歳。
三男はしたひょろりとしたなまっちょろい若い男でトムといってまだ16歳だ。
しかし、この一家の親玉はオヤジのダグ・ハクソーである。今年63歳だが、めったに町には遊びにこない。いまだにめかけが5人もいて精力絶倫である。昔は無宿者のガンマンとして聞こえ、おそらく10人ちかい人を殺めているのではないか。
30年前にこの町に居着くようになってから、どんどん頭角をあらわしはじめたのだ。やつはいつも家で金勘定に忙しい。
ハクソー兄弟が体つきや性格がみなちがうのは、それぞれの母親がちがうからだ。
この一家は表向きでは郊外に牧場を経営しているのだが、そのカウボーイたちはみな札付きのならず者で実はエル・パソの裏社会を完全に一手に仕切っているのだ。
町長も、町に一軒しかない銀行の頭取も、判事さえハクソー一家と黒い繋がりを持っているとのウワサだ。
「ヘッ、ヘヘヘ、オイ見ろ、めっぽうオイシソウな保安官殿がご着任なさったぜ」
「前の保安官のマックはナマイキにおれたちのことを、嗅ぎまわりやがったから、闇討ちにしてやったら、今度はなんとステキな、ステキな保安官殿のご着任だ」
「フフフ、今度はまた別の歓迎方法をかんがえなくちゃあな。あの見事なアンヨを見せられたんじゃあ、こいつはどうしてもオネゲエしてえものだぜフフフ、ヒヒヒヒ」
「た、楽しみだな、アニキ」三男坊のトムはどもりらしい。
だが、こいつらはマーサ・ドレイクの恐るべき実力を知らないのだ。
マーサは昨年東部ボストンの超名門校ハーバード大学の法学部をトップクラスの成績で卒業した。在学時代から勉学と同時に体を鍛錬し、とくに射撃は東部の大会に男子と一緒に出場し、みごと優勝している。
また、日本からの留学生、若き日のジゴロウ・カノウと知り合い、柔術を教えてもらい驚異的なスピードでこれをマスターして、カノウを驚かせたという。そのほかにもボクシングジムに通い男のウェルター級のプロボクサーと互角に試合したというのだからすごい。
そのチョー魅力的なバディーのため、痴漢に襲われるのはしょっちゅうだったが、ある夜、暗闇で3人の大男に襲われたことがあった。
しかしその30分後やつらは後手に縛られてマーサ1人によって警察に連行されたという。
彼女は司法試験を1回でパスして両親のいるニューヨークに帰り、検事を目指した。しかし、なぜか今年になりエル・パソの保安官が急死して欠員ができたことを知るとこれに応募したのである。
あらくれの土地なので大学教授の父ロバートも、有名なピアニストである母マリーも猛反対したが、マーサの決意は固かった。
実は4年前に死んだマーサのたった一人の姉ケイトは大学を卒業してすぐ、小学校の先生になった。そして最初の赴任地がエル・パソだったのだ。
しかし、ケイトはここへ来てわずか数ヶ月で病死したと家族に連絡があった。
その姉が死んだ土地エル・パソをどうしても見たいというのが、マーサの理由だった。
どうやらマーサ・ドレイクの歓迎式典も終わったようだ。
人もまばらになったところで、やおらマーサは自分の荷物の大きなボストン
バッグを軽々と持つ。バッグにはウインチェスター銃がくくりつけてある。
なんとマーサはその足で、当然のようにハクソー兄弟がたむろいているバーに入ってきたのだ。
おそらくハクソー兄弟が自分を監視していることに気づいていたのだ。
大股に歩くと活動的な脚がいっそうセクシーで綺麗だ。
「へへ、こいつは驚いた、女シェリフのお越しだ.みんな、敬礼しろっ」
「おや、どうも歓迎アリガト、でもね、私がきたからにはあなたたちが騒ぎを起こしたら遠慮なく逮捕しますからね、覚悟しておいてね。もう、あなたたちのことはとっくに調べてあるわ。そしてあなたたちの醜いオヤジさんにも伝えてよ」
「こいつはどうも、オッカネエ女・・いや、保安官だね。そんなことより、どうですね、お近づきに一杯・・・」
「けっこうよ、私は昼間からお酒を飲むような人間じゃないの。それだけ、念のために伝えておこうと思ってね。それじゃ帰るわ、サヨナラ」
その時である。マーサの後にまわったグリズリーと仇名されるジョンがマーサの首を太い腕でチョークに決めたのだ。
なにしろ200cm、200kgの大男の怪力である。さすがのマーサも逃れられないように見えた。
「へへ、サア、逮捕してみろよ、どうだ、どうだ、ネエチャンよう」とジョン。
「いいぞ、ナマイキ女保安官をやちゃえ!気絶させて牧場へ運んでレイプだ!!、いいぞ、ざまあ見ろ。口ほどにもない女だぜ」
長男のビルのその言葉が終わらないうちに、マーサはジョンの手首を両手でつかんで、関節の逆を決めてしまった。
「イ、イテテテ、こ、降参だ、やめてくれえ」
当然だろう、がまんすればいくら大きな男でも手首が折れてしまう。
ひるんだジョンのブヨブヨにたるんだ腹めがけて、マーサの強烈な肘打ちがめり込む。
「ウウウウッ・・・ウエエエ」
たまらず倒れこんだグリズリーはその場でゲロをはいている。
「私を甘く見るんじゃないわよ!」
その声とともにビルに接近したマーサのものすごい右フック、続いてまわし蹴り一閃、ビルは木が倒れるように脳震盪を起してダウンする。
「そこのぼうやもかい、おまえもけっこう悪そうな顔してるね」
のこるトムに近ずくとビンタを一発くらわせる。
「今日のところはこれで勘弁してあげるわ、なにしろ荷物を解いたり忙しいし、おまえらを殴ると手が汚れちゃうからね」
そう捨てぜりふを残すと、あっけにとられる酒場のオヤジに妖艶なウインクを残して、後をも見ずに去って行ったのだ。



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