ゆでたまご作品に存在する、主人公を援助する者(主に女性と従順な男性)の物語のパターンを分析する文章です。
ゆでたまご作品では、男性が試練を乗り越え、誰かに助けられ、敵を倒し、誰かを救うという話が、毎回のように展開します。この章では、ヒーローを助けたり、ヒーローに救われたりする側の物語を分析します。
女性では、ナツコやビビンバや凛子らが主に、その役割を果たしています。
男性ではミートやウォーズマンやチェックが、代表的な援助者です。「助言者」であることも多い彼らは、戦って主人公を助ける「味方」とは、やや違ったポジションにいます。
ビビンバやチェック、ウォーズマンの物語は、主人公が「敵」であり、「征服」した「不幸」な相手を、「救済」することによって、「獲得」し、相手は主人公に「献身」し、その後何らかの事情で主人公と相手は「別離」し、新たな敵の「犠牲」になり、主人公の力で「回復」するという構造を持ちます。
大雑把に言えば「最初は敵対者、次は援助者、最後は犠牲者。これがお約束」ってことです。
もう少し具体的に語るならば、
「主人公に敵対していた不幸な相手が、主人公に倒され、また救われて、主人公に好意を持ち、試練に見舞われた主人公を助け、その後他の不幸な人の面倒を見、主人公の敵に傷つけられ、主人公の力で回復する」と、なります。
これが一部の女性と一部の従順な男性の典型的なストーリーパターンだと思われます。
これはメルヒェンで言う「女性の敵対者(死か結婚)」のパターンと「援助する敵側の者(悪魔の娘)」のパターンと「主人公の仲間(旅の仲間)」のパターンが、組みあわさっているのでしょう。
凛子やジャクリーンなどの新世代ヒロインは、あえて征服イベントや不幸イベントを外したいのではないかと、思います。でも、王位編に相当する最終シリーズで、一挙に彼女らの獲得イベントや犠牲イベントが起こりそうです。
父親に万太郎との結婚を反対された、ジャクリーンが家出とか。
捨て子の凛子は実は万太郎に敵対する種族の長の娘だった、とか。
この「救済と獲得」のパターンには大きくわけて、「相手が主人公に惚れる」系統の話と、「主人公が相手に惚れる」系統のパターンの二つがあります。
前者の代表がビビンバとかチェックで、後者の代表がカオスとか凛子なんじゃないでしょうか。後者は、初代にはあまりなかったパターンのような気がしますので、凛子やカオスのこれからは、よくわかりません。
この「敵対→援助→犠牲」のパターン自体はこのまんがの基本です。
ただ、ゆで先生は、同じ作品で同じパターンを繰り返しません。
同一作品内で、似たような話はありますが、どこかでひねってきます。
例えば、2世にはチェックと同パターンのキャラはいません。探すとしたら初代か他の作品でしょう。
そして、同じようなキャラに同じ話を演じさせない。
車田作品の場合は、顔が同じなら行動パターンも同じような気がしますが、ゆで作品はそうではない気がします。
わたしはチェックと類似するストーリーパターンを持つキャラは、オカマラスとビビンバとウォーズマンとニンジャだと考えていますが、見た目全然違うし。
そこが、ゆで先生の物語構築の才能であり、技術だと考えます。
以下に掲載するのは、ゆでたまご作品における「救済と獲得の物語」で、起こりがちなイベントのリストです。この要素の順番は前後することもあります。
参考にすれば、ゆでっぽい仕上がりの愛や友情の物語が展開できます。ちなみに、どちらかというとセンチメンタルというか、ロマンティックなお話になります。
あまり抽象度をあげると、原作の持ち味が損なわれますので、そこそこにしてあります。
下の表では便宜上「主体」は「主人公」と記述し、「対象」は「相手」と記述しています。
「主人公」と「従者」や、「自己」と「対象」という表現の方がぴったり来る気もしますが。
あるいは「能動的力動的な原理を体現する側」と「受動的受容的で静的な原理を体現する側」とかでもいいかも。ま、面倒くさいので、今回は、これでいきます。
男女で「主体」と「客体」とかいうとカドが立つというならば、ロマンティックに「英雄」「姫」と脳内変換して下さい。ドリーム小説用のスクリプトでの変換も可能にしておきました。万太郎やスグルはガチで王子様ですし、ロビンは貴公子です。ビビンバもホルモン族の長の娘、ロビンの妻のアリサはお嬢様、ジャクリーンは委員長の娘……などなど、設定上はみなさま気品に満ちていらっしゃいます。
これで、「主人公」を「スグル」、「相手」を「ビビンバ」あたりに変換してリストをみるとわかりやすいかもしれません。もちろん、あえて「主人公」の欄に「ケビン」とか入力し、「相手」は「ジャクリーン」とか入力して、遊ぶことも出来ますが、これは基本的にストーリーパターン分析用のイベントリストです。まずは、当てはまりそうなキャラを入力してみてください。
ちなみにこのリスト作成時に、参考にしたキャラは「主人公(主体)」では、スグル、万太郎、ロビンです。「相手(対象)」は男では、チェック、ウォーズマン、ニンジャ、ミート、オカマラス、女ではナツコ、ビビンバ、アリサ、ジャクリーン、凛子です。
A 敵対イベント(出現イベント)
「」やその仲間が、「」やその仲間を攻撃したり欺いたりして、世界に欠落と不幸をもたらします。
B 征服イベント(戦闘イベント)
「」が「」を攻撃し、勝利することによって、「」のもたらした欠落が回復されます。
C 不幸イベント
「」の欠落が明かされます。
D 救済イベント
「」の欠落を「」が埋めようとします。
E 探索イベント
「」が己の欠落や不足を「」によって埋めようとするイベントです。
F 獲得イベント
「相手」が「主人公」側の人物となる過程に存在するイベントです。
G 試練イベント
「」に何かが欠落したり、危機に陥ったりします。
H 援助イベント(献身イベント)
「」の欠落を「」が補おうとするイベントです。
I 別離イベント(三角関係イベント)
「」が「」を喪失します。
J 再会イベント
「」が「」とのつながりを回復します。
K 犠牲イベント(受難イベント)
「」に敵対する者によって、「」に欠落や不幸がもたらされます。
L 回復イベント(保護対象イベント)
「」の敵対者に対する勝利によって、「」の欠落や不幸が回復します。
「敵対・征服」、「不幸・救済」、「探索・獲得」、「試練・援助」、「別離・再会」、「犠牲・回復」はそれぞれ対になるイベントです。
前半が「欠落」の発見、後半がその「回復」となっています。
ここでは、「主人公」が「相手」と戦うというのと、「主人公」が「相手」に助けられて他の敵と戦うというのと、「主人公」が「相手」のために他の敵と戦うというのは、別のパターンの話として考えています。
主人公中心に見ればどれも「主人公が誰かを守るために、他の誰かに助けられて、敵と戦う」なのですが、「相手」にとっては違うわけです。
「敵対イベント」や「征服イベント」については、説明の必要はないでしょう。
「不幸イベント」や「救済イベント」は、いわば泣かせどころといえましょう。
「不幸イベント」では、主人公の「敵対者」が、主人公あるいは保護者や世間の「犠牲者」であると明かされます。
「救済イベント」は、相手の「欠落」を主人公が「不幸」と見なして、同情する所から、展開するタイプの物語です。敵として倒すことで、相手を傷つけてしまったと主人公が謝るとか、そういう系統の話の一部です。
「チェックが居場所を失ったのは自分のせい」と万太郎が考えて、罪悪感を感じるとか。
「探索イベント」は、主人公が、彼女や友達やタッグパートナーや弟子や師匠などの、何らかの役割を果たす相手を探す話です。単純に「友好イベント」ではなく、「獲得対象」という表現になるのは、相手の独占が暗にあるいは明確に、目標とされているからです。
愛や友情の物語には違いないのですが、これは「あなたをものにしたい(主人公)」と「あなたががんばるなら、それでもいい(相手)」と、「あなたのものになりたい(相手)」と「尽くしてくれるなら、それでもいい(主人公)」の組み合わせが、成立するまでの過程といえましょう。
「援助イベント」は「試練イベント」と対になるイベントです。好きなあなたのために尽くします、というイベントですね。「探索・獲得」イベントと連結されている場合は、特に。
彼女や妻やタッグパートナーや弟子や師匠は、献身的でなくてはなりません。カオスをパートナーにした万太郎は、「幸せにしてあげる」と言って結婚して、すごーく妻に苦労させる夫のようです。
「不幸・救済」イベントと援助イベントの間のつながりは「恩」がキーワードとなります。
メルヒェンによくある「かわいそうな動物を助けて家来にする」みたいな感じですね。
「敵対・征服」イベントと連結されている場合は、まあ、相手が主人公に惚れています。
献身の仕方はそのキャラの性格や能力によって、だいぶ異なります。
援助の中でも「主人公のために戦う」とかは、その後、「犠牲・回復」に滑らかに連結することが多いイベントです。
それなりに主人公と相手との仲が良くなってくると、関係の再構築のために「別離イベント」がおこります。三角関係イベントや二者択一イベントもこれに含まれます。まあ、基本かと。
大きくわけて主人公が相手以外の何かや誰かを選ぶ場合と、相手が主人公以外の誰かや何かを選ぶ場合の二通りです。
主人公が女より友を優先するとか、ヒロインが他の男を素敵だと思ってしまうとかですね。ちなみにII世のタッグパートナー選びのくだりは、三角関係どころの騒ぎじゃない位の争奪戦でした。
通常でも、手に入れたものは、要らなくなったり、失われたりしますが、あえて主人公や相手に喪失を欠落として実感させることで、後の回復イベントにつなげます。
ゆでまんがには、言葉による説得イベントの類があまりありません。それにあっても成功しませんので、「再会イベント」のカテゴリは充実していません。そして、スグルはテリーをどうやって説得し、マシンガンズを結成したのかが、20年間の謎になったりするわけですね。
何らかの形で「闘い」を経て、主人公が相手を取り戻す話が多いのは、このまんがが、言葉ではなく肉体で愛を示すまんがだからです。
なので別離した相手とはリング周辺で再会し、主人公の勝利によって相手が取り戻されて、関係が回復するのがお約束です。
1 「相手」は、「主人公」の前に見知らぬ者として現れる
ロビンとアリサのように最初から愛し合っているという設定でないなら、このように出会う所から話は始まります。
2 「相手」は、「主人公」の敵対者を師匠あるいは父親とする
ビビンバやジャクリーンやアリサの場合は父親です。特にビビンバは父親が師匠も兼ねています。チェックやウォーズマンは師匠です。
3 「相手」は、「主人公」に敵対する
師匠や父親に連れられて、チェックやビビンバやウォーズマンが現れ、これからこの者は主人公と闘うのだと説明されるのですね。
リングの上で戦うのみならず、ジャクリーンみたいなのも敵対だと思います。
4 「相手」が、「主人公」以外の人物を魅了する
敵対者およびヒロインとしては、よくある行動です。チェックやジャクリーンのように、美しく装って観客を誘惑したりします。凛子もとっても誘惑者です。実はウォーズマンもビビンバに気にかけられたりしています。
5 「相手」が、「主人公」以外の人物を攻撃する
残虐な行為を行うなどのイベントがここで起こります。
そして悪人であると皆に認識されるのですね。
6 「相手」が、「主人公」の仲間を攻撃する
これで、相手は晴れて友の仇です。
1 「主人公」は、「相手」と何かを賭けて戦うことになる
戦いの緊張感を盛り上げます。
人質がいる、国外追放、マスク剥ぎ、王位争奪等々。
2 「主人公」は、「相手」に羨望や嫉妬を感じる
主人公が、自分に向けられるはずの好意を、相手に奪われたと思うことが多くあります。
チェックの女の子人気を、万太郎がうらやましがったりします。
ビビンバがウォーズマンに好意を持ったり、凛子がジェイドに興味を持ったりして、主人公が嫉妬するのもありです。
3 「主人公」は、「相手」に恐怖を感じる
主人公は恐るべき敵と闘わなくてはいけません。
4 「主人公」は、「相手」に憤ったり非難する
「心に愛がなければ」とか、主人公のお説教が炸裂します。
5 「主人公」は、「相手」と戦う
プロレスまんがですから。
女性でこれを満たしたのは、ビビンバとナツコのみ。
6 「主人公」は、「相手」に苦しめられる
主人公たるもの、強大な敵に苦戦しなくてはなりません。相手が男性なら、様々な技を披露してくれるでしょう。
7 「相手」は、「主人公」と戦うことによって、自我に目覚める
チェックとかウォーズマンとかが、師匠に反抗したり、ビビンバが父の命令にも関わらず、スグルを殺すのをためらったりするというパターンです。
ナツコは、キン骨マンに一時的に操られていたわけですが、似たパターンではあるでしょう。
自立心に目覚めると師匠にものを投げつけるのは、この世界のお約束らしいです。爪を投げるウォーズ、ポーンを投げるチェック、メットの一部を投げるジェイド等。
8 「主人公」が、「相手」に反撃する
戦いのクライマックスですね。そして、必殺技をかまします。
9 「主人公」は、「相手」に勝利する
男性キャラならお約束ですが、女性ではビビンバのみ。
テリーと巨大化ナツコのあれは相手は、主人公によって閉ざされた心を開く、に相当する救済イベントだと思います。
そして、このまんがは対象を征服したら、自己のものになるという男の子的世界観に貫かれています。
「相手」の欠落が明かされます。
1 「相手」は、実の両親に養育されていない
ミート、チェック、凛子はそのことが、作中で明言されています。
『キン肉マン』の世界では、実の両親に養育されている方が少ないくらいです。
2 「相手」は、厳しい保護者に育てられた
チェックとか、ビビンバとか。ウォーズマンは成人してから、厳しい師匠に出会ったので、微妙ではあります。
3 「相手」は、貧しい環境で育った
チェックとか、ビビンバとか、ウォーズマンとか。
4 「相手」は、周囲に迫害された
チェックの幼少期とか、ウォーズマンの幼少期とか。
5 「相手」には、身体的な欠落がある
ロボ超人だとか。植物人間だとか。苦痛を感じないとか。最後のは本当は精神的な問題ですが。
1 「相手」は、「主人公」に罪悪感を抱かれる
自分が相手を苦しめた、あるいは傷つけたと主人公の側が思います。
王位編のビビンバは、自己犠牲の形をとってはいますが、スグルが自分の行いを悔やむという展開になっています。
2 「相手」は、「主人公」に辛い過去を想像される
ノーリスペクト編の万太郎は、チェックやフォークやハンゾウの辛い過去を想像しまくっていました。このことからも、ノーリスペクト編のテーマがわかろうというものです。
3 「相手」は、「主人公」に償われる
スグルにミートのマントを差し出されるビビンバとか。無表情ですが、スグルはビビンバの服を裂いてしまって、悪いことをしたと一応思っているのでしょう。
4 「相手」は、「主人公」に同情される
チェックとか、ウォーズマンとか。たいがい戦いが終わった後ですね。
5 「相手」は、「主人公」に傷を癒されるあるいは身を守られる
心身の傷をいやしたり、命を助けたりする系統のイベントです。ビビンバにケガの手当とか、フェイスフラッシュ。
ノーリスペクト編は、チェックの鎧のヒビや肩のピースの欠けたところが減っていく話です。
6 「相手」は、「主人公」によって閉ざされた心を開く
ウォーズマンの「オモイヤリ」+「ヤサシサ」+「アイジョウ」=「ユウジョウ」とか。
そして、善人になったり弱体化したりするのは、お約束。
II世でガラスケースから目覚めるミートも、これに含まれる可能性があります。
7「相手」は、「主人公」に保護される
男の場合は、正義超人への仲間入りを認められるとか、何らかの身分保障です。
1 「相手」は、「主人公」に探し求められる
タッグ編のカオスが好例です。彼女がいないのがさびしい万太郎が、夜の街をふらついて、凛子に出会うとかいうのも、わかりやすいですね。これは「欠落の自覚」→「探索」→「発見」です。
2 「相手」は、「主人公」に見出される
ノーリスペクト編は「探索」「発見」「充足の自覚」という順序になります。この話で最後に「発見」されるのは、「友情」であり、具体的にはチェックとキッドです。探し求めていたものは、最初から自分の側にあったという『青い鳥』のようなお話ですね。でも、探索と試練の旅に出なければ、万太郎は援助してくれる友人がいないことは欠落であるという事に、いまいち実感がなかったかもしれません。
3 「相手」は、「主人公」に口説かれる
「相手」本人を獲得することを、「主人公」が望みます。カオスや凛子は好例です。他に、ロビンとウォーズマンのように才能を見込んだ、など。
4 「相手」は、「主人公」に何かをしてもらう
ウォーズマンとかチェックとか。食べ物をおごってもらったりします。好意の表現としてプレゼントは普遍的ですね。
1 「相手」は、「主人公」を拒絶する
凛子とか、カオスとか。口説かれて、素直に「はい」といったら、盛り上がりません。
2 「相手」は、「主人公」の力を認める
一言でいえば「強いあなたが好き」というやつです。特に負けた者が勝った者の強さを認めるのは当然です。
アリサの「超人のロビンが好き」というのも、そうでしょう。
3 「相手」は、「主人公」に好意や関心を持つ
前に流行ったツンデレじゃありませんが、ストレートに描かないのが、プロです。
チェックは「あなたが負けたら、わたしの立場がないでしょう!」です。
そんなことをいいながらも、嬉しそうに後ろをついていくとかいうのが、よろしいでしょう。
4 「相手」は、「主人公」に愛あるいは友情を告白する
スグル対シシカバ戦のビビンバとか、万太郎対フォーク戦のチェックは、やはり感動的だと思います。
5 「相手」は、「主人公」の仲間になる
リスト想定キャラの全キャラに存在するイベントです。
6 「相手」は、「主人公」の敗北に同情する
「強いあなたが好き」と言われたいが「負けたあなたが嫌い」とは、言われたくない。まあ、当然ですね。
ビビンバがシシカバに負けたスグルに駆け寄るとか、凛子が倒れた万太郎を抱き上げるとか、ジャクリーンが負けた万太郎に膝枕するとか。
女性の場合は、泣いてくれることも多いです。
ミートだけでなく、チェックもちゃんと万太郎の敗北の現場に居合わせて、心配したり後日慰めに来たりしています。
7 「相手」は、「主人公」を新たな主人に選ぶ
明確にこれを満たすのは、保護者を捨てたチェックと、「主人公」と結婚したビビンバとアリサのみ。ただ、万太郎には「命令する者」というイミでの「主人」の自覚はないみたいです。ウォーズマンはロビンが最初で最後の主人です。
8 「相手」は、「主人公」以外の者に従うことを拒む
ビビンバがシシカバを拒むとか、Vジャンプ版のチェックが悪行超人に戻れという誘いをはねつけるとか、その種のイベントです。
このイベントによって、相手は晴れて主人公に獲得されたものとなります。
「主人公」に何かが欠落したり、危機に陥ったりします。
1 「主人公」が失敗する
2 「主人公」が他の誰かに振られる
3 「主人公」が仲間を誤解する
4 「主人公」の敵対者が現れる
5 「主人公」の仲間が敵対者に奪われる
6 「主人公」が敵対者に襲われる
7 「主人公」が敵対者に傷つけられる
8 「主人公」が敵対者との対戦で危機に陥る
9 「主人公」が敵対者に負ける
これらのイベントについては、スグルや万太郎の毎回の試合を思い出していただければ、よろしいかと。
1 「相手」は、「主人公」のために敵対者と戦う
基本的に女性には存在しないイベントです。ウォーズマンやミート、Vジャンプ版のチェック、スグルの両親を助けたビビンバが該当します。
2 「相手」は、「主人公」と共に敵対者と戦う
タッグを組むということになるので、ロビンとウォーズマン位しかありませんね。
3 「相手」は、「主人公」に助言する
ちょっとしたものなら、全キャラにあるという位、よくあるイベントですね。
4 「相手」は、「主人公」と戦闘以外で身体的に接触する
ゆでまんがなら、お約束ですね。ケガした相手に膝枕やおんぶ、肩を抱く等です。抱き上げるのもありです。
5 「相手」は、「主人公」の心配をするあるいは身をもってかばう
体の心配をして、大丈夫かと言ったりする、気遣いの表現ですね。
6 「相手」は、「主人公」の世話をする
ミートが代表格。彼こそビビンバやチェックの真のライバル。
7 「相手」は、「主人公」に期待し叱る
ひじょーに、よくある場面ですね。女の場合は泣きながら。
チェックやミートなんか、始終万太郎を叱っています。ただ、ウォーズマンがロビンを叱責する場面はありません。クロエとして、ケビンを叱りまくりでしたが。
8 「相手」は、「主人公」に理解を示したり言葉で慰める
ミートが万太郎をかばったりします。
万太郎がアリサにケガをさせてしまった後、チェックは、気にしちゃダメですよ、とか慰めていました。
9 「相手」は、「主人公」のために何かアイテムを手渡す
ナツコがギョーザを手渡すとか。ウォーズマンのマスクから、ベアクローとか。
10 「相手」は、「主人公」のために他の人物との仲を取り持つ
凛子が足のベルトで、万太郎とジェイドをつなげるとか、ナツコがスグルとテリーの誤解を解くとか、主に女性が男同士の仲を修復します。
11 「相手」は、「主人公」のために苦難や苦痛や屈辱に耐える
ウォーズマンによく見られた行動です。他には、アリサがロビンに捨てられたのに、リングサイドまで追いかけてくると言った展開です。直接の援助行動ではなくても、献身に違いありませんね。
12 「相手」は、「主人公」のために身体や身分を犠牲にする
同じくウォーズマンによく見られた行動です。超人墓場からのスグルの脱出は、印象的です。
悪行超人の改心とかは、身分を犠牲にする話です。
13 「相手」は、「主人公」の子を育てる
女の場合は結婚する。男の場合はその子の師匠となるわけです。
女ならアリサやビビンバ、男ならミートやウォーズマンが正道です。
1 「相手」は、「主人公」に拒否される
ビビンバがスグルに「お后候補というのは、親が勝手に決めたこと」と言われたり、ロビンにアリサが捨てられたりする類のイベントです。
主人公が仕事や他の相手を選び、「従う者」は選ばれません。
2 「相手」は、「主人公」からの自立を志す
ビビンバが地球防衛軍に入ってしまうとか。
タッグ編のキッドは、万太郎からの自立を志しました。
3 「相手」は、「主人公」以外の誰かに魅了される
凛子がジェイドを気にするとか。ビビンバがウォーズマンを気にするとか。
タッグ編のセイウチンは、これ。
4 「相手」は、「主人公」以外の人物を援助しようとする
セイウチンを心配したチェック、ウォーズマンの心配をしたビビンバ、イリューヒンを助けたミート、ジェイドを援助する凛子。他人に対する優しさを強調するこのまんがでも、女性や従順な男性は、この手のイベントが多い人たちです。
5 「相手」は、「主人公」以外の人物を援助するのに失敗し、名誉を犠牲にする
シンヤのために棄権したチェック、ジェロニモのために星を捨てたテリーマンなどです。
1 「相手」は、遠くから「主人公」を見守っている
スグルからの自立を志したビビンバが、テレビに出ているスグルを見守っていたりします。
2 「相手」は、いつのまにか「主人公」と一緒にいる
そして、いつのまにかスグルと一緒にいるビビンバ。初代ではアリサがロビンとよりを戻す場面はなかったと思うのに、II世ではいきなりケビンが登場。さすがにゆで先生も気になったのか、29巻でいきなりアリサがヒロインに。
1 「相手」は、「主人公」の敵対者の攻撃の対象になる
男性では、お約束イベント。
2 「相手」は、「主人公」の敵対者に傷つけられる
女性ではアリサとか。ウォーズマンには、起こりがちなイベントでした。
3 「相手」は、「主人公」の敵対者に侮辱される
チェックに二度ほどあったイベントです。ビビンバがファーストキスをフェニックスに奪われたりしているのは微妙ですが、取り戻せない類のものなので、やはり侮辱イベントでしょうか?
4 「相手」は、「主人公」の敵対者に奪われる
人質イベントです。ミートが肉体を奪われたりしていましたね。他にチェックの顔の皮とか、ウォーズマンの仮面とか、肉体の一部だけという場合も、あります。
5 「相手」は、「主人公」の敵対者に殺される
女性が殺されることは原則的にないので、このイベントはウォーズマンのみ。
1 「相手」は、「主人公」に身を守られる
倫敦編のアリサとか。だるま落としの凛子も、たぶん含まれます。
2 「相手」は、「主人公」に仇を討たれる
ウォーズマンとか。
3 「相手」は、「主人公」に名誉を守られる
チェックとか。ビビンバとか。
4 「相手」は、「主人公」の力で取り戻される
THE・リガニーに磔にされた凛子とか。
5 「相手」は、「主人公」の力で生き返る
そういえば、ウォーズマンはそのために1シリーズ使ったような気が。
こうやってリスト化して、並べてみると、ゆでたまご作品でなくても、二者が関係を深めていく物語に、ありそうな出来事ばかりですね。生き返るとかは、ちょっとメルヒェン入ってますが。
これは、いわば「ヒロインの側から見た英雄伝説」なのです。
この「77の出来事」というイベントリストは『キン肉マン』および『キン肉マンII世』から抽出したものです。
つまり、これを参考にラブストーリーを書いたら、「主人公」はめっちゃヒーローです。
これは「当初敵対的な関係にあった、不幸なヒロインをヒーローが救済し、ヒーローとの間に愛が芽生え、ヒロインはヒーローのために全てを捨てて献身し、新たに現れた残虐な敵にヒロインは酷い目にあわされ、ヒーローの力で取り戻される」という物語を完成形とするシナリオなのです。確かにベタです。しかし、感動する人がいるのも当然です。
「相手(対象)」が男性であるなら「望まぬ闘いを強いられていた不幸な少年が、主人公の強さと優しさによって、自立の勇気と友情に目覚め、仲間と正義のために尽くし、強大な敵に倒されるも、彼の信じた 主人公の勝利によって、世界に救済と平和がもたらされる」という、どっちにしろ、すげえや、ゆでたまご先生、としかいいようがないストーリーです。
なお、このシナリオで「相手(対象)」の役割を振られ続けたら、その者は「気が強くて健気で薄幸な存在」と化します。「相手(従う側)」から見ればこの一連の物語は、被虐と救済と献身と受難の物語です。
このまんがにおいて「従順な男の幸せ」とは、好きな男に選ばれ、好きな男に従い、好きな男に尽くして、好きな男に感謝され、好きな男の子供の面倒を見ることです。まあ、一般的には「女の幸せ」と言われそうな幸せですね。
この骨組み自体は、最初は敵対的な関係にある者が主人公の味方になり、主人公がその援助を受けながら新たな敵と戦ったり、敵から味方を守ったりするという、とっても少年まんがの正道をゆく物語です。
なので主人公に対する「敵対者」から「援助者」や「犠牲者」の道をたどる『ドラゴンボール』のベジータやピッコロの名を相手の欄に入力してみてもいいでしょう。「敵対」「救済」「援助」「犠牲」で、『スターウォーズ』の主人公ルーク、相手ダースベイダーでも、割と一致します。
ただ、ゆでたまごという作家の個性はむしろ、男性同士の援助イベントや犠牲イベントの充実ぶりにあると思います。
主人公のために死ぬのは、援助イベント兼、犠牲イベントですが、一応前者に入れて考えています。
ミートレベルになると、「主人公のために戦う」が援助イベントというより、犠牲イベントに見えます。ただでさえキン肉マンだと、そうなりがちなのですが。
「救済者」あるいは「征服者」が誰かによって、「敵対者に救済され、獲得された者」の作品内での立場は、かなり異なる気がします。新たな「ご主人様」が主人公だと、必然的にそのキャラの救済イベントや獲得イベントや援助イベントや回復イベントにページ数が割かれます。それは英雄物語の一部なのです。
主人公の出番がなくなることはないので、きっと「対象」は新たな敵が出現すると真っ先にひどい目にあわされる役として、作者に思い出して貰えるような立場なのでしょう。徹底的に主人公の「対象」に設定されているチェックの今後は、自立イベントがあって、新たな御主人様が見つかるまでそんな感じだと思いますが、なまじ主人公の救済や保護の対象でなくなると、そのまま出番がなくなりそうです。
たぶん、ゆでたまご先生は、ビビンバは最初から「獲得イベント」のつもりで、一連の話を組んでいたと思います。だって、ビビンバって一話で恋に落ちているし。
対万太郎戦の際に、それらしいイベントがなかったので、チェックはなりゆきだと思います。
不幸なチェックがその後「救済対象」になること自体は、真っ当すぎるほど真っ当なんですけれどね。そのまま「獲得」が成立してしまったような。
そんなチェックは戦闘以外の援助者イベントが充実していて、今後犠牲者イベントが積み重なりそうな、素敵な予感がします。
たぶん、連載が長引くに連れ、チェックは現在起きていない他のイベントを次々にこなしていく、あるいは上記のイベントを違った形で再演するのでしょう。
チェック以外の悪から正義に趣旨替えしたキャラは、「救済」や「獲得」や「戦闘以外の援助」のイベントがあまり存在しません。だいたい「敵対」「戦闘するという形での援助」「犠牲」「回復」となります。
例えば、スカーとかは「敵として倒したが、こいつも可哀想に」扱いは受けませんので、救済の対象外です。きっと、その方が幸せです。
「一番の従者」であるミートは、スグルにとっても、万太郎にとっても親からの贈り物という色合いが強く、「敵対」がありません。もちろん、万太郎との間にはいくつかの「獲得」イベントが起きています。
ミートは「家族」であって、「敵対」から始まるビビンバのような「悪魔の娘」や「女戦士」ではないのですよね。
こういうイベントの流れで考えると、「敵対」したセイウチンは「主人公が自力で獲得する」ための手続きにこれから入るのだと、考えるのがよいでしょう。「援助」イベントは、すでにたいがいこなしています。
初代なら「救済と獲得の物語」における、代表的な相手役は、やはりウォーズマンでしょう。
ウォーズマンは、「救う英雄」の役割が、スグルとロビンの二者に分担されている存在です。
スグルとロビンのどっちを優先するかというと、ロビンだとII世のオリンピック決勝で明確にされました。
なお、ウォーズマンの場合、「救済イベント」が少なくとも二度あります。
対スグル戦と、対マンリキ戦です。
そんなウォーズマンは犠牲者イベントが充実しています。
ブロッケン Jr.は、性格的には「従う者」です。
従った相手は、ラーメンマンで、
「敵対(父の仇)」
「救済(父親の事は忘れろ)」
「獲得(弟子入り)」
「援助(車椅子を押す)」
でした。
その後、ラーメンマンがブロッケン Jr.を守ったり、ブロッケン Jr.がアタルに魅了されたりしたわけなのですね。
もっと探せば他にもこういう関係はありそうですが、継続的な主従関係はかなり限られています。アタルは「従える者」タイプなんでしょうが、最終シリーズに登場したために、あまりこういうイベントの積み重ねはないです。II世で、ニンジャとのその後が明かされましたが。