戦う者達

キン肉マンの登場人物のうち「人型超人」についてです。
人型超人の元ネタは、伝説的英雄、娯楽作品のヒーロー、実在の格闘家やプロレスラーに偏る傾向があります。

その国の英雄や戦士

英国の騎士とかドイツの軍人とか、中国の拳法家とか、米国のカウボーイとか、日本のニンジャとか、お国柄を反映しつつ、その国で伝説の英雄でもあり、戦士である存在を登場させています。そしてその中でもベタなのが、読者に選ばれて残っていくのでしょう。
ドイツ軍人は悪い方に伝説なので、ブロッケンマンは残虐超人として登場します。

具体例

実在の格闘家やプロレスラーなど

プロレス漫画らしく、キン肉マンには実在の選手やプロレスラーもたくさん登場しました。彼らは主に脇役や、チョイ役として登場しましたが、主要キャラクターにも実在の選手が、元ネタのキャラクターはいます。連載当時に活躍していた選手が登場しています。たとえば、『キン肉マン』の連載は1979年から1987年まで、千代の富士(ウルフマンの元ネタ)は1981年に大関、1991年に引退です。

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娯楽作品のヒーロー

初期の『キン肉マン』は、『ウルトラマン』のパロディだったため、ウルトラマン風の超人もいました。数多くの超人の頭についているトサカ状のものは、ウルトラ兄弟が元ネタなので、「ウルトラマン風の超人」というのは、考えようによってはすごくたくさんいるのかもしれません。

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このように『キン肉マン』に登場する人型超人には、お国柄を反映した超人が多く、何らかの英雄伝説や古代の戦士、実在の格闘家などのイメージが反映しているキャラクターが多いです。それもよく知られたものが多くあります。これが読者が登場するキャラクターに、格好の良さや親しみやすさを感じやすい理由のひとつでしょう。イギリス人は紳士というイメージが一般にあるからこそ、ロビンマスクが色々と紳士からはほど遠い言動をしたりしても、読者はなんとなく彼を「紳士」と思います。騎士の鎧は偉大です。もちろん、それだけではありませんが、そういう「思いこみ」を利用するのも、キャラ立ての方法です。

『キン肉マン』に似た後発作品が、格闘ゲームの元祖といわれる『ストリートファイターII』です。このゲームが似ていると考える理由は「実在の格闘家や映画スターや、娯楽作品のヒーローに似たキャラクターが多い」というのと「世界各国のお国柄を反映した選手と戦う」という点です。格闘ゲームは少年ジャンプ的な「何か」を背景に成立しました。
『ストリートファイターII』を作ったカプコンも大阪の会社で、大阪には寄せ集め的な「B級ヒーローもの」を生む土壌でも、あるのでしょう。

超人は巨人である

人間型の超人の身長体重は、並の人間の数値を大幅に超えることが多いです。
漫画を見ればわかることですが、一応公式な超人の身長体重の数値を示します。

具体例

それでは、実在のプロレスラーや格闘家の公式な数値を見てみましょう。人選は、気分です。

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数値の話をするならば、ウォーズマンは琴欧洲に近いということになりますね。

『キン肉マン』や『キン肉マンII世』の世界の「人間」は、並の人間の体格をしています。この世界では、「人間」も「超人」も、共に筋骨逞しいということはありません。漫画だと、出てくる人間みんなが足がやたらに長いとか、そういうことがありますが、描き分けされています。彼ら一般の「人間」と「超人」が並ぶと、超人が大きいのだということがよくわかります。

それは「人間以上の偉大な存在」「巨大な敵」のストレートな表現です。
旧約聖書のダビデとゴリアテの時代から、背の高い敵と戦うのが英雄です。

インド神話の英雄クリシュナの活躍の場面を紹介しましょう。これは英雄である主人公とその兄を殺そうと、悪しき王が、屈強なレスラー二人とのタッグマッチの試合を組む話です。1000年以上も前の英雄伝説です。

 兄弟は競技場で、チャーヌーラとムシュティカという強大なレスラーに試合を挑まれた。見物していた婦人たちは、花のように華奢な二人の若者と、山のように巨大なレスラーとを対決させることを口々に非難した。しかし、クリシュナはチャーヌーラを、バララーマはムシュティカを、いとも容易にうち殺してしまった。二人は更に挑戦してきた他の悪魔たちをも粉砕した。カンサを除く観客たちは、二人のめざましい働きに喝采した。
インド神話

やはり小柄な少年が、背の高い大男を倒してこそ、観客も拍手喝采するというものです。それは国や時代を超えても、変わらない人の心というものでしょう。生い立ちや体格などに恵まれない者が、困難を乗り越え、勝利する姿に人々は感動してきたのです。



初出2007.3.20 改訂2007.3.20

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