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  「西へ」 −バーシア アナザーエンド−             場面21

■ フェルナンデス 4月25日 夜  安宿


バーシアが居なくなって三週間が過ぎようとしていた。
その後、連日のように屋敷には詰め寄ったが、初日同様門前払いをされ続けた。
バーシアは依然戻ってはこない。
しかし屋敷に出向いての唯一の収穫は、バーシアが屋敷に居ることだけはほぼつかむことができたということだけだった。

そしてあのVTRで受けていたような身の毛もよだつような責め苦を今も一身にかぶっているに違いない…
あのような無限の焦らし責めを、徒でさえ敏感な上に、悪魔のような薬を使って一層性感を数倍に高められた身体に受けつづけたら、いかに屈強なバーシアの精神であろうとも、いつまでもつかどうか…
それに、責め手には無限の時間があるのだ。
終わりがないという状況は、最も堪えるはずである。
タイムリミットが決まっている間は、人間まだ耐え切れるもの。
後1日、後1時間、後10分…それを励みにすることができるからだ。
バーシアも家に帰ってこれている間は、責めは継続しているにしても、そこで一旦流れを断ち切ることができたはずなのだ。
オレやミサキの顔を見ることによって…
しかし館に捕らえられて、際限のない色責めを受けているとすれば…バーシアは圧倒的に不利な状況に追い込まれていることが容易に想像がつく。
いくら耐え切ろうにも、肉体には限界があり、精神の崩壊も必至なのである。

いや、もしかするとあのVTRには無かった、想像もつかないような凄絶な責め苦を味合わされているのかもしれないのだ。

【[主人公]】「クソ! 早く助け出さねば…」

そんな焦りにも似た気持ちで居ながらも、打つ手なしの状況では空回りするだけだった。
オレ自身が逃亡中の身であるため、しかるべき捜査機関に依頼するわけにもいかない。
そんなことをすれば、変態野郎の代わりに軍が乗り込んできてバーシアを実験台にさらってゆくのは明白である。
かと言って、この身体で何度殴りこんでもうまくはいかないのである。
では絡め手では…と昔のコネを使い、屋敷の様子を探ってみたが、想像以上に警備が固く、一個軍隊でも突破は難しいということだけが分かっただけだった。
しかも、奴自身が、その財力を背景に政治家ともつるんで、この街ではやりたい放題ってわけなのである。
司法も警察もうかつには手が出せない、まさにこの街の”支配者”という存在なのだ。
それを知ってからは、昔の仲間も手を出すのはためらい、一人減り、二人減った。
金の切れ目が縁の切れ目というありがたい格言もある。
もはやオレをまともに相手にしてくれるような奴は地球上には残っていないってわけだ。
遂にはオレは孤独にうちひしがれながら、そのウサを晴らすために安酒を胃の中に流し込む毎日というわけである。
そりゃそうだろう! 他に何をしろというのだ!

【[主人公]】「バーシア……」

酒で濁ったオレの脳裏には、バーシアが濃艶な裸身をくねらせている姿がありありと映し出されている。
全身生汗を滴らせ、声にならない声をあげながら、押し寄せる官能に翻弄されている様子が。
しかし、幾ら耐え切ろうにも身体は既に言うことを聞かず、あまつさえ敵方に寝返り、バーシアの精神を淫獄の果てに堕とそうと蝕んでくるのだ。
バーシアの気高い意志は、もはやノーガードのまま延々と打たれつづけるサンドバック状態であった。
薬で昂ぶらされ、その上で卑劣な生殺し責めを受ける…いくらバーシアといえでも…

【[主人公]】「いや…まてよ…」

そのときだった。これまで考えもしなかった可能性が脳裏をよぎる。

【[主人公]】「まさか、な」

そんなことはないと信じたいが、万が一ということもある。
バーシアが、あの金持ちに屈伏して、その身をゆだねたとしたらどうだ?
泣いてアイツに許しを請い、軍門に下ったとしたら…もう二度とオレの元になど戻らないことを誓約させられたとしたら…
まさに餌に飢えた犬同然に舌を出し、あの野郎の股間のイチモツをうまそうにしゃぶっているとすれば…
疼き狂ったアソコに、思い切り剛直を突っ込まれ、ひぃひぃよがり泣いているとすればどうか?

【[主人公]】「そんなことは、ありえるわけがないだろう!!」

オレは手にしたグラスを壁に投げつけた。
そう、バーシアに限ってそんな…
しかし一方では暗い悪魔的な憶測が不吉な鎌首をもたげてくる。
所詮、バーシアも女だ。
それにそもそもオレに服従するようになったのも、捕獲後の尋問からではないか…
あの時北を裏切ったように、バーシアがオレを見限ったとすれば…
助けにも来ないオレを呪いながら、あの野郎に忠誠を誓ったとすれば…

【[主人公]】「そんなわけがない!! オレがバーシアを信じてやらなくてどうするんだ?」

しかし有効打が無いオレは、悶々としながらも、酒とドラッグにますます逃避していくしか道はなかった。


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