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  ミズ・アメリカーナ:首輪                                          いぬかみ訳

ミズ・アメリカーナ:首輪
(原題:MS Americana:The Collar by Dark One)

第一章  潜入

巨大な黒のリムジンが縁石に添って停車した。制服を来たドアマンが、リムジンのドアを開ける為赤い絨毯を急いで駆け降りて来た。クラブ・ガーガに入場するのを待って長い列を作っていた若い男や女達が口を開け見惚れていた。
一体誰が来たのだろうか?リムジンのドアが開かれると長い脚が現われた。黒い尖ったヒールのサンダルを履いたその長い脚全体には、長い黒い紐が編み上げられて巻き付けられていた。
息を止めて見ていると、身体にピッタリした黒革の超ミニに銀の飾りの付いた黒革のホルターを纏った衝撃的な美女が現われた。黒髪の美女は180cm以上も有る威厳を感じさせる背の高さで、ギリシャ神話に出てくる女神の彫像の様だった。
「よ、ようこそお越し下さいました、ウ、ウェイド様」
ドアマンは、彼女の充分以上の“資産”に見惚れながら息を呑み賞賛する以上の態度で言った。
ブレンダ・ウェイドの赤い唇が僅かに歪み、話す事もままならないドアマンに頬笑みかけた。ドアマンは、デルタ・シティの上流社交界の最も美しい花形の一人の為にドアを開けた。
着飾った美しい女性の世話は彼の日課に成っている仕事で有ったが、ブレンダは、そんなドアマンに言葉を失わせるほどの衝撃を与えた。ブレンダは、腰まである光沢のある長い黒髪をなびかせ、集まっているパパラッチの為に悩ましいポーズを取って見せた。だが、彼女の姿態と眼には、情熱的なものは殆ど見られず、寧ろかなり悪戯の気が混ざっていた。

『嗚呼、自由の神よ』
ブレンダは思った。
『皆を見て、涎を垂らして見てる。でもまあ悪くないか、35に近いのに未だデルタ・シティで最も魅力的で、関心を引く女だってことですものね。』
彼女の唯一のライバルといえば、ミズ・アメリカーナをおいて他はないだろう。

「クラブ・ガーガに御出で下さり、光栄に存じます、ウェイド様」
背の高い細身のドアマンは、彼女の背中の腰の辺りに手を当て、扉の中へ入るよう薦めた。それは非常に強欲な仕草だった。その機会はあまり無いだろうが、明らかに彼女を所有したいという彼の欲望を現したものだった。
「最高のテーブルを用意してございます」
ブレンダは、扉に向かう際、繊細にマニキュアを施してある手でドアマンの顔を撫で、悩殺的な笑みを浮かべて謝意を示した。ドアマンは、彼女の胸の深い谷間に眼を落しながら、魅惑的な香水の匂いを嗅いだ。ブレンダが身体を摺り寄せると、ドアマンの硬くなった一物が腰に触れるのを感じ、微笑みをより明瞭にした。
『もう一つ、低俗な魂が女の為に破滅したわね』
ブレンダは思った。
『自分でも恥かしく成るわ』
リムジンが去ると、悪戯好きな、大富豪の相続人で慈善事業家は、デルタ・シティの若者や美女達が尊敬と淫らな気持ちを抱いて見詰めている中、一言も発せず悠然とデルタ・シティで最も活気のあるクラブに入って行った。
辺りには、カッカッという細いヒールの音だけがこだましていた。

「ようこそお越し下さいました、ウェイド様!」
クラブ・マネージャーのジェイソン・ビッグスが、丁寧過ぎるほどの態度で言うと、混み合うクラブの中を通って、ブレンダを用意してあるテーブルへ案内した。マネージャーは、射精しちゃうんじゃないかと思われるほど幸せそうだった。

クラブ・ガーガは、三ヶ月前に開店して以来、ずっとブレンダやデルタ・シティの有力者を、少なくとも週に一度は招待してきた。招待を受けた晩はミズ・アメリカーナとしてすべき事が有ったので、ブレンダはその招待を無視してきた。しかし、昨日届いた招待は受ける事にしたのだった。
『貴方のご協力に対する我々の感謝の印として、どうかこのシャンペンのボトルをお受け取りください。』

ブレンダが躊躇っていると、マネージャーが椅子を引いた。
ブレンダはジェイソンが知っているのかどうか訝った。彼は、ここで行われている陰湿な犯罪に係わっているのだろうか?このクラブ・ガーガの所有者、“邪悪なワンダ”と呼ばれる悪い魔女が白人奴隷女の密売人である事を知っているのだろうか?もしそうなら、彼は魔女の犯罪組織の一員と言う事だ。彼の背丈は平均的、小太りで可愛らしい顔をしている。この犯罪企業を壊滅させた後には、彼は刑務所内の人気者に成るだろう。

「有難う、ジェイソン、とても親切ね」
ブレンダは、椅子に腰を降ろし、テーブルに近付けてもらいながら言った。
「誰かご一緒の方はおられますか?ウェイド様」
マネージャーの眼が胸の谷間に落されているのを感じながら、ブレンダはゆっくりと脚を組むと、一瞬だが、彼の眼が魅力的な脚に移った。そして、ブレンダを驚かせたのは、彼がブレンダ顔を見た事だった。それが眼でないのなら、勿論、多くの男は彼女の赤い唇に魅了されるのだ。
「いいえ」
ブレンダは言うと、彼に向かってウィンクをした。マネージャーは喜んで笑い出しそうだった。
「今晩は単独で、羽目を外して楽しむつもりよ」
「嗚呼それなら、このクラブは最適ですよ、ウェイド様」
マネージャーは眼を輝かせて言った。マネージャーの欲深な眼が、ブレンダの衝撃的な肉体を一瞬の内に何度も舐め回した。
「もし、何かお望みの事が有りましたら御遠慮なくお申し付けください。」
「そうさせて頂くわ」
ブレンダは言うと、向き直りシャンペンのグラスを取り上げると、辺りを見回しながら口をつけた。
「私、自分のしたい事をするのに躊躇ったりはしませんわ、信じて頂いて結構よ」
「素晴らしい。ではどうぞ、お楽しみくださいませ」
マネージャーは、又も慇懃な態度で言いうと、たち去って行った。

クラブ・ガーガは、暗くそして活気が有った。リディアやその友人達が頻繁に訪れる様な場所だった。
ブレンダは眉をしかめた。邪悪なワンダを、楽しい事好きでセクシーな相棒と一緒に取り押さえる事は楽しい事だろう。しかし、嗚呼、リディアと友人達は、今メキシコに行っているのだ。結局のところ、今は春休みなのだ。ブレンダの“正義の味方“の相棒には休暇が相応しい。マスクを着けた”正義の味方”にとって、バストの平均サイズ4.0を維持する事に何の意味があるのだろうか。
『彼女なしで私がした事をリディアが知ったら、きっとがっかりするでしょうね』
ブレンダの呟きは、周囲の喧しい音楽によって掻き消されていた。

メイン・ダンスフロアは人で一杯だった。これ以上混雑している部屋は見た事が無かった。メイン・ダンスフロアは、ブレンダが座っているVIPテーブルから良く見えたが、人々は、他の人とぶつからずに回転も出来ない程だった。
VIPエリアの背後は個人的なメイン・ダンスフロアで、デルタ・シティのエリートの全てが踊っていると思われる程だった。しかし上の階は、非常に限られた人だけの為の秘密クラブに成っていた。そこに入るには、資産が有るとか有名であるという事だけでは充分でなかった。超魅力的な顔や肢体を持った者だけが、エレベーターの扉の前にいる番人に入る事を許されるのだ。

 ブレンダは、二人の女子学生がエレベーターの前で止められるのを見ていた。
番人は、二人に、セクシーな衣装を見せながら一回りさせた。二人とも美しかった。
実際、彼女達は社交界の若手の花形でリディアの友人でもあった。金髪碧眼で、体にピッタリ密着した赤革の衣装を纏ったキャンディ・キャストンは合格し、中に招き入れられた。一方、赤毛で大きな緑色の眼を持つ美女、リザ・ヒューストンは不合格だった。彼女の衣装もその下の肉体も充分にセクシーではなかった。
十段階評価で、キャンディは9点台を獲得し、リザは8点以下で7点に近かった。リザが肩を落し、拒絶された屈辱にうつむくと、ブレンダは顔をしかめた。キャンディが、番人の一人に付き添われエレベーターの中に消えて行く一方、リザは向きを変え、ゆっくりとクラブ・ガーガを後にして行った。
 ブレンダは鼻にしわを寄せてエレベーターを睨み付けた。リザの様な素晴らしい娘を侮辱するなんて、この禿の大男は何と無礼な輩なんだろう。それにキャンディはがっかりした最良の友を見捨てて、今後どうやって生きていくの?何て恐ろしい事でしょう!
『この事について、キャンディと話をしなきゃ成らないわね』
ブレンダは思った。

 30分程シャンペンを楽しんだ後、ブレンダは立ち上がり、メイン・ダンスフロアへ向かった。ブレンダは胸を張って歩いて行き、そのまま踊りに移った。ブレンダは、陶酔を誘う様なドンドンという音の音楽に合わせて身体をくねらせ、彼女の44DDsサイズの巨乳を魅惑的に揺すって踊った。
ブレンダは、どれほど友人達と踊りロマンスを楽しむ夜を逸して来たか。そうした事は、ブレンダが大学を卒業し、仕事に専念して以来終らせてきた。昼間は大企業の最高経営責任者として、夜はマスクを着けた“正義の味方”として、少女や若い女性としての役割には係わらなかった。
 予想してた通り、ブレンダはあらゆる方向から押された。動く度に誰かとぶつかった。踊り始めて10秒もしない内に、ブレンダは、他のグラマー美人と胸と胸を突き合わせて踊っていた。彼女達の巨乳が互いにぶつかり合い擦りあった瞬間、二人は動きを止めて唖然と見詰め合った。双方の青い瞳が互いの胸を見下ろすと、互いにクククと笑い合った。そしてウィンクしあうと、何事も無かった様に、互いに踊りながら遠ざかって行った。
 ダンスフロアの奥深く入って行くと、ブレンダは自分の豊満な臀部が、二人の若者の股間を交互に擦り上げている事に気付いた。慌てて向きを変えると、その若者の顔を彼女の巨乳で引っ叩く結果と成った。両男性とも気にしていない様子だったが、少なくとも彼らの一人は恨めしそうにブレンダを見ていた。
『これからは、もっとダンスをしに来たいわ』
ブレンダは思った。興奮し完全にノッていた。メイン・ダンスフロアで、美しい人々から、体中を擦り付けられ、周りにいる全て男性から、少しは女性からも、賞賛の眼で見られるのは心地良かった。
『リディアにねだられたら、多分今度は連れて来てあげよう』
 ブレンダは、身体を捻り腰を振りそして楽しそうに跳ね回り、四十五分ほどダンスを楽しんだ。いつの間にか、見張りがいるエレベータの前に来ていた。巨乳の間の谷間が汗で濡れ光っているブレンダは、やや情欲も感じていた。一瞬、ブレンダはダンスフロアの群衆の中に戻り、更に十五分か二十分ほど踊り続けようかと真剣に考えた。
『何を急いでるの?情欲が性的欲求不満に転じ、それが、ミズ・アメリカーナのパワーベルトにエネルギーを充電させるのだから』

 しかし、いかめしい顔つきの番人がいる光景がブレンダに決心させた。彼らは、白人奴隷売買の臭いがする。腹の中で怒りが頭をもたげ喉が引き締まる。若い女性達がこのクラブ、特にこの超個人的な秘密クラブの中で、消息を絶ったらしい事を突き止めるのに二ヶ月を要した。

「あら!その向こうは何なの?」
ブレンダは、番人達に近付きながら尋ねた。番人達は、冷徹に計算する様な眼でブレンダを見た。ブレンダは、ダンスで疲れた荒い息をしながら悩殺的な笑みを浮かべた。
「一寸中に入れてもらえない?」
「女主人の親しい友人だけだ。それに“聖域”に入れるのはほんの僅かな美しい若い女だけだ」
 番人の一人が言った。
ブレンダはこの男の事を思い出した。名前はランス・ラーセット。年齢28、元警備兵、前科者。邪悪なワンダの番人として雇われる前は、犯罪組織のボディ・ガードをやっていた。彼の相棒は単純に“サムソン”と呼ばれていた。彼には何の記録も無く、それで誰も彼の本当の名前を知らなかった。ランスと同様、彼も、クラブ・ガーガに雇われる前は犯罪組織のボディ・ガードをやっていた。
「お前、上に行きたいのか、それなら特別に何かを見せろ」
「えっ、ここで?」
ブレンダは番人達の近くへ寄って踊り始め、引き締まった臀部や巨大な胸を番人達に擦りつけ、考えられる最も悩殺的に彼女の“肉体的資産”を展示した。実際、キャンディはたった15秒ポーズを取っただけで中へ入る事が許されたのだ。
数秒間、疑いがブレンダの素晴らしい夜を曇らせた。
「年は幾つだ?」
サムソンは言った。この時、ブレンダは入れるかどうかの境界線上にいた。
「知るには充分な年で・・・」
ブレンダは言った。
「しかし、行動するには充分若いわ」
 この答えが彼女を後押しした。二人の番人は互いに顔を見合わせて頷いた。ブレンダは、番人が頷くのを見て悦びの叫び声を上げそうに成った。
 サムソンが赤いベルベットの綱を開け、ランスがブレンダに続いてエレベータに乗り込んだ。
「あら、同伴してくださるの。何て親切な方」
ブレンダが言った。
その建物には二つしか階がない。ブレンダは、何故同伴が必要なのか分からなかった。
ランスがボタンを押すと、扉が閉まりエレベータは上昇し始めた。
「これを着けてくれ」 
ランスは、エレベータ内にある引き出しから犬の首輪を取り出して言った。
「これ犬の首輪じゃない?」
ブレンダは、青い眼を輝かせて言った。
「何故、私が臭い犬の首輪を着けなきゃいけないの?私が犬に見えて?」
「クラブの規則なんだ」
ランスが言った。
「首輪をしてない者は、パーティ破壊者として、あらゆる手段を使ってたちどころに排除される。」
ランスは、偉そうな顔をして見せた。
「もしあんたが充分安全じゃないか、“聖域”に対して充分“女”じゃなければ、俺はあんたを連れて帰る」

 “聖域”に着くと、エレベータの扉が開いた。
そこは混雑はしていなかった。部屋は、露出過剰気味な服を着た美しい若い女で満ちていた。ブレンダは、皆22歳以下の者ばかりだと思った。大部分は18から19歳と言ったところだろう。

これが彼女にとって、この場所に来る唯一のチャンスだったかもしれない。
クラブ・ガーガ周辺の警備は厳重で、実際潜入する事は困難だった。それで、ミズ・アメリカーナとして攻撃を仕掛ける前の最終調査の為、ブレンダ・ウェイドのカバーで淫乱女の振りをして潜入せざるを得なかったのである。


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