おばけ屋敷でGO!! 書いた人:北神的離
第5話 − 呪縛〜フェリア〜 − |
「い、痛たたたた………」 フェリアは頭をさすりながら体を起こす。 あちこち痛むのは落ちた時に階段の角にぶつけた所為だろう。 かなりの高さだ、受け身をとらなければ死んでいたかもしれない。 幸い周囲に屍達は居ない。 気を失っていたのはわずかな時間だったようだが、 もし奴等が階段の下にも待ち構えていた、又は上の奴等が引き返してきていたなら、フェリアは間違い無く生きてはいなかっただろう。 「ファナぁ、覚えてなさいよ…」 言いつつ、フェリアは地下室の奥へと足を運ぶ。 最上階の鍵はきっと愚妹が取ってくれるはず、 常に仲の悪い姉妹だが、こういうところはしっかりと信頼し合っているようだ。 おばけ屋敷でGO!! 第5話 − 呪縛〜フェリア〜 − 「……………」 曲がりくねった細い通路を歩く事10分あまり、 大き目の部屋に足を踏み入れた瞬間、フェリアは気配を感じ、立ち止まる。 「5体…いえ、6体…?」 フェリアは小声で呟く。 何か、居る! 生物の気配ではない、だが、物がこすれる音や、空気の微妙な流れで瞬間的にフェリアは状況を察知した。 壁に添え付けてある灯りを頼りに部屋の様子をさぐる…… 隅の方で、何かががさがさと蠢いているのが確認できた。 屍ではないようだ…が、まだ油断はできない。 おそるおそる部屋に足を踏み入れると…… がちゃがちゃがちゃ… それらは人の形となり、起きあがった。 「のひぇぇ〜〜」 つい驚きに声を出してしまうフェリア。 それは、数体の骸骨だった。 古い屍の肉が全て削げ落ちた奴等なのだろうか? フェリアは意識の隅でそんな分析をしてみたが、答えなど出るはずもない。 とりあえずは目の前の敵を倒す事が先決である。 はっ、とその場を飛び退くフェリア。 彼女のすぐ隣にも、骸骨が待ち構えていたのだ。 数瞬遅れて頭のあった位置を骸骨の振り回す腕が通りすぎる。 もし気配に気付いていなければ…… フェリアの首筋を冷たい物が流れた。 「さて、どうしようかしらねぇ…」 部屋の中央に移動しながら、対策を考えるフェリア。 骸骨達は全て素手である。 ちっ、と、軽く舌打ちする。 敵は武器を持っていないだけマシ…と、普通の人間ならば考える所だが、武器を奪えない分、この場合リーチの短さとスタミナの違いで彼女の圧倒的不利な状況…彼女はそう感じているのだ。 「…あんまり、気は進まないけど」 フェリアはため息をつきながら一番離れた所に居る骸骨に一瞬にして間合いを詰める。 驚異的な脚力、この行動は意思を持つ相手には不意打ちの効果もあるが、 既に思考能力を失っている骸骨にとっては不意打ちなど何の効果も無い。 当然フェリアにもそれは判っている。 他の骸骨達との距離を稼ぐ為だけの行動だ。 (勝算は…五分五分ってところか……) 思いながらフェリアは骸骨に攻撃を仕掛ける。 失敗したら待ちうけるのは彼女の死…そんな状況にも関わらず、彼女の顔はわずかに笑っている。 「てぇっ」 蹴りを放つフェリア。 しかし、足の長さが足らずに骸骨に届かず、バランスを崩す。 そこに骸骨が腕を振り下ろし…… 「よっしゃぁ!」 蹴りは相手の不用意な攻撃を誘う囮だった。 案の定、意識を持たない骸骨は反射的に攻撃を繰り出してきた。 攻撃のタイミングさえ判れば、回避・反撃する手段はいくらでもある。 腕を掴み、骸骨の腕を振り下ろす力を利用し、関節を極めるフェリア。 全身を使い、体重を掛け、 ぽこっ 骸骨の腕を外す。 骨でしか身体を形成されていない骸骨にとって、腕を一本もがれた状況だ。 しかし、骸骨には痛覚が無い。 多少バランスが悪そうにしていながらも、フェリアに向き直り、よろよろと近づいてくる。 対するフェリアは… 「ふっふっふ、『剣』さえ手にすればこっちの物よね☆」 『剣』を片手に満面の笑みを浮かべるフェリア。 彼女は既に勝利を確信していた。 もぎ取った骸骨の腕を右手にかざし、骸骨達に立ち向かう。 端から見るとむっちゃシュールな光景である。 「てやぁ!!」 パコーン フェリアの振るう『剣』が、骸骨の頭蓋をまともに捕らえ、吹き飛ばす。 返す刀で肋骨、腰骨と続けて打ち付け、全身をばらばらにする。 続けてこちらに向かってくる骸骨2体をまとめて相手にするフェリア。 攻撃を最小限でかわし、今度は一振りで骸骨2体を行動不能にする。 「うりゃっ、うりゃっ、そりゃっ!!」 どこか聞いていて気の抜けるような幼い掛声と共に『剣』を振るう度に生産されていく骸骨の残骸。 1分と経たないうちに部屋中の骸骨を全てなぎ倒してしまった。 「ま、こんなもんかな?」 骨の散らばる室内を満足そうに見やりながらトン、トン、と『剣』で自分の肩を叩くフェリア。 骸骨の腕なので、叩く度にカコン、カコンと音を立てながら肘関節から先がぷらぷらと揺れている。 わしゃ 突然フェリアの背中を弄る感触。 ぷつ、ぷつと首筋に鳥肌が立つ。 そのままの体勢でギギギ…と首だけを回し、自分の背中を見ると…… 「のしぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 もぎ取った骸骨の腕の先端に付いている指が、フェリアの背中をまさぐっていたのだ。 生命力…とはちと違うかもしれないが…の高い骸骨といえど、もいだ腕がまだ活動できるとは、彼女は思いもしなかった。 「嫌ぁ〜〜!離れて、離れてっ、離れてぇ〜〜〜〜〜!!」 腕の根元をぶんぶん振って気色悪くわにわにと動く指を遠ざけようとするフェリア。 しばらくして、腕ごと放り投げれば済む事に気付き、ポイっと投げる。 ひゅ〜〜〜……ぱこ〜ん 放物線を描きながら壁に激突し、関節ごとにバラバラになる腕。 しかし、パーツのそれぞれがびくびくと振動して動きつつ、元の姿に戻ろうとしている。 まさか…嫌な予感を感じ、フェリアは部屋を見まわす。 「うしょ〜〜〜〜!?」 絶叫をあげるフェリア。 なんと、彼女がバラバラにしたはずの他のパーツまでもが互いに集合し、元の姿に戻ろうとしているのだ。 しかし、元の姿を忘れたのか、どの骸骨もてんでバラバラな再生の仕方をしている。 本来腕のある場所に足のついてるもの、頭が3つあるもの、頭蓋の下に背骨のみが集まって蛇のようにグネグネと身体を揺すっているものなど、どれを取っても奇妙極まり無く、途方も無く不気味だ。 「あひゃ、あひゃひゃひゃぁぁぁ〜〜〜」 畸形生物の骨格標本展示場のような有様になってしまった部屋から腰を抜かしながらも逃げ出そうとするフェリア。 赤ん坊のようにはいつくばりながらの逃亡だったが、幸いどの骸骨もまともに歩けず、その場でうねうねとのたうっているだけだったので事無きを得たのだった。 「あ〜〜〜うっ、気色悪かったぁ」 どれくらい歩いただろうか? まだ足はガクガクと震えてはいるが、何とか普通に歩けるようになってきたフェリア。 しかしまだ恐怖が脳裏に焼き付いている様子で、何度も「アレ」が追っては来ないかどうか、後ろを振り向いている。 十何度目かの後方確認をするフェリア。 その一瞬が彼女の運命を左右した。 がこんっ 天井が開き、そこから何かが落ちてくる。 それは、前を向き直したフェリアのちょうど鼻先で停止した。 「にょわぁぁぁぁぁぁ!!」 突然目の前に現れた物体に叫ぶフェリア。 屋敷の所々に設置されていた倭風妖怪のカラクリだったが、よりによってこの場に降って来たのが『ガシャドクロ』だった。 ぺたん、と腰を抜かし、しりもちをつくフェリア。 大きく見開かれた目からは涙があふれてくる。 「や、やなところにやな妖怪の配置すなぁ〜」 誰も聞いていないのに憎まれ口を叩くが、それもどこか弱々しい。 ざわり… 周りを何かが這いずりながら迫ってくる気配。 まさか、先程の骸骨どもが迫ってきているのだろうか? 「い、嫌ぁ……」 弱々しく首を振るフェリア。 目を見開き、歯をカチカチと鳴らし、端正な顔を歪ませたその表情にはいつもの気丈さは微塵も感じられない。 そして、ついに這いずってきた物体がフェリアの視界に入った。 「こ、これ……」 イソギンチャクを思わせる胴体から細長い触手を何十本も生やした生物、ローパーであった。 薄暗い所に好んで生息し、ネズミなどの小動物を捕食するが、巨大なものは数mにも達し、人間を襲う事もあるという。 幸い目の前に現れたそれは、体長50cm程度、口の大きさから人間を食する事はまずありえないだろう。 安堵のため息を漏らしかけたフェリアだったが、吐く前に再び息を飲む。 その後ろに更に数十体ものローパーの大群が続いていたのだ。 「に、逃げ…」 逃げなきゃ、そう感じたフェリアだったが、恐怖に震える体はまるで言う事を聞こうとしない。 「あ、あ、ああ……」 みるみるうちにローパーの群れに取り囲まれるフェリア。 ローパーはフェリアめがけて触手を伸ばしてきた。 「あうっ」 一本の触手に右手を取られるフェリア、続いて右足、左足、左手… 四肢をローパーに絡み取られ、大の字にされる。 そして他の触手が一斉に迫ってきて…… 「な、何……うひゃっ、うひょ、うひょひょひょひょひょひょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 フェリアの絹のような柔肌をくすぐりだした。 触れるか触れないかというところをわしゃわしゃと顫動する幾百幾千もの触手の群。 それが首筋を、腋の下を、脇腹を、太腿を絶妙な具合で刺激してくる。 「あひゃひゃひゃひゃひゃ、や、やめ、やめひゃひゃひゃひゃ〜〜」 抗議の声も自らの笑い声にかき消されてしまう。 奇妙に歪んだ顔からは涙と涎が垂れ流し状態になっている。 彼女と犬猿の仲な妹が見たら、腹を抱えて指差して笑い転げた事だろう。 狼などの肉食獣は、自分より大きな獲物をひたすらに追いかけ、疲れ切り抵抗できなくなった所を襲うと言う。 俊敏な動作のできないこの奇怪な化物はこのようにして獲物を弱らせ、捕食するのだろうか? フェリアはひたすら続く爆笑地獄の中、そんな事を考える。 「くっ、くくく…きゃははははははは〜〜〜」 何度も意識を別の所に向け、笑いを堪えようとするが、すぐに大きな笑い声を通路内に響かせるフェリア。 まさか強制的に笑わされる事がここまで消耗するとは思ってもみなかった。 このまま1時間もこんな状況が続けば、フェリアは体力の全てを使い果たし、周囲に群がる下等な生物どもに生きながらにして食べられてしまう事だろう。 しかし、それを待つより早く、フェリアを新たな危機が襲おうとしていた。 じわっ…… (う、嘘っ) 断続的に続く強制的な笑いで紅潮していた顔が一気に蒼白になる。 純白で飾り気の無い、それでいて極上の生地で作られたパンティの下から、滲み出る感触を感じたのだ。 本来膀胱は一定量の尿が溜まっても本人の意思が働かない限り排泄される事は無い。 それは下半身の筋肉のひとつ、括約筋の働きである。 しかし、長時間笑わされ続けていた為、その働きが無意識の内に弱められているのだ。 フェリアの膀胱内には既に軽い尿意を感じるほどの尿が蓄積されている。 このままくすぐられ続ければ、その先に待ちうけるのは純白のパンティを黄色く染め、床にほのかに香る聖水の水溜りを作る恥ずかしい少女の屈辱的な姿…… (嫌っ、そんなの、絶対に嫌っ!) 屈辱的な失禁をこの下等な生物どもに見せつけた挙句捕食される末路、そんな最期はこの自尊心の強い12歳の少女にとって、死ぬ事より遥かに辛い。 必死に我慢しようと括約筋に力を込めようとするフェリア。 しかし、全身を絶え間無く襲う刺激に阻まれ、集中できない。 更に両足を大きく広げられているので、足をもじつかせて尿意を堪える事すらできない。 羞恥の液体を内部に蓄えた水門が、自分の意思とは別に、徐々にこじ開けられていく、そんな感触。 ちょろっ 2度目の放出、ほんの数滴だが、肌に密着した布地に広がる不快感が彼女に屈辱を与える。 「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 自分でも信じられないような絶叫、そして右手の触手を引き千切り、股間を押さえるフェリア。 そんな事をしても、周りに蠢く数千の触手は絶え間無く動き続け、数秒後には無残な放出を見せ付けてしまう事になるだろう。 それでも諦めるわけにはいかなかった。 彼女の、必死にして最期の抵抗である。 フェリアは涙の滲む瞳を閉じ、決壊の瞬間に備えた。 しかし、 再び目を開けると、周囲を取り囲んでいたローパーは蜘蛛の子を散らすかのような勢いで、逃げ出していく。 引き千切ったはずの触手も、奴等が持っていったのだろうか、どこにも見当たらない。 「あ、あびなかったぁ〜〜〜」 とりあえず失禁しなかったから良しとするか。 フェリアはローパーの奇妙な行動の理由にも気付かず、ただ脱力し、その場にへたり込んだ。 続く |