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  戦乙女ミーアリィ(4)                                     あーくん 著 


 あっという間だった。少年の心臓は魔族の女の手によって、引きちぎられた。
 口を開けたまま絶命するロッキ。
 そして取り出された心臓を握りつぶすレザイヤ!

「ごくろうさん」
 一言、その一言だけだ。それでロッキの人生は終わった。倒れこむロッキ。

 すべてレザイヤの計画通り。

「れ、レザイヤ……きさま……」
 精気を抜かれているミーアリィが言う。

「いいじゃないか、いい夢見れたんだしさ〜」
 心臓を潰した手をぺロリと舐めるレザイヤ。これがこの魔族女の本性だったのだ。
「人間ごときが本気で魔族の王にでもなれると思ったのかい?」
 絶命しているロッキの方を平気な顔して見るレザイヤ。

 哀れロッキ……すべてだまされていたのだ。魔族の女が、人間のモノに狂ったりはしないのだ。
「この世に王は二人はいらないんだよ」
 倒れているミーアリィたちを見ながら言うレザイヤ。
「さあ〜乙女たち、あんたたちのパワーで私が魔界の女王になるところ、ゆっくりと見物してもらうよ」
 さらに近づく結界。魔族の者たちがあらゆる攻撃をしているがびくともしない。
 仲間の消滅さえあざ笑うレザイヤ。なんという魔族の女。

 しかし……

 そのレザイヤに……

 異変が起こったのは……すぐであった。


 突然苦しみだすレザイヤ。原因は腹の中だ。
「な……」
 信じられない行為が起きた。自分のおなかが大きくなっていく!

 ――これは!

 なぜこんなことにと思う。これは想定外だ。考えられない事が起こりつつある!
「うっ……うわあああああああああっ!」
 悲鳴をあげるレザイヤ。風船のように膨らむおなか!

 いったい……なにが?

「うおおおおおおおおっ!――」
 隠れていた牙をむき出しにするレザイヤ。魔族の女がうめいている!

 ついに爆発した!

 破裂したおなか……そこから出てきたものがある。
 それは……

 死神だったのだ!

 死神が……死神ルーレが……

「ひいいいいいいいいい〜」
 やっと出れたという表情の骸骨さん。プルプルと身体を震わす。

「し、死神?」
 ミーアリィが叫ぶ!

 ゆっくりと死神は周りを見る。乙女たちの裸が四人。だが、死神には色欲はない。
 状況を見ているようだ。向こうにはおなかが破裂して止まっているレザイヤがいる。
 ふわふわと浮いている死神がゆっくりと結界の外へ出る。

 自分だけ出て行く死神。あくまで事の起こりには感知しない。それが死神の作法。

 結界の外に出て、事態の推移を見守ることにしたようだ。そうこうしているうちに、レザイヤが息を吹き返す。

「う、ううっ……」
 見る見るうちにおなかが元に戻る。恐るべき修復能力。ミーアリィたちも、それを見ている。

 そして……

 とうとう反撃の時はきたのだ!

「こ、これは……」
 封じ込めていた死神が……

 いない!

 その事実に、驚くレザイヤ!
 そしてミーアリィたちを見る。気を失っている間に、身体に吸い付いていた触手を外していた!
「お、おのれ……なぜ?」
 未だにわからないレザイヤ。

 チラッとロッキを見る。心臓を繰り抜かれた少年を……
 その顔は笑みを浮かべていた。

 笑みを……


 そう、ロッキは、ある策を仕掛けていたのだ。



 微笑んで死んでいる少年……
 その死体となった少年を見るミーアリィたち。少年が仕掛けた罠にレザイヤは嵌った!
 パワーを吸われ続けていた触手を跳ね除ける乙女たち。レザイヤは未だにこの状況が理解できない。

 ――な、なぜだ……なぜ?
 どうして死神が自分の胎内から出て行ったのが信じられないレザイヤ。そして死体となったロッキの笑み。

「レザイヤ……あんたは信用されていなかったってことさ」
 よろけながらミーアリィがつぶやく。
「なに?」
「自分が殺されたら、死神をお前から解放するように仕掛けをしていたと思うけど」
 ちょっとだけミーアリィが笑う。ブルブルと震える女魔族。意味がわかったのだ。

 ――こ、この……私が……
 魔界の女王になる予定のレザイヤが、震えている。怖いのではないこれは怒りだ。
 そして、死体を睨みつけた!

「おのれ!」
 片足を上げて、勢いに任せて……

 ロッキの笑みを踏み潰した!
 砕け散るロッキの顔!
「おおおおおおおおおっ!――」
 怒り狂うレザイヤ! 踏み潰した後、グリグリと足を地面にこすりつける。こんな馬鹿なことがあってたまるかという表情だ。口の周りにシワが寄り、口の中の牙がむき出しになる。これが本来の魔族の顔だ。ロッキに怒りをぶつけているのだ。

「この人間の分際でええええええええええええっ!」
 よくも仕掛けてくれたと言いたいのだろう。だが、その原因を作ったのは誰か?

 そんなことは棚に上げて、ロッキに怒りをぶつけるレザイヤ。
 それだけでは飽き足らず、牙をむいたグロテスクな手で、ロッキの身体を掴んで、投げつけた!

 洞窟の端にぶつけられ、ボロボロになるロッキの身体。それでもまだ睨みつけている。
 怒りはすさまじい。だが、やっと我に返ったようだ。
 
 ――くっ!
 怒っている間に、乙女たちはパワーの回復をはかっていた。ボロボロにされた鎧がよみがえりつつある。ミリアンも我に返っている、快楽地獄から脱出している。

「しゃああああああああああっ!」
 口の牙を乙女たちに向けて威嚇する! まだまだパワーは十分のレザイヤ。攻撃が始まる。洞窟内から次々と触手で攻撃!

 あっという間に捕まったのは三人。だが、リアナだけはカプセルで耐える!
 レザイヤが怒りで狂っている間に、リアナにすべてパワーを与えたのだ。なんとかカプセル状態にまで回復したリアナ。他の乙女は早速膣に触手が挿入されてしまった。

「あはあああっ!――」
 快楽がよみがえってしまう。悶える三人。淫液が飛び散った!
「馬鹿だね! 無駄だよ!」
 どす黒い声で言うレザイヤ。まだ圧倒的に有利なのは魔族の方だ。有り余るパワーは持っている。自らも触手を出して、戦乙女に襲い掛かった。ぐるぐる巻きにされた乙女たち。リアナだけはカプセルで耐えている。

「あはははああああああっ!――」
 ボロボロのお前たちに負けるはずがないと、吼えまくるレザイヤ。再び結界洞窟を動かそうとする。

 が……

 動かない。それもそのはず。結界の意思は、もはや死神ルーレのものだ。
 どうやら気づいたレザイヤ。

「…………」
 そして考える。

「あっ……あああっ……」
 自分のおかれている状況がわかってきたようだ。おかれている状況が。牙を剥いた口が震えている。やっとすべてを悟った女魔族。死神を解放してしまった以上、結界のコントロールは不可能である。そしてそれは……

 自分も閉じ込められたことを意味するのだ。

 ――ば、馬鹿な……
 未だにこの状況を信じられないレザイヤ。ここから出られなければ、箱庭の女王で終わりだ。同じ魔族の仲間さえ裏切って、力で女王になろうとした浅ましき女魔族。逆にそのツケが自らに回ってきた。
「ぬおおおおおおおおおおっ!――」
 どす黒い声で、壁に激突する!
 なんとかここから出ようとしているのだ。ありったけの力で壁をぶち破ろうとしている。

 だが、結界はびくともしない。そうするうちに黒い壁の色が変わってきた。負のパワーで結界内部に作っていた壁が、レザイヤ自らの行為で崩れていく。

「あっ!」
 ビクッとするレザイヤ。剥がれた壁から外界が見える。しかし、その前に結界が立ちふさがるのだ。見えない透明な力が、ここからは出さないと言っている。

 そしてその向こうに……

 魔族がいる。同じ仲間の魔族たちが……
 この異変で何千という魔族の群れが集まっているのだ。その数に驚くレザイヤ。
 いや、さっきまでならなんとも思わなかったはずだ。この魔族たちの頂点に君臨するのは確実だったから。しかし、今は状況が違う。

 こちらを睨んでいる。裏切り者を見つめている。一瞬、寒気が襲うレザイヤ。
 裏切り者は、魔界の審判を受けて消滅だ。
 振り返るレザイヤ。計画が崩れていく。
 だが、乙女のパワーさえ吸い続ければ、魔界の王にも勝てる。
 
 まだ勝機はある。

「きええええええええええええっ!――」
 しゃがれた声で、パワーを吸いながら吼える!

「あぐはあっ!――」
 股間への圧力が高まるミーアリィ。しっかりと食いついた触手に勝てない。中で暴れる生き物に翻弄される。熱くなる股間の高まりに悶える。吸い続けられるパワー。
 その力でリアナのカプセル壊しにかかるレザイヤ!
 ありったけの力でカプセルに向けて黒い腕をぶつけていく!

「うわあああああああっ!――」
 壊れる衝動に、リアナが叫ぶ!
 カプセルが壊された。なんという腕力!
 またもやリアナは丸裸同然。
 いや、しっかりと戦乙女の鎧には包まれている。が、すぐさまレザイヤは大量の触手群を三十路の乙女に向ける!

「ぐはっ!――」
 鎧を着たままがんじがらめにされるリアナ。まだあそこは乾いていない。その部分にすぐさま食らいつく!
 淫らな太ももからその奥へ強引に入り込む!

「あはっ!――」
 快感が募る!
 乙女たちはまた触手に翻弄されていく。


 笑うレザイヤ。焦っていた魔族の女だが、ここで余裕がでた。確かに結界は、自分でコントロールできない。しかし、結界内なら仲間は攻めてこない。股間の異物に悶え狂う乙女たちを見る。

 ――私にはこいつらがいる限り……

「そりゃ!」
 さらに他の穴に攻めかかる触手群!
 他の穴にも容赦なく潜り込ませる! 

 リアナ以外はボロボロの鎧だ。ぐるぐる巻きにされながら、美乳やアナルも犯されている。表情がどんどんエロくなる乙女たち。
「ほらほら、どんどん悶えな。お前たちには快楽を与えてやるからね。変わりにパワーを永遠にもらってあげるよ」
 せせら笑うレザイヤ。いずれ結界を脱出できるチャンスはあると見ている。それまでひたすらこの状況で耐えればよいのだ。脂汗をしたたり落とす乙女たち。胎内で暴れる攻撃触手に。蜜液がほとばしる!

「ひいいいいいいいいいいいっ!――」
 必死に股間を押さえつけるミーアリィ。乳首もしっかりと吸われ続けている。尿道にも肛門にも入り込まれた。他の乙女も同じ状態。

「あはははっ! お前たちがいる限り! この私は不滅なんだよおおおおおっ!」
 チラッとロッキを見るレザイヤ。ロッキの罠の仕掛けには正直、怒りを覚えたが、所詮は人間。その程度だと思った。
 そして、もう一度クルリと振り向いた。

 今度は結界外にいる魔族の連中に睨み返す!
 その堂々としたレザイヤに畏怖を覚えた魔族たち!
 低級の一魔族の女が、魔界の世界に反乱を起こそうとしているのだ。

「お前たち! 我に従え!」
 自分よりも地位が高い魔族に見せつける!
「戦乙女の最高神さえこの私にかかればこのざまだああああああああっ!」
 リアナを引きずりだしてきた。がんじがらめにリアナが生贄のように魔族の目の前に出される。穴という穴を犯されているリアナの淫らな裸体を、魔族の連中に見せつける!

「お前たち! お前たちも興味あるだろう? この乙女とやってみたいだろう?」
 オスの魔族の者に言うレザイヤ。よだれを垂らしている魔族もいる。戦乙女は欲望の対象だ。それの最高神の裸体が目の前にいるのだ。

「くはああああああああっ!――」
 淫欲に勝てず、ひたすら悶えるリアナの表情を見て、欲情する魔族のオス。
「どうだい? ほしくないかい?」
 相手に声は聞こえない。しかし、意味は伝わっているのだろう。へへへと笑う者もいる。 魔族も単純だ。
「なら、我に従え!」
 笑うレザイヤ。オスの欲望をたくみに使う。ざわざわと騒ぎ出した魔族たち。それを見て笑うレザイヤ。

「おら! もっといい見世物をあげるよ!」
 今度はミーアリィをさらし者にする!

「ぐはあああっ!――」
 透明になった結界部分から、淫らに汗のようなものをかく、戦乙女みせつける。
 そして、上下に揺らして乳揺れをさせる。それを見てまた欲情する魔族のオス。
 すると尿道とアナルに入っていた触手から、液体が注入。

 ――あぐっ!
 ま、まさかと思うミーアリィ。
「さあ〜放出ショーだ!」
 ガバッと脚を広げられ、結界の外にいる魔族に股間をみせつける。

「いや……いやああああああっ!――」
「ははははっ! こういうことも出来るんだよ〜」
 ほら、こんな楽しいことも出来ると言っているレザイヤ。一気に便意と尿意に苦しむミーアリィ。

「ひゃあああああっ!――――」
 目をつぶって悶える。こんな羞恥プレイをさせられるとは……

「あはははっ! 我に従ええええええっ!」
 何回も言うレザイヤ。魔族を誘導する。放尿を始めたミーアリィ。その様子を魔族に見られている。食い入るように見るオス魔族。これはなかなか見られない見世物だ。
「うほっ! うほっ!」
 喜ぶ魔族の者たち。面白いと思っている。
「お次はもっと大きいほうだあああああああっ!」
 今度はお尻の穴を丸見え状態にするレザイヤ。それだけはと思うミーアリィ!

 ――だめ! でちゃううううううっ!

 ぷしゃっ! 
 と勢いよく出る液体。さらに興奮するオスたち!
 ブルブルと震える乙女。恥辱とプライドが壊されていく……

 プライドの崩壊と同時に出て行く敗北の液!

「こういうことがいつでも出来るんだよ! この私は! 我に従えええっ!」
 演説をするように言うレザイヤ。懐柔策だ。他の乙女たちは目をつぶっている。この恥辱には耐え難いものがある。まさか、魔族のオスに見られるとは……

「お次はこいつだ!」
 今度はゼラとミリアンだ。今度はダブルというわけだ。
 高々と二人の身体をあげて見せつける。またもや食いいるように見つめるオスたち。
 排泄する両穴にどんどん入れていく。そして、次の瞬間!

「いやあああああああっ!――」
「ひゃああああああああっ!――」
 両者の悲鳴があがる。興奮するオスたち。その様子を見て笑うレザイヤ。
 レザイヤが乙女たちを餌に、仲間を増やそうとしている。

 その時だった!

「リアナさま!」
 乙女だ。無数の戦乙女たちが群がっている。

 死神ルーレに異変が起きたことを知らされた乙女たちが、一斉にここに集まり始めたのだ。だが、乙女たちが来た方角では、黒い物体にしか見えない。一部だけが、透明の結界状態になっているのだ。レザイヤが気づく。

 ――ほう〜救助にきたってわけね……
 不適に笑うレザイヤ。にた〜っという笑い。
「だったらさあ〜」

 何を思ったのか、念を送って黒い壁を溶かしにかかったレザイヤ。自分から出ている触手を伝わって、結界の内側についている黒い壁をみるみる溶かしていく。すると、透明になっていく結界……

 すべての黒い壁が取り払われたのだ。

「はははっ! 乙女たちよ、いいものを見せてあげるよ!」
 笑うレザイヤ。この行為は、オスの魔族だけにではなく……

 ミーアリィたちを、恥辱のさらし者にする気だ!

 何千という結界の外の乙女たち。魔族と対峙している。
 そこに……

 自分たちのリーダーの痴態があらわれたのだ!
「リアナさま! ミーアリィ!」
 悲鳴をあげる戦乙女!
「わはははああああっ! これがあんたたたちのリーダーの無様な排泄姿だよ!」
 みせつける、みせつけるレザイヤ!

「さあ〜排泄ショーの始まりだ!」
 リアナを前面にだす。そして再び注入して攻め立てる!

「リアナさま!」
「ぐはっ!――」
 身悶えるリアナ!
「さあ〜さあ〜みてらっしゃい、よってらっしゃい!」
 どっかの客寄せの掛け声だ。
「やめろ!」
 結界外の乙女の一人が叫んだ!
「そりゃあああああっ!」
 我慢の限界を迎えたリアナ。尿と肛門からの液体を出し始める!
 それを乙女たちに見せつけるのだ!

 なんという屈辱……
 なんという恥辱!
 目を細め、この恥辱に耐えているリアナ!

「ははははっ! お前たちのリーダーなどこんなものよ!」
 恥辱に震えるリアナの肉体。何千といる戦乙女たちによく見えるように……

 とうとう我慢の限界を超えた一人が、暴走する!
「うりゃああああああああっ!」
 光の球を投げ込んだのだ! が、無情にも結界ではじかれる!
「死神!」
 ルーレに文句を言う乙女!

「結界を解け!」
 すると死神ルーレが鎌を真ん中に持ちそれを掲げる。

 中立……という合図だ。
 どちらの味方でもない。結界内で決着をつけよという意思表示。しかし、このままでは、レザイヤの勝ちだ。
 憤る乙女たち。魔族の連中はせせら笑っている。これほど面白い見世物はないからだ。
 自分たちと敵対している戦乙女のリーダーの恥辱の排泄放出ショーなんてめったに見られるものではない。

「ルーレ!」
 叫ぶ乙女たち。しかし、ルーレは微動さえしない。それを確認するレザイヤ。ならば、逆に都合もいいのだ。このまま徹底的に嬲りつくすのだ。そして、永遠にパワーを吸い続ける。そうすればいつかチャンスは来るはず。そう考えるレザイヤ。

「ほ〜ら、今度は四人いっぺんだよ〜」
 ミリアン、ミーアリィ、ゼラも一緒に担ぎ出される!

「ははははあああああああああああっ!――」
 笑う、笑うレザイヤ。面白くてたまらない!
 肛門に浣腸して、尿道に入れ込む!

 そして撒き散らせるのだ!

「やめろおおおおおおおおおっ!――」
 外部にいる乙女の一人が叫んだ。逆に魔族たちは観戦中。
「くわあああああああっ!――」 
 生贄にされた乙女たちが叫ぶ!

「そりゃ!」
 排泄しながら宙に浮かせ、あられもない姿を無理やりみせつける!
 触手で左右上下に降り始めた。お漏らしをしながらそれを撒くように……

 なんという恥辱の排泄ショー!

 まさに排泄地獄だった。
 プライドをこれでもかと壊されていく四人の乙女。目を背ける外部の戦乙女もいる。
 液体を撒き散らすその奥にいる笑う魔族の女が憎くて仕方ない!
 それでもルーレは結界を解こうとはしない。
 笑い転げる魔族たち。これほど面白く、滑稽で、恥ずかしいショーはない。

 屈辱に満ちた結界内と結界の外。
 魔族と戦乙女は、まさに対照的であった。


 しかし、レザイヤも飽きてきた。放尿、排泄ショーばかり見せても面白くない。
 ここで畏怖の念を与えておかなければならないと判断。そのありあまるパワーの見せつけに走るのだ!
 四人を地面に叩きつけ、自らの片手をあげた。
 その指先に黒い物体が大きくなっていく。

 この強大すぎるパワーを結界の中で見せつけるつもりだ。みるみるうちに大きくなるパワーの固まり。笑うレザイヤ。

 次の瞬間!

 それを解放した!
 外部の戦乙女のいる方向に!
 同時に、結界の内部が膨れ上がったのだ。黒いパワーが、結界を歪ませているのだ!
 さすがのルーレも驚く。戦乙女の方に引き伸ばされる結界。
 一気に何千の乙女の元へパワーが突っ込んでいく!

 だが、結界に守られているパワーは、相手にダメージはいかない。
 しかし、その強大な力に、恐れおののく戦乙女たち。さらに、魔族の者たちも畏怖を覚えた。表情が変わる。

「どうだい? これが私さ! これが女王になる力さ!」
 乙女を見て魔族を見る。そして死神を見る!
 さすがの死神もちょっとびっくりのようだ。結界があまりのパワーで歪むとは……

 ミーアリィたちもただただ呆然とみるだけ。

 これほど強力とは……
 これは魔族の魔王も……超えるのでは?

 疑心暗鬼が広がる外の住人たち。

 ――なんて……なんて力だ!
 畏怖を覚えたミーアリィ。レザイヤが今、解放されたらますます大変なことになる。
 あざ笑う魔族の女。もはや無敵に近い。
「お前たち! 我に従ええええっ!」
 もう一度、魔の者に呼びかける。声は聞こえないが、意味はわかっている魔族。
 魔族たちが騒いでいる。このパワーは本物だ。これなら……

 魔王さえ超えるかもしれない……と。
「我に従え! そうすれば、この乙女たちも思いのままだよ!」
 戦乙女を餌にするレザイヤ!
 この言葉に憤るミーアリィ!

「おのれ!」
 文句を言うだけ。それしか出来ない。不甲斐ない!

 クルリとその言葉に反応するレザイヤ。
「我に従え! ミーアリィ! はっ……はははははっ!」
 笑う、高笑いのレザイヤ。

 その時……

 レザイヤの……身体に……
 異変が起こった。


 突然、黒い力が放出されていくのだ。爆音のようにどんどん放出されていく!
 何が起こったのかと思う乙女。
「あっ……うっ……ああああっ」
 当のレザイヤさえ何が起こったのかわからない、ものすごい勢いでパワーが放出されていく! そしてそのパワーが三百六十度すべてに広がるのだ。結界がまた膨張する!
 あまりの力に、押されている結界!

 どんどん膨らむ結界!

 ――こ、これは……?
 リアナたちは、その場で伏せた!

 するとだ、放出した中央に魔族がいる。
 もちろん、レザイヤ。

 だが、そのレザイヤは……
 空っぽになっていた……



 抜け殻のようになっているレザイヤ。何が起こったのか、自分でもわからない。
 手を見る、自分の腕を見る。あっという間にいつもの一魔族の腕になってしまった。
 身体も力がみなぎらない!
 よろける未来の女王!

「お、おお……」
 驚愕するレザイヤ。

 これはいったい……

 ハッと気づく。
 ミーアリィたちもわかったようだ。

 そしてみなが……
 人間の死体を見た。

 レザイヤにボロボロにされた死体を。
 頭部がない死体を……

「ロ……ロッキ……」
 ゆっくりとロッキの死体に向かうレザイヤ。

「き……きさま……」
 怒る! 怒るレザイヤ!
 ミーアリィたちもロッキの死体を見つめる。

 ロッキは、二段階に仕掛けていたのだ。
 自分が裏切られた時のことを考えて……
 一度、黒い波動パワーを放出すれば、
 体内に溜め込んだ力を、全部吐き出してしまうように……

 こうなると、コントロールが出来ない!
 これでは魔王や他の神々とうまく戦えない!

「こ、この……」
 口裂け女のように口が裂け、最大限の怒りを表現するレザイヤ!
 そして、頭部のないボロボロの死体に対して……

「このガキャああああああああああああああああああああああっ!――――」
 腹の部分に足をぶつけた!
 真っ二つに割れる肉体!
 死後硬直した肉体が分断される!

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!――――」
 怒り狂うレザイヤ。逆切れ状態だ!
 一度ならず、二度までも……

「きさまああああああああああああああっ!――――」
 まんまと一杯……いや二杯食わされたレザイヤ!
 バラバラになった肉体をさらに砕く!
 もはやどこもみていない!
 ただただ、怒りに任せてロッキの死体を壊していく!
 戦乙女のことなどまったく気にしていない。もはやそういう状況じゃない!

 元はといえば、自分が悪いのだが、そんなことお構いなし。
 自己中心主義の典型的なタイプだ。
 無我夢中で暴れまくる!

 怒りのすべてをボロボロになった少年の死体にぶちまける!
「きしゃあああああああああああああっ!――」
 怒りは終わらない!
 暴れまくるレザイヤ!

「ぬおおおおおおおおおおおおおおっ!――――」
 さらに暴れる!
 自らのまねいた種を認めず、他人に押し付ける!
 死んだ少年の肉に……

 少しスッとしたのだろう。ちょっと怒りが収まってきた。
 
 しかし、それは彼女の堕ちていく事始めだった……


 腕を掴まれたレザイヤ。

 戦乙女たちに……
 以前のパワーならあっという間に吹っ飛ばしていただろう。しかし、今のレザイヤにはそれさえ厳しい。
「うおおおおっ! 離せ!」
 暴れる! 暴れるレザイヤ! それを押さえつける三人。

 向こうでは再びリアナが、回復作業を始めていたのだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。
 それに気づいたレザイヤ。だが、この状況では、リアナの邪魔ができない!
 しかし、触手は出せる。
 そこで……まず、三人の乙女に再び触手攻撃でパワー吸い取り。
 抵抗するミーアリィたちだが、最後には、穴に食いつかれた!

「うああああっ!――」
 あらゆる穴に食い込ませ、レザイヤを囲んでいる肉体を引き離しにかかる。さらに、快楽を与えて狂わせる作業を始める。しかし、前とは違い、パワーで吹っ飛ばすというわけにはいかない。
「このおおおっ! しつこいやつらめ!」
 牙をミリアンの肩に食い込ませた!
「ぐああああっ!――」
 肩から吹き出る液体! 飛び散る液体!
 掴まれていた腕を暴れさせ、ミリアンを突き出した!
 残り二人だ。必死に食いつくミーアリィとゼラ。リアナがカプセルを再び出す。
 それを見て焦るレザイヤ。
「ぬがあああああっ!」
 とても女魔族とは思えない声で、リアナに向かって叫ぶ。だが、二人の乙女は、必死にレザイヤを掴んだまま、離さない!
 暴れる、暴れるレザイヤ!
 しかし、戦乙女も命がけだ。ここでレザイヤをなんとしてでも仕留めないと、神々の世界は崩壊するかもしれないのだ。皮肉にも、ロッキの仕掛けた罠がチャンスになっている。

「離せ! はなせえええええええええええっ!――――」
 もはや女の匂いをみじんも感じさせないレザイヤ。リアナだけを見ている女魔族。
 リアナが復活すれば、消滅の危機になるのはレザイヤの方だ。触手でパワーは吸い取ってはいるが、時間はかかる。
「あぐっ!――」
 胎内で暴れる触手に、ミーアリィがうめいた!
 ついに、ミーアリィを突き放した!
 ゼラだけになった食いつく乙女。そのゼラをするどい爪で……

 背中を引き裂く!

「ぐあああああああっ!――」
 突き飛ばすレザイヤ!
 普段なら両者ともこんな戦いはしない。お互いパワーが使えないので肉弾戦である。
 自由になったレザイヤ。一目散にリアナに向かう!

「くらあああああああああっ!――」
 カプセルに飛びついた!
 そして爪を突き刺そうとする!

 しかし、カプセル状態ならそれは無意味だ。爪ははじかれてしまう。無駄だというのに必死に爪を立て、暴れるレザイヤ。この先のことをわかっているからだ。

 本当なら黒いパワーを使いたい!
 しかし、それでは自らのパワーをすべて解き放ってしまう!
 すると、もう一度ミーアリィとゼラがレザイヤに飛び掛る!

「おおおおおおおおおっ!――――」
 引き離す!
 レザイヤを引き離す二人!
 触手に股間を与えたまま……

「うぜええええええええええええええっ!」
 腕をぶんぶんと振り回しボロボロの乙女を振りほどこうとする。そこへミリアンさえやってきた!

「くっ……」
 首根っこを掴むレザイヤ。

 ――こうなれば……
 レザイヤが方針転換。

 ミリアンを……

 消滅させる気だ。
 今までパワーを吸い取るために必要だった戦乙女たち。しかし、この状況は厳しい。
 なら、一番地位が低いミリアンを消滅させてもよいと判断。残りの三人で吸い続ければよいのだ。
「ぐわっ!」
 首を潰そうとする。それに耐えるミリアン。その腕をミーアリィが掴む。
 首が引きちぎられても、それだけでは消滅しない。身体をバラバラにして、再生不能まで追い込めば別だ。本来なら、黒いパワーさえ使えば、簡単なのだが。

 それは逆に言えば、戦乙女たちにも言えることだった。

「消えろ! きえろおおおおおおおおおおおおっ!――――」
 ミリアンを消しにかかったレザイヤ!
 さらに力を込めて首を潰す!

「ぎゃああああああああっ!――」
 首が飛んだ!
 ミリアンの動きが止まった。だが、人間と違ってこれで死ぬわけではない!
 倒れこむミリアンの身体。
 そこへ今度は心臓を抜き出そうとする!

 その時!

 光の砲弾が……
 
 レザイヤを襲った!

「ぐはあああああああっ!――」
 飛ばされるレザイヤ!
 目の前を見るレザイヤ!

 ――リ……リアナ……
 ゆっくりと光を帯びた戦乙女の最高神がそこにはいた。
 レザイヤは、それに畏怖を覚える。リアナの放つ光がミリアンを包み込む……

 美しき最高神にふさわしい鎧を身にまといながら……

 それは……レザイヤの消滅を意味することになるのだった。


 焦る! 焦るレザイヤ!
 身体が震えている。魔族の本能が逃げろと言っている。口裂け女が震えている。
 ミーアリィやゼラにも光が帯びていく。

 レザイヤは悟った。
 これでもう……

 逃げる! 
 逃げるレザイヤ。一目散に逆方向に走った。透明の結界の中を逆方向に走り始めた!

「おおおおおおおおっ!――」
 目の前さえよく見えていないかもしれない。もはやそんな状況だ。すると、見えない壁にぶつかる。ハッと我に返った。女魔族。
 そして、目の前には同じ魔族たちが目の前にいる。

「あっ……ああっ……」
 雄たけびをあげるレザイヤ。さっきまで戦乙女の排泄シーンを見て喜んでいた者達が、こちらを見ている。軽蔑の目で見ている。
 もはや、裏切り者としか見ていない。畏怖はもうない。

 もうないのだ!
 逆に畏怖を覚えたのはレザイヤだった!

「ぎゃああああああああっ!――」 
 恐怖で暴れるレザイヤ!
 わめき散らす!
 自らがまねいた種なのに……
 そんなことさえ忘れている!

 その暴れているレザイヤに……

 さらなる光の砲弾が放たれた!

 背中が吹っ飛ばされた!
 おなかが消えた。上半身と下半身が分かれてしまった。その場で倒れこむレザイヤ。
 下半身がさらに光の砲弾で消滅する!
 クルリと首だけ動かし、光の方向を見る。
 戦乙女たちは、完全に元に戻っていたのだ。

 ギョッとする裏切り魔族。
 しかし、後ろも地獄、前も地獄だ。
「おっ……おっ……」
 裂けた口をだらしなく開ける。弱弱しくなった魔族。もう、風前のともし火だった。

「ミーアリィ、とどめを」
「はい」
 リアナに促されて、上級紳の一人がレザイヤに近づいていく。

 険しい声で鳴く!
 どす黒い声で鳴く!

 最後の瞬間を迎える前の抵抗だ。剣を抜くミーアリィ。光に包まれた剣を掲げた。
「ぎゃああああああああああっ!――」
 上半身だけの腕を構える!
 そして、液体を拭きかけた!

 緑色の液体だ。それが生き物に変わる。グルグルと巻きついて犯そうとするが……

 光に溶け込むように……それらは消えていく……

「しゃあああああああああっ!――」
 さらに、蛇のコブラが毒液を吐きかけるように液を出すレザイヤ。身体にまとわりつく液体。しかし、無情にもそれは消えていく。美しき鎧を避けて、エロチックな太ももの辺りまでなんとか必死に入り込もうとするのもあるが、消えていくだけだった。
 目の前まできたミーアリィ。
 ついに、顔めがけて汚い液を吐く!
 顔が腐臭と汚れる液で満たされる。

 しかし、その液は……光で消えていった……
 涙目になるレザイヤ。

 思えば、なぜロッキを殺したのかと今頃になって思う。それは、ひとりじめをしようとした報いでもあった。なぜ、もう少し事が運んでからやらなかったのかと思うレザイヤ。
 それは、プライドが邪魔していた。

 人間のモノに、虜になっているという芝居を続けることの苦痛。
 それが邪魔をしていたのだ。

 哀れ……哀れである。後ろにいる魔族たちには、裏切り者の目で見つめられ、目の前にいる戦乙女には……

「魔族レザイヤ、あらゆる魔を滅する戦乙女の名において……」
 剣を突き上げたミーアリィ!

 もはや逃げ場はないと悟ったレザイヤ。
 なんと最後に……

「たすけてええええええええええええええっ!――」
 魔族の方に向かって叫んだのだ!
 裏切り者の目で見ている魔族たちの方に向かって……

 もはや絶望しか残されていない最後の断末魔であった。
 プライドも何もない。自分が裏切り、支配しようとした者に泣きつく1

 その瞬間、光の剣が頭部に突き刺さった!

「あぐぎゃああああああああああああああっ!――――」
 最後の威嚇のように口を開けるレザイヤ!

 口の動きが止まった。
 不気味な液体が、剣の周りから飛び散る!
 ミーアリィの手に力こもる。
 今までされたことをちょっと思い出しているようだ。
 口元が力強くなる。

「はあああああああああああああああっ!――――」
 ミーアリィが気を放った!

 光と共に……
 レザイヤは……

 消滅した。

 最後の表情を……
 魔族に向けながら……

 それも戦乙女の手によって……だ。

 レザイヤは……
 
 消えた……
 その瞬間、悪夢も終わったのだった。



「決着したようじゃな」
 結界を解く死神。魔族たちが、戦乙女と対峙する。
 両者とも数千はいる。しかし、動こうとはしない。すると、魔界の入り口から、一クラス上の階級の魔族の者があらわれた。
 魔王の使いのようだ。魔族たちに何か言っている。魔族たちは引き返していく。
 裏切り者が消えたことで今回は終わりにしたいようだ。ここで、戦乙女と泥沼の戦いは避けたのだ。

 魔の者たちは去っていった。

「終わった……」
 ほっとするミーアリィ。とんでもない目にあった。
 陵辱され、排泄ショーまでやってしまったのだから。
 死神がボロボロの少年の死体に近づいていく。骸骨が、ゆっくりとロッキの遺体に近づく。
 すると、魂が出てきた。

 それを鎌でブンッ!

 刈り取る。さらに結界で包みこむ。
「これでよし」
 本来はこれが目的なのだ。これを悪用されるとは夢にも思っていなかっただろう。
 何も言わず死神ルーレはゆらゆらと去ろうとする。

「ルーレ殿」
「なにか?」
 ミーアリィが言った。
「その者の魂の審判……どれくらいになると思われる?」
「おそらく、地獄行きは間違いないであろう」
「減刑してもらえないだろうか?」
 意外な言葉。
「なに?」
 ルーレはちょっとだけ驚く。あれだけひどい目にあったというのに……

「私からもお願いしたい。補足意見をつけられる私からも」

 リアナも同調する。リアナは戦乙女の最高神だ。ミーアリィと違って、人間の魂の大神審判に意見を言える立場にあった。
「わかった……そなたがそう言われるのなら……な」
 意見は添えよう。しかし、その後のことは知らぬというわけだ。死神の立場としてはそこまで。
 ゆらゆらと大事そうに魂を抱えて持っていくルーレ。

「ありがとうございます。リアナさま」
「ミーアリィ、なぜあのロッキの魂に情けをかけたいと思ったのか?」
「それは……」

 ボロボロの少年の死体の一部を見るミーアリィ。あれだけ陵辱されておきながらもだ。

「皮肉なことですが、あの少年が仕掛けた罠のおかげだと思うからです」
「そうか……」
 ちょっとだけ微笑むリアナ。すると、何千という戦乙女たちが、ミーアリィの周りに駆け寄ってくる。光をリアナたちに与え続ける乙女たち。
 今までの苦労が報われるような瞬間だ。

 飛び立つ乙女たち。乙女たちの世界へ戻っていくリアナたち。
 一斉にみなが翼を広げる……

 ところが、ミーアリィだけは、そこにとどまる。
 ゆっくりと消えようとしているロッキの死体。魂が抜けた人間の死体は、例え天界でも消滅していくのだ。ミーアリィが消えゆく肉体をやさしい目で見ている。
 なんとなく……そこにはあの……

 不敵な少年の笑顔が……今でも見えているらしい。
 しばらくの間、ミーアリィはその場で消えゆく肉体を見続けていたのだった。


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