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 第2章

「麻衣っ!」
天神の血を引き継ぐ天津の巫女姉妹、姉の天津亜衣が天神学園の職員室に飛び込んできた。
「え・・?」
不思議なことにそこには他の教室のような淫暗な空気はなく、いつも通りの見慣れた風景に見えた。
そしてその部屋の真ん中には、紅の羽衣を纏ったもう一人の巫女がまるで何事もなかったかのように佇んでいた。
「麻衣っ。無事だったのね、良かった」
亜衣は天弓を握りしめていた手を緩めると、心底ほっとした表情で妹に声をかけた。
走り回っていた為に、亜衣の貌には汗が光り美しく長い髪が幾筋か張り付いている。
膝に手をついて乱れた呼吸を整えている亜衣に、紅の巫女が天具の薙刀を持ち近寄る。
「安心したわ。みんなもちゃんと避難出来たみたいね。気を付けて、麻衣。今度の敵は・・麻衣?」
にこやかに微笑んでいるものの返事をしない羽衣の少女に、亜衣は訝しそうな表情を向けた。
「麻衣・・?」
亜衣はもう一度目の前の少女を呼んだ。

栗色の髪、暖かい瞳と穏やかな表情。天津の巫女である証の羽衣に包まれた、若々しい肢体、伸びやかな脚。
頭のてっぺんからつま先まで見ても、亜衣の双子の妹、天津麻衣の姿である。
しかし・・なにかがおかしい。

「麻衣?どうしたの?ま・・あっ!?」
亜衣が紅の天女に一歩近づいた瞬間、その手に握られた天具の薙刀が煌めいた。
彼女が、双子の姉・亜衣に薙刀で斬りつけて来たのである。
蒼い羽衣の天女は一瞬の判断で紅い天女から飛び退いた。
亜衣が立っていた所に、彼女の長く輝く髪が数本はらはらと落ちる。

「うまく避けたわね」

妹の貌をした天女が唇を緩ませて亜衣に向いた。
その表情は、亜衣の知る彼女の清楚なそれとはかけ離れている。
そして、甲高い笑い声と共に、羽衣の聖巫女が一瞬にして邪鬼淫界の淫巫女の姿に変わる。
「おまえは・・・スートラ!」

銀髪の邪鬼巫女は、先程屋上に現れた時と同じ姿−豊満な胸を申し訳程度の小さな紅い布で包み黄金色の衣を腰に巻いた官能的な衣装−に戻る。
半年前の「聖巫女」対「邪鬼淫界」決戦の際、褐色の美女はその姿を自由に変化させる技を使い、あろう事か自分自身・・つまり天津亜衣に化け妹の麻衣を襲っていた。同じ罠を、今度は亜衣に仕掛けたのだ。
「そんな卑怯なまねをして私を騙そうとしても無駄よっ。それより、麻衣は、麻衣はどこ!?」

両端に短刃が付いている弓を構え、亜衣は怒りに燃えた瞳でスートラを睨み付け叫ぶ。
自分の髪を数本切り裂いた薙刀は、間違いなくパートナーの麻衣が持っていた天具である。それを凌辱者が持っている、ということは、麻衣は・・・

「ふふふ、そんなに怖い貌をして睨まないでよ」

スートラは顔を振って銀の髪を煌めかせる。
後ろ手に聖なる武具を持ちなおすと、天神の武具を構えている亜衣に微笑みかけた。
亜衣のそれとはふた周り以上大きな豊かな胸を振るわせて、床に散った栗色の美髪を拾い上げる。
「綺麗な髪をしているのね。さすがは天津の聖巫女、という感じかしら?」
「あなたの戯れ言につきあう気はないのよっ。もう一度だけ聞くわ、麻衣はどこっ?」

話をはぐらかすスートラに、亜衣は焦れたように言うと蒼い手袋で掴んでいる蒼穹を構え相手を威圧する。
しかし、スートラは少しも怯む事なく、手の中にある長い髪の毛を掴み眺めたまま微笑む。

「ふふふ、そんなに気になるのなら別行動なんてしなければよかったのよ」
「う、うるさいっ。これ以上無駄話を続けるのなら・・・」

くすくすと嗤いながら余裕の軽口をたたく褐色の美女に対し、蒼い天女は余裕を無くしかけていた。
自分の判断ミスで麻衣を危機にさらしているかもしれない。
そう考えただけで、姉・亜衣の焦燥感は募る一方だった。

スートラは、ひとしきり亜衣を嗤うと長く綺麗な指をパチンと鳴らした。それを合図に職員室に強烈な淫香が充満し、学園内に溢れているのと同じ触手が部屋中にあふれる。

「しょうがないわね。ほら、見せてあげるわ。貴女の大切なパートナーの姿をね」

職員室入り口、亜衣が構えている所と反対側の壁際に巣喰う触手の塊が蠢き、その中から水晶の様に輝く薄く大きな板が現れた。

「っ!ま、麻衣っ!」

姿見ほどの大きさの光りの板が2,3度輝いたかと思うと、そこに何かが映し出された。
亜衣がその美しい瞳で確認したその映像は・・・肉芽の中に包まれた、紅い羽衣を纏った白い肌の美少女であった。

「あはぁ・・だめへぇ・・ぁあ・いひぃ・き、気持ちいひ・やはぁ・・」
「ま、麻衣っ!?麻衣っ!」

光板の中で、光の巫女の一人、天津麻衣がその清らかな肢体をグロテスクな触手でなぶられていた。
彼女の腕よりも太い触手が麻衣の両手両足にがっちりとからみついて動きを封じ、電気コードのように細い触手は羽衣の中に潜り込みその中でねちょねちょと卑猥な音を立てて蠢いている。
触手によって無理矢理頭上に吊られた両手はなにかを求めるように空を掴み、左右に大きく拡げられた二本の美脚は桃色の触手が蠢く度に電気が流れる様にビクビクとひくつく。
きめ細かい肌のその内股を流れる乙女の蜜液は、生地がこれ以上水分を吸いきれないという程羽衣をぐっしょりと濡らしていた。

「ぁあん・・いぃ・・んぐぅっ・・・・・んあああぁっ」
「麻衣、しっかりして、麻衣っ!」

その光板は、双方向に映像や音声を伝える機能があるらしい。麻衣の切なげな声がそこから聞こえており、亜衣の声も麻衣の元に届く。
映像の中で露わな声を漏らし、べとつく触手に躰中を舐められている美少女は、躰をひくつかせて儚く絶望的な抵抗を続けていた。
濡れ肉に包まれている麻衣は天神の羽衣をそのまま着せられていた。その事が一層いやらしい風景を醸し出している。
汗と涙と、ぬるぬるとした粘液。そして尽きることのない乙女の秘蜜でべとべとになっている麻衣の躰がひときわ大きく痙攣を起こしだした。

「あぁん・・も、もぉ・・だ、だめぇへ・・もう・とろけ・・・ちゃ・・うふんん・」
「だめっ!しっかりしなさいっ麻衣っ!!」

それまでただ快楽に熔けつつあった囚われの巫女が、なにかにはじかれたようにビクンとし、悶えつつ辺りを窺う。
亜衣の呼びかけが、凄まじい官能に取り込まれていた麻衣に理性を取り戻させたのだ。
そして、淫欲で霞む麻衣の瞳に蒼い羽衣が映った時、彼女は汗と涎、触手の粘液でぬとぬとになった顔をうち振るって叫んだ。
「お、おねぇ・・ちゃ・・んぁああっ・た、助け・・てへぇ!」

亜衣の呼びかけで、麻衣は理性と恥じらいを取り戻した。だがしかし、そのおかげで少女は強烈な恥辱と凄まじい快感を再確認することになる。
「あひっ・・ぅぐ・・ひ、ひぃい、やだ、やだぁっ」
羽衣の美少女が息も絶え絶えに、もう一人の巫女・亜衣に救助を求め悦楽責めの中で藻掻く。
瞳は淫楽のフィルタで霞み、口元は涎が流れる。汗と涙と粘液でぐちょぐちょになっている美貌を左右にくねらせて、麻衣は光板のむこうの姉に必死で叫んだ。
麻衣の清らかな躰は、今も光りの加護を受けた羽衣で身を固めている。しかし、その羽衣の中には闇の辱手が無遠慮に潜り込んで思う存分に蠢き回わり、獲物に凄まじい淫撃を送り続けている。凌辱者のなすがままになっている聖なる美少女戦士は、開かれた両足を閉じようともじつかせたり、靴の中にまでもぐりこんできた触手にくちゅくちゅと舐められているつま先を思い切り折り曲げたりして儚い抵抗を続けていた。
しかし、衣の上からでも判るくらい屹立してしまっている胸の先の突起や、白い太股を伝い足首まで流れる蜜液を見る間でもなく、巫女の慎みの砦はもはや崩壊寸前であった。

「ひっ・・んぁわ、わたし、もほぉ、だめへぇ・・」
「いま助けてあげるわっ。耐えるのよ、麻衣っ」
「あひっ・・はっはっお、おねぇちゃ・・んぁあっ・・ひあっ」

天津の巫女・麻衣はこの世のものとは思えない強烈な快楽に、溺れてしまう寸前で闘っていた。

−麻衣に、私の大切な麻衣に、なんてことを!−
「ゆ、許さないわ!」
亜衣は、妹を凌辱している張本人を凄い形相で睨み付ける。
スートラはその瞳を真正面から見つめ返し、亜衣に笑いかけた。
「だったらどうするっていうの?」
「決まってる、わ!」
亜衣は口を開くと同時に彼女のしなやかな躰をはじける様に躍動させ、天具の刀弓でスートラに斬りかかった。
「てぇえええいっ。たぁああああっ」
素早く身をかわした銀髪の鬼獣巫女に、2度、3度と続けざまに刀弓を振るう。
祖母・幻舟の教えを見事に吸収した腕前で亜衣は悦楽に悶える麻衣が映し出される光板の方へ、スートラを追いこんでいく。

亜衣は少しずつ、だが確実に女敵を追いつめていった。
怒りに震える亜衣に光板のすぐ側まで詰め寄られたスートラは、その美しい貌に浮かぶ焦りを隠すことができずにいた。
「さ、さすがになかなかやるわね」
形勢不利とみたスートラは、今まさに光板のなかで快楽の刺激に身悶え続けている紅の巫女を捕らえた時と同じように、触手を操りだした。
「・・・でも、この触手たちの攻撃に対応できるかしら?」
ぐじゅるるる、というぬめった音と共に、床や天井に張り付いていた桃色の触手が亜衣を捕らえようと伸びる。
「こんなものっ。てぇええいっ」
亜衣は本来接近戦は不向きであるはずの刃弓を芸術的とも言える動きで華麗に操り、淫肉の攻撃を退けていく。
「これでお終い?」
可憐な美少女戦士の周りに転がる切り裂かれた触手。その切り口からは粘液がごぼごぼと溢れ、ぐったりとして動かない。
「こんなもの使っても無駄よっ。さぁ、覚悟しなさい、スートラ」
蒼い羽衣の聖巫女は、余裕の笑みを浮かべ褐色の淫巫女に刀弓を向ける。

光板の向こうの麻衣は悦楽の中、その情景を見て姉の危機を察した。
−私が襲われた時と同じだ。いけない、このままでは!−

「だめっおねぇちゃんっ!まだ来るっ!」
「っ!?」

麻衣が叫んだのと、床に散っていた触手が亜衣に飛びかかったのは同時だった。
そしてそのタイミングは、亜衣を捕らえたと思ったスートラの貌に驚愕の表情が浮かんだのとも同時であった。

凄まじい速度で飛びかかって来た触手を、麻衣の声と同時に気づいた亜衣はなんなく刃弓で切り落としていたのだ。
「そ、そんな、馬鹿な」
間違いなく亜衣を捕縛できると確信していたスートラは狼狽したように叫んだ。
「ありがと、麻衣」
「おねぇちゃんっ」
光の板の向こう、責められてはいるが姉の活躍で気力を取り戻し笑みを浮かべる麻衣に向かってウィンクした亜衣は、うろたえる敵にもう一度天具を突きつけた。
「さあ、今度こそ終わりね。潔くなさいっ」
「く、くぅっ。やりなさい、触手どもっ」
スートラは、明らかに追いつめられた様子だ。
歯ぎしりし、たった今相手に効かなかった攻撃を繰り返す。
スートラの足下に這う触手が次々に亜衣に飛びかかり、その全てが蒼い巫女によって切り落とされる。
「無駄なあがきはよしなさいっ」
亜衣はあと一歩でスートラをその手の天具で捕らえられる距離にまで迫った。
スートラの側にいた触手の山は、あとわずかしか残っていない。
完全に形勢逆転である。
「さぁ、覚悟!」

天具を振り構えた亜衣に、スートラは怯えた声でなおも叫んだ。
「しょ、触手っ」
淫巫女のすぐ足下、最後に残されていた、今までのものとは少し違う小さめでくすんだ桃色の軟体が聖巫女に伸びる。
「無駄だっていってるでしょ?たぁあっ」
亜衣は、その麗しい顔面に向かって飛びかかってきた淫猥な敵を両断にすると、そのなかから飛び散り全身に降りかかってしまった触手の粘液を気にもしないでスートラに詰め寄った。
状況は聡明な蒼い天女−天津亜衣に完全に有利だ。

立ち竦む宿敵に切っ先を向けた亜衣は、勝利を確信したかの様に余裕の笑みを浮かべた。
半年前の決戦では学校の生徒を襲い、祖母の命まで奪い、しかも今、愛するパートナーの麻衣をいたぶっている、許せざる敵。
それをいま。ついに両断し、屠る事ができるのだ。
凛とした表情の蒼い巫女は、動揺し身動きすらできない褐色の淫ら巫女を滅する為に天具の蒼穹を天高く構えた。
「本当に終わりの様ね。さぁ、今度こそ・・・ぁ?ああっ!?」

圧倒的優位にいたはずの美少女は、奇妙な声を上げてそこで突然その動きを止めた。

「あ・あぁ?・・な、なに、これ・・・?」
敵をあと一歩まで追いつめていた亜衣は、突然、天女の様な美しい貌を真っ赤に染め、無駄な贅肉など一切ない美躰をがたがたと震るわせ始めたのだ。

−な、なに?いったい、どうした・・の?か、躰が、あ、熱い。
熱くて、体の力が抜けちゃう・・
私の体に、なにが・・あああ、これって・・こ、これって?−

「お、おねえちゃんっ!?」
自慢の姉、亜衣の勝利を確信していた囚われの巫女・麻衣は、蒼然の美少女に訪れた突然の変調に驚き、悲鳴のような声を上げた。

「・・くっくっく・・ははは・・あははははっ。まったく、思った通りにひっかかってくれるわね、天津亜衣っ」
そして、甲高く笑い出したのは、さっきまで自らの危機に恐れおののき、狼狽していたはずのスートラである。

「んぐっ・・わ、私が、ひっかかった、で・・すって・・」
艶やかな唇から漏れる吐息が荒いものになり、すぐにそれが熱を帯びてくる。
躰を染めてくる悦楽にびくびくと震えながらも気丈に睨み付けてくる蒼い巫女に対し、褐色の巫女が丁寧に解説をしてくれる。
「私があんなちゃちな攻撃しかもっていないとでも思っていたの?今までのは、お前に“よがり蜜”を浴びせるための策略だったのよ」
その説明の間にも、亜衣はどんどん酷くなる躰の火照りと闘っていた。聖巫女は、力が抜けて崩れ落ちそうな膝をすりよせなんとか踏みとどまろうとする。
「ん、んぁ・・よ、よが・り蜜・・?」
「そうよ。今、お前の全身に伝う蜜。それはね、人間はおろか邪鬼淫界の女ですら一滴で気を失うまで悶えのたうたせることができる邪鬼淫界で一番強力な媚薬なのよ」
「な、なんですって・・そ、そんなはああああっ!?」
亜衣は一呼吸ごとに鋭く激しくなる淫撃に、思わず手にしていた天具の蒼穹を取り落としてしまった。
両手で震える自分の躰を抱きしめていないと、どこかに堕ちてしまいそうな錯覚に囚われる。
「あなたが調子に乗って最後に切り裂いた淫ら触手に“よがり蜜”をたっぷり吸い込ませてあったのよ。一滴でもお前に降りかかれば、と思っていたけど、まさかべっとり全身に浴びてくれるとはねぇ。ふふっ。こんなに巧くいくとは思わなかったわ」

−し、しまった。く、悔しいぃっ。こ、こんな・・初歩的な罠にひっ・・かかっちゃふ・なんて。び、媚薬だ、なんて。そん、な、ものが・・−
ぎゅっと目をつぶり後悔する亜衣。
−で、でも・・−
歯ぎしりしながら、亜衣は、以前の闘いを思い返していた。
邪鬼淫界との長い闘いの間、天津姉妹が性的攻撃を受けたのは1度や2度ではない。
そして。過去に二人は媚薬効果のあるアイテムでの攻撃をも受けていた。
一度は、教師に化けた敵によって強力な媚薬を飲まされた罠。もう一度は、催淫効果をもたらす黒い玉を用いた罠。
いずれも、実際にパートナーの麻衣は魔界の悦楽に囚われそうになってしまったほど強力なモノであった。しかし、亜衣は巫女としての性に対する自制心、聖戦士として淫ら罠に抗する強い意志、そしてなにより自分自身のプライドをもってそれらを撃ち破ってきたのだ。

−そうよ。ど、どれだけ卑怯な罠でも、私は負けないっ−

天神の蒼い羽衣をまとった美少女は、小刻みに躰を震るわせつつも敵の淫ら罠に抗った。
瞳には天津の闘巫女としての輝きが宿り続けている。
「わた、しは・・ぁあ・・私は、淫らなことをされたって感じ・・たりしな、いわっ」
亜衣は今までの経験で、自分には敵の淫ら罠に耐性があると思っていた。
その証拠に、彼女は今まで一度たりとも凌辱に屈した事はないのだ。
半年前の決戦では、スートラの男性パートナー、カーマに純潔を奪われた。しかし、その時でさえ、亜衣はその強烈なまでの性技に溺れたことはない。
−わたしは、邪鬼のどんな淫らな攻撃にも耐えてみせることができる−
そう信じていた。

しかし。

「・・こ、こんな・・もの、わ、私には、んぐっ?・・ふぁああ?」
「こんなもの、なんですって?ふふふ、可愛らしい声がでてるじゃないの」
「ふぐっ・・そ、そんな・ア・こ、ことぉ・・」
敵に刃向かおうとする台詞がとぎれとぎれになり、その間を女の悩ましげな吐息がつなげてしまう。
−あぁ、どうして、こ、声が・・−
亜衣は思い通りにならない自分に戸惑う。
「脚をそんなにもじもじしちゃって。気持ちいいんでしょ?」
亜衣はその声にはっとして自分の下半身を見る。
ミニスカートから突き出た白い肌の長く美しい両脚は、自分でも気づかないうちにせわしなく摺り合わされ、いやらしく絡みあっていた。
「あっ、ん、んぐ・・・ひぁ…」
はしたない動きに気づいた亜衣は必死で両脚のうごめきをとめようとするが、官能にあてられた若い肉体は巫女の心を簡単に裏切り数秒もしないうちに、はしたなくくねりだす。
「あははは、すごいわねぇ。見ているこっちが恥ずかしくなっちゃうわ」
スートラはにやにやしながら、荒い呼吸で身もだえている亜衣を言葉でなぶり始めた。
「それにほら、お前の大切な弓を落っことしたまんまよ?待っててあげるから、拾ったらどうなの?」

亜衣は身体中から響く悪魔のような悦楽を、歯を食いしばり耐えていた。
気を抜くと愉悦のどろ沼に引きずり込まれそうな意識を必死で覚醒させようとあがく。
そして聖なる巫女は、敵の言葉を挑発だと判りつつも自分が邪鬼の淫薬などに負けないことを示そうとして、先程不覚にも取り落としてしまった天具を拾い上げようと屈みこんだ。

「わ、わざわざどうもありがとう。でも、その余裕が命取りに、ひぃいいいっ!?」

わずかに姿勢を変えただけで、亜衣は一層大きな、そして一層艶やかな悲鳴を上げてしまった。
体を動かしたことで、彼女の美乳の先がそれを覆う羽衣でこすられてしまったのだ。
それは普段は意識することすらないほんの少しの刺激だが、今の彼女には十分すぎるほどの愛撫になってしまった。
「あ、あひっん、んぁあっ、そ、そんなはぁああっ」
ポニーテールを振り乱し身悶える蒼い羽衣の天女は、わき上がる嬌声をかみ殺すことすらできなくなってしまった。
「あははははは、どうしたの、天津亜衣。そんなに悶えるなんて、やっぱりお前もいやらしいのねぇ」
「そ、そんな、ことぉほっうぐ、な、なひぃいいっ」
斜面に降り積もった雪ががほんのわずかの刺激で崩れるように、ぎりぎりで理性を保っていた亜衣の穢れ無き精神は、自ら乳首を微かに刺激してしまったことで一気に崩壊しそうになっていた。
「ほらほら、そのいやらしい腰つき。まるでショーダンサーみたいよ?」
「あ、いあっ、、そん、な、うそ、ウソよ、わ、わたひがはぁあっ?」
聖なる羽衣姿で淫猥に身悶えくねっていたことに、亜衣は指摘されるまで気づかなかった。
彼女が意識していない領域で、聖なる巫女の躰が勝手に闇の悦楽を求めてしまっているのだ。
眉根を切なそうに寄せ喘ぎ声をあげる亜衣は、普段の凛々しい彼女からは想像も出来ないほどの淫らな動きを止めることが出来ない。
一度雪崩れてしまった勢いは、全てのものを流し尽くすまで止まらない。
それまで積もっていた淫欲は、亜衣の強靱な理性をも翻弄する。
はじめは屈みこむだけ、というわずかなものだった天女の動きが、鋭い悦楽によってさらにその美しく可憐な美躰を震わせる。そして、そのひくつきがさらに亜衣の動きを大きくさせ、羽衣を突き上げているふたつの綺麗な桃色の芽・・乳首を強烈に刺激する。
邪鬼の魔薬の影響で、もはやなにかにこすれるだけで十分に凶悪なまでの快感電流を流してしまう亜衣の肢体。皮肉なことに、天神の加護を受け彼女を護るはずの蒼い羽衣が闘う美少女の心正しき意識を闇の快楽にひきずりこもうとしているのだ。
亜衣のその奇跡のように美しい肉体の、羽衣に接している部分すべてから響きわたる信じられない悦楽に押し流され、亜衣は自分がどうなっているのかも判らなくなるほど混乱していた。

−そんな、そんな、そんなぁああっ!?どうして、わ、わたしぃひっ−

相乗効果で大きく鋭くなる愉悦に、亜衣は淫楽の無限ループに陥りそうになっていた。
じっとりと汗が滲んだすらりと長く美しい脚を震わせて、果てることのない屈辱的な快感と闘う亜衣。食いしばる奥歯もいつしかがたがたと鳴り出して熱い吐息があふれるままとなっている。
靴の中で指を折り曲げふんばり、天女の理性を蹴散らし暴走している熱い躰を支えようとする。
異常に敏感になってしまった肌がこれ以上羽衣と接触してしまわないように、亜衣はなるべく躰を動かさないように耐える。
のどの奥からかすれた喘ぎが漏れる。身体中をねっとりした汗が伝い流れる。
長い髪が幾筋か張り付いた貌には戸惑いと焦燥がはっきりと現れ、凛々しい眉は切なげに寄せられたままだ。悦楽に負けて崩れ落ちてしまいそうな躰を支えようと両手で抱きしめていた事が今ではすでに逆効果となり、余計に甘い刺激を増加させてしまっている。
亜衣の全身全霊の抵抗は、しかし長くは保たなかった。
官能的な太股を一層激しくくねらせて悶えると、かすれた悲鳴を上げた。

「ぁあっ、も、もぉ・・だ、ダメ・・あ、脚に・・んあっ・力が、はいんな・・ぃ・・」

ついに腰が抜けてしまい、美少女戦士はくたくたと座り込んでしまった。
勝ち気な瞳にはまだ理性の輝きが光っているものの、自分の躰がなにひとつ言うことを聞いてくれない。今の亜衣に出来ることは、邪鬼界の淫肉がはびこる桃色の肉床にへたりこみ、両手で自分を抱きしめ続けている躰をはしたなくくねらせ続けることしかなかった。

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