書評の森
相変わらず簡素な体裁でコンテンツを増殖。
「中身で勝負や」といいたいところですが、真相はいかに?
夜光虫 馳星周 角川書店
評価の分かれる小説だと思う。こういうのを面白いと言う人もいるだろう。ただ私はこの作品に物足りなさを感じた。不夜城を読んだときの充足感とは違う何かを。 不夜城は健一と夏美の二人のキャラメイクが非常に優れており(とにかくカッコイイのだ。それに比べて映画版はなんであんなにカッコ悪かったのか?金城武)、組織に対して個人というものがいかにチッポケで無力な存在かということを書きながら、最後まであきることなく読ませてくれた。ラストもピッタリきまってたしね。よかったよ、本当にあれは。 続く「鎮魂歌」は狙ったような暴力描写が鼻につき、好きになれなかった。登場人物も死のうが生きようがどうでもいい連中だったしね。萬月のほうがそこらへんはよっぽどうまいぞ。 じゃあ、今作はどうかといえば、1作目に近い作りの小説となっている。主人公は元日本のエースだったが、故障から引退し、借金の返済のために台湾に渡った投手。そこへ組織(黒道)が八百長を持ちかけてきて借金返済のためそれを甘受する。 結局この二人で気の利かせたラストになるはずもなく、なんだかママゴトしているような終わり方。おいおい、と俺は思わずよろけ掛けた。ただこういうのでも感動する人はいると思うのでそれが評価のわかれるところと言ったまで。キャラメイクに納得できない私には何の意味も無かった。こんな人妻、俺の書く小説の中だけにしてもらいたいね(笑)。 |