迫りくる尿意   ぴーすふぁいぶ作品

安川郁子はT大学の助教授である。29歳という若さで助教授になった例は過去にはなく、学内でも驚きの声が上がったほどだ。
また、その美貌も評判で、当人曰く、高校の時から雑誌のモデルとか歌手のスカウトに何度も声をかけられたそうだ。
業界大手のHプロが大分最後まで勧誘していたそうだが、当人の意志が固く、ついに断念した、という噂は学内では知らぬ者がない。
まさに才色兼備の美女というのにふさわしい。

 その郁子だが、今は研究室で学生となにか話している。
どうも学生が進路についての悩みを相談しているようだ。
しかし、どうも郁子の様子がおかしい。
先ほどからせわしなく足を動かし学生の相談もうわのそらの様子が見える。

 それもそのはず、郁子はさっきから尿意を我慢していたのだ。
授業中に尿意を催し、授業が終わったらトイレに飛び込もうと思った矢先、学生に声をかけられてしまったのだ。
てっきりすぐ終わるかと思ったのだが、かれこれ40分になる。かといって、トイレの為には座をはずしにくく、なんとか打ち切ろうと思っているのだが、なかなか終わらせてはくれない。

 もう我慢の限界にきたと感じた郁子は、ありもしない会議をでっち上げて、学生を帰した。

 もう尿意は限界である。
まともにたつと漏れそうなので腰を突き出し股間を押さえないと我慢ができない。
しかし、そんな格好で廊下を歩くわけには行かない。
尿道を引き締め、さりげなく股間に手を添え、研究室をでる。
目指すは10mほど先の女子トイレである。

 ところが、トイレのドアには「清掃中」の看板がかかっていた。

 「ま、いいわ。2階のトイレがあるし・・・」

郁子はそう思うと階段を上がっていった。

 しかし2階のトイレには無情にも「故障中。使用禁止」のはり紙がしてあった。

 「な、なんで・・・」

尿意はもう一刻の猶予も出来ないほど差し迫っている。
郁子は即座に3階に上がって行った。

 そこで郁子が見たものは女子トイレの前に並んだ10人ぐらいの学生である。
もともとが学生数に比べ女子トイレの数が不足気味なところに持ってきて、1、2階のトイレが使えないので集中したようだ。
まさか学生に「漏れそうだから・・・」と、いうわけにはいかない。
といって、順番待ちをしたら、待っている間に限界が来ることは目に見えている。

 「しかたない、清掃中だけど1階のトイレを使わせてもらおう」

 郁子は1階へと向かった。途中一瞬気がゆるんで、尿が少量漏れてしまった。
もう、持たない・・・。

 息も絶え絶えに1階に降り立った郁子が目にしたのは20人以上もいるだろうか・・・女子トイレの順番待ちの列である。

 「も・・・もう動けない・・・」

 絶体絶命。

 

終わり


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