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  「西へ」 −バーシア アナザーエンド−             場面12

■ フェルナンデス 3月10日 AM3:00 安宿


ギィ…

肉屋が満足そうに、身体を揺すりながら、部屋から出てきたのは、それから1時間後のことだった。
バーシアばかりを一方的に責めたて、反応が悪くなったと言えば薬を使った挙句、息も絶え絶えになったバーシアに最後の放出を浴びせてきたのだ。
男と目線が合った時、オレは非難の意味を込めてじっと見つめ返した。

【[肉屋]】「フン…」

そんなオレの意図を無視するように、小鼻で笑いながら、話掛けてきた。

【[肉屋]】「お前の女房は、最高の味だったぞ、ウシシ。思い出しても涎が出るくらいのな」
【[主人公]】「………」

オレは無言で睨みつける。

【[肉屋]】「まぁ、貴様の分まで腰が抜けるほど可愛がってやったので、欲求不満は解消されたと思うがな、グハハ」
【[主人公]】「………」
【[肉屋]】「フン、面白みの無い奴。まぁ、いいわ。時間延長分の金をココに置いておいてやる。まぁ、お前はこれが欲しかったんだろうからな、この虫けら野郎」

バサッと札束が机に置かれる。かなりのボリュームだが、今のオレには、目先の金など頭になかった。

【[肉屋]】「それにしても、バーシアちゃんは身を粉にして働いているというのに、貴様は暢気に酒をあおっているだけとはなぁ…最低の野郎だ」
【[主人公]】「………」
【[肉屋]】「まぁワシの金で食っている寄生虫のような奴だから言っても無駄か…まぁ、また3日後くらいに来てやるからありがたく思え」

オレは、冷たい怒りが頭に駆け上り、気が付いたときには言葉に出していた。

【[主人公]】「それには、及ばない」
【[肉屋]】「んん? それは、どういう意味かな?」
【[主人公]】「もう来なくてもいい、と言っているんだ。この金も返してやるから」
【[肉屋]】「なんだと、おい!」
【[主人公]】「今日は満足したんだろう? だったら良いじゃないか。次の機会は無いから無いと言ったまでだ」
【[肉屋]】「ほぉ…やけに強気じゃないか。一体どうしたんだ?」
【[主人公]】「いや…お前のような奴の金で、飯を食っている自分が嫌になっただけさ。それこそお前の言うように寄生虫だと、ね」
【[肉屋]】「ふん…後で後悔しても知らんぞ…」
【[主人公]】「ありえないね」

オレが叩き返した金をもぎ取ると、ドスドスと大きな音を立てながら、肉屋が去っていった。

【[主人公]】「フゥー」

一服タバコをくゆらすと、次第に気が落ち着いてくる。
怒りに任せて言ったのは事実だが、なんとかなるさと前向きに考えている自分がそこにはいた。
あの豚野郎は、追い返したことに微塵の後悔もない。いや、もしこのままアイツから金を受け取っていたら、卑屈になり、取り返しがつかないところだった。

【[主人公]】「そうだ…バーシアは大丈夫か?」

オレは、部屋に一人残されているはずのバーシアの元へと急いだ。

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