おばけ屋敷でGO!! 書いた人:北神的離
第4話 − 影絵〜ファナ〜 − |
「ど…どうして…」 惨劇のあった場所…大広間に戻ってきたファナは絶句した。 そこにあったはずの2つの死体が跡形も無く消え去っていたのだ。 場所を間違えた?いや、それは無い。 館の構造上、この他に大広間のあるようなスペースは存在しない筈だし、何よりここにはまだ新しい血痕が残っている。 にも関わらず死体だけが消えているのだ。 ファナは姉が冗談混じりに喋った内容を思い出していた。 『嘘じゃないわ、兵士達が動く屍となってここの住民を惨殺するのよ。それで殺された人々も仲間になってどんどん数を増やしていって……』 おばけ屋敷でGO!! 第4話 − 影絵〜ファナ〜 − ファナは最上階に向かう。 そこと地下室にこの館から脱出する鍵が隠されているのだ。 地下室の方は恐らくフェリアが何とかしてくれる筈だ、 階段を転げ落ちて生きていれば、の話だが。 前方に細心の注意をはらいつつ、後方から音も無く忍び寄っているであろう屍の群れに追いつかれないように進むファナ。 分かれ道に差し掛かる度に壁にぴったりと背を付け、そっと顔を少し出し、通路の状況を確認してから進む。 ついさっきまではお気楽ムードで進んでいた通路がやけに長い。 心臓が破裂しそうにバクバクと音を立てているのが判る。 そして、強すぎる緊張は彼女にある感覚を呼び起こさせた。 (どうしよう…こんな時に……おしっこ……したいっ…) 思わず股間を押さえ、前屈みになるファナ。 しかしその場に留まる訳にもいかず、そのままよちよちとへっぴり腰で進む。 屍の存在の有無を確認するだけでなく、自分の欲求を開放してくれる場所を探さなくてはいけなくなったファナの歩みは、更に遅くなってしまった。 「う〜〜っ、この部屋も違うよぉ〜〜〜」 何度目かの扉を開け、何度目かの落胆をするファナ。 既にその目には涙が浮かんでいる。 もう彼女の内部の液体は、彼女自身の許容量を遥かに超えている。 小刻みに足踏みを繰り返して何とか耐えているファナだったが、それももうすぐ限界のようだ。 「あうっ…も、もう、だめ……」 意を決したファナは、通路の隅に寄ると、スパッツを引き降ろしながらしゃがみ込む。 ぷるん、と、まだ青いが弾力感溢れる小さなお尻が露わになる。 (非常時だもん…仕方、無いんだもん……) トイレ以外の所で用を足さねばならない羞恥にぽろぽろと涙をこぼすファナ。 それでも衣服を汚してしまうよりはずっとマシだ、そう思っての行動だった。 ゆっくりと息を吐き、下半身の力を抜く。 まだ誰にも触れられた事の無いピンク色の閉じられた縦スジから琥珀色の暖かい滴りが…… 流れなかった。 彼女の羞恥心が、無意識の内に尿道を閉めつけていた。 いくら力を込めても、下腹部に鈍痛が走るだけで尿は一滴たりともこぼれない。 「ううっ……」 ファナはしゃくりあげながらスパッツを履く。 もう少し、もう少しだけなら我慢できる… そう思い、痛む下腹を押さえながら、内股でよろよろと歩き出した。 見覚えのある場所へ差し掛かったファナ。 姉が「あの話」をした場所だ。 (姉様、あの話、本当に作り話なの…?) そう問いかけても答えは返ってこない。 こういった場面で以外にも頼りになる姉はもはや生死すら定かではない。 …その原因の一端は自分にあるのだが… ピカッ 突如、激しい雷光がきらめき、暗い通路を一瞬明るく照らす。 「ひっ……」 ゴロゴロゴロ… 息を呑むファナ。 雷如きで驚くような柔な精神のファナではない。 一瞬照らし出された通路内に、何か巨大なものが見えたのだ。 妙な光沢を放つ胴体、 そこから長く伸びた数本の長い足、 間違い無い、蟲だ。 それもかなり大きい…… 「う…ウデムシ?」 それは姉の描いた奇怪な虫に酷似していた。 恐る恐る目を凝らして通路を見るが、そこには何もいない。 「気のせいかしら……?」 ファナは耐え難い生理的欲求から太腿をもじもじさせながも足を進めようとする…… ピカッ 「ひゃぁっ!!」 ゴロゴロゴロ…… 間違い無い、何かいる! 「あ…ああ…あ………」 涙目になり、歯をカチカチと鳴らすファナ。 膝がカクカクと震えている、力が入らない…… 全長2mの巨大ウデムシ… 10本の足を持ち、普段は縁の下や墓石の裏に生息するが、 夜な夜な民家にも出没し、処女の生き血をすする。 特に気にいった少女には卵を産み付け、 やがてそれが数千数万のウデムシの幼虫となって腹を食い破る。 「嫌…そんなの嫌……」 勝手なウデムシのプロフィールを作って勝手に怯えるファナ。 ちなみにウデムシはそんな事しない。 がたがたと震えていたファナだったが、 目の前のウデムシに違和感を感じ、恐る恐る近づいていく。 そして… 「ねーえーぇーさーぁーまぁーー」 ファナは肩を震わせ、ここにはいない姉へ怒りを込める。 先程ここに着た時にフェリアが窓ガラスに描いたウデムシの絵、 それが雷の光を受けて反対側の壁に映し出されていただけだった。 いわゆる影絵の原理である。 そうと判ればこんな所は早く通過してしまうに限る。 ファナは窓ガラスのウデムシがやっぱり怖いのか、壁に背をつけてじりじりと移動する。 ピカッ 「ひゃううぅぅぅ〜〜〜」 3度目の雷光。 ファナの胴体にウデムシが投影される。 光の悪戯とは言え、やっぱり気色悪い。 ゴロゴロゴロ…… じょわり 「はうぅ〜〜」 雷の音と共に、妙な音が自分の体から聞こえた。 実際に音は出ていないのだが、あえて音にするならばこんな感じであろう。 体内の欲求がウデムシの恐怖によって自制心の一瞬の隙を突き、ほんの少し滲み出してしまった。 いわゆる「ちびった」という奴である。 パンツ越しに肌に密着したスパッツの黒が股間の部分だけ色の濃さを増していく。 「こんな年になって、おしっこ、ちびっちゃうなんて…」 |