テリー・ザ・キッド考

テリー・ザ・キッドについて思いついたままにつらつらと。

名前について

ビリー‐ザ‐キッド【Billy the Kid】
[1859〜1881]米国西部の無法者。本名William H. Bonney21人を殺し、21歳で射殺されたと伝えられる。
Yahoo!辞書

これが元ネタだと思います。彼の伝説を元にした映画などもあります。

容姿

キン肉マン世界の額の文字は、ウルトラ兄弟の額のビームを出すところであり、更なるルーツは大仏様なのでしょう。米の文字を刻んでいた父親に比べて、Kの文字のキッドはアメリカを代表する超人という印象が薄いです。

髪の毛を立てているのは、攻撃性の表現です。

タッグ編に入ってからの星条旗柄のレスリング風レオタードは、WWEのカート・アングル(オリンピック金メダリスト)の衣装が元でしょう。

タレ目の顔は父親譲りですが、原作ゆで先生に似た顔でもあります。ですから、キッドが顔を傷つけられる可能性は低いでしょう

出身国について

『キン肉マン』連載時のゆで先生は「ハリウッド映画の主人公」や「アメコミの主人公」や「米国人レスラー」などの「アメリカン・ヒーロー」を、強くて明るくて格好いい男というイメージを抱いていたような気がします。それはハリウッド映画やアメコミ、外人レスラーネタの多い、初期キン肉マンおよび、アメリカ編を見てもわかります。

ゆで先生のアメリカに対する憧れが薄まったというのも、キッドの影の薄さに一役買っているでしょう。

父親との関係について

もし父親が、キッドの面倒をもっと見てあげれば、キッドは「優しい父親」を尊敬したのでしょうか。

夜遊びとか、行儀の悪さとか、オリンピック編前のキッドは微妙に「父なるもの(社会の掟)」に対して反抗的です。目上の男を尊敬するつもりがないのですね。自分を認めてくれなかった(仕事で忙しく息子の相手をしなかった)父親に、自分の男としての優秀さを見せつけてやりたいというのですね。そうすれば、父親が自分を認めてくれる、そして自分よりも仕事の方が重要だと思ったことを間違いだと思ってくれるのではないか、という期待があるのでしょう。

キッドはキン肉マンという存在が、「自分が愛せる父親」と「自分を愛してくれる父親」を奪ったように感じています。

キッドの小さいトロフィーしかないことに対する不満には、単に「父親が自分が望むほど立派でない(世界一の父親が欲しい)」という問題だけではないかもしれません。父親はキン肉マンには愛情を捧げたのに、自分には愛情を注いでくれなかったという、愛されない子供の不満みたいなものがあると思います。テリーマンは仕事が忙しかったということになりますが、番外編で対比されたように、仕事の忙しさの理由として「キン肉王家ほど豊かではない」というのが、背景に存在します。金も名誉も愛情もキン肉スグルのものと、幼い頃のキッドの目からは見えるでしょう。

オリンピック編で子供を助けて、父親を認め、父親に認められるという経験をしてから、キッドからそういう刺々しさはなくなったという印象があります。

テリーマンがキン肉マンのようにチャンピオンになれなかったのは、テリーマンがキン肉マンに譲ったから、というのは父親を理想化したいキッドの幻想である可能性もあります。テリーマン自身、子供に「自分は優れたレスラーだったが、キン肉マンに譲った」みたいに説明しています。キッドが「父親は優れたレスラーだったが、チャンピオンになれるほどの器ではなかった。むしろキン肉マンと組むことでタッグチャンピオンとして、父親は輝けたのだ」と考えられるようになったら、キン肉マン親子に対するこだわりはなくなるんでしょう。しかし10代でそこまで割り切るのもキッドが大人すぎるでしょう。

物語と役割について

キッドは父親の役割が「主人公の援助者」であったことに、不満を持つ少年です。
キッドもテリーマンと同じように、最初主人公のライバルとして登場します。キン肉マンとテリーマンのライバル関係は、テリー優位から始まりました。
ですが、キッドは自分が、あるいは自分の父親が劣位に置かれているという意識から、対抗心をむき出しにします。

しかし、キッドは、万太郎の父親のスグルがテリーマンのバンダナを、持ち歩いていたことを知り、万太郎を手助けします。

キッドとしては「親父は利用されていただけじゃなかったんだ」というだけでよかったのでしょうか? ならば、万太郎がキッドの援助に感謝してくれるのならば、キッドは万太郎を援助するのでしょうか。
その後の展開は、そういうことのようです。

逆に万太郎がキッドの援助者となるということもあったので、その点では「お互い様」の関係です。
キッド対レックス戦ですね。
万太郎が他のキャラを助けて勝利に導くことは、あまりありません。
プレイボーイ版とV jump版のキッド対レックス戦位しか、万太郎は仲間を助けていないのです。
例外をあげるならば、V jump版のセイウチンに対する助言位でしょう。
この助けたり、助けられたりする関係はキッドの特権とすら、いえましょう。
ただ、一回だけしか助けていないので、細いつながりという感じがします。そして、キッドが単独で万太郎を援助したのは、ヘラクレスファクトリー編のピーナッツ位でしょう。

キン肉マンは、何度もテリーマンを助けていました。キッド相手に限らず、万太郎はあまり仲間を助けないので、今後はそういう展開が増えるといいですね、と書こうとしましたが、今回のタッグ編ですでに万太郎が助けて勝利に導ける仲間が、それこそキッド位しか残っていないことに気付きました。

二期生編では、キッドの役割はスカーに倒されて、仇を討たれる役です。これで「敵対→援助→犠牲」のパターンが一周しました。

ノーリスペクト編でのキッドの役割は、『スター・ウォーズ』のハン・ソロでしょう。ハン・ソロはカウボーイ風の人物で、主人公の兄貴分であり、頼もしい援助者でした。万太郎対ボーン戦の時、キッドはチェックと共に万太郎を助言によって援助します。

オリンピック編では、アメリカ代表として万太郎を援助することを拒みましたが、万太郎の敗退後にはガゼルマンやセイウチンやチェックと共に遊びの誘いに来ています。

悪魔の種子編でもキッドは、ガゼルマンやセイウチンと共に、万太郎の特訓相手として援助者の役割を果たしました。

結論を言うと、現在までの万太郎とキッドの関係は、あまりメルヒェンチックではありません。キッドは万太郎に才能を見込まれてスカウトされたわけではなく、ライバルとして認められたわけでもなく、悪行超人からの改心でもありません。二人の間にあるのは同級生という、とても現実的なつながりです。だからこそ逆に、二人の仲の良さは自然でもあります。

食生活について

キッドのスグルに対する肉ばっかり食っているから怒りっぽくなるんだ、というのは「食事のバランス」が大好きなキッドらしい発言ですね。プレイボーイ版だと不摂生な印象のあるキッドですが、Vジャンプ版では、サプリメントを呑んだり、食事に気を使う優等生として描かれていました。万太郎との対比でしょう。
タッグ編のタイムシップに乗り込むときの、キッドのチェックに対する「食事に気を使っているな」という発言もその流れでしょう。
実はキッドとチェックは「食事に気を使うスポーツ優等生コンビ」なのです。
Vジャンプ版のその場面が描かれたのは、何年も前なので、ゆで先生は、そういう細かい所は覚えてる人なんでしょう。

現在について

これまで『キン肉マンII世』では「援助する者」と「援助される者」の力関係に、大きな格差を作ってきました。

それでもキッドは中途半端というか、「英雄」か「援助者」か、まだ役割が定まっていない印象があります。

『キン肉マン』シリーズのよくあるパターンでは、情緒的で自己顕示欲が強い人物が「主人」で、生真面目で勝ち気な人物が「援助者」です。
もし万太郎と組めば、キッドは「勝ち気だが生真面目な援助者」という扱いになり、チェックあたりと組めば、キッドは「情緒的で自己顕示欲が強い英雄」という扱いになるでしょう。ノーリスペクト編ではそんな感じでした。

Team AHOのリーダーですから、キッドにもヒーローの資質はあります。とはいえTeam AHO自体が「万太郎の取り巻きグループ」みたいなものですから、それでリーダーでも主体的なリーダーシップとは違う気はします。キッド本人も、タッグ編でそう思ったようです。「援助者」であり「解説役」で、ここまでずるずると来てしまったので、ロビンマスクと組ませるなどのテコ入れも、ロビンの「援助者」って感じです。

主人公以外の正義超人が「英雄(ヒーロー)」になりにくい、新世代超人の現状をキッドが打破してくれると、話が面白くなるでしょう。

キッドとロビンのコンビで、現在一回戦を勝ち抜いたのですが、この二人が仲を深めたりする描写は淡泊でしたね。
それとも次回で何かこの二人に危機が訪れるのか、気になる所です。

これから、テリーマンとナツコのラブストーリーが息子をはさんで展開されたりするんでしょうか。本編でも外伝でもこの二人はあまり仲を深めてませんから、描写の余地はあります。
さて、ナツコはいかなる危機に陥るんでしょうか? むしろテリーマンが危機に? それともキッドが危ない目に?

キッドはいまいちリーダーという気がしなかったのですが、とりあえずゆで先生は、そういうことにしたいらしいので、今後何か予定があっての実績作りなのでしょう。まあ、予定は未定なんでしょうが。

今後の展開として、考えられるのは……

1 キッドがロビンと組んだ次回の試合で敗退し、そのまま。
2 キッドがリーダーとして万太郎と組む。
3 キッドがリーダーとして万太郎やロビン以外と組む。
4 万太郎がリーダーとして、キッドと組む。

1以外ならば、今回の「リーダーとしての実績」は意味を持ちます。最終的に4になるとしても、一度ケンカになるという展開が描けます。
そう考えると、やはり今回もキッドのパートナー変更はありそうです。


初出2007.2.2 改訂 2007.5.28

Back Index