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  「西へ」 −バーシア アナザーエンド−             場面3

■ バーシア 2月1日 23:00 シャワールーム

シャー…

【[バーシア]】「ふぅ……」

欲情の余韻で火照る身体に冷水を叩きつける。
滑らかな肌を水流が流れ落ちてゆく。

【[バーシア]】「あのバカ…」

こうして水に身を任せ、クールダウンしている最中も、思い出すのはアイツの事だ。
どうしてワタシは、ここまで来たのだろうか?
よく考えてみれば自分でも答えの出ない不思議な問いかけである。
容姿にひかれたわけでもない。もちろん嫌いというわけでもない。
しかし気が付いたら崩壊を向かえたGIGOで、アイツのことを必死に探している自分がいた。

【[バーシア]】「あんなに手酷い歓迎まで受けたというのにな…」

北の軍人であったバーシアを待っていたのは、尋問という名の拷問だった。
それを先導していたのがアイツ。
本来なら憎んでも憎みきれない相手でもあるはずなのだが、不思議と祖国の上官に感じた同じ匂いはしなかったのだ。
これまで付き合わされた男とは明らかに異質なものを嗅ぎ取ることができたのだった。

【[バーシア]】「…そしてここまで来たというわけか…」

共にいる理由もよくわからぬ相手と行動するなど、ロジックと合理性を重視した以前のワタシなら考えもできなかったことだ。
しかし…現実にはここにいる。
ワタシをそうさせたのも、アイツ…というわけだ。
かの祖国では「キリングマシーン」とまで呼ばれたワタシを…
もっとも夜は別の名で侮辱された日々だったがな。

【[バーシア]】「くっ!」

下半身を洗おうと股間に手を伸ばしたところで、過敏な突起に触れてしまったようだ。
本当はこの身体の奥底まで入り込み、この身体にこびりついたアイツの痕跡を洗い流したくはない。
そう、いつまでこういう事ができるのかわからないから…

【[バーシア]】「アイツ…無理して…」

アイツの体調の変化に気づいたのは数ヶ月前からだった。
それまでは、半身は不自由でも元気が溢れるばかりだったが、最近はどうも元気さを装っている気がする。
いや、気のせいじゃないはず。
食欲もおちているが、ワタシを心配させまいと食べたフリをしてこっそり処分しているときもあるようだった。
それに夜の行いも…
そこまで考えて、シャワーの蛇口を閉じ、頭を振りたて邪念を吹き飛ばす。
起こってしまったことは仕方の無いことだ。
出来る限りのことを…これ以上悪くならないように尽力するしかない。

シャー…

【[バーシア]】「アイツがいないなんて…」

そんなこと、想像すらできようか!?

【[バーシア]】「たとえこの身に変えてでも、ミサキとアイツは…しかしこの身体で出来るのだろうか…?」

アイツだけじゃない。ワタシのこの身体も施設でのあの女狐の拷問を経てボロボロの有様だ。
かつての戦闘能力は失われ、変わりに性感帯だけがむき出しにされたこの身体で…
考えていても仕方がない。
そう、とりあえず進むしかない。今日歩んできたように、明日へ、と。
アイツと二人でなら進んでいける気がしていたのだった。



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