「やあ、みんな元気に屈伏させとるかな?? 今日も張りきって行こうと思うドクター屈伏こと、わしと」
「綺麗なおねーさんとして名高い水野カヲリが送る」
「肉感講座のスタートじゃ!!」十六夜残月抄の秘密
「でも、よくまあ人前で自分のことを綺麗なおねーさん等と呼べるなぁ」
「いいじゃないの、別に。どうせ私らの活躍するこのコーナーなんて世界で3人しか見てないんだから」
「僻んでどうする」
「いいのよ、それにまたまた扉の絵が変わったし。ふーさんだけが私らの味方ね!ありがとう、ふーさん!!」
「でも、あの絵、わしの存在感がドンドン薄くなっているような...ううっ」
「うるさいわね。官能サイトで男性の影が薄いってのはお約束でしょう。誰も野郎の描写なんか望んでないんだから。必要なのは、はちきれんばかりに美貌の詰まったこの肉体だけ! ほほほ」
「カ、カヲリ君、しばらくやっていないうちに性格が変わってしまったような...」
「ふん、自暴自棄にもなるわよ。いよいよ私がデビューしたと思った途端に連載小説が中断しちゃうし、その元凶ともなった投稿小説をここで紹介するですって!」
「まぁまぁ、わしに怒らんでも..今日はやりにくいのぉ..と、とにかくじゃ、誰も参考にしておるやつなんぞいるとは思えんが、ここで取り上げることになったのじゃ。十六夜残月抄の分析と、今後の小説の展開について..」
「ふふふ、見てなさいよ...」
1.読者の声には耳を傾けるべし
「さて、この小説、約半年にわたって連載が続いたのじゃが、もともとは後書きでも書いておるとおり、もっと短い短編になる予定であった。一番最初にネタを思いついたときに書いたノートのメモには、こうある」
■くノ一もの。敵を倒したと思ったが、憑依の術を使われ逆転。体の自由を奪われた上に内部からもじわじわと責めなぶられる。自らの手で媚薬を塗りたくるのも面白い
「ということは、2,3話の対決シーンの後、直接11話あたりまでとんで、そこから責めが始まるという..当然触手も出てこないし、分量にして5、6話くらいとちょうどよかったのかもしれないわね」
「中盤をコンパクトにして、縦パス一本でゴールをゲットするという、クリーンヒット狙いの戦術じゃな。たぶんマンサクもこれが1作目だったら、そうしたかもしれんな」
「というと?」
「うむ、やはり一作目の『囚われの女豹』が望外に感想がきたのじゃよ。もちろんそれは勇気付けられると同時に、前作をしのぐものを書かねばならないという熱い思いにも結びついたのじゃな。いろいろな方のアドバイスを取り入れながら、もう一度快楽責めに挑戦する...それでできたのが十六夜というわけなのだよ」
「ふーん、舞台とかは違うけど、やってることは似ているもんね。特に媚薬の使い方とかヒロインを生殺しにするところとか..女豹の発展形が十六夜ってのも、わからないでもないわね」
「やるからには中途半端な真似はしたくなかった。テーマはずばり『気が狂うまでの快楽責め』。ビデオやエロアニメでフラストレーションがたまっている時期だったから、やるからには徹底的にしたかったのだ。60分間延々とヒロインが責めら続けられるエロアニメ。そんなのがあってもいいじゃないか。視聴者とすれば、そういうのを待ち望んでいるはずなのに、いつも危機一髪で助けられる。しかも責めもなんとも単調で味気ない...麗しのヒロインを逃れられない色地獄に引きずりこむような鬼気迫るまでの作品。そういうのがあってもいいじゃないか、と。女豹は途中で手綱を緩めたところがあったんだけど、今度はそうはいかないっていう暗黒な思いが...」
「それで、あれだけ長くなったのね。いろんな責めを詰め込んであるもんね」
「それに全体的に長くなったことのもうひとつの理由として、先ほどちょっと触れた女豹の反省を踏まえた話作りをしたためなんじゃ。つまり読者からのリクエストを組み込んでいった結果、どうも長くなってしまったという点もあるのだ」
「百人いれば百通りの屈伏があるもんね!」
「ふむ、例えば『女豹』のわかりやすい欠点としては、『選りすぐりの優秀な女諜報員』って設定があるのにもかかわらず、ものの簡単に捕まってしまうことがある」
「そうねぇ、あれマンサクが下手なせいもあると思うんだけど、妙なトラップにひっかかってあっさり敵の手におちる様を見ると、全然たいした諜報員じゃないって思っちゃうのよねぇ。いくら設定で語っても説得力にかけるのよね」
「そこで読者からも、もっとヒロインを活躍させてほしい、そして簡単に薬なんかで眠らせるんじゃなくて、もっと抵抗を見せながら敵の手に落としてほしいってメールもあったのじゃよ」
「自称捕獲マニアさんだったわね(マンサク注:決してくすぐりマニアさんのことでは有りません。念のため)。じゃあ少しは活躍させるかと、1話で男を見下すタカビーな速女ちゃんを演出してみたり、2から3話での幻老斎とのマンサクにしては慣れない戦闘シーンを書いてみたりしたのね」
「睡眠薬を飲まされて、気づいたらベッドの上に縛られていたってのは、どうも面白くないというわけじゃ。マンサクもそれまでそんな話ばかり用意していたというから、どうしようもないのぉ」
「リクエストという点では、あの木馬責めは朝凪さんのリクエストだったわよね」
「そうじゃな。『くノ一はやはり木馬責めをされるべきだ』との要望?があったんでマンサクも入れたみたいじゃな。これは後から読み直しても、ぴったしくるぞい」
「そうねぇ」
2.元ネタとは名ばかりのパクリっぱなし、あれこれ
「で、半年にわたって連載続けていると、途中に出会った作品にいろいろ影響を受けるもんじゃ。『女豹』がマンサクが好きな小説のエッセンスを詰め込んだ作品だとすれば、『十六夜』は好きな漫画のエッセンスを詰め込んだ作品であるといえるやもしれん」
「ふーん、例えば?」
「まず、これでもか、これでもか、と責めを畳み掛ける手法は心酔する『ペンネームは無い』氏の一連の漫画からとったもの。この作家の漫画は十六夜に強烈に印象を与えているのは間違いないのじゃ」
「とにかく汁まみれだもんね、マンサクが大喜びするわけね。ふたなりはあるし、媚薬も出てくるし、それにうれしいのは『イクにイケない』シチュエーションで眉根を寄せてもだえ苦しむヒロインの多いこと...女のあたしでも股間がジンジンくるような...」
「氏の漫画の特徴は基本的に緩急をつけないんだよな。ボルテージは上がりっぱなしっていうか...旅人が服を脱がないなら、もっと強い北風を吹かせるまでだ、といわんばかりに。変化球をまぜない配球。ひたすらど真ん中の剛速球!!!」
「山文京伝氏の漫画だと、くさいところをついてきて、見逃していたらいつのまにが三振とられていたってのが多いんだけどねぇ。最初はどうってことないような日常的な話が、一コマ一コマ考え抜かれて配置され、それが絶妙に作用し、気が付けば雁字搦めに世界の虜になっているというように」
「十六夜の後半、ひたすら責めまくるところなんぞ、これにのっとっているわけじゃな。ま、成功しているかどうかは後で書くとして」
「それから、『桃山ジロウ』にも影響受けているらしいわね。『監禁陵辱』(松文館)なんてアイデアの宝庫だし」
「うむ、眠らせずに責め続けるというネタ(快楽のいけにえ)や、木馬の上での責めなんてのを出したのも、ここからもらったようなネタじゃよなあ」
「木馬責めもビジュアルでイメージしにくいって人はその本の中の『地下室の女』を読んでもらったほうがいいかも、というくらいのパクリっぷり!」
「この作家もとにかくすごい量のアイデアを詰め込んでいるからのぉ。マンサクも大好きなようじゃ。木馬のイメージは幸いなことに福外さんがすばらしいCGを送ってくれたから、一般の読者はあれで十分わかるだろうけど」
「速女が耳掻きで責められてた所は、エロではないんだけど『代打屋トーゴー』で上海式耳堀で昇天するエピソードを覚えていて、それを膨らませたものらしいわ」
「12話あたりで異常性欲昂進状態って言葉がでてくるけど、これは結城彩雨の小説で何度か出てきている言葉じゃ。本当は洗脳という段階までいきたかったのじゃが、今回は趣が違うのでそこまでは踏み込まなかったようだな」
「ふーん、いろいろ使っているわねぇ。懲りないというかなんていうか..」
「まあ、マンサクの実験小説の執筆姿勢は『自分の読みたいものを書く』だからなぁ。ある程度仕方ないかもしれんが..」
「ま、マンサク程度ならそんなもんね」
3.まだまだ勉強..
「十六夜も完結してみたけど、読み返すとまだまだ変な所、まずい所が多いわよね」
「うむ、そうだな。やはり大きいのは相変わらずシナリオができてないってこと。ストーリとして楽しめない」
「そうね、読者のかいまーさんからも指摘があったけど、明らかに矛盾している所もあったわよね。それは1話では速女が女陰棒(それにしても恥ずかしい名前ね!)の存在を示唆するような台詞があるのにもかかわらず、10話でそれが発動した時には初めてみるような態度だったという...これはいったいなんなのよ!」
「マンサクによるとじゃな、それは途中で大きな設定変更があったためだということだ。当初は幻老斎に体をのっとられるまでは、あくまで前座であり、11話以降の展開で真の屈服調教が始まるという段取りだったわけじゃ。つまり10話までは、抑え目にして、11話以降の展開で徐々にボルテージを上げていこうと...そのための裏設定として、例え体を拘束されても、一発逆転の技を身に付けているから、強気を保っていられるというのがあったわけじゃ。そうして倒したと思った敵にに、あろうことか体をのっとられてしまい、取り乱しつつ次第に濡れ落ちていく..そういう心積もりだった。そのため、10話までは弱音を吐かせるつもりもなかったし、『ああ、一体どうすればいいのよ』なんて思うわけもないから、心理描写もあんまし入れない予定だったのだ。でも前半部分が予定以上に長くなってしまい、そうするうちに『落ちないヒロイン』に対するジレンマが出てきたんだ。それに読んでいる読者も今一盛り上がらないんだよね。悶え狂わないヒロインって。やっぱヒロインはとことん無様に醜態をさらけ出さないと..グヒヒ」
「そんなの思ってるのあんただけじゃないの? それで途中から速女も精神的に急に弱くなったわけね。なんかよくわからないけど必殺技という後ろ盾がなくなったから」
「そうじゃな。結局4話か5話あたりから、一方的に責められまくっておるのはそういうわけだよ。一時的にはそれでしのげたが、その分トータルのバランスがかなり悪くなったのは否めないな」
「あれだけされて、なおイカないっていうのは人間技じゃないっていうか、まさに人外魔境!なんであれだけされてイカないのよ?当然後半にいけばいくほど、責めはきついものになっていくのに。というかそうせざるをえないわけね。同じ媚薬でも、前に出てきたものと全く同じものをつかったんじゃ、『ああ、またか』と思っちゃうだけ。当然前よりも強力な効き目のものを持ち出してこないと..」
「それが『エロのインフレスパイラル』というやつじゃな。『十六夜』では安易に数字で2倍だとか数倍、挙句には数十倍という表現までバンバン飛び出してきて、はじめから比べると速女ちゃんは一体どれくらい感じているのかわからなくなってきてしまう..せっかく媚薬に耐性があるというやや美味しい設定も垣間見えていたのに、ほとんど生かされなかったのは残念じゃわい」
「そうね、ドラゴンボールでもフリーザくらいでやめとけばいいもんの、それより強い敵が出てくるとなると『宇宙一より強いって一体...』と読者は戸惑ってしまうわね。しかもそっちのほうが、フリーザなんかより弱そうだし(笑)」
「かいまーさんからのアドバイスの中では、速女がイカないなんか理由付けとかあれば...ということじゃった。そこを抜粋すると
『十六夜を読んでいて私が一番引っ掛かった部分というのが実は、最後の最後まで速女が「自分の意志で」イクのをこらえていたところなのですね。男の私には女性の感じ方というのはさっぱり理解できないのですが、それでもあそこまで我慢できるというのは少々不自然なように思いました。もちろんそこらへんはポルノのファンタジー性ということで納得するべきなんでしょうけど、個人的にはどうしても理解しがたくて物語への没入を妨げられておったのです。そこまで意志の強さを保ち続けるならば、「使命感」とか「自分の命」程度の動機ではちょっと軽過ぎるような気がしました。例えば「負けを認める、という思考すら許さないように里で注意深く教育されたので、そういう発想が無かったのだ。そういう発想をジジイに教えられ、理解した瞬間に生じる葛藤!」とか「貴様の身体を乗っ取ったらこの身体を使って里の者を皆殺しにしてやるわぃ」とか言って他人の命と天秤にかけさせるとか……まぁこれで納得できるかどうかは実際に読んでみないと判らないわけですけど、何か屁理屈が欲しいところでした』
ということじゃな。マンサクよりもよっぽど理路整然としとるわい」
「それに最後までヒロインの魅力の欠如というか、それは女豹のときも感じたんだけど、速女ちゃんの顔が見えないのよね。なんかこう平面的っていうか、のっぺりとしているようで」
「元々マンサクは、以前もどっかで言っていたかもしれないが、官能小説のヒロインって容姿はそれほど濃密に描写するのではなく、ただ単に『綺麗な女』と書くだけでいい、という考え方をしておったからなぁ。そのほうが読者の感情移入を阻害しないっていうか。でもある程度のストーリラインを持った小説を書こうとすると、やはり登場人物の魅力っていうのもはずせなくなってくるんじゃよな。そうじゃないと話に負けてしまうっていうか。魅力あふれるヒロインだからこそ、そこまでして屈伏させたくなるわけだし」
4.これからのお話
「んで、これらの反省をしつつ、更に我々は前に進まねばならない!」
「そうね。マンサクはこれからどういったものを書くつもりなのかしら?」
「聞いたところによると、ひとつはもっとキャラを立てた話。具体的にはランシングになるかな。設定即捕縛、陵辱じゃなくて、多少のエピソードも絡めながらじっくり書いていきたいとか。今まではキャラに対する愛は否定しておったのじゃが、少しは注いでみようかな、と」
「やることは、たいして変わらないんでしょうけど」
「他には最近どちらかというと、速女でも触手を出したりしてファンタジー色が強くなってきたため、原点に帰って官能小説といわれるようなものも書いてみたいらしいぞ。そこで使うかどうかわからんが、洗脳ものというか、じっくり時間をかけて狂わされていくような...」
「ま、どちらにしても少しは読めるものになればいいんだけどね」
「では、また次の機会まで。あるといいけど...」
「ふ、不吉なことを言うんじゃないわよ!!!」
「んじゃ、またね!」
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