キン肉マンの体形

『キン肉マン』の登場人物の体形についてです。

『キン肉マン』というマンガの登場人物、特に主人公のキン肉マンの体形は、逆三角形が基本です。
その逆三角形の肉体を、極端に描くと、図1のようになります。
手首や足首、指先などはとても細く、肩や太股や胸はとても広いのです。
細身のキャラクターの場合は、特に図1に感じが近くなります。

そして、その逆三角形の肉体に丸みを持たせると、ハート型に近い感じになります。
極端に描くと、図2のようになります。

このハート型の肉体は、ゆでたまご先生独特のものです。
こういう肉体を描く人は、日本の漫画家ではあまりいないでしょう。
愛嬌と力強さと、不安定な印象を与える肉体です。

鳥山明先生の『ドラゴンボール』の、孫悟空の人造人間編辺りの体形は、長方形を基本にしています。
極端に描くと、図3のようになります。

その当時のドラゴンボールの人物は、目も、眉も、筋肉も、服のひだも、靴も、何もかもが四角いのです。角張ってはいますが、安定感があり、端正な印象を与える肉体です。
これは、意図的にデザインされたのでしょう。
なぜならば、ある時期から、急速にこういう絵になったからです。
『Dr.スランプ』の人物は、円形を基本にしています。現実の人体ではなく、丸くデフォルメされた人体を、この当時の鳥山先生は描いていました。
鳥山先生の絵は、マンガに向かないとすら言われた、デザイナーの絵です。
人体を丸く描こうと思って、丸く描く。四角く描こうと思って、四角く描く。そういうデザインセンスが、鳥山先生にはありました。

単に解剖学的に正確な人体を描けるという意味で、鳥山先生は絵が上手いわけではありません。

そういう現実的な人体を描くのが上手なのは、『スラムダンク』の井上先生です。
実在のバスケットボール選手のような肉体を、井上先生は描きました。
あまり記号化されていない井上先生の絵は、漫画的ではありません。

話を戻して、ゆでたまご先生は、デビューからずっと丸みをおびた逆三角形の肉体を描いています。少なくとも、ゆで先生が「たくましく」描こうとすると、そうなります。現在の『キン肉マンII世』では、筋肉の位置や骨格などの、解剖学的な正確さは増していますが、超人の体形がはちきれそうな、逆三角形であるのにも、指先がすっと細いのにも変わりはありません。
おそらく、これは無意識的なものでしょう。あるいは、譲れない美意識なのでしょう。

現在作られる『キン肉マン』のゲームやフィギュア、あるいはそのために描きおろされるゆで先生以外のイラストレーターの絵などは、現実のスポーツマンの肉体、あるいは鳥山的、荒木飛呂彦的な肉体を「格好いい」肉体としているようなので、ゆで先生の絵の忠実再現ではないんですよね。

まあ、そうするとダサくなっちゃうと思うんでしょうねえ。このゆで体形は、追従者らしい追従者を生んでない絵ですから。

個人的には、ゆで先生には、超人の体格をもうちょっと現実的にして欲しいです。
そして、アニメーターやゲームクリエイターのみなさんには、原作に忠実にまるまるとした体形に人物を作って欲しいです。きっと、昭和の香りがするでしょう。


初出2007.3.25 改訂2007.3.26

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