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 もう一つの陵辱物語:1 

聖王国パルマの片隅にある街、ランドヤナ。
農業が盛んで平和が取り柄のこの街も、休日の市場は賑わいを見せている。
輝く陽光の元、様々な人々がここに押し寄せてきている。
家族連れも多く見受けられ、みんな幸せいっぱいに煌いていた。

「ねーねー、パパ。あれ買ってよ!」
勢いよく駆け出してきた男の子が2人連れの女性にぶつかり、そのまま「うぎゅ!」と叫んで尻餅をついた。

「ああ、ごめんね坊や。怪我は無い?」
まるで男の子をいたわるように、赤毛の女性が真上から見下ろす形で声をかける。

「姉さんが余所見をしているからじゃない。ねえ僕、大丈夫かな?」
隣に並んで立っているもう一人の女性も話しかける。

頭をふるふる振っていた男の子は、やがて元気に立ち上げると「平気だい」といってお尻についた埃をはたく。
そこへ、少年の父親がやってきた。

「これはアイラさんにマリーさん。ウチの息子がとんだ粗相を。おい!ちゃんと謝るんだ!」
父親は息子の頭をぐいと持つと、そのまま下に押し付けお辞儀の姿勢をとらせた。

「あの、そこまでされなくても構いませんって! 」
アイラと呼ばれた女性が慌てて止めに入る。

「まあ姉さんが、ぶつけられたくらいで怪我するわけないものね!相手の方がよっぽど心配だわ」
「確かにアイラさんは師範代ですからね。大の大人でも勝てやしませんや」
父親も顔を崩す。

アイラは早くして両親を無くし、祖父の元に妹と2人で身を寄せていた。
その祖父がここランドヤナにて武道場を開いており、アイラも幼いときから修行を積んできたのだ。
もともと才能があったのか、アイラは見る見る頭角をあらわし、今では女ながら道場の師範代までを勤めるに到っている。
細く高い鼻筋。
深海に沈む紺碧の宝石のような色彩を有する切れ長の瞳。
際立つ美しさを持ちながらも、その鍛え上げられた強靭かつしなやかな肉体から繰り出される手刀の威力は驚異的である。獲物に小刀を持った時には更に大変だ。近隣の屈強の男達でも到底かなうものは居なかった。
匂い立つような大人の色香から夜道で小悪党から下卑た誘いを受けることは多々あった。
が、アイラと分かるや否やほうほうの体で逃げ出す有様だった。
「ふん、たわいもない奴ら!」

一方妹のマリーは道場などには見向きもしなかった。
じゃあおしとやかなのかというと全く逆なのである。
幼少の頃からとんでもないお転婆で、落ちつきというものがまるで無かった。
ただアイラと同じく母親譲りの端正な顔立ちに加え、白磁のごとき透き通るような木目細かい肌にをしていたので、黙って座っていればまるで人形のようであった。
だからどんな悪さをしても、ニッコリ笑って「えへへ」と笑いかければ大抵許されてしまうのだった。
美少女の特権というか、世の中の男もまだまだ甘いと見える。

とにかく嬌艶をうたわれた武道家と、触れば壊れてしまいそうな美少女は近隣でも評判の姉妹だった。
そのせいか武道場にはアイラに稽古をつけてもらおうとひっきりなしに入門者が押し寄せてきて、道場経営には困らない。
もちろん生半可な気持で弟子入りした者達は容赦無い鍛錬の前に傷だらけになって逃げ出していくのだったが...

「ときに、最近物騒ですよね。例の少女の神隠し...」
父親が、子供の前というのをはばかってか、声を潜めて話す。

「また隣町で嫁入り前の娘が消えたそうで...ホントにどうなってんだか...」

そう、最近付近の町では不思議な事件が起こっていた。
妙齢の少女が突然姿を消すのだった。しかも決まって満月の晩に。
新手の人買いが現われたとか、この先にある「開かずの森」に魔が復活したという噂が誠しやかにささやかれる始末であったが、真相は闇に包まれたままだった。
それがまだ続いているという。

「アイラさんもマリーさんも、気を付けてくださいね!お二人とも若くて美人なんだから」
「あたし達は大丈夫よ!なんてったって強いお姉さまがいるんだもの」
妙に威張った口調でマリーは答える。

今日はたまの休みなので2人そろって市場に出かけてきたのだが、やはり目立つ。
通りすがりの人もなにかと話しかけてくる。
こういうことには心得たもので天使の笑顔を振り撒くマリー。

その横顔をジッと眺める。
今となってはたった一人の妹だ。可愛い。
母親代わりになって世話を焼いてきたので人一倍そう思うのかもしれない。
何があっても、この子には幸せになって欲しい。
例えわが身が呪われていようとも...


パタン..
買い物から帰り、アイラは自室にこもる。
静かに服を脱ぎ、鏡の前に立つ。
均整のとれた見事な姿態。
無駄な肉など微塵も無く、引き締まった裸身。
神々しいばかりの肢体だ。
しかし...股間にある不似合いな膨らみはなんだ...?
立派な隆起。これは...まごうことなき男根だった。
これがアイラの持つ呪われた宿命なのである。

両性具有。アンドロギュヌス。

彼女は生まれつき、男性器と女性器を併せ持っていた。
生物学的にはアイラは間違いなく「女」である。
しかしその長大な男根も決してただの飾りではなく、感極まったときには白濁した体液をほとばしらせるのである。
この身体のせいで、アイラは異性と長く付き合ったことは無かった。
正確にいうと、相手が離れていくのだ。
熱く言い寄ってきた男達に根負けして、身体を許すときもある。
だがこの秘められた部分を見た途端に千年の恋であろうと冷めてしまうのだった。

ゆっくりその忌まわしい生殖器を掌でなぞる。
「くぅ...はあぁぁ...」
狂おしいくらいの快感の波が、かの器官から発せられる。
それはひっそり息づく陰核をめくりあげて指でなぞりあげた時の快感と同等、いやそれ以上であろう。
アイラの男根は性感帯が直接剥き出しになって突起しているといってもいいくらい、極めて鋭敏な感受帯であった。
えらの張った部分を手のひらで優しく包みこみ、軽くしごく。
そして傘の裏の部分を指でチロチロと刺激する。
「ああ....だ、駄目...こんなことしては...」
それだけで生殖器ははちきれんばかりに膨れ上がり、今にも暴発しそうになる。
い、いけない...やめなくては...
そう思いながらもズルズル快楽に溺れていく。
竿の部分からも先走りの液が止めど無く吐き出され、肉棒全体が粘液にまみれてヌルヌルである。
同時に秘淵からも甘い樹液が分泌され太股を伝って零れ落ちていく。

片手は男根を更に強くしごきこみ、もう片方の手はその下の女の部分にあてがわれる。
そして挿入した指を1本から2本に増やし肉壷をこねくリまわしていく。

「ああ....くふぅ...うぐ..」

徐々に媚声が高まり、愛撫の速度も増してくる。
そして今まさに絶頂を極めんとしたとき....
ふいに両手が離される。
そのままがっくり身体を横たえ、宙を見据えるアイラ。
大粒の汗が上気した肌を伝う。

怖かったのだ。
自らの手で屈辱のたぎりを吐き出すことが。
しかも呪われた器官をもてあそぶことにより得られる背徳の悦楽。
もし、それにより無上の悦びを身体の奥深くに刻み込んでしまったら....
欲情に押し流されそうになる直前に、脅威的な精神力と”女”の誇りで禍禍しい陰茎からの放出は封印してしまう。
ドクドクと脈打つ男根は、隆々と反り返ることで満たされぬ不満を訴えかけていた。
実際放出無しには、アイラはイクことは出来ない。
女性器から最奥の羞恥を吐き出す時も、同時に男根からの精子の放出が行われないと真の満足が得られないのだ。
だから自らの手による放出を拒みつづける限り、やるせない欲求不満が累々と堆積していくことになる。
しかしそれも呪われた運命の一部である、とアイラは重い十字架を受け入れていた。

余韻の気だるげな吐息を吐き出しながら、ゆっくり身をおこし、服を着替えて妹の部屋をのぞく。

「姉さん、どうしたの?」
マリーは不思議そうに首をかしげる。
「いえ、どうしてるかな、と思ってね」
あなたの顔が無性に見たかっただけなのよ。
視界がぼやけてくる。
例えこの身がどうなろうとも、あなただけは幸せにしてあげる。

「マリー...」

妹の顔を手で撫でる。
そういえば先程まで不浄の行いをしていた手である。
淫臭がこべりついているかもしれない。

「姉さん、くすぐったいったら!」

でも今はただこうやって妹の顔を哀撫していたかった。


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