(1)
「しかし殺すにはもったいないような女だな」
「まあな!、、、俺の親戚になるし、、、けれど1人1億円だぜ!、」
「そうだな、、、、、、。」
部屋の鍵を受けとるため、水浴中の木田彩美の方へ歩いていく由香里の後ろ姿を見ながら、3人の男達はたどたどしく言葉を交わしていた。
ここは高級リゾートマンション近くの海辺。
先日までは夏休みで水浴やキャンプで賑わっていたがそれも終わり、今は人影が無く、そのマンションの住人である木田彩美は、人目を気にせず好みの水着を着て水浴や日光浴を楽しむことができた。
彩美には約4億円の遺産が入って来ることになっていた。
すでに亡くなった父親の財産で働かずとも贅沢な生活をしていたことで友人である由香里の恋人を秘密裏にセックスフレンドにしたてるなど、傲慢な女になりさがっていた。
しかし、
由香里はそのことに気づいていた。
由香里は彩美への遺産を狙う3人の男達と結託し、彩美を殺害し水難事故に見せかける計画を実行していた。
彩美のマンションへ行く約束を交わしていたが、約束の時間より30分早く行き、水浴を楽しむ彩美から部屋のキーを受け取ると、男達と共に駐車場横の雑木林に隠しておいた、海水の入ったポリタンクを抱え、玄関ではなく、塀を乗り越えて通路に侵入、非常階段を登って彩美の部屋に入った。
そして浴槽の排水口に細工をし、靴を持って寝室に隠れ、由香里は彩美に飲ませるカクテルを作りはじめた。
(2)
彩美は白地のV字フロント、紐結びのハイレグストリングビキニをつけていたが、165センチの鞭のようにしなやかな官能美をにじませる肉体と、美しく小麦色に焼かれた肌に、白地のビキニが鮮やかなコントラストで映えていた。
彩美は水着のまま、大判のバスタオルを肩にかけてマンションに帰ってきた。
「カクテル 作っといたからね!」
「サンキュー!」
着替えさせてはまずい。シャワーを浴びようと寝室に着替えを取りに行こうとする彩美に、由香里はカクテルを差し出した。
彩美はソファーにかけ、カクテルを飲み干した。
次の瞬間、寝室に隠れていた手袋をした3人の男がいきなり踊りかかってきた。
「あんた達誰?!なにするの!誰かあーー!!!、、、、、ウグッウウウウウ!!
!」
由香里は手にしていたタオルで彩美の口をすばやく塞ぎ、男達は羽交い締めにし、うつ伏せにして押さえつけ、左手で項を押さえ、右の手のひらで凸型ギャグを彩美の口に強引に押し入れ、ベルトを後頭部で強く引き締めた。
ギャグまわりの革は口廻りの皮膚にピタリと貼りつき音声の漏れを封じる。
男は両膝でうつ伏せの彩美の頭を挟み、肘上をわしづかみで揃え、もう一人の男はヒップに乗り、幅広の工事用のビニールテープで手首から肘上までを隙間無くグルグル巻きにした。
拘束にロープを使わない訳は縄痕が残っていては殺人だとわかってしまうからだ。
テープの圧迫痕が残らぬよう加減したが、容易に解けぬよう Y字型に両肘を密着して拘束する。
「ウゥゥゥー!!! フグッ!!ンン!!ンン!!ンン!!フグッ!!ンン!!」
3人の男はジタバタ暴れる足を掴み、腕を拘束した男が向きを変え、足首からふくらはぎを拘束し、膝を曲げた。
そして肩と膝を上へ持ち上げ背中で接近させ強引に逆海老に反らせると、残りの男が腕と足首を上下に重ねて、テープで固定してしまった。
「ウグゥゥッ!!!、、、、、、ウッ グウッ!!」
折れるっ!!!、、、、、、苦しいっ!!
背骨が折れはしないが、彩美は極端なホッグタイの体勢で拘束される恐怖からギャグの下でカスレ声で鋭く口走った。
ロープの圧迫こそないが、腕と足の重ねられた部分が30センチ以上もあるだけに、肉体の海老反り具合も尋常ではない。
乳房が小ぶりであることを除けば、レースクィーン並のプロポーションである。
その小麦色の肉体が、腹だけを床に着けて厳しくホッグタイで反らされている。
たわめられた背筋、小ぶりで弾力を感じるヒップ、V字フロントの下腹部から反りあがったなめらかな曲線の大腿へと、美しく弓形に弧を描き、じっとりと脂汗をにじませ、口腔深くギャグを噛まされ苦悶に喘いでいるのだ。
(3)
男達は彩美を傷つけぬよう慎重に抱え、静かに、大理石で出来た円形浴槽に降ろした。
男達の異様な行動に、溺殺させられると察知した彩美は、ここをせんどに死に物狂いでもがき始めたが、その姿を男達は単なる物のように見ながら、あらかじめ汲んでおいた6つのポリタンクの海水を浴槽に注ぎ込んだ。
「さっきアルコールを飲んでくれただろう! 今度はプランクトンも飲んでもらう!」
「アンタは海で溺れ死ぬんだからな!。」
しかし、彩美は背筋がかぶるほどの海水の中でもがきながら、浴槽の栓を抜くことを思いついた。
男達はシャワーをカルキ除去用に換えて栓を開け、部屋に戻り留守電のボタンを押し、由香里は指紋をぬぐって部屋の電灯を消し、アリバイつくりのため全員いったん人目を避けながら引き上げた。
夜間、彩美を水着のままシュノーケルと水中眼鏡をつけて海中へ投棄する腹積もりつもりなのだ。
ガチャン!!カチン!、、、カチン!
「ウグウウウウウーーー!!!!」
彩美は必死だった。
ドアーの閉まる音が聞こえるのと同時に、肉体を死に物狂いで左右に振り、反動で横に倒れる。
拘束された手で栓のチェーンを握り、栓を抜くつもりなのだ!。
ビニールテープの接着性は濡れれば低下するだろう。もがけばなんとかなる。まずは栓を抜くことだと考えたのだが、、、、、。
「ハッ! ハッ! ハッ! フグッ!! ハッ! ハッ!、、、、、」
首を横に曲げ顔を水面より上に突き出し、自ら作った波にむせながら、ジリッ ジリッ と肉体を円形の浴槽に沿って回し、ついにチェーンを探り当て、手首をググッと曲げて栓を抜いた。
ヤッター!!。
彩美は安堵の思いで、横倒しのまま拘束脱出にかかろうとした。
しかし。
水が減らない。
それどころか水位が上がってきている。
「ウグウッ!!!」
うそおっ!!!
彩美は恐怖で眼を大きく見開いた。
「ハガアアーー!!! ウグウグー!!! ウグウグウウウーーー!!!」
誰かー!!! 助けてぇ!!! 助けてええーーー!!!」
ギャグの下から助けを叫ぶが、所詮、意味不明のくぐもったウメキ声しか出ないのだ。
助けを叫ぶ声は絶対に部屋の外へは聞こえない。
水はジリジリと顎から口元に迫ってきた。
、、、、このままの姿勢では駄目だわ!、、、、
彩美は再びもがいて苦しいうつ伏せの姿勢に戻った。
そこへ突然電話のベルが鳴り出した。
「フウッ!、、、、、フグウウ!!」
彩美は冷静さを完全に失い、浴槽を越えられるはずも無いのに、拘束された手足をヨガのように反動をつけて上へ突き出し、飛び上がるような姿勢をする。
ベルが3回鳴り、4回鳴ると留守電のテープがしゃべりはじめる。
「、、、ただいま留守にしております。御用の方は発信音の後にメッセージをどうぞ、、、」
「彩美?わたし 由 香 里 で〜す!。さっき約束の時間に海に行ったけどー、彩美に会えませんでした。今ごろ何処にいるのでしょうか? 留守電聞いたら連絡くださーい。」
「フグウウウーーー!!!!」
水が口を覆いはじめた。
彩美は、贅肉の無い小麦色の美しい背筋と、反り上がった官能的な曲線の大腿を、死に物狂いで仰け反らせ、顔を水面に上げ続ける。
首に力が入るため頭をプルプル震わせると、力尽きて顔が下がり水を吸い込む。
「ブウー!! ヒィグウウーー!! オゴッ!! オゴッ!!」
ギャグに封じられた口からはもはや助けを求めるウメキ声ではなく、気泡の音に混じって半泣きの窒息に苦しむくぐもった悲鳴が聞こえはじめた。
水はついに鼻を覆いはじめた。
ストリングビキニの蝶結びをアクセントに引き締まった腹部を底辺にして、厳しいホッグタイで反らされた肉体を、揺りかごのように死に物狂いで前後に揺らし、食用家畜のようにウメキ、額に皺を寄せ、眼を天井に向けてカッと開き、髪のへばりついた顔を水面に持ち上げる。
しかし、呼吸するまもなく、次の瞬間水中へ没入する。
「オゴッ!! ヒグゥゥゥゥーーー!!! ウブッ!!、、、、、、、、、、、」
再び顔を水面に上げるが、自ら作った波をかぶり呼吸どころではなく、豚の鳴き声のように喉をならしながら空気を吸い込み水中へ没入。苦悶で頭を左右に振る。
さらに水は上昇し、どうもがいても呼吸できなくなった。
まはや鼻からも気泡が出てこない。
彩美は完全に窒息しはじめたのだ。
眼球を充血させて大きく開き、肉体を横に倒し、自由な頭を浴槽にゴンゴンぶつけて前後左右に振り回し、苦し紛れに背後のテープを引き千切ろうと、美しい肉体をさらに激しく海老反らせ、縦に伸びた臍と股間をグイグイ突き出した。
その光景はあたかもアイスボックスに放り込んだ魚が、ビチビチと暴れる姿を連想させた。
最後に横に倒れたまま、握り締めていた手を何かを掴むようにパーッと開いて振るわせ、全身を痙攣させ、眼球を開けたまま絶命した。
そして、夜、、、。
由香里と男達はマンションに来た。
玄関からではなく、昼忍び込んだ同じ通路だ。
水を止めて栓の詰まりを解き、彩美を浴槽から引っ張り上げ、ビニールテープを鋏みで切断した。
そして彩美を大型のスーツケースに押し込んで、元来た通路を引き返し海岸に出た。
ひとつの犯罪が完遂されるかに見えたが、しかし、彼等は気づかなかったのだ。
裏通路の天井にも、監視カメラの光っていたことを。
彩美も金に踊らされ、墓穴を掘ってしまった。
終わり
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