第一章 女王オルガ
密林の奥深くにあるアマゾネスの国々。
その中で、10万人以上はいるであろうアマゾネス民族がいる。
彼女たちはホーリーバン族というアマゾネスだ。
ホーリーとは聖なるという意味。
昔は数千人規模の集団であったが、先代より5代前の女王の時代から、富国強兵政策が取られ、とにかく人口増やせ(富国強兵)作戦が行われた。今では他のアマゾネス民族集団の中で一番規模が大きく、都市国家のようになっている。
彼女らはもう百年以上前から、女性だけで子孫を残し、種の保存を維持してきた。
と、なると……
まず疑問に思うことがある。
それは相手である男性だ。種の保存には精子がいる。男性がいるのだ。
「本気ですか? 女王」
「本気だ」
新女王が語気を強めて言った。そのお言葉に目を丸くするのは、家臣の一人の女性。
彼女の名は、ムリア。新しく女王となったオルガの若い側近の一人。
「殿狩りは、必要最小限にとどめるべきだと思っている」
胸をプルッと揺らせながら、はっきりと言うオルガ。
筋肉質の身体で、精悍な顔立ち。ワンピースタイプのロングスカートを身にまとっている。胸のあたりにはアマゾネスの王家の紋章が立派に刻まれている。
ドレスの色は赤。個人的に攻撃的な赤色が好きならしい。
しかし、その言葉に不安を覚えるのは側近のムリアだった。
「殿狩りは、由緒ある伝統の行為儀式です。それに規制をかけると、民の不満が募ります」
「今までが異常だったのだ」
民とは、このアマゾネス国家の国民のことだ。
殿狩りとは、言い換えれば男狩りの事。
種の保存のために、同じ民族ではなく、異民族の男と関係を持つ事。それをこの辺りの国々や民族は狩りと呼んでいる。
女王オルガが統治しているアマゾネス軍団は、生まれてくるのはみな女性。
だからどうしても、異性の男性が必要なのだ。
その理由で異民族の男性を狩っているのだ。
狩っていると言っても、無理やりとかではなく、アマゾネスの誘惑や色気に引かれて来る男を利用しているのだ。そうやって子孫を残していた。
これは、初代の女王から永遠と続く当たり前の行為だった。
種の保存としての当然の行為。
だが、現在の女王はその期間に規制をかけようとしているのだ。
玉座に脚を組んでいる女王がさらに言う。
「昔は決められた時期だけ殿狩りをやっていたはずだ。それが今や年がら年中だ」
不機嫌そうに言うオルガ。
どうやら昔は一ヶ月だけ殿狩りをやっていたらしい。
必要な行為の時のみ行う。それが美徳だったらしいのだ。
それがいつの間にか一年中やりまくるようになってしまった。
女王オルガはその点が気に入らない。
「しかし、みなはそのような制限を好まないと思いますが」
50年も前から殿狩りは年がら年中やるようになっている。おかげで人口も増え、
国力も増した。周りの他民族は、ホーリーバンの勢力を恐れ、誰も攻撃さえしてこない規模になった。
なのに……なぜ?
「それがおかしいのだ。だからこそ、私が変えてみせる」
スタイル抜群の身体をみせつけるように座っている女王オルガ。
しっかりと肌を覆っているタイプの服がお好み。
他のアマゾネスのように露出多しの服を好まない。
オルガは一年中、男漁りをしている連中をいいように見ていない。
むしろ、そのような淫らな連中を押さえ込みたいと思っているようだ。
しかし、ムリアは、その事に不安を抱いていた。
なぜなら、性に関して、この民族は、実に寛容。
オナニーやレズはもはや当然のように行われている。
女性しかいないので、ある意味当たり前でもあるが。
服装も自由。ひたすらセクシー路線に走る女もいれば、
しっかりと全身を覆い、清楚な感じでいる者もいる。
側近のムリアは脚見せ、胸見せセクシー派。
対してオルガは胸も脚もあまり見せない派だ。
だが、オルガが胸や脚を見せれば、間違いなくムリアよりもセクシーだろう。
それほどの身体でも、オルガは絶対に見せないのを心情としていた。
彼女たちの一日は、朝起きて、身体を洗い、化粧をして役割分担された仕事を開始。
お昼休みは二時間の休憩。
夕方には仕事は終わり、その後はすべて自由時間。
後は殿狩りをしようが、レズに夢中になろうが全部自由。
過労死ってなに? っていうような労働時間である。
もちろん、定期的にある集会や祭事、または戦争には絶対参加であるが。
さらに、女性の容姿にもいろいろなタイプがいる。
アマゾネスと聞くと、みなが筋肉モリモリで、女子プロレスラーのような体型と思うであろう。だが、多くは普通の女性の身体つきばかり。いわゆるアマゾネスというような肉体は少数だ。ロリ顔の子も結構いる。
それでも彼女たちは……
他の民族の男性よりも圧倒的に強い。
パワーなどは、普通の男性の何倍もある。
その気になれば、片手で、人間の男の首を絞め殺すことも容易だ。
さらに機敏性にすぐれ、みなが戦いでもすぐれているタイプばかり。
男に襲われるどころか、男を襲う方がふさわしい表現だろう。
そんなアマゾネスの二人が絡んでいる場所がある。
「あっ……そこよ……そこを舐めなさい」
「はい」
股間をぱっくりと開けて、あそこをいじらせているアマゾネスが一人。
そのあそこを舌と指で必死に慰めている女が一人いる。
「んはああっ!――」
巧みな指の動きであそこをいじめていく女。
刺激を与えている女は、綺麗なお肉にうっとり状態だ。
責めている女の名は……
アイリ。
彼女は平民の身分。レミリアの忠実な部下の一人だ。ほどよい太ももをしっかりと掴んで肉いじめをしている。そのうまい責めに喘ぎまくっているのが、レミリア。
レミリアはがっちりした身体つき。逆にアイリはロリ顔。
まるで美少女が美女を責めているような雰囲気になっている。
「うまいわ……あなた、最高よ!」
「うれしい〜」
褒められて喜ぶロリ顔女。
この世界では身分が下の者が、上を喜ばせてあげる風習がある。
悶えるレミリアを見ながら、責め続けるアイリ。
――いい……なんて……いい……の……
アイリの舌と指は、レミリアのエッチな肉を、あっという間に淫乱にしてしまう。
相手にご奉仕することは、結構好きな方だ。
クリトリスを荒々しく噛んで、上司のアマゾネスを狂わせる。
ビクン、ビクンと脚が動いている。
このかわいい顔で、しつこい責めが最高らしい。
レミリアは悦楽の世界で狂いまくっていた。
二人のレズ行為は永遠のように続いた。
ある程度疲れたので休憩時間。
ぴったりと寄り添う二人。
普段、男がいないこの世界では当たり前の行為。
他の家でもこういう事が今、されているはずだ。
快楽に浸って寝ている二人。
するとアイリがつぶやく。
「殿狩りはどうなるのでしょう?」
「さあね〜 一ヶ月だけだってルールにするつもりらしいけど」
女王オルガが、狩りの時期を年中無休から一ヶ月に限定しようとしている事は、
みな知っている。これに反発する女達は多い。
ここ何十年以上、殿狩りは自由に好き勝手にやってきた。男がほしいと思ったら、狩りにでかけた。繁殖目的ではなく、快楽のために狩りをやっているものもたくさんいる。
もちろんそれも自由なのだ。
だが、オルガはそこが気に入らないというわけだ。
オルガの考えは、みだりに快楽のために男を狩るな、必要な行為だけで済ませろという考えだった。だから期間を決めて、それ以外では、男を絶てというわけだ。
これに家臣や一般の民が困惑しているのだ。
「わたし……嫌いです」
「え?」
アイリがつぶやく嫌いという言葉。
その言葉に反応するレミリア。
――嫌い……か……
「女王様の母上様は、そのような事はしませんでした」
「そうねえ〜」
その点には同意しているレミリア。
「なんとかなりませんか?」
「でも……あなた……男嫌いでしょ? 殿狩りなくなってもいいんじゃない?」
「あ……はい」
アイリは男嫌いだ。もう狩りをやってもいい年齢なのだが、一度も男を誘惑した事はない。
「あなたにとっては、そう不都合なことでもないのに……」
確かにそうだ。男狩りが出来なくてもアイリにとってはあまり不都合はない。
アマゾネスは一生のうちに最低一人産めばよいとされている。
子さえ一回産めば、男を絶っても一向に構わない。
実際は平均3〜4人産んでいるようだが。
「私は……オルガ様以外の方に……なってほしかった……」
アイリはどうやらオルガが嫌いなようだ。
オルガには妹が二人いる。
だが、長女であるオルガを先代の女王は選んだ。
それは今までの慣習で間違いではないのだが。
しかし、オルガは極端な禁欲主義という噂がある。
対して、妹の二人は、自由主義。
殿狩り以外でも、今までとは違う政策をやろうとしているオルガ。
それに反発する女達は多いのだ。
――確かに……いたずらに禁欲だらけじゃ……鬱憤も溜まるわよね。
レミリアがちょっと考えていると……
「あっ……」
乳首を噛まれた。甘い噛み方だ。
とたんに疼きが走る。
アイリの乳責めも、レミリアは大好物。
「レミリアさま……」
こうして二回戦が始まっていった。
レミリアとアイリが一夜を楽しんでから一週間後。
オルガがまた新しい政策を提案している。
それに対して、ムリアはまたもや否定的だ。
「そのようにただひたすら禁欲政策に走っても、うまくいかないと思われます」
ムリアがはっきりと言う。民は否定的なのだ。
さらに、家臣も否定的。それを理解してくれというのが本音だった。
それに対して女王は、
「わが民族は今は他民族よりも優位であるが、このままではいずれ衰退する。だから言っている」
「どういう理由で衰退するといわれるのでしょうか?」
「もうよい」
ついに討論を打ち切ってしまったオルガ。
大きいお尻が、討論を受付けないと言っているようだ。
玉座からさっさと立ち上がり、奥に引っ込んでしまった。
ぽつんと残されたのはムリアと他の側近たち。
これでは困ってしまう。
――このままじゃ……
不安が募るムリア。
先代の母が生きていた時には、まだ母が後見役として君臨していた。
母ともよく揉めていたオルガ。
オルガは、民を管理しようという傾向がある。
それに対し、先代の母は、今までの慣習、価値観を大事にしていた。
オルガの主張を抑えることもあった。
だが、もうその母はいない。
さらに、今のオルガは、みなから支持されていない。
むしろ、妹達の方が支持されているという状況なのだ。
そういう状況を良いとは思っていない家臣は多い。
毎日、女王と話をするたびに鬱になるムリア。
討論を打ち切った女王。
一人で宮殿の廊下を歩いている。
今頃、家臣たちは探しているはずだ。
女王が一人で歩くことは普段はない。
すると、親衛隊の練習を見つけたオルガ。
お互いに組み手という型で稽古をしている。
そこへ向かう女王。
どうやら、格闘技の稽古がしたいようだ。
女王オルガは、王族にしてはめずらしく、格闘技のプロでもあるのだ。
オルガを見て、一斉に親衛隊が敬礼する。
「誰か私の相手をしろ」
どうやら身体を動かしたいらしい。
早速、王族の身分を証明する服を脱ぎ捨てる。
下着姿の身体があらわれた。
やはり思ったとおりの身体つき。
これはぜひお近づきになりたい肉体だ。
そして、練習用の軽い鎧を身につける。
へそ出し、太もも丸見えタイプ。
だが、これは正式な戦闘服。
露出が多いのは、異性と戦う時の武器になるからだ。
どうやら、これは規制しようとは女王は思っていないらしい。
一人目が練習相手にあらわれた。
互いに間合いを取る。
寸止め攻撃というやり方で、相手に怪我をさせない練習方法らしい。
親衛隊の相手が蹴りを入れた!
それに対し、かわしていきなり踏み込むオルガ!
ドーンという感じで、あっという間に相手の懐に入る!
そして、脚払いの下半身攻撃!
「うわっ!――」
早い!
さすがはアマゾネス級のプロ女戦士でもある女王。
「次だ!」
今度は別の親衛隊が相手。
こうして次から次に親衛隊の相手をしていくオルガだった。
20人いた親衛隊すべてを相手にした女王オルガ。
相手はみなもうヘトヘトだ。
流れ出る汗が妖しく美しい。
最後の親衛隊の相手をしている。
これが稽古の最後なのだろう。
そこへ、乙女長が現れた。乙女長とは、親衛隊の隊長のことだ。
女王を見るなり、早速敬礼する。
「ぐはああっ!――――」
強烈な脚技で、倒れこむ親衛隊の一人。
美しく、引き締まった勝利者の太ももが、威厳を保っている。
振り上げた脚から、汗がいやらしく、女王の肉体をかけぬける。
脚をナナメにあげたまま、最後の一人を見つめるオルガ。
その稽古を見ているのがマーラ。
乙女長だ。
「マーラ、そなたに聞きたいことがある」
女戦士と呼ばれることに、ふさわしい肉体の持ち主マーラ。
オルガに負けず劣らずの太ももとお尻だ。
さらに、目つきもかなり鋭い。さすがは、乙女長といったところか。
「近頃、親衛隊で、男遊びばかりやっている者が多いと聞くが……」
「派手な遊びは慎むように指導はしております」
「そうか……だがこの弱さはなんだ!」
倒れこんでいる親衛隊たち。
これを弱いと言うオルガ。
だが、これは弱くないのだ。
オルガが強すぎるのである。
最高階級のアマゾネス級の称号を持つオルガ女王。
彼女は、王族にはめずらしいタイプなのだ。
他の王族はそこまで身体は鍛えない。
本来、守ってもらえるからだ。
だが、オルガの考えは違う。
女王であるからこそ、身分だけでなく、戦いも最高クラスではないといけないと思っている。
「鍛えなおせ!」
「はっ!」
異を唱えず同意したマーラ。
だが、心ではそう思っていない。
歴代の中で、最高の強さと言われている、今の親衛隊。
他の家臣たちからも、認められているほどだ。
あまりの女王のスタミナの強さ、格闘技のセンスに勝てないだけなのである。
女王は去って行った……
「女王が強すぎるのだ……」
ヘトヘトにされた一人がつぶやく。
ある意味不満のあらわれである。
「文句を言うな!」
マーラが叱責する。
しかし、マーラにも……部下が文句を言いたくなる気持ちはわかっていた。
そして、少しずつであるが、嫌な予感もしている。
なぜなら……嫌な噂が流れているから。
そのムリア、マーラの予感。
その予感は的中していく……
「このままでは、みなが一つにまとまりません」
家臣の一人が、なにやら王族の二人に進言しているようだ。
「困りましたね……」
二人はオルガの妹。
家臣のたび重なるオルガ批判に困惑している。
だが、この二人もオルガがやろうとしている事には疑問を持っている。
民族の9割が反対している殿狩りの制限。さらに、労働時間や自由時間なども女王は、手を加えようとしている。今まで自由きままに生きてきたアマゾネスたちにとって、オルガのやろうとしている事は、同意できないのだ。
なぜ、オルガは反対だらけでやろうとするか?
それには理由があった。オルガたちは、ホーリーバンと呼ばれる民族のアマゾネスだ。 昔は数千人だったホーリーバン民族。しかし、5代ほど前の女王から、殿狩りの自由と労働時間の自由を認めたあたりからホーリーバンの人口は徐々に膨れていった。それによって、国力も増したのだ。
当然、軍事大国になり、強大なアマゾネス帝国になった。
しかし、同時に犯罪や風紀も乱れまくったのだ。
それがオルガが気に入らないことなのだ。
だが、経済は人口が増えた事でうまくいっている。
今や一大都市国家ににまで成長。
他の民族のアマゾネス集団の中で一大勢力になったのだ。
勢力を拡大し、敵がいない状況、経済も好調。
当然、みなは今のままが一番いいと思っている。
「姉上は、優良種だけでまとめるのが、民のためと思っています」
「それは正しいとは思いません」
他の家臣、レミリア達もみな同じ意見だった。
優良種だけという考え方が広まれば、こいつはいらないとか、不要とかいう考えは必ず出てくる。それがゆくゆくは、このアマゾネスの民にとって滅亡への道になると思う者が多いのだ。内戦だって起こるかもしれない。
「かなり不満が募っているようですね」
もう一人の妹が言う。
「このままでは……いずれ、民は女王から離れてしまうかと思います」
「もう離れているのではないでしょうか?」
ミア王女が図星を突いた。
オルガの妹ミア。女王継承権第一位。
オルガに子がいなければ、当然跡継ぎの筆頭格だ。
この娘は、先代の母の考え方を引き継いでいる。先代母の二番目の子、ミア王女。
彼女は、姉のオルガと違い、歴代の母の考えを継承している。妹のシャルテもそうだ。
歴代の母の考え……それはイコール民の考えでもある。
ミアはオルガのように気高く強いイメージではない。
逆に、冷静で沈着タイプ。
だが、ツンとして冷たい独特の雰囲気もある。
ほどよい胸の大きさとお尻がなんともいえないスリムタイプの肉体。
太もももモデルのような美しさ。
太ももガッチリタイプのオルガとは対照的だ。
「ミアさま……」
ミアの鋭い洞察力に、家臣たちは感心している。
ミアは、姉のオルガと違い、民を気にするタイプ。家臣の意見を聞くタイプ。
つまり世論重視。
民を敵に回しては、王家はうまくいかない事をよく知っているのだ。
「ミアさま……これはオパさまの考えでもあるのですが……」
家臣の一人がなにやら進言しようとしている。
「なんでしょう?」
家臣に近づくミア。
その口から発した言葉は……
家臣達を驚かせるものだった。
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